シチュエーション
![]() 夢を見た。 その夢の中で私は一糸まとわぬ姿で誰かを待っていた。 ただ、その誰かが来ることを身体の芯から燃え上がらせて。 その相手が来たときに私は思わず、抱きつき押し倒し、噛み付くように口付けを交わした。 彼の手が私の背中に回り、敏感な部分を指先でつつっと滑らせると私は喉の奥から細く高い甘えるような、ねだるような喘ぎ声を上げながら戦慄き、溺れる。 そして、彼の唇が私の胸の蕾を挟んで・・・・。 PPPPPP・・・ いきなり鳴り響く電子音、外から差し込む朝日。 「朝・・・・?」 ぼんやりとした頭で目覚ましを止めた。 「ん・・・ん――」 大きく伸びをしながら今日の予定を頭の中で組み立てる。その私の傍らにある温かいぬくもり。 ・・・なに?・・ ここは私の部屋。 そして私は一人暮らし。 昨夜はあいつと呑みに行って・・・それで・・・。 「起きたの?おはよう。」 彼はこともなげに私にそういった。 「あ・・あああ」 私は言葉も出ず、口をぱくぱくさせながら彼を指差す。 「な・・な・・な・・」 「なぜここに俺がいるかって?」 こくこくと頷く私にあっさりと、 「君にお持ち帰りされただけさ。」 「☆○△□!!!???!!」 私は絶句した。そして昨夜の記憶を手繰り寄せる。 ・・ええっと・・仕事終って、御飯食べに出かけて・・それで・・別れて・・・・ 混乱したままの私に向って 「さて、とじゃ・・・」 彼はにこりと笑うと私にぺこりとお辞儀をしてそのまま私を押し倒す。 「えっえっえっ!!!!!あっ・・・」 そのとき気が付く、私は全裸であったことに。 彼の唇が確実に私の唇を捕え、ついばむように、そして徐々に深く口付けていく。舌先でふちをなぞられる感触が私を刺激する。 「や・・あの・・ちょっと・・」 ようやく離した唇から言葉を発する私の乳房に彼は唇を移す。手の中に丁度おさまるくらいのそれをやわらかく揉みながら 舌先で頂点を掘り起こす。 「やぁ・・・あ・・・」 まだ、半分寝ぼけている私の身体をまるで知り尽くしたように触れていくその手に徐々に芯から溶かされ始める。 戸惑いながらもその愛撫は私を蝕んでいく。 彼は私のその頂点が痛いほど張り詰めたのを知ると甘噛みする。その刹那私の全身に快楽の電流が走る。 「ぁぁうう!!んん!!」 背筋が反り、まるで彼にせがむように乳房を彼に寄せる。 「ふぅん・・・もっとして欲しいって?だめだね。」 彼はそう言って私の乳房を乱暴に揉む。その指先はリズミカルにタイミングをずらすように私の柔肌に沈む。 「はぁう!!ぁあ!!」 自分の性感帯を知り尽くされたかのように的確に捉え、身体を高まらせていくその愛撫。 ・・・・どうしてこの男は・・・・・ ―ワタシヲシッテイルカノヨウニダクノダロウ― 自分自身、隠しようもないほど身体が蕩けていくのが分かる。 墜ちる!と思った刹那今日が平日であることに気付く。 「だ・・・だめ・・・・」 思っているより大きな声で拒絶を示してしまう。彼はきょとんとした顔で私を見つめた。 そして、さっきと同じにっこりと微笑んで、 「いいよ。」 あっさりと身体を離した。官能の炎を身体の深遠に埋めて。 彼はベッドサイドに散らかされた自分の服を身につけると私を見下ろすように立つ。 「じゃ、帰るよ。」 そのあまりのそっけなさに今度は不安になる。 ―なぜ彼は抵抗もなく私の部屋に来たのか? ―なぜ私はあんな深い眠りにいたのか? ―なぜ彼は私をあんなふうに抱くのか? 「・・・待って・・・どうして・・・?」 明確な質問が出せない、ただ、疑問符だけの言葉に彼が言う。 「7時。昨日の店で。」 彼はそう言って私を置いて部屋を出た。 その日、出勤した私を待っていたのはたとえ様もない焦燥感と身体の疼き。 彼が私を知っているのかも知れないということ。 中途半端に燃え上がらされた女の身体のつらさ。 私は我慢がならず、結局午後は早退させてもらったのだ。 自分の部屋に戻り、疲労感の残る身体をベッドに横たえ、うとうととした。 夢を見た。 夢の中での私は相変わらず一糸まとわぬ素肌で今度は誰かを探していた。 満たされぬ思いを埋める誰かを。 いつまでたっても来ぬその相手を待つ。 でなければ誰でもいいから、この身体の疼きを止めて欲しい・・・・・。 電子音で眼が覚める。 携帯電話だった。昨夜の約束していた相手から 「もしもし・・・・」 (よぉ、どうした?・・・・つらそうな声だな?) 「ううん、ちょっとうたた寝していただけ。なぁに?」 (ああ、昨日無事帰れたか?だいぶ酔っていたからな。心配になって。) 「う・・・うん、大丈夫よ。」 (そっか、ならいいんだ。) 「有難う・・・そうだ、昨日最後に行った店ってどこ?だっけ・・・」 (覚えてないのか・・・?ってこっちもあんまり正確に覚えてないけどね・・・え〜っとな・・・) 「うん・・ああ、あの角の・・うん・・・ありがと・・・ううん、ちょっと忘れ物したみたいだから。」 時計を見ると夜の9時。もういるはずない、いない、きっといない。 私はそう言い聞かせながら身支度をしている。 ―ホントウハキタイシテイル― 取っておきの靴を履いて、私は部屋を出た。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |