シチュエーション
![]() 「・・・・え?」 私は手に持ったグラスをテーブルに置く。氷がぶつかる音が耳に奇妙に響く。彼はすっと立ち上がると、メモを一枚置いてバーを去っていく。 ドアの前に立ち、大きく深呼吸する。 ―イマナラヒキカエセル?― そしてノックをした。 鍵を開ける音なのか、自分の鼓動なのか、それすら分からないほど気持ちが高ぶる。 彼はそこに立っている、一瞬の躊躇ののち私は彼の部屋へと一歩踏み出す。 背後でドアが閉まる音がした。私は彼を見上げた。彼の視線と私の視線が絡まる。私は眼を閉じた。それを合図に彼の唇が私に重なる。浅く、深く出し入れされる舌が私を翻弄する。息も絶え絶えに唇を離すとそこに細く透明な糸がつながる。 それをおいしそうにべろりと舐めとりながら、彼の指先が私の腰をなぞっていく。 その動き、その感触。 スカートのホックを簡単に外すと、ファスナーを下ろす。音もなくスカートが床にたまる。私の両手を頭上に上げ、片手でドアに押し付けると、もう片方の手で上半身を弄る。 「・・い・・や・・・」 ・・・・ワタシハモウモドレナイ?・・・・ 「・・・あいつだと思って抱かれてみればいい・・・・」 気味の悪いほど優しい声で私の耳元をくすぐる。 「・・・・体の方が正直だ・・・・・・・・」 彼のせりふが吐息とともに耳に吹き込まれる。眼を閉じ、それを甘受する。硬くしこった乳首を強く捻られると背中が仰け反り、快楽の証を知らしめる。 ・・・いまさらだろう・・?・・・・望んだのはあんただ・・・・ 彼の声が聞こえたような気がする。 ・・・アアワタシハコレヲノゾンデイル・・・・ 私を包み込むようなセックス。 ・・・ソウデハナイノ・・・ 愛を確かめるような行為。 ・・・・イイエチガウノモット・・・・ 私のなにかが求めているもの、恋人を裏切る罪悪感と相反する淫靡な甘い快感。 彼は私の下着を強引に剥ぎ取ると、中心部に指を埋め込み、派手にかき回す。 「ああ!!!はぁ!・・・んん・・・」 「・・・欲しいんだろう?・・足・・・開きな・・・・」 従順に足を開くと彼は指を抜き、足を持ちあげ自分のペニスで貫いた。その荒々しいまでの雄に私は溺れた。いつしか自由になった両手で彼にしがみつく。 彼の両手が私の腰を掴みながら断続的に律動を繰り返す。時に深く、子宮口を突き破るように、時に浅く、入口近くにそのくびれを引っ掛ける。そのたびに私はよがり狂う。 恋人とでは味わえないような、ただ、快楽のみを求める排他的なセックスで。 「アア!!いやぁ・・・いくぅ!!・・・」 私は私でコントロールが出来ない、ただ突き上げられるたびに跳ね上がる身体に、もはやとめることなど出来ない。 「・・あ・・ああ・・・やぁ・・・!!!」 一気に頂点へと達せさせられる。彼は息一つ乱さないのに。 びくんびくんと全身を震わせながら彼に身体を預ける。そこはそれ以上に引くつき彼を求めて蠢いている。ぐちゅりという音を立てながら彼がそれを私から抜き取る。支えが無くなった私は床に崩れ落ちる。 「舐めろよ。」 高圧的に見下ろす男の言葉に私は憑かれたようにそれをしゃぶる。自分のと彼の先走りで光るそれを。彼が満足げに息を漏らすまで。 口内でさらに大きさを増すようにも感じられた。 「あいつにも・・・すんのか?こんないやらしいことをよ。」 分かっていてわざと私を傷つける言葉を。 「どこを嬲られたい?言えよ、してやってもいい。」 ・・・アアソウダ、ワタシハコウサレテイルノガイイ・・・ 壊されそうになる、愛撫。形が変わるほど強く握られた乳房。何本もの指でかき回されるヴァギナ。きつく捏ねられたクリトリス。 「・・・・あなたの・・・好きに・・・・」 小さな声で、それでもはっきりと自分の欲望を口にする。彼は私を抱え、奥へと進むとベッドの上へ転がした。 「あいつはこんな風にはしてくれないのか?」 そういった唇で私の全身に口付けを降らす。 「あんたはそれを言わないのか?」 その言葉で私を責める。 すべてが私の身体を快楽へと堕としていく。 「・・・も・・・や・・・・やめ・・・・てぇ・・・・・」 拒絶の言葉と裏腹な身体が艶かしく彼に絡み付いていく。彼の愛撫に寄り添うように。 「ほら・・・もっとよくなるぜ・・・・イケよ・・・」 彼の指先が私の感じる部分をくまなく攻めてくる。耐え切れない・・・。 「あ・・・あああああんんんん!!!!!」 落ちるまもなく指の代わりに彼のペニスが私の中を暴れ始める。声にならない声だけが私を壊す。 「・・・く・・あ・・あ・あん・・・・も・・・あ・・・はぁ・・ん・・・!!」 身体は熱いのに、どこか覚めた眼で私を抱いている彼。 いや、嬲っているのだろう。 友である私の恋人を思うのか? 私は恋人の親友の彼に今、身体を貫かれ、歓喜の喘ぎを部屋に響かせている。 駆け引きなしに、ただ、欲望に身を任せて。 彼はそれに応えただけ。 軽蔑しているのだろうか?それとも・・・・。 もう、そんなことはどうでもよかった。 彼で満たされているそこから今まで感じたことが無い何かが湧き上がって私を押し流す。その流れに逆らうこともせず、私の身体は快楽を追い求めていく。 ぐちゅぐちゅといやらしい水音が結合部から絶え間なく漏れる。 「上に・・なれよ・・・自分で動いてみな・・・・」 彼がベッドに横になると、私は足を広げて跨ろうとする、その真ん中を彼が見上げた。 「すげぇ・・・そこ・・・ぐしょぐしょだ・・・・」 彼に見られるのがわかるとさらにそこが濡れていくのが分かる。見られている、その快感。 ・・・モットミテワタシヲハズカシメテ・・・・・ 私は我慢できずに腰を落とし彼のそれを握ると自分へと誘い、奥まで埋め込んだ。 「ん・・・んん・・ふ・・は・・・・」 恋人と違うそれが私を埋め尽くす。最初はゆっくりと、段々激しく私は腰を上下に揺すっていた。クリトリスを彼に擦りつける様に腰を動かすと脳天がしびれてくる。 「ああん!!!やぁ!!あぁ!イ・・クゥ!!!!」 あと少しで手が届きそうなところで彼に乳房を掴まれる。 「こんなに・・・いやらしいんだな・・・あんた・・・・」 「アア!いやぁ!!やぁ!!も・・・イカ・・・せて・・・」 ぎりぎりのテンションで、私の身体がきしむ。 「まだだ・・・」 彼が腰を使い出す、その動きは私を狂わせ、正気を失わす。今ひと時だけの秘め事。 二度とは無い。 「・・や・・も・・・あ・・・あんん・・・・き・・・・てぇ・・・・!!」 「いくぞ・・・・・!!!」 つながった奥でドクンと音がしたような気がした。 「・・・帰るのか?」 「ええ・・・・」 彼はそれ以上何も言わなかった。 私もそれ以上何も答えなかった。 鍵を外し、ドアを開ける。 また、明日からはいつもの二人の関係。 親友の恋人。 恋人の親友。 ただ、それだけ。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |