策士策に溺れる 一徳編(後編)
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シチュエーション


でも、それでも、大輔は…

「…ごめん…私、やっぱり、好きなの」

酒が入ってなきゃ、こんな事、言わなかったと思う。

ぴた、と大輔は止まる。息を飲むような音。私は、続ける。お話させていただ
きます。

「誰が悪いかって言えば、そっちだと思う…けど、私だって、何にも話を聞かな
いで、ただそっちを責めてばっかで、でも、それでも…私は」
「…さくらちゃん」

なんか、一瞬違和感を感じる。けど、いいや。どうとでも呼べ。私は大輔から
降りて、背中に抱き付く。なんでこいつスーツ着てるんだろうなんて、一瞬思っ
たけど…まぁいいや。

「好き」

浮気したっていい。たまには羽目外すのもいい。ただ、やるな。合体はよせ。
私はそこまで心が広くないんだ。やったとしても、黙っとけ。私が、抑え切れな
くなるから。

…きっと、大輔はもうそんな事しない。今回の事で一番傷付いているのは、多
分大輔だから。きっと、私よりも―――

「好きなの…今まで、ごめん。本当に」

きゅ、と大輔の身体に回した手を、大輔は握ってくれる。

「…俺だって、本当はずっと後悔してた。いなくなってから君が一番大切だって
事に気付いた。けど、でも、ごめんっ、俺は、俺は…」

ずき、と胸が痛んだ。

―――もう、駄目なの?

そう思った正にその時だった。

「へ?」
「…え?」

ぎゅきぎぎぎぎぎぎぎぎょっ、というような音。でもって、どげん、という音。
私は大輔の背中に顔を埋めていたから、それが何かは、見えなかった。

「ちょ、え!?だっ、大丈夫ですかぁっ!?」

慌てて大輔は音がした方向に向かう。あー、なるほど、事故か。自転車でスピ
ード出し過ぎて、で、人がいて、慌ててブレーキ掛けて、避けて、衝突と。大輔
がよくやりそうな事故…

「…大輔?」
「さくらさん、おっはー…」
「…古い」

あれ?

私は頭が混乱する。あれ?今そこで事故っておっはーやってるのが大輔で、私
が今までこっぱずかしい事口走って抱き付いてたのは…

「さくらちゃん、あの、この人知り合…」
「ええええええええええええええええええええええ…」

私は、絶望感丸出しの顔で言う。

つまり、私は…酔っ払って由貴を大輔と間違えて恥ずかしい事ぶっぱなしてい
たのか…うわあああああああああああああああ。

大輔は地べたにねっ転がった状態のまま大分冷静に。

「あ、俺は浮気して三行半突き付けられたけど未練たっぷりの元恋人です」
「…そ、そうですか」

そう言いながら、由貴は真っ赤になって私と大輔を見る。あーあ、あーあ、誤
解してる。私はがしがし頭を掻く。ていうか、これって千載一遇のチャンスじゃ
ね?今なら、色んな事が一気に解決するような気がする。だから、言う事にする。

私は大輔に近付くと、しゃがむ。苦笑いをしてみせると、大輔も笑う。

「久しぶりですね、さくらさん」
「…そうだね。もう半日も会ってなかったね…ってバカ」

ノリツッコミ大成功。私は大輔の頭を撫でる。言葉は、慎重に選ぶ。吹っ飛ん
だ眼鏡を掛けてやると、大輔はちょっと困ったような顔になった。

「あのさ、大輔」
「あの、さくらさん」

同時に喋ってしまう。あまりにぴったりで、お互い吹き出してしまう。

「…大輔どうぞ」
「ありがとうございます。あの、さくらさん、俺はやっぱりまだ貴方が好きです。
なんでもするんで、俺の事見捨てないで下さいお願いします」

…うわー。

痛いわ、大輔さん、その愛は。でも、嬉しい。物凄く、なかんずく、あにはか
らんや嬉しい。私はにんまり顔になってしまう。

「その顔、気持ち悪いですよ、俺は好きですけど」
「人に天国と地獄一気に味わわせるの、やめて」

ぺし、と大輔を叩いた。ほったらかしの由貴は、私らを見て、凄く困ってる。

こいつの事嫌い。

正直、どうしていいかわかんないくらい嫌い。だけど、いつまでも引き摺って
るのも…なぁ。大分金使わせたし、ヤな事あったみたいだし、ここで、すっぱり
切った方が…お互いいいのかな。

「…あの、由貴さん」
「なに」

困ったような笑顔。

あ、変わってない。私が好きって言う度にしてた顔。後戻り出来なくなって、
困って、流されるままになってた時の顔。

「さっき言った事、酔っ払ってコレに言ったもんだと思ってただけだから。私は、
アンタが大嫌いで、もう会いたくも無いから」

わざと、すっげぇ嫌な感じで言う。

「…あ、そう…まぁ、そう、だよねぇ」

微妙だ。物凄く微妙だ。残念なのか喜んでるのか戸惑ってるのかパニくってる
のか、どうとでも言える顔。

大輔は、何も言わない。立ち上がって服に付いた汚れを払う。自転車を起き上
がらせて、固定する。その間私と由貴は見合ったままだ。

「…でも、本当にごめん。俺がした事は消えないってわかってる。でも…」
「くどいよ…もういい。アンタも謝ってスッキリしたでしょ。それでいいじゃん」
「っ、よくなんか、ない…俺は」

私は、後ずさる。これ以上、聞きたくない。

それでいいんだと思う。多分、お互いこういう偶然の重なりでも無きゃ、普段
は思い出しもしない古傷なんだから。ただ、思い出したら胸が痛い程度の。

だから、これでいいんだ。会った事で、お互い少し踏ん切りは付いた筈だ。こ
れ以上は、もう…嫌だ。

「…大輔、行こ」

私は大輔の手を掴んで、歩こうとする。ちょい足取りふら付くけど、気にしな
い。大輔は私と由貴を見て、黙って付いて来た。由貴も、追っては来なかった。

―――さいなら。

私は泣きそうになりながら、心の中で呟いた。振り返る事は、無かった。



そのまま歩いて、家まで辿り着く。大輔は自転車を引っ張りながら、私の横を
歩く。そして今更。

「俺、いていいんですか?」
「黙れ」

私は一刀両断した。大輔も、黙った。

大輔は、駐輪場に自転車を止める。そして、私の方に一直線に歩いて来る。ど
うするかは、なんとなくわかってた。で、やっぱり。

「……」

すっげぇ力で抱き締められた。

ていうか、馬鹿じゃねぇの、別れて半日くらいしか経ってないじゃんか。それ
なのに、なんでこんなんになるんだ、こいつは。こんな根性も性格も悪い女なん
かの為に。

「さくらさん」

抱き締めたまま、呼ぶ。私も、背中に手を回す。これで、わかって貰えただろ
うか。よく考えなくても、大輔には何も言っていない。一回恥ずかしい事言っち
ゃったから、もう言いたくないんだけど…

「あの人、もしかして―――あ、あの、やっぱいいです」

聞こうとして、すぐに首を横に振る。ああ、そういやこいつに話したっけな。
何気なく話したつもりが、最期には泣いてたな。あーみっともな。

「うん、そう。偶然会って、飲み過ぎて、ああなっちゃった。ていうか、なんで
大輔来たの?」
「あ、あー…あの、愛の力という訳じゃないんです。あの、桜花さんが教えてく
れたんです。あの人、多分桜花さんに家の場所を聞いたんだと思います」

ちょっとしどろもどろになりながら説明してくれる。桜花ちゃんめ、やってく
れたな。今度すっげぇ半端ねぇチーズオムレツ作るから。

「あ、じゃあ、桜花ちゃん今、あの、家に…」
「…近所の漫喫に朝まで避難するそうです」

にやー、とすげぇ笑みを浮かべて、大輔はいきなりキスして来た。

「あの、怒ってませんか?」

別に、怒ってないけど…そう質問するくらいならすんなよ。

「怒って、ない…あの、むしろお前が私に怒ってない?私、随分とえらい事した
気がするけど」
「いいんです。俺が悪かったんですから。それに、これから随分とエロイ事した
いと思ってますし」

大分質の悪い冗談だ。けど、大輔はこうでないとなぁ。うん、好きだよ。すっ
げぇ好きなんだよ。だから、あんなに許せなかったんだよ。

「…しても、いいけど」
「マジっすか!?やったぁあ!!」

いや、喜び過ぎ喜び過ぎ。私は夜という事もあって、大輔の口を押さえる。

「いいけど、あの、出来れば、私以外とはもう…しないで欲しい。あの、大輔の
事縛りたい訳じゃないの。あの、コンパ行っても、多少羽目外してもいいの。け
ど、私…うわ、痛いなぁ。あの、他の女と大輔がしてるなんて、考えたくもない」

あの、って何回言えば気が済むんだ。うわああ、なんだよ、スゲェ独占欲丸出
しじゃねぇか。いった、いったいわぁ。って。

「っ…」

ぶにょ、と頬を両手で掴むような感じにされる。眼を閉じちゃったけど、恐る
恐る開いてみると…大輔が、笑ってる。ぶっさいくだわぁ。

「俺は、もう絶対同じ過ちは犯しません。貴方を悲しませるような事はしたくな
いです。あと、俺は別の意味で貴方を縛ってみたいとは思いまごっ!?」

瞬時に意味を解して、私は攻撃する。この野郎、いい事言いながら同時に落と
そうとするな。

「ばぁーか、いいよ。私に合わせるな。どうにもこうにも私の気持ちって重たい
みたいだし…ごめんね、私…」
「いいですよ、安心して下さい。俺だって昔彼女に『アンタの愛はイタイ』『お前
の気持ちは重すぎる』って言われましたから。重い同士でいいカップルですよ」

…あれ?なんだろう、すっげぇ救われないし、嬉しくないし、しっくり来ない。

微妙な気分になって大輔を見る。なんだよ、真面目くさった顔してこっちを見
るなよ。そう思っても、じーっとこっちを見たままだ。私は、眼を閉じる。

それを合図に、大輔はまたキスをした。ほんの短いちっすだった。

「行きましょうか」
「…うん」

私は自然に顔が熱くなるのを感じながら、頷いた。


ざー、と火照った身体を冷やすようにちょっと冷た目のシャワーを浴びる。が、
何故かどんどん熱くなるばかりだ。馬鹿じゃなかろか、初めてでもないし、第一
大輔となんて…ついこないだもしたばっかだ。

それなのに、なんで、あの、こんな恥ずかしいんだろう。

それを悟られたくなくて、油断したらすぐ一緒に風呂に入ろうとする大輔を先
に風呂に入れた。それで、今に至る。

付き合ってから、結構…大輔とした。若いし基本的にエロいし、色んなことさ
れた。それこそさっき言った『縛りたい』とか、冗談に聞こえない。別に、いい
けどさ。痛いとかそういうのでなきゃ。大輔がしたいんなら。

そう思ってたくらいなのに、なんでまた今、恥ずかしいんだろう。念入りに身
体洗って、髪も洗って、ついでに泡で髪の毛をスネオヘアーにしてみたり。

…あんまり延ばすのもなぁ、と観念する。本当は髪の毛で遊んでて、ふと鏡を
見て我に帰っただけだけど。泡も恥も洗い流して、風呂から出る。意を決してタ
オル1枚で部屋に向かった。

「…大輔、ごめん遅くなっ…」
「だぁーれだぁあっ!!」

物凄く楽しそうに、後ろから乳を両手で掴まれた。

「…大輔、ごめんなさいは」
「ごめんなさい」

顔におもいっきり手形付けて、大輔は土下座する。私は溜息をつくと、土下座
した大輔を放置してベッドに向かう。タオルを取ると、裸で布団に包まった。

大輔は土下座状態から顔を上げる。私は視線でおいで、と呼び掛ける。大輔は
服を着たまま潜り込んで来る。なんだか、初めて大輔とした時の事を思い出して
しまう。

「なんだか、初めての時みたいですね」

眼鏡を外しながら、大輔は言った。なんだ、お前も一緒か。笑ってしまう。

「うん。そうだねぇ」
「あ、そうだ。前は事後確認でしたよね」

ぽむ、と手を叩いて、大輔は頷く。私は意味がわからない。大輔は改めて私を
睨む。まぁ、眼悪いし。

「さくらさん、好きです。俺の恋人になって下さい」
「え…」

一瞬戸惑う。ああ、あー、そっか、別れたもんな、一回。で、前はやってから
言われたし、だから…

「…………うん、私で、いいなら」
「さくらさんがいいです」

真っ赤になる私に、畳み掛けるように大輔は言う。私は自分の顔を隠すように
頷く。大輔がそんな私を抱き締めた。

「じゃあ、あの…」

私は大輔の服のボタンを外そうとする。こういうのも初めてじゃないんだけど、
緊張する。

「さくらさん、至れり尽せりですねー」
「…うるさ…ぉわっ!?」

座って向かい合ってるような格好だったけど、これまたイヤーな顔した大輔に
急に押し倒される。上から遠慮無く自分の裸見られるのって、凄く恥ずかしい。
いつまで経っても慣れない。

「さくらさん綺麗です」
「どうも…」

ストレートにそう言う大輔にも、慣れない。正直、する事そのものよりも恥ず
かしいかもしれない。

顔が近付いて来たから、キスされるかと思ったら、唇を舐められる。その感触
に驚く隙も無く、今度は本当にキスされる。

「…甘いですね」
「ごめん、昔懐かしイチゴ味の歯磨き粉使ったからかな」

誘惑に負けて、イチゴ、メロンと色々買ってしまった。ちょっと、失敗したと
思った。

「いいですよ、ホント面白いですよねぇ、さくらさんは」

笑って、また。舌が入って来て、私の舌に絡んで来る。そうやっていて、前に
言われた事を思い出す。私って舌が短いらしい。普通だと思ってたんだけど大輔
とこうやってしてると、確かに大分短いような気も、する。

正直、長い事してるとボーっとして来て、そんな事どうでも良くなるんだけど。

キスしながら身体の色々な所を、大輔が触って来るから、余計に何も考えられ
なくなる。大輔の手が脇腹を撫でたり、太腿を擦ったりする。前はくすぐったい
なと思ってただけなんだけど…最近は、なんだか感じるようになった気がする。

「ぶふっ…」

背中を撫でられて、ぞく、となった。変な声、出そうになったけど、キスして
る最中だったから、変な音が出た。

「あ…」

不意に唇が離れる。唾液の糸を拭って、大輔が今度は頬に口付けて来る。すぐ
に離れたけど、息が耳に掛かって鳥肌が立った。

大輔は簡単に私を起き上がらせると、後ろから抱くように座る。そして本当に
後ろから抱き締めて来た。

「え、なに、大輔…?わっ」

大輔が、後ろから耳を咥える。びっくりしてしまうが、そのまま大輔が舌を這
わせる。何事かと思って振り向くと、大輔はやっぱり笑っていた。私のおなかに
回している手が、両方胸に行くかと思いきや、苦しいくらいに私を抱き締めて来
た。

「や…ん、大輔…あっ」

人差し指が口の中に入って来る。どうしていいかわからずに、私はそれを自慢
の短い舌で舐める。反対の腕で、大輔は閉じていた私の脚を拡げる。恥ずかしか
ったけど、許してくれなかった。

「っん…」

口の中に入ってる指と同じように、大輔は私の中に指を入れて来る。知らない
内にヌルヌルになっていて、いとも簡単に大輔の指を受け入れてしまう。ちゅっ、
と音を立てながら、大輔の指は私の中を行き来する。

「やっ……ん、んっ…やだっ」

私の唾液で濡れた指を抜く。その指で、強く胸を揉まれる。痛いくらいだった
けど、気持ち良かった。指と指の間で乳首を挟まれると、余計に声が出てしまう。

「―――なんだか」

溜息をつくように、大輔は言う。ボーっ大輔のやる事に見を預けてしまってい
る私には、なんだか遠くから聞こえるような感じだった。

「さくらさんが1人エッチしてるみたいですね」

―――え?

一瞬わからなかった。けど、抗議しようと思ったら、私の中に入っていた指が
抜かれ、濡れた指が敏感な部分に触れる。

「やぁっ!」

もう片方の腕も、下に伸びる。弄りながら、また中に指が入る。慌てて自分の
手で抑えようとしたけど、遅かった。

「あっ、あっ…ん、やだ…やっ、大輔…」

中をかき回され、その度いやらしい音がして、大輔の指も、私の指も濡れて行
く。恥ずかしくて、気持ち良くて、私は大輔の手をただ掴むだけで、されるがま
まになっていた。

「さくらさん、嫌じゃないんですか」

…わかってて、そういう事言うか貴様は。私は思い切り大輔の手の甲をつねっ
た。意外に、すぐ離れた。

「え…」

中途半端に火を点けられた状態で、大輔は止めてしまった。楽しそうに指を舐
める音がする。顔は見えないけど、なんかわかる。きっと、むかつく表情をして
いるんだろう。

「…んっ」

さっきみたいに、両手で胸を掴まれる。胸フェチの本領発揮か、実に楽しそう
に触る。けど、こっちは…あの、足りない。あそこが、あの、物足りなくて、疼
いてしまう。

「…大輔…あの、あの…」
「なんですか?」

っ…言えるか―――っ!!大輔をぶっ殺したい衝動に駆られながら、私は胸の
手を触る。

「どうしたんです?」

その、実に楽しそうな声!!私は泣きそうになりながら呟く。

「…あの、胸とかも、いいけど、私…」
「あ、俺さくらさんの1人エッチ見たいです」

…この男、私が言い終わらない内に、とんでもない事を言い出した。

「えっ、えっ、えぇっ!?」

あまりの予想外な自体に、私は声を上げる。けど、大輔は。

「ほらぁ、お願いしますぅ。ね?中途半端でしょ、さくらさんも」

私の手を、下半身に持って行く。ちょうど指が、感じる所に触れる。

「っ…」

両方の乳首を、指で摘まれる。同時にまたあそこが疼く。私は泣きそうに…ど
ころか、もう泣きながらそこに触れた。

「あっ…ん、んっ」

そうすれば、気持ち良くなる事なんかわかってた。けど、そんなの人前でする
なんて普通出来ない。でも、熱い部分に一旦触れてしまったら、止まらなくなる。

「んっ、ん…あっ…あんっ」

ホントに1人でする時みたいに、中に指を入れる。さっき大輔がしてたよりも
激しく、指を動かす。その間、執拗に大輔は胸を愛撫して、首筋を舐め回す。

…これは、本当に1人自家発電行為なんだろうか。そう思いつつ、私は1人で
達してしまった。身体を仰け反らせ、大輔に寄り掛かる。シーツに染みを作って、
私はお尻が冷たくなるのを感じた。

「あぅ…」

ひょーい、と大輔が寄り掛かる私から離れる。バランスを崩して、足を広げた
まま仰向けになってしまう。恥ずかしい、とは何故かその時は思わなかった。

―――その時までは。

「えっ!?」

汗ばんだ太腿を掴まれ、大輔は私の身体を2つにするみたいに足を上げる。胸
に膝が押し当てられるような、窮屈な格好。イッたばっかで、まだヒクヒクしな
がら濡れてる所が、丸見えになる。

「いっ…嫌ぁ…」

大分弱気な声が出てしまう。そりゃそうだ、あんま、こういう明るい明かりの
下で見れるようなもんじゃないし…

「あ…っ、ぁ、ああああっ…」

無言で、大輔は私の中に入って来る。指よりも何倍も太いものが、眼の前で、
ゆっくりと私に突き刺さって行く。

易々と私の身体はそれを受け入れて、それが、またゆっくりと引き抜かれて行
く。丸見えの状態から、私は眼が離せなくなっていた。

「やだ…ん、あっ…ああっ…感じ…んっ…」

引き抜かれたものは、私自身のでヌルヌルになっている。それが灯りのせいで
濡れて光っている。これ以上無いくらいやらしい光景。眼を背けたいくらいなの
に、それ以上に私は興奮している。

もっと、して欲しい。そんなゆっくりでなくて、もっと。

「ああっ…だい…す、け…あんっ…あっ…」

びくびくと腰が震える。眼の前が、霞む。また軽くイってしまったようで、中
のものをきゅーっ、と締め付けてしまう。大輔は楽しそうに笑うと、少し体勢を
変え、私の身体が楽になるような、普通の、あの、世間一般の形になる。少し乾
いた唇を、大輔はまた舐める。

「大輔…」

私は、やっと真正面から顔を見れて、馬鹿みたいに安心してしまった。首に腕
を絡めて、抱き寄せる。大輔も私を強く抱き締める。

そして、ひとつの決意を胸に、口付けた。

―――大輔、終わったら後でぶん殴るから。

「…で、どういう事」

さっきの手形が消えかかっているけど、反対の頬に新たな手形が付いている。
2人で布団に包まって、私は呟いた。

「だから、羽目外していいって言ったから…」

鼻を啜りながら、大輔は言う。

「は?」
「だって、さくらさん言ったじゃないですか。多少羽目外してもいいって。です
から…」

あ、あー。

言われて、思い出す。そして。

「アレがちょっとなのか―――!?」
「ちょっとですよ!!ていうか足りないくらいですよ!さくらさんだって口では
嫌がってたって、下の口は物凄く悦んで―――」
「お前、本気で死ね!!!」

とんでもない事を口走ってくれる大輔。私はもう一度殴ってくれようかと起き
上がる。が、それより先に、大輔が私を抱き締める。

「…本当に嫌なら、もうしません」

そう、口ぶりでは本当に反省しているような感じで言う。

…けど、あの、その、ホントは私だって、あの、凄く気持ち良かったし、でも、
凄く恥ずかしくて、それで―――

「さくらさんが、本当に嫌がる事はしたくありません。俺は、貴方を―――」
「…お前、ちょっと黙って」

私は、うるさい大輔の口を、自分の口で塞いだ。

「…さくらさん?」
「うるさい。ホントにうるさい。五月の蝿って書いて五月蝿い」
「さくらさん」

私は、大輔の胸に頭をくっつける。何も言わず、何も言えず。大輔は私の頭を
撫でて、私を抱き締めた。

「俺は、ずっとお母さんの事守りたかったんです」

…?話が読めない。私は訝しげな顔になってしまう。だって、唐突だから。

「ていうか、誰かを守れるような強い大人に早くなりたかったんです。ぶっちゃ
け、自己顕示欲を満たしてくれる相手なら、誰でも良かったんです」

なんでだろう。

そう自嘲的に呟く大輔は、なんだか悲しそうだった。

「でも、現実は駄目でした。俺はいつだって相手を悲しませる事しか出来ません」

溜息。私は、やっぱりどう言っていいのかわからない。何が言いたいのかも。

「でも、これだけはわかります。今は、誰でもいい訳じゃないです。貴方を守り
たいんです。さくらさんでなきゃ、俺は駄目なんです」

―――ああ、物凄く前フリの長い告白か。私はくすぐったくなりながらも、笑
を堪えていた。

「…お前、何が言いたいの?」
「全部要約すると、さくらさんを愛してますって事になりますが」

さらりと言い放つ。うーん、悲しいくらいシンプル。

「じゃ、それでいいよ。私も同じだよ。それじゃ駄目?」
「…いえ、物凄く嬉しいですよ」

一瞬、なんか驚いたような顔をして、それから大輔が、なんかいつもの胡散臭
い笑みじゃなくて、ホントに子供みたいな笑顔になる。

―――不覚にも、ときめいてしまった私は…うん、馬鹿だな。

「それで、どういう事ですか」

私は、将○の寿司を片手に、絶対に孝一さんを見ずに話をする。どうやら孝一
さんは土下座をしているみたいですけど、知りません。

「…ですから、もう2度とあんな事はしません…」
「当然ですっ」

…私は、心が狭いです。凄く嫌な女です。おまけに、私の大切なさくらちゃん
をあんなに傷付けた要因を作ったこの人も、大輔さんも簡単には許したくありま
せん。まぁ、さくらちゃんの気持ちは知っていますし、孝一さんに私の居場所を
教えてしまったお茶目な部分で、譲歩はしましたけど。

「……」

光だけで、メールが来た事を告げる。私は携帯電話を見ると、大輔さんからで
した。どうやら上手く行った模様です。私はおめでとうメールを返信しました。

ぱちん、と携帯を閉じると、泣きそうな顔で孝一さんが私を見ています。でも、
知りません。

「今の、誰から?」
「他人の貴方には関係ありません」

つーん、と私はそっぽを向きます。あ、孝一さんが泣きました。

…でも、許してあげません。全巻読み終えるまでは、絶対。

私は、嫉妬深いんです。今日、知った事ですけど。物凄く、性格が悪いです。
嫌な、女です。腸が煮えくり返っています。

多分、それだけ私が孝一さんの事を愛してるからでしょうけど。

「桜花さんごめんなさいぃぃぃぃ…」

私は孝一さんの声を無視して、○太の寿司の続きを読み始めました。

…この分なら、朝までに全巻読めますね…






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