無題
シチュエーション


どうしようどうしたらねえどうしようごめんなさい

そんな言葉は彼に届くはずもない。
うなじから耳にかけて、舌で舐めあげられる。熱い。それだけで体の中心から、また
零れ出してしまう。私のなかをかき乱している指を、また締め付けてしまう。
体育館に通じている非常階段の踊り場。遠くでバスケ部の練習の声が聞こえる。
耳元で、クッと喉がなる音がした。軽蔑されたのかもしれない。こんなところで、しっかり
濡れている私は。ひどい格好だ。シャツはボタンが外されて胸だけが露出するように
なっているし、ブラもホックが外されている状態。ショーツは足首のところで絡まっている。
もしかしたら、もしかしたら誰かがここを通るかもしれないのに。

「なんで、逃げたの」

熱っぽい吐息と共に、彼が言葉を吐き出す。体がびくびくと震える。
だめ、この人の声だけで私は。私は。

「ねえ……」
「…ぁ……んん…っ」

何も考えられない。あまり触ってもらえなかった敏感なそこを、こねくりまわされる。
長く美しい、私の好きな彼の指で。
きっと私はこの上なく、うっとりとした顔をしていたと思う。だから、指を引き抜かれて
彼と向き合うように体を回された時、ひどく残念だった。腹立たしくもあった。

「答えてよ」

私のなかから引き抜いた指を舐めながら、彼が問う。ああ、その目が好きだ。
太腿にとろりと、零れる感覚がした。

「あ……ごめんなさ…その、私、」
「ホテルのロビーから、君が見えた。声、かけようと思って外に出たのに、なんで」

昨日の話だ。ガラス張りの戸の向こうに彼がいた。私はたまたま通りがかっただけ。
まさか会うとは思わなかった。そして彼は女の子といたのだ。少し離れた高校の制服。
なのに、まさか、彼が私のもとにわざわざ来ようとするなんて。

「なんで、逃げるの」

舐めていた指を、そのまま私の口のなかに突っ込む。犯されている。彼に犯されている。
私は彼の手を取ると、指を舐めあげた。そして彼のものを奉仕するかのようにしゃぶった。
好き、彼の指が好き。
とても久しぶりだった。こんな事をするのも、彼に触れるのも、彼に触れてもらうのも。
彼に触れてもらえなくなって、1ヶ月。その間、彼は全く単なるクラスメイトとして振舞ってきた。
何故彼が触れてこないのか、怖くて、全くわからなくて、私はただ心が空ろになったいったの
を覚えている。でもどこか頭は冷えていて、仕方がないと思ったのだ。突然始まった関係は、
突然終わるものだろう。そう納得したのに、昨日はきっとどうかしていた。

「だって、もう耐えられない……」

あなたこそ、なんで近づいてくるの。
彼が、私以外の女の子と一緒にいる。それも仕方がないと思っていたはずだ、少し前なら。
なのに悲しくて、耐えられなくて、そして体が疼いてしょうがなかった。

「あの時話していたら私、きっと馬鹿な事言ってた。軽蔑されてもおかしくない、いやらしい事」

指から唇を離して、少しずつ話す。目は合わせられない。怖い。
すると顎を持ち上げられたかと思うと、キスをされた。舌が入ってくる。いつもより乱暴なキスだ。
そういえば、今日初めてキスをしたなと思った。
私は本当に馬鹿な女だった。彼の行う全てに欲情し、すぐ濡らす。
キスが久しぶりで、それでも私は確実に幸せを感じていて、涙が零れた。
唾液を交換しながら、舌を絡めながら、階段に座らされる。
唇が離れて、彼が目尻の涙を舐め取った。そしてそのまま額にもキスされる。

「言ってよ」
「……え?」
「今。そのいやらしい事」

少し微笑んだように思えるのは気のせいだろうか。
その表情があまりにもきれいで、見とれてしまっていると、ほら、と彼が催促する。
それでも口にするのはためらいがあった。

「……いっぱい……して…。いかせて…」

やっとの思いで、口に出す。羞恥で声が震える。きっと真っ赤な顔をしている。
こんな風にねだった事などなかった。
おそるおそる彼を見ると、今までに見た事のない目の色をしていた。
軽蔑された? 嫌われた? わからない。
けれども不思議と怖くない。そんな事、今までなかった。
彼は、私の足を開かせた。どろどろしたそこが丸見えだ。

「ぁ、やぁっ…何…」

一瞬ひるんでしまって情けない声を出してしまう。
彼は構わずに私の中心に唇を寄せた。そして、嬲られる。

「ん、や、やぁ、あ、」

舌で、その啜る音で、指で、追い詰められる。
何より、彼が彼が私に触れている。
その事実が、

「ぁ、は、いい……っ あ、んん、好きぃ…」

もう何が何なのかわからない。私はうわごとのように、好きと繰り返した。

ああ、そうか。
頭が朦朧としていく中、ひとつだけわかってしまった。
逃げたのも、耐えられないのも、彼を欲したのも、全部、そうだ。

私は彼が…






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