シチュエーション
![]() 時計を見ると、もう少しで8時になるところだった。 今日は入院やら手術やらとんでもない忙しさで、気が付いたらこんな時間になってしまった。 残りは明日にしようとPCを落とし、帰ろうとしたその時、 トゥルルルルッ トゥルルルルッ トゥルルルルッ ナースステーションの内線が鳴った。準夜の看護婦は病室をまわっているのか、誰も出ない。 早く帰りたいんだけど、なにか緊急だったら…。仕方ない 「はい、7S病棟です」 「外科の藤井だけど、クラークの水島さんってまだ残ってる?」 「あ、はい、水島です」 「悪い、上がる時でいいから今日のオペ患の前歴を第2内視鏡室に持ってきて」 「わかりました」 藤井は年齢こそ30歳と若手だが、外科医として腕がよく診察も丁寧で信頼も厚い。 そのうえ背も高く精悍な顔立ちをしていて、スタッフからも患者からも人気があった。 わたしも密かに憧れていたけれど、人の心の内側を見透かすような目が苦手でいつも避けていた。 第2内視鏡室は普段余り使われることはない。 第1内視鏡室の方が設備が整っているため、緊急かつ第1が空いてないときにしか使わない。 場所も外来の外れにあり、こんな時間は誰もいない。余計に緊張してしまう。 「失礼します。水島です。……藤井先生?」 ノックをして中に入ったが返事はなかった。呼び出されたのかな? いないことに少しほっとする。 明かりは点いたままだし、直に戻ってくるだろう。どこかわかる場所に置けばいい。 そう思って部屋を見渡した。 誰もいないと思っていたのに、ドアの所で藤井がわたしを見ていた。 「あ、あの、カルテ、遅くなりました」 驚いて、どきどきして、うまく話せない。 「あぁ、そこ置いて」 そう言ってこっちに向かってくる。慌ててカルテを置き一礼して帰ろうとした。 瞬間、手がさっと顔に伸ばされたかと思うと、メガネを取られてしまった。 「!? なにするんですか?」 「ずいぶん厚いな。これじゃメガネなしじゃ帰れないだろう?」 藤井の言うとおり、わたしは弱視に近い。かけてないと不安でたまらない。返してくれと言おうとした その唇を彼の唇が塞いだ。咄嗟に何が起きたのかわからなかった。彼の胸を突き放そうとするものの、しっかりと腰を抱えられて離れられない。そうしている間にも彼の舌が歯列を割って侵入しようとする。 必死に顔をそらすと、藤井は唇を離し、あの見透かすような目でわたしを見る。 「前から思ってたけど、清純そうな顔をしているくせに、身体つきはいやらしいな」 言いながら片手で制服の上から胸を鷲掴みされ、腰にまわしていた手もおしりを持ち上げるように掴んでくる。 「やめてっ!やめてくださいっ!」 「暴れるな。あまり暴れると……」 そういって手にとって見せたのは…注射器だ。すでに針も付けられている。薬剤も……入っている。 「………ドルミカム。知ってるだろう?」 看護婦じゃなくたってドルミカムが何かくらいわかる。麻酔だ!それも数秒で効く……! 反射的に逃れようともがいていた。だがそれもわずかだった。左肩に痛みを感じて、そのまま意識が 暗転していった。 真っ暗な中、自分がなにかおぞましいものに犯されている。 恐くて恐くてしかたないのに、声が出ない。 自分の中を冷たくて堅い物が蠢いている。 いやだっ!やめてっ!誰か助けてっ!! 物凄い恐怖で目が覚めた。くらくらする。起きようとして、動けない事に気付く。 「やっと目が覚めた?」 その声で一気に思い出す。そうだ、さっき藤井に麻酔を打たれたんだ…。 藤井がこんな事をするなんて信じられなかった。憧れていたのに! …わたし犯されたの!? あまりのショックで言葉が出ない。でもわたしの目が疑問を訴えたのだろうか、 「まだ犯してないよ。眠ってるヤツを襲ってもつまらない。」 彼の言葉にさらに疑問がわく。まだ?まだって事は、これから犯すってこと? でも下腹部には違和感がある。本当にまだ何もされていないの? 「ただ起きるのを待っててもつまらないから、中は覗かしてもらったよ」 中?中ってなに?どういうこと!? 混乱するわたしを見下ろし、手を伸ばしてくる。 つぅっとお腹のあたり指でなぞられた。その感触は服越しではなく肌に直に触れていた。 「いやあぁぁっっ!」 身を捩って逃げ出そうとしても動けない。麻酔のせいでは…ない? 縛られてるの? 首だけ動かしてみると、自分が全裸でストレッチャーに縛り付けられていることがわかった。そして脚のつけねから黒いコードのような物が伸びている。信じ難い光景に半狂乱で叫ぶ口を彼の手が塞いだ。 「んーーーっ!」 「騒ぐな。写真をばらまかれたくなかったら、大人しくて」 写真!? 撮られたの!? この姿を!? 藤井はデジカメを私に見せ、私が叫ばなくなったのを確認して口から手を離した。 藤井は内視鏡モニターをわたしが見れるようにセットした。 画面はピンク色の内臓を映している。 「おまえの中。自分で見るのは初めてだろう?すごくきれいな色をしてる」 どうして? どうしてわたしがこんな目にあうの? 混乱した目から涙が溢れ出す。 それを彼の舌が舐めとっていく。そのまま口唇をなぞる。 舌が侵入してくるのを防ごうと口唇を閉ざしても、嗚咽をあげていて閉ざしきれない。 そんなわたしを嘲笑うかのように舌は口の中を暴れ続ける。 「身体つきだけじゃなくて、からだもいやらしいな…。ずっと蠢いてる」 モニターを見て嬉しそうに言った。 恥ずかしさと、悔しさとで胸が張り裂けそう。−でもそれだけじゃない。 「見ろよ。滲み出てきてる…」 わたしがモニターから顔を反らしていると強引に顎をそっちへ向ける。 ピンク色の粘膜は妖しく蠢きながら透明な液体を流していた。 それを見て更に自分から溢れていくのがわかった。−認めたくない。 「…いやっ!いやぁああ!」 「こういう事されても感じるんだ? 本当にいやらしいな」 そう言ってまた口唇を塞がれる。息苦しいほど激しく口唇を吸われ、舌が捕らえられる。 耳の後ろから首筋を指で つつつっ となぞられ、びくんっと背が反り返った。−感じている? −こういう事されても感じるんだ? そんな事ない!あるはずない! そう思いたいのに、からだは憎いほどに反応してしまっている。 わたしの混乱をよそに彼の口唇は首筋を這い、吸い付いてくる。 見えないけれど、たぶん紅い跡が散りばめられている。 手は両方の胸の膨らみを痛いほどに掴んだかと思うと、やさしく揉み上げる。 けっして蕾には触れようとせず、それを繰り返している。 口唇が鎖骨をかすめ、固く尖った蕾を目指して下りてくる。 確実にそこへ迫ってくる感覚に胸がふるふると小刻みに震えた。 一瞬口唇が離れ、咥えられた。でも、そこには触れていない。温かい息だけがかかる。 思わず膝を摺り合わせてしまった。コードが引っ張られ中の内視鏡が動いた。 「…っ!」 「どうした? 舐められたい? それとも動かして欲しい?」 なにもかも見透かされている。内視鏡でからだの中を見られ、彼の瞳で心の奥底を見抜かれて。 そんなことは望んでいないと、わたしの理性と自尊心が必死に否定しても、 −そんなのはうわべに過ぎない 本当は望んでいる 気付かない振りをしているだけ− そう突き付けられたような気がした。 「あぁっ!」 舌の先で震える蕾を弾かれた。と同時に片手で内視鏡を動かして肉壁のある部分を擦られる。 「ここ、こんなふうになってるんだ。…カズノコとはよくいったな」 そう言って更にそこを擦りあげ、焦らされ続けた蕾を口唇で噛まれ、反対のそれも指で摘まれた。 「やっ、やめっっ、ああぁぁ!」 一気に絶頂へと追い上げられ、達してしまった…。それも内視鏡で……。 呆然と脱力するわたしの中から内視鏡を抜き取り、テープでそれを内股に固定した。 「濡れすぎだろう? ストレッチャーがずるずるだよ」 言いながらまたわたしにモニターを見せる。 画面いっぱいに、わたしの愛液が溢れてらてらと光る秘口を映し出されていた。 あまりの生々しさに咄嗟に太股を動かして画面から外そうとしたけれど どんなに動かしても常に内視鏡の焦点はわたしのそこに合わせられていた。 「こうすれば、舐められるところも挿れられるところも見れるだろ? もっとよく見えるように眼鏡かけてやろうか?」 首を振って抗い、勢い余ってメガネが飛びカシャンと床に落ちた。 「あっ ばか! 帰りは送ってやるからいいけど……」 こんな事をしたとは思えないほど、本当に申し訳なさそうな貌をしてメガネを拾った。 でもそれも一瞬のことで すぐにあのいつもの目に戻ってしまった。 藤井はストレッチャーのわずかなスペースに腰掛け、右手を脚の合間に滑り込ませた。 太股にまで溢れた愛液で、手が動くとぬるぬると滑る。 モニターを見ながら花弁を一枚一枚剥ぐように指がそこを開いていく。 くちゅり 湿った水音を立てて指が侵入してくる。ゆっくりと押し進め、 ざらざらとした部分を掻くように指を曲げた。腰がびくんっと跳ね上る。 「そんなにここがいいんだ?」 「い、いやっ」 「いやじゃないだろ?こんなにして」 そう言って執拗にそこを攻め立てる。さっき達したばかりなのに高みへ押し上げられる。 指を挿れたまま器用に足首と腰の部分の縛めを解いてゆく。 その間も指は蠢き続け、いやらしい水音が内視鏡室に響いている。 自由になった脚を持ち上げ、藤井はストレッチャーにまたがった。 膝を大きく割り、そこに顔を埋める。 息がかかり、そこを視られているのを痛いほど感じる。 「ちゃんとモニター見てろよ…」 見るわけない。見れるわけがない。 だけど、何かに引張られるかのようにそっちに向いてしまう。 わたしは画面に映し出される光景から目が離せなくなっていた。 彼が指を抜き、たっぷりついた蜜をカメラにかざし、口に含んだ。 「…いい味してるよ、葵…」 指を舐めまわし、長い舌を見せつけた。 今度はその舌が内股を這い、溢れかえった愛液を舐めとる。 でも、中心には触れない。まわりだけを執拗に舐めまわす。 知らず知らず、腰が動いていてしまう。 舌から逃げているのか、それとも追いかけているのか…。 もう、後者である事を否定できなくなってきていた。 「どうして欲しいのか言ってみろよ?」 わたしの心境の変化を見抜いて、意地悪く言い放つ。 舐めて… まわりだけじゃなくて、泉の中まで、その長い舌で舐めて欲しい。 心ではそう叫んでいるけれど、それを口に出す事だけは耐えた。 最後の理性だったかもしれない。これ以上はきっと耐えられない。 「まだ我慢できるんだ? がんばるね。」 わたしがまだ完全に堕ちていないことを、むしろ歓んでるかのように笑った。 モニターには甘い蜜を滴らせ、紅く熟しきった果実と、 藤井の端正な横顔、そして長い舌が映っている。 ゆっくりと、スロー画面のように近付いていく…。 「…っはぁ…ぁ…ぁ!」 触れられた瞬間、そこから快感が背筋を走り抜け反りかえる。 口唇が花弁を吸い取り、舌が溝を抉る。そして更に奥へと侵入する。 「ああぁぁっ! あっ あっ」 躰が震え出す。快感が全身を支配し始める。もう止められない! ぴちゃ ぴちゃ 響く水音と映し出された映像が、より感覚を研ぎ澄ましていく。 「ひぁっ…!」 口唇が震える芽を捕らえた。 熱い口の中、その芽を舌で潰し転がし吸い上げる。 痺れがそこだけでなく、頭の芯までひろがってゆく。 首を左右に振って襲ってくる快感からのがれようとした。 「だめだ。ちゃんと見てろって言ったろ?」 顔を上げ、わたしの首をモニター方へ向け、最後の戒めである腕の包帯を解き、 自分が着ている白衣とオペ着も素早く脱ぎ、わたしを抱き起こした。 初めて見る裸は筋肉質で、引き締まっていた。 既に張切れそうに猛っているものは臍に向かって反りかえっている。 わたしの右脚を床へ下ろし、もう片方の膝を折り、 その下へ彼の右腿を割り込ませ、透明な液体が滲む先端を据えられた。 そしてわたしの目を覗き込むようにして言った。 「どうする? どうして欲しい?」 もう拒絶する言葉を出せるはずがなかった。 理性も自制心も何もかもが、今ここにある快感に呑み込まれていた。 それ以上に、更なる快感を求めている。 「……してください」 消え入りそうな震える声で言った。 彼は満足そうに口付けた。彼の舌とともに甘酸っぱい味が口の中に広がった。 それが自分の味だとわかり、背徳感にみまわれる。 と同時に据えられた先端が侵入を始めた。 「…ん! ぅんんっ!」 口唇を塞がれていて、くぐもった声が漏れる。 「すごい…葵のなか、すごくいい……」 口唇を離して彼が呟いた。口が自由になり喘ぎ声が響き出す。 「……あ…あぁっ あ・あ・あ…」 「…ほら、画面見ろよ。繋がってるところ……丸見えだよ」 「…やぁ!……あぁぁっ!」 わたしのそこは彼のものを咥え、呑み込んでゆく。 一番奥まで埋められ、腰が動き始めた。 画面の中、彼のものが愛液を纏いわたしの中へ消えては現れ、現れては消えてゆく。 はじめは内襞を味わうようにゆっくりと動かし、しだいに速度を上げていった。 透明だった愛液が白く泡立ちはじめた。 「…ひっ…あぁっ…あぁっ…っ!…」 「…ひくついてる。もうイキそうなのか?」 「……っああぁぁ!」 絶頂へと導かれ果ててしまったわたしを抱き締め、 内股に固定された内視鏡を外し、そのまま奥にある患者用のベッドへ運んだ。 上から覆い被さるようにして、わたしを見つめた。 「まだまだ これからだよ」 一瞬恐怖に感じる宣言も、すぐに甘美な媚薬となり、再び貫かれた。 彼は首筋に顔を埋め歯を立てて囓りつき、両手で胸を揉みしだいてゆく。 全身で奪われる感覚に、また快感を呼び戻される。 「はぁっ…ぁ…ぁああ…」 腰が跳ね上がるのを抑え付けられ、激しく抽送を繰り返される。 もう焦らすようなことはなかった。容赦なく攻め立ててくる。 どんっ どんっ と突かれるたびに意識が飛んでしまいそうだった。 「…あぅっ……うぅぅ…はぁあ!」 「ほら、イキそうなんだろ?イケよ!」 「…っ!…ぁあぁぁああ!」 わたしが達しても中のものは衰えることなく、攻め続ける。 貫いたまま片脚を肩の上に担ぎ、身体を横向きに反転させられより深いところを抉られる。 ぐちゅぐちゅと水音をたてながら円を描くように掻き回し、突き上げる。 「……っく…う…あぁ…」 彼の指が蕩けきった芽を摘んだ。 「…やっやめっっ…」 「いやだね。」 そう言うと、わたしの敏感な芽を捏ねて拈って嬲った。 「やああぁぁああーーー!」 喘ぎ声とも悲鳴ともつかない声をあげ、意識を飛ばした。 脱力したわたしを更に反転させ、俯せで膝を立てさせた。 双丘を突き出すような姿勢に羞恥するものの、抵抗する力も気力もない。 腰を掴み後ろから激しく打ち付けられた。 ぱんっぱんっぱんっぱんっ ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ 乾いた音と湿った音にわたしの漏らす声が混ざる。 「葵の声、いい…いやらしくて。」 「…も、もうだめ…ゆるしてぇ……」 「本当に?…まだ締め付けてくるくせに。」 快感という階段をのぼりつめ最上段へ辿り着く。 すると目の前にはさっきまでなかった階段が現れる。さらに上へと続く階段が。 果てても果てても繰り返し、より高いところへ誘われてゆく… 何度達っしてしまったのかわからない。 何度も意識が飛んでしまったから。 延々と続いた狂宴も、彼がわたしの中に精を解放したことで終わりを告げた。 服を着ようと立ち上がり、中から流れ出す感覚に驚いて立ち止まる。 その様子を見た彼が、立ちすくむわたしの手のひらに白い錠剤を2錠置いた。 「…いま飲んで、12時間後にもう2錠飲めばだいじょうぶ」 そう言ってやさしく抱き締め、髪に口付けた。 わたしはまたどきどきし始め、けれども彼はすぐに離れ背を向けてしまう。 「残りの2錠は後で渡すから、裏口で待ってて」 藤井の車で送ってもらう間、沈黙が続いた。 彼は何も話さない。わたしも話せない。 拒みきれなかったこと、心の奥底を見抜かれ、更には自ら求めたこと恥じていた。 でもそれ以上に彼に対する疑問がぐるぐると渦巻いている。 どうしてあんな事をしたの? どうしてわたしなの? 嗜虐的な事をするくせに、時折みせる優しさは何なの? 車が止まり自宅に着いたことに気付いた。彼はやっぱり何も話さない。 「………どうして?」 やっとの思いで、俯いたまま呟いた。聞こえなかったかもしれない。 相変わらず続く沈黙に諦めて、帰ろうとした時、 「口で言ったって信じないよ。答えを知りたいなら、自分で探して。」 顔を上げて彼を見た。まっすぐな瞳でわたしを見つめていた。 あわててまた俯いたその頬を、彼は両手で挟み、自分に向かせる。 「目を逸らせてばかりじゃ、答えはみつからないよ?」 彼の瞳に吸い込まれてゆく… 彼の目からずっと逃げてきたのに、今その目がわたしを捕らえて放さない。 答えはこの中にあるのだろうか……? 長い間見つめ合い、ふっと彼が笑っていった。 「やっぱりメガネかけてない方が断然かわいい。 明日一緒にメガネを買いに行こう。」 「え? 言ってる事、矛盾してませんか?」 「俺の前以外ではかけてて。余計な敵は作りたくない。」 初めて見る笑顔に、わたしも笑顔でかえす。 「じゃあ、買ってください…」 −こころの中をみる endoscopeを…… ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |