シチュエーション
![]() かちゃり。 頭上で金属音がする。 両手首に手錠をかけられ、頭上のベッドのパイプにつながれている。 冷たい音が恐怖を感じさせる。 「いや…お願い、外して…お願いだから…」 もう何度懇願したか分からない。 顔は涙でぐしょぐしょになってしまっている。 それでも彼は、何時もと変わらぬ笑顔でいる。 「君が望んでいる事を、叶えてあげただけだよ」 ゆっくりと紫煙を吐き出して、穏やかな口調で彼が口を開いた。 「こんな事、お願いしてない…早く放して…」 「ダメだよ」 煙草を揉み消して、彼がゆっくりベッドに上がった。 身をよじらせて逃げようとしても、無駄なあがきでしかない。 「いや…」 顔を背けてつぶやく。 「君の口癖だよね、『いや』と『お願い』。でも、君自身その言葉の本当の意味を分かってない」 ツン、といきなり乳首を摘まれる。 「はぁんっ!」 予期せぬ刺激に体が跳ねる。 「もうこんなに立ってるくせに…」 煽られて、かぁっと顔が火照るのが分かった。 「それに…」 顔を背けていた私には、彼の手が何処に伸びたか見えてなかった。 くちゅっ 「っ、はァァァァ!!」 「手首を拘束されただけで、何時もより濡れてるくせに…」 リズミカルに入り口を嬲る。 「あっ、あっ、あんん」 「こんなにしてて、『いや』はないよね?」 畳み込まれるように囁く声。 こんなに言葉で、指で嬲られているのに、 彼は卑下するような素振りは一切見せない。 むしろ、大人が子供を諭すような、あやすような口調… それが却って私には怖かった。 彼の中の静かな狂気に触れたようで。 「こんなに濡れてるなら、いいよね」 彼がベッドから離れた。 すっかり指で可愛がられた私は、彼の動きを追う事も出来なかった。 「最初はきついかもしれないけど、すぐよくなるよ」 そう言うと、彼は私のそこへ何かを突き付けた。 「ひっ…」 体験した事のない恐怖に、体中が泡立つ。 冷たく、太く、巨大な存在が、私の体の中を犯す。 「あっ…あぁ…何?許して、お願い…」 懇願も虚しく、「それ」は体を串刺しにする。しかも、スムーズに。 せめて自分の体が少しでも拒みさえすれば、まだ救われるのに。 頭の奥で、警鐘が鳴る。 何かに気付かされつつある… 「結構すんなり受け入れたね」 すっぽりと埋め込まれ、彼は「それ」から手を放した。 放置された「それ」は何の動きも見せず、ただ私を貫いている。 「うっ…お願い、抜いてぇ…」 あきらめていた涙がまた溢れ出す。 締め付けてしまいそうなそこに… 擦り寄せて感覚を貪り始めそうな両足に… 私は言い様もない絶望感を覚える。 「ねぇ…君は、自分では気付いていない『フリ』をしていたかったんだろうけど…」 優しく髪を撫でながら、彼が呟く。 「何時も君は、『いや』とか『お願い』と口にする度、どんどん濡れていってた。 そして、僕が『おもちゃを試してみたくない?』と言った時も、 口では『いや』と言ってみたものの、逸らした視線は物欲しげだった」 いや、いや、いや! 聞きたくない、お願い何も言わないで! 言葉を発する事すら出来ず、顔をぶんぶん振って否定しようとする。 「恐れないで、ただ受け入れたらいい。 それだけで、もっと気持ち良くなれる。開放される。 今だって、欲しいんだろう?もっと味わったらいい」 彼の手が、私から離れた。 どのくらい放置されたか分からない。 本当はほんの一分くらいだったのかもしれない。 それでも私には永遠に思われた重い時間。 そして、ふいに私の体は、反応した。 きゅっ… 「はっ、あぁぁん!!」 「それ」を締め付けてしまった、私のそこ。 それを皮切りに、止まらなくなった。 「あっ、あぁん!ふぅぅぅ…あっ、あっ!!」 ぎゅうぎゅうに締め付けて、その感覚を味わう。 何時の間にか両足を擦り付け、腰を淫らにくねらせていた。 快感をもっと貪ろうとして。 そんな私に指一本触れず、彼が静かに見つめている。 快感に集中し始めると、 「いいよ、何度でもイッて?全部僕が見ていてあげるからね」 そう囁いて、わずかに残った理性を刺激して羞恥心を煽る。 「いや…」 「『いや』って言う度、蜜が溢れて来る。嘘つきなのは、どっちの口なの?」 警鐘が最高潮に達する。 ヒキカエセ、コノママ ススメバ… そんな警鐘を、彼の囁きがかき消す。 「ね、足を伝う蜜さえ気持ちいいんでしょう?もっと濡れていいよ…」 彼の言う通りだった。 むず痒いようなかすかな愛撫に感じられて、蜜をもっと零したくなる。 淫らなダンスを止められなくなった私に、彼が手を伸ばす。 「だいぶいい子になってきたから、御褒美あげないとね」 かちっ 『ブゥゥゥゥゥンンンン!!!!』 「アァァアァァァーーーーーーーーー!!!」 埋め込まれた「それ」は、人を超えた激しい動きで私の中をかき乱した。 何もかも、吹き飛んだ。 警鐘なんて、もう聞こえない。 ただ、よがるだけ。貪るだけ。 手首の手錠をガチャガチャ鳴らし、体を激しく揺らす。 「ほら、イッちゃえ」 彼の手が、「それ」を更にぐっと押し込んだ。 「あああああ!!!!」 体がバネのようにしなり、ベッドの上にバウンドした。 そして、彼から白いものを全身にあびせかけられて、 私の全身とそこは、さざなみのような痙攣を起こして、 私の意識を沈めさせた。 壊れてしまったのか。 壊されてしまったのか。 望んでいたのか。 望まれていたのか。 これで終わりなのか。 これが始まりなのか。 何も分からない。 分かりたくない。 このまま彼と、一緒にいられるなら、それでいい。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |