シチュエーション
![]() 「つまりアレでしょ?陵辱って嫌な事しながら無理矢理エッチするって事でしょ?だから さ、僕がミカンちゃんを陵辱するっていうのは、すじこを強引に食べさせながら寝起きに 無理にやっちゃうという事かい?」 …知ってました。 わかってたし、理解もしていた。だけどやっぱり痛感する。 「バカだろ、アンタ」 言うのも辛いわ。馬鹿馬鹿し過ぎて。 「ほらさ、僕はミカンちゃんが大好きだけど、そういう性?の探求者でもあるからさ。エ ロスクエストっすよ。だからさ、今から鮮魚センター行ってすじこ買って来るからさ。ち ょっとお昼寝しててよ」 …妙に興奮しながら、財布を捜そうとする。本気かこの馬鹿。 「…別にさ、それって私がバナナさんの買って来た新作ゲームを勝手に始めつつ今読んで る小説の犯人バラしながらケツを掘る、でもいいんじゃないですか?あ、犯人は実は角田 の生き別れの弟だった大田ですよ。凶器はプラスドライバーです」 ぴた、と、バナナさんの動きが止まる。中腰で止まって、しんどくないのかな。 犯人云々は物凄いマナー違反だと思うけど、この間夜中にトイレで白い仮面被ってセー ラー服着て驚かしてくれたから、これであいこだ。 「ぶぱきゅるはおわーーーっ!?」 なんか、きっと自分でもよくわからないであろう奇声をあげるバナナさん。あ、これが 陵辱って奴か。この後バナナさんはレイプ眼になって壊れてしまうのかしら。 「さて、一緒に鮮魚センター行きましょう。私、今日は鰯のマリネ作ります。この間テレ ビでやっていて、実際作ったらすっごく美味しかったんですよー」 私も鞄を持って笑い掛ける。一応、恋人であるバナナさんとお買い物。今日は久し振り にお泊りだから、色々してあげたい。陵辱は勘弁だけど。 バナナさん、と言うが、それが本名ではない。本名…の中にバナナが入ってるからそう 呼ばれているだけだ。狙った訳では無いだろう。相葉七生さんは、こんなんでも私の3つ 上。ワガママで基本馬鹿でとても馬鹿な人だ。なんでこんなんと付き合う羽目になったの やら。いや、別にいいんだけどさ。バナナさんが私じゃなきゃやだって咽び泣くから折れ てやったんだけど。 因みに私もどこぞの新聞のマンガの子みたいに本名がミカンな訳ではない。バナナさん と同じく名前が速水カンナ、というだけだ。昔からのあだ名である。 「ほらほら、バナナさん鮮魚センター行きましょう。レタスも買わなきゃ。確かお酢…」 「うわあああああああああああああっ!!ミカンちゃんなんか、陵辱してやるー!!」 本気で泣きながら、私の事を押し倒す。 「布団も敷かないでここでしてやる!」 「いや、それってただ堪え性が無いだけでしょ?」 陵辱とは何か違うような気がして言ってみる。と、バナナさんは一瞬言葉に詰まり、で もすぐに気を取り直して。 「じゃあ、その上服脱がさないでやってやる!」 「それはただの着衣プレイじゃないすか?」 「っ、じゃあ、こうやってこうやって―――ほーら、身動き出来ないでしょ?」 なんか苦し紛れにそこらのコードで私の手首を縛る。あ、これACアダプタだ。細っ。 「いやー…ソフトSMでしょこれ?そんな趣味もあったんですか?」 口ごたえ、というよりは本当に疑問に思ったので、突っ込む。だって、やっぱりちょっ と陵辱とはズレてる気がするんだもん… 「じゃあやっちゃうよ!そんでカメラとかムービー撮って…」 「だから、それは所謂ハメ撮りでしょ?」 「じゃあ、叩いて悪口言ってやる!」 「余裕でDVじゃん!」 「やだ!なんで僕が大好きな女の子をドメスティックバイオレスらなきゃいけないんだ よ!何を考えてんのさ!!」 …激昂する。いや、自分で言って自分で否定してますよこのバカ。 肩で息をして、困ったような顔をして、そして、一言。 「…陵辱って、どうすればいいの?」 「知りません」 緩く縛られていたので、自分で解く。私に乗っかったまま、元気なさ気に溜息をつく。 「第一、陵辱なんて…なんでそんな事したがるんですか」 「いや…だって、なんか、こう…こう」 相変わらず、説明どころか日本語にさえなっていない。どうせなんかそういう本でも見たんだろうな。 「…はいはい、もういいですから、鮮魚センター行きましょう。自分に合わない事や理解 も出来ていない事をするなんて、時間の無駄です」 頭を撫でて、未だ私にのしかかって説明しようと頑張っているバナナさんをどかそうと する。けど。 「あー…の、あのさ、陵辱はもういいや。あの、でもさあ」 なんだかかしこまって顔を近付けて来る。なんだろう? 「ミカンちゃん、あの、その―――今日、鮮魚センターやめよ。後でお寿司食べに行こう。 奢るから。だから、あの、ベッドルームに」 「なんでベッドルーム言うんですか、わざわざ」 そんなの聞いた事無い。妙に腹が立つ。でもお寿司もいいなあ、と思ったので了承する。 それに、私だってずっと、好きな人の下にいたんだから。 「ぬおおーーーーーーっっ!!」 …物っ凄い気合を込めて、私をお姫さま抱っこする。いや、そんな気遣いいらんし。こ ういうのスマートにやってくれなきゃ、迷惑なだけなんだけど。逆に気ぃ使うし。 よたよたと寝室に向かって、私をベッドに寝かせる。ぜーはー荒い息をついて、腕ぷる ぷる震えさして、どや、とばかりに笑う。うん、死ぬほどかっこ悪い。 「バナナさん、もう体力全消費してません?」 「だ、大丈夫だと思いたい!」 そう言って、倒れ込むように私を押し倒す。暫く自分も倒れたまま、息を整える。よう やく元気を取り戻したのか。 「やりましょう!」 と、これまた大きい声で言った。 鮮魚センター行けば良かった、とちょっと思った。 「バナナさん、陵辱向いてないですよね」 「そうかな…もうどうでもいいや…」 確実に向いてない。する前に、お互い裸になってまず最初に何分か抱き締めるのが好き な人に向いているとは到底思えない。何度かお互いにそのまま寝ちゃって朝になった事も。 ある意味、すげぇ性欲処理の方法だと思う。今日はそうならないみたいだけど。 「性格診断とかしたら、バナナさんってロマンチストになると思うよ」 「いや、実際やったら『あなたはふつうです』って言われたよ」 「…それって、性格診断って言えるの?」 質問の答えは無しに、バナナさんは私にキスして来た。電気も消してあるのに微妙に明 るい中でエッチするのって、そういえば初めてかもしれない。なんだか物凄く恥ずかしい。 バナナさんの身体が全部見えるのも照れ臭いし、私もバナナさんに全部見えられている のも、考えただけで体温が上がる。 「ミカンちゃんが今考えてる事、わかった」 …そりゃ、わかるだろうなあ、と思った。 「ちょっと眠くなっちゃったでしょ。でも今日はダメー。寝かさないよ」 全然違った。いや、ちょっと前なら正解だけど。 バナナさんはニマニマしながらもっかいキスして、唇を付けたまま、下がっていく。 身体中にキスされて、それが全部見えて、私は恥ずかしくてぎゅっと眼を瞑ってしまう。 でも、唇が徐々に下に行くに連れて、次はどこに触れられるのか予想してしまう分、まだ 眼は開いていた方がいいのかもしれない、とも思えた。 「―――っ!」 来る、と思ったのに、急にそこだけ指で触れられた。だからびっくりしたような声も出 てしまう。でも、びっくりしたのはそれだけじゃない。 「あー、ミカンちゃんもうすっげぇ濡れてる。ほら、指楽々入っちゃう」 凄く楽しそうな声で笑う。指も、本当に簡単に受け入れてしまう。嘘、なんで? 「や…やだやだ、ちょ、バナナさん、待って待って」 ベッドの上で、バナナさんから逃げようとする。けど、すぐ壁にぶつかってしまう。て いうかこれ、初めての時と似たような状況かもしれない。 「バナナさん―――っ」 そんな状況だから、あっという間に追い詰められる。壁に背を着けて座っていたような 状態で、簡単に太腿掴まれて、大開脚させられる。 「しないけどさ、生ってダメ?」 「…いいって言ったらするんですか?」 「しないよ。超怖い」 色んな意味でか。判断に困るような事言って。 「万が一の事があって、ミカンちゃん悲しませたくないしね」 取って付けたような事を言いながら、うわ、こんなはっきり見るの初めて…バナナさん、 中には入れないように擦り付けて来る。凄く熱い… 「…陵辱ってーと…やっぱ生なのかな…後先考えないでやっちまえ精神…?」 「まだその話っすか!?さっきもういいって言ってたのに…」 ていうか、陵辱って単語、今までどんだけ出たんだろう。いい加減、それがなんだか別 の意味を持つ新手の一発ギャグに思えて来る。ベッド脇に手を伸ばして、近藤さんを取り 出す。そういえば、ちゃんと着けてる所もよく見た事が無い。じー、と見ている私に気付 いたのか。 「やだミカンちゃん恥ずかしい、僕の事陵辱しないでよ」 「…いや、これはただの視姦プレイじゃ」 もう、笑い声になってしまう。なんだこれ。もう単語出るだけで面白い。バナナさんも わかって言ってるだろ。 手際良く装着して、にんまり笑う。座ったまま、少しだけ腰を浮かされて、そのまま私 の中に入って来る。体勢が体勢だけに、少しきつい。 「ん…んー…」 少し身を反らす。壁に頭が当たる。自然と涙が出て来て、少し苦しいような気がした。 「ミカンちゃん…ミカンちゃん」 私は壁に肩を預け、バナナさんは私の中をゆっくりと行き来する。 本当に、知らない間にそんなに濡れていたのか、動く度に音が耳に響く。上を向いて声 にならない声を吐き出していたけど、不意に下を向きたくなった。けど、すぐ後悔した。 「あ、や―――や、だ」 私と、バナナさんが繋がってるとこ、丸見えだった。 結構な速度で、バナナさんのが出入りして、音が結構大きくて、なんか、凄くぬらぬら してて、それを見た瞬間、勝手に奥まで入ったのをぎゅう、と、締め付けて、それが凄く 気持ち良くて――― 「あ、あ、あああ…」 小刻みに声が出る。バナナさんが、私が締め付けてしまうのに合わせて、動く。どうし よう、見たくないのに眼が釘付けになる。だって、最初、痛くて、入った後も奥の辺りが しっくり来なくて、暫く痛くて、その後も、痛くなくなるまで我慢する時が多かったのに、 それなのに。 「っ、ば、バナナさんも、見ないで…やだ、やぁ…」 「ん…やだ。だって、僕、これ見るの好き。大好きな子と、僕、ちゃんと繋がって…って、 はぁ。わかるし、すげ、イイ眺めだし」 言葉が途切れ途切れになりつつ、そんなとんでもない事を言う。 「っ、れに、ミカンちゃんも…コレ、見たらさ、僕の、ぎゅってきつく締めてくれんじゃ ん?だから、もっと見ろよ」 薄ら笑いを浮かべて、言う。少しだけ、背中がぞくっとなった。 「…っ、ばかっ…」 それが、いいだなんて一瞬でも思ったのが恥ずかしくて、私はこれ以上見ないでいいよ うに、見られないでいいように、バナナさんにもたれ掛かる。 「―――わっ!?」 それは意外だったのか、バナナさんはバランスを崩してしまう。そのまま身体を倒して、 今度は私がバナナさんを押し倒してしまうような恰好になってしまった。 「あ、っ―――っ」 ぷちゃっ、て音がした。同時に、今まで入っていたものが抜けてしまう。私は無意識に 腰を浮かせて、先端をまた入り口にあててしまう。ヌルヌルになったそこは、簡単に受け 入れてしまう。けど、そのまま止まってしまった。 「おっ…ミカンちゃん、入れて。そのまま」 「ちょっ…やぁ…やだ、手、やめて」 お尻と、入り口近くのお肉を掴んで、上に押し上げるみたいに力を入れる。あそこが広 がったような感覚を覚えて、大して力も入れずに、するりとバナナさんのものを受け入れ てしまう。 「んっ…んー…う…っ、あっ?」 「はいはーい。よく出来ました」 少し身体を起こして、ぺしぺし、とお尻を叩く。かと思えば、そのままお尻を撫で回す。 なんか、遊ばれてるような気分になってしまう。 「ほれ、ミカンちゃん動いてー」 それなのに、何故か従わなければいけないような気がしてしまい、腰を浮かせる。さっ きのバナナさんみたいに、自分で動いて行き来させる。音が、また耳に響く。時折バナナ さんも動いて、その度に背中に電気が走ったみたいになる。 我を忘れたみたいに腰を動かして、私は快感を貪ろうとする。バナナさんも同じみたい で、少しだけ乱暴に私を抱いた。 自分勝手に、自分が気持ちよくなるように自分から動いていたせいか、限界はすぐにや って来た。一瞬だけ、本当に自分が何をしているかもわからなくなって、そのまま押し寄 せて来た快楽に身を任せる。自分じゃないみたいな声が出て、身体中の力が抜けて、私は 半ば気を失うようにバナナさんの上に崩れ落ちた。 「あああああ、えがったぁあああ…」 …オッサン丸出しだ… なんか、全ての余韻をぶち壊してくれるような感想を漏らすバナナさん。私は何故か無 性に甘えたくなって、布団の中でベタベタしている。抱っこしてもらって、嬉しがってい る自分がいて、なんだか気恥ずかしい。 でも、不意にとある事を思い出して、にっこにこ笑ってるバナナさんの顔を見た。 「…バナナさん、あの…」 「ん?」 その笑顔を見ると、さっきのが少しだけ嘘みたいに思えて来る。 「さっき、あの、途中、ちょっとだけ陵辱っぽかった…」 なんだか、言ってる事も、やってる事も邪悪なお兄さんみたいだった。そいで、私もそ れが、あんまり嫌じゃなかったような気がした。 「ウソ!マジで?やったあ!」 …なんか知らないけど、喜ぶバナナさん。なんで? 「なんで喜ぶんですか?」 「…さあ」 改めて言われると我に返ってしまうのか、バナナさんも困ったような顔になった。私も 似たようなものだろう。そして、同時にあくびをする。 「ちょっと、寝ようか。起きたらお寿司ね。お寿司超楽しみ」 「…はい」 頷いて、眼を閉じる。 妙に疲れてしまったけど、なんだかとても満たされた気分で、私とバナナさんは一寝入 りする事にした。日の高い内にする昼寝は、なんだかとても贅沢な気分だった。 「…あれ?ミカンちゃんなんでその皿取るの?嫌いじゃなかったっけ?」 不思議そうな顔をしているバナナさん。私は自分の取った皿を見て。 「あ、すじこは嫌いですけど、イクラは好きなんです。バナナさんこそ、何でさっきから デザートばっか食べてるんですか?」 バナナさんの前にはゼリーとかアイスとかムースのお皿がたくさん。 「いや、別に…食べたいなーって…」 「そうですか」 「うん。安心して。後で茶碗蒸しとか唐揚げとか食べるから」 「…寿司食って下さい」 「うん。食べる…あ、なにこれ…マグロの竜田揚げ!?食べる!!」 「あ、私も食べたいです!」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |