激しい雨
-2-
シチュエーション


『Sub:さっき
TEXT:自転車こいでるとこ見たよ。びしょ濡れだったね。風邪ひかないようにね!』


こんな内容のメールを送ろうとしたとき表示されたアドレスで、あたしはあることに気が付いた。

(もしかして、これって……!?)

あたしは偶然に驚くと同時に、メールは送らず急遽作戦変更することにした。

……うまくいって、お願い!


***


ばさばさと水を切りながら傘をたたむ。バイトが終わってからだから、すっかり遅くなっちゃった。

一回息を大きく吸って、チャイムを強く押した。気持ちを落ち着けるように、そのまま深く呼吸をする。

扉が開いて中の人と目が合った。

「あ……」

驚きのあまり何もいえなくなってしまった彼に、あたしは持っていた箱を顔の高さまで上げてはにかんだ。

「お誕生日おめでとう、寺山君」

「あ……」
「こ、これ、うちのお店のケーキ。一緒に、お祝いしようと思って」

そう言うとせいちゃんは困ったようにうつむいてしまった。あたしは焦って言い訳をする。

「あー、あの、もちろん迷惑なら無理にとは言わないよ! いきなり来られてもアレだろうし、あたしもお店であまりのケーキが多く出ちゃったか……」

最後まで言い終わる前に、ひょいっと箱を持っていかれた。

「ありがとう。上がっていきなよ」

せいちゃんはあたしをドアの中に招き入れると、すぐに背中を向けて部屋の中に入っていってしまった。

恐る恐る靴を脱いで、おうちの中に入る。

「お、おじゃまします」

なんだか様子が変だけど、……本当にいいのかな。

3週間ぶりぐらいに来た寺山邸は、この前来たときよりもさらに物が少なくて殺風景なような気がした。

ふと台所の流しを覗くと、お茶碗と中くらいのお皿と、黒いお箸が転がってた。多分さっき晩御飯を食べ終わったばっかりみたいな感じ。

誕生日なのに……、こんなところに一人ぼっちでご飯だなんて寂しすぎる。もっと早く気づいてればよかった。

お部屋で雨の音を聞きながらぼーっと座ってると、台所にいるせいちゃんが声をかけて来た。

「あのさ、今日が俺の誕生日だってどうやって知ったんだ?」
「あ、あのね、メールアドレスに今日の日付入ってたから。きっとそうかなって」

ケータイのアドレス、『terayamayonnaise(てらやマヨネーズ)』なんてふざけた文字列のあとに四桁の数字が入ってて、きっと自分の誕生日なんだろうなって思ったから。
すると彼は苦笑いしながらマグカップを二つ運んできた。

「そうか。……誕生日気づいてほしいのアピールしてるみたいで、なんかカッコ悪いな」
「えー、そんなことないよ。みんなやってるし」
「あたしもパソコンのアドレスには誕生日入ってるよ」と言ったら、ふっと笑ってあたしの斜め向かいに座った。

ケーキの箱を開いて、せいちゃんが聞いてきた。

「1・2・3・4……、4つあるけど、どれ食べたい?」
「そっちが先に選んでいいよー。主役なんだから」

せいちゃんがどんなケーキ好きかわかんなかったし、四つ全部違うのを持ってきたんだけど

「俺はどれでも構わないから。いいよ。ミュウが先に好きなの選びなよ」

……実は自分の食べたいのばっかり持ってきたの、もしかしてバレてるのかな。

「んじゃ、これとこれ」

あたしがイチゴのタルトとザッハトルテを選んだので、せいちゃんのはショートケーキとフロマージュってことで落ち着いた。

ケーキがお皿の上に並べられる。いただきます、と二人で手をあわせて食べ始めた。

せいちゃんはゆっくりと味わうようにフロマージュを食べてる。けど、もともと表情があんまり無い人だから、何を考えてるのか良くわかんない。

「おいしい?」
「ああ。なんか上品な味するな。あんまり甘くなくてスゲェ美味い」

……やっぱり普通の味覚してる。この前のエクレアの件はホント悪いことしちゃったなぁ……。

お褒めに預かったフロマージュをじぃっと見てると、せいちゃんがフォークを運ぶ手を止めた。

「……食べる?」

あ、あたしそんなにものほしそうにしてたかな? でもいまさら取りつくろっても仕方ないよね。

「うん」

素直にうなづくと、せいちゃんはケーキのはしっこを取り分けて、フォークにさしたままあたしの顔の前に差し出した。

うわ、もしかしてこれって……

「はい、あーん」

優しい声でそう言われたら、なんだかちゃんとした恋人同士みたいでドキドキしちゃうよ……。あたしはばれないように平気なフリをして口をあけた。

ケーキが口の中に運ばれる。もぐもぐとほっぺたを動かして、ごくんと飲み込む。うん、相変わらず辰巳さんの腕はサイコーだ。

「じゃ、今度はあたしの番ね」
「あーん」と言って食べ途中のザッハトルテの欠片をせいちゃんの口に入れる。雛鳥にエサをやる親鳥の気分だよ。

照れ隠しにニコっと笑ってせいちゃんをみると、彼は恥ずかしそうに笑いながらうつむいてしまった。なんだ、かわいいヤツめ。

抱きしめたかった。ものすごく。

でもここ最近無視されてたことが心に引っかかって、あたしは結局思いとどまった。

不思議……っていうか納得できない。こんなに好きなのに、こんなに一緒にいて幸せなのに、どうしてこの人はあたしのものじゃないんだろう――?

***

ケーキを食べ終わってコーヒーをすすっているとき、あたしはふと思い出した。

「そういえば、ハッピーバースデーって歌ってなかったね」
「えっ、別にいいよ」

……なんでそんなにいやそうなのよ。ふんだ、わざと歌ってやる。

「ハッピバースデーディーアてらやまくん〜……。そういえばいくつになったの?」
「23」
「えっ!?」

驚いた声をだすと、せいちゃんは少し怪訝そうに振り向いた。

「……高校出てから、ちょっと働いてたから……」
「へ、へー……、そうだったんだ……」

あたしたちは大学の2年生だから、ストレートで入ったあたしなんかはまだ19で、せいちゃんは浪人してたとしても21か22だと思ってた。
でも言われてみれば他の同級生よりだいぶおじさ……じゃなくて落ち着いてるし、なんか冷めてるっぽい雰囲気があるなーって気はしてたかも。

「なんですぐ大学受験しなかったの?」
「まだ高校生のころは何がしたいかわかんなくて……、あと単純に大学行く金が無かったってのが大きいな」

理由を聞いてぐっと言葉に詰まってしまった。『お金がない』って切実すぎる。このアパートもお世辞にもいい家とは言えないし、やっぱりせいちゃんは苦学生さんだったんだ。でも……

「畑山先輩から聞いたんだけど、学校やめちゃうって……」

するとせいちゃんは決まり悪そうに顔を背けて、呟いた。

「……この前実家に帰ったんだけど、ばーちゃん死んでから、どうもとーちゃんも調子良くなくって。いまは休学扱いにしてもらってるけど、多分来期からは行かないと思う」

そう聞いたとたん、何かに撃たれたみたいに体が硬直した。

あたし、先輩から聞いたときはまだどっかで期待してた。先輩の思い違いかもしれないって。せいちゃんが学校辞めるわけ無いって。

でも彼の口からはっきり断言されると……、ショックで気持ち悪くなりそう。どうしていいかわかんない。

「妹たちはまだ小さいし、……しょうがないよな」

さばさばしてそう言うせいちゃんの様子が、あたしは悔しくて仕方ない。なにそれ、しょうがないって。

「せいちゃんはそれでいいの?」

上ずりながらそう言うと、せいちゃんははっと顔を上げた。

「がんばってお金ためて入った学校なんでしょ? 辞めちゃってほんとにいいの?」

いっぱいやりたいこととか、思い描いてた将来とか希望とかあったんでしょ? いい友達だってたくさん出来たんでしょ? それを全部残したまま、帰っちゃってホントに後悔しないの?

ごろごろと何かが近づいてくるような音が聞こえる。言いたいことはいろいろあったけど、それだけしか聞けずに唇をかみしめていると、せいちゃんは深くため息をついて苦く笑った。

「……とーちゃんとかーちゃんのことは見捨てられないからな」

ワガママを言わないせいちゃんの性格がとっても恨めしくなった。なんで、なんでそんなに聞き分けがいいの? あたし、理解できない。

「ミュウのことも、本当にいい思い出になった。絶対忘れないから」

そっとあたしの手の上に手が重ねられた。でもその手をあたしはバシッと振り払った。

「『思い出』なんかじゃイヤだ」

もうやだ、あたし、がまんできない。

「あたしの気持ち知ってて、どうしてそんなこと言うの?」

ぎっとせいちゃんのほうをにらむと、彼は困ったように眉を寄せた。

「ミュウの気持ち……? でも新しい彼氏いるだろ?」
「いないよ、そんなの!」

誰のこと言ってるんだかわかんないけど、おかしくない? なんでこの人自分の重要性が全然わかってないの?

「この前別れ際に言ったこと、覚えてないの!?」

泣きそうになりながらそう叫ぶと、せいちゃんは明らかに動揺して視線を迷わせた。

「あ、ごめん……。声が小さくて聞こえてなかった」

はぁ??? なにそれ! 最低! 大切なこと言ったのに、あたしのこと何週間も無視して、あげくの果てに「聞こえてなかった」ってバカにしすぎじゃないの!?

こんな男……、こんな野郎、なんで好きとか思っちゃったんだろう……。もうやだ。勝手に実家にでもなんでも帰っちゃえばいいんだ!

「あたし、もう帰る。元気でね」

顔も見ずにカバンを引っつかんで立ち上がった。と、そのとき――

(ドーン!! バキバキバキッ!!)

「きゃーっ!」

体が揺れるような激しい音と一緒に、部屋の外に鋭い光が走った。雷、いつのまに近づいてたんだろう? やだ、こわい、こわいよ!

頭を抱えてしゃがんでいると、すぐ横で声がした。

「雷、怖い?」
「あ、当たり前だよ! だってどこに落ちるかわかんないし、落ちたら死んじゃうんだよ!?」
「落ちないだろ。ここのアパート2階建てだし」
「で、でも、ああぁっ!!」

(バァーン!!)

もう一度外が明るくなって、何かが破裂するような巨大な音がした。

体の震えが止まらない。お願い、はやく助けて――!!!

部屋の明かりが消えると同時に、ふと背中に暖かいものを感じた。

(せいちゃん――!)

おびえるあたしの背中を撫でてくれていた。必死でその身を探し当てて、胸に抱きつく。

「大丈夫、すぐ通り過ぎるよ」

肩から腕にかけてをさすりながらせいちゃんが言った。低くて穏やかな声は、聞いてるだけで落ち着くよう。

「う、うん」
「雷の確率って、飛行機が落ちるよりずっと低いから。だからまず撃たれないって」

頭ではわかってても、実際ごろごろという音を聞くとビビらずにはいられないよ。

また稲妻が光ったので、ぎゅっと腕を引き寄せた。

「ひゃっ!」
「ミュウ、大丈夫」

そう言うせいちゃんの声が優しくて、このまま死ねるなら雷に撃たれてもいいかなってちょっとだけ思った。

ちょっとだけ。ホントにちょっとだけだよ――。

「ミュウ、ミュウ……」


「あ、電気ついた」

雷の音が遠くなり始めたとき、部屋が唐突に明るくなった。停電が終わったみたい。

でもあたしはうつむいたまま恥ずかしくて動けない。あんなに怒って部屋をでていくつもりだったのに、今はこうしてひざの上に抱かれてるだなんて――

「でもまだ雨すごいな」

耳を澄まさなくてもゴウゴウという激しい雨の音が聞こえる。ときどき窓がミシミシ言ってるのも、風が強く吹いてるからかもしれない。

「……雨が小降りになるまで、もうちょっといていい?」

ほら、帰るまでにびしょ濡れになっちゃうかもしれないし……ってホントの理由はちがうけど。

「いっそのこと、泊まっていく?」
「え、いいの……?」

思いがけない申し出にびっくりして顔を見上げた。するとせいちゃんは「いいよ」と言ってあたしのことを膝から下ろした。

家族に連絡するためケータイを取り出したとき、「その代わり」とせいちゃんが付け加えた。そのかわり、何?

「俺はミュウの裸が見たい」

驚きすぎて思考が停止した。せいちゃん、正気?

――なに天気予報でも読むみたいな口調で変なこと言ってるの?

落としちゃったケータイを拾おうとしたとき、せいちゃんはそのままの調子で続けた。

「ミュウとセックスしたいと思ってる」

遠くで低く雷の音が聞こえた。きっとこれが最後の落雷かもね――


あたしは立ち上がると、引きだしになってる棚の前で足を止めた。

「タオルどこ? シャワー浴びたい」

あたしがそう言うと、後ろにいるせいちゃんは少し焦ったみたいだった。

「え、シャワーって……。遅くなってもいいのか?」

うん、と頷く。するとせいちゃんは押入れをがたがたと開けだした。

あたしの足元にバスタオルが置かれる。しゃがみこんだせいちゃんの背中を見ながらあたしは呟いた。

「いいよ、今日はもう帰んない」

はだかを見られるのも、……アレ、するのも

「優しくしてくれるんなら、いいよ」

***

ザーザーと水の流れる音がお風呂場から聞こえてくる。あたしは上と下の下着だけつけた状態で、彼が出てくるのを布団をあたまからすっぽりかぶって待っていた。

せいちゃんと結ばれるのは嬉しいけれど、今日が終わってしまえばもう会えなくなる――そう思うとずっと出てきてほしくないような、でもやっぱり早く触ってほしいような。……ああっ、もう何がなんだかわかんないよっ!!

水音が止んで、しばらくして襖が閉まる音がした。「ゴホッ」という低い咳払いの声が近くから聞こえて、あたしのドキドキは最高潮に達した。

「ミュウ。……入るよ」

うわっ、いよいよきたっ! 布団がゆっくりとめくられて、せいちゃんが忍び込んでくる。

(かっこいいなぁ……)

彼はトランクスだけ身に着けていて、裸の上半身は(予想通りなんだけど)がっちりしててとっても頼りになりそうな感じ。特に発達した腕の筋肉の感じなんか、見ててほれぼれしそうなほど。

「せいちゃん……」

お布団の中で向き合って名前を呼ぶと、せいちゃんは暗がりのなかでやわらかく笑った。周りの音がほとんど聞こえない分、お互いの息がものすごく近く感じてなんだかいやらしい。

「なに?」
「ううん……」
「緊張してる?」
「うん、ちょっと……」

そう言うと、せいちゃんはあたしの手を取って、すこしかがんで手の甲にちゅっと口づけをした。

(う、うわー!)

なにこれ! まるでお姫様みたい! こんなの初めてされたよ! こういうの平気でやっちゃうあたり、せいちゃんってもしかして慣れてるのかな?

すっかり興奮して舞い上がっていると、いつのまにか首の後ろに腕を回されておでこにもキスをされた。

そのまま唇が耳の後ろ、顎、首と降りていく。せいちゃんの唇が触ったところから、体中が熱くなっていく……。

鎖骨から肩・胸元にかけてキスをしていたとき、ふと動きをとめてせいちゃんが呟いた。

「ミュウの下着、かわいいね」

言われてまたドキッとした。いま着けてるのはピンク地にクリーム色のレースがたくさん付いた上下おそろいの下着で、安かったけど自分の中でも相当お気に入りだったりして。でもなんだかやる気まんまんでここまで来たみたいで、ちょっと恥ずかしいかも……。

「あ、あの、偶然だよ。わざわざ選んで着てきたわけじゃないからね!」
「うん、知ってる」

可愛げなくそう言ったあたしをせいちゃんはさらっと流して、体へのキスをまた始めた。

あばら、腰、おへその周りまで行ったところで体をひっくり返された。

「ひ……っ」

背中にキスされて思わず声がでちゃった。ここへのキスって、顔が見えない分、なんだかえっちさ加減が倍増な気がする。

あたしの反応を楽しむみたいに、背中へのキスを続けるせいちゃん。時々半乾きの髪が当たって、冷たい感触にびくびくする。

そのうちに手のひらでも背中を撫でられて、真ん中辺りに手が来たとき、ブラのホックを外された。

そのまま体を後ろから密着してきて、ブラを肩から外して脱がされる。なにもつけてないおっぱいは、すぐに両方ともせいちゃんの手で隠された。

「あぁん……」

ふにふにと優しく揉まれるだけで勝手に声が出ちゃう。先っぽをつままれたりなんかすると、気持ちよすぎて、もう……。

「せいちゃぁ…ん」
「なに?」

人差し指で固くなった乳首を弾きながらせいちゃんが答えた。ゆっくりと、たまに激しくなる動きにあたしはわからなくなる。

「なんで、こんなに気持ちいいの?」
「え?」
「あ、あたし、あれから自分でも……た、試したりしてみたけど、ぜんぜん……。こんなに、せいちゃんにやってもらったときみたいに、良くなかったし……、何が、違うのか、ぜんぜん……」

あたし、自分でもものすごく恥ずかしいこと言ってるって思った。でも、せいちゃんと会えなかった間、あの時のことを思い出すとどうしても我慢できなくって……。

だけど、おんなじように触ってるはずなのに、自分でやるよりせいちゃんの手でやってもらったほうがいいの。ずっと……何倍も。

おっぱいをいじっていた手が止まった。とたんにあたしは言ったことを後悔した。

「ご、ごめん! 引いたよね!」

自分でするなんてスケベすぎるって思ったかな。なんだかんだで男の子ってウブな子の方が好きだもんね……。

「ミュウ」

肩を強い力で引かれて振り向く。せいちゃんはあたしを真正面から抱きしめると、顔を近づけてキスをしてきた。

舌の先端を撫ぜあう、ディープなんだけど優しいキス。熱くなってきて顔を布団から出すと、せいちゃんの顔も赤いみたいだった。

「俺にしてみりゃ、すごい嬉しいんだけど」

……男の子ってよくわかんない。そういうもんなのかなぁ……。

「そうなの?」
「うん。だって好きな子が自分のしたこと思い出してしてるって、こんなに幸せなことないだろ」

……いま「好きな子」って言った!? 聞き間違いじゃないよね??

突然のことに何も言えずにいると、せいちゃんはその間にまた布団の中にもぐってしまった。

「あっ!」

するするとショーツが押し下げられる。腿の間をつたう感触に、あたしは思わず身をよじった。

「だ、だめ!」

とっさにあそこを隠す。だって、そこは……

「手、どけて」

布団の中から声がする。どかせないよ! どかしたらあたしの足の間にいるせいちゃんには、丸見えになっちゃうもん!

「やぁっ! まだだめ……っ!」

あたしが聞き分けなく抵抗すると、せいちゃんはガバッと布団を全部剥いだ。

「……っ」

体は熱くなってるから寒くはないんだけど、豆電球の下とはいえ素っ裸を見られるのはすごく恥ずかしい。

足元のあたりにせいちゃんは座ってる。そんなにジロジロみないで……。あたしは片手で口元をかくして顔を背けた。

「ミュウはすごいな」
「へ……?」
「前からずっと可愛いと思ってたけど、服脱いだらもっと素敵だった」

あたしの右ひざを立たせて、膝こぞうからすね・つま先にかけてキスをしていく。そんなところ愛撫されたことないから、くすぐったくてゾクゾクしてしまう。

「どういうこと……?」
「足もお尻もくびれも……、こんなに綺麗な子見たことないよ」

さすがにそれは言いすぎじゃない? ……って思ったけど、そう言うせいちゃんの顔が優しくてあたしは困ってしまった。

ゆっくりと足の間にあった手を外した。せいちゃんが息を飲む音が聞こえた。

「あっ……」

ドドドと雨が強く地面を叩きつけている。一旦おさまった雨はまた激しくなってきたみたい。

「……変じゃない?」

思わずあたしは聞いてしまった。せいちゃんが何も言わないし何もしないから。

「何が」
「あんまり生えてないの」

あたしのあそこは……、なんというか毛がほとんど生えてなくて、前からだと筋が見えちゃうくらい薄い。温泉とか行くと周りの女の人とくらべて落ち込んじゃうし、元彼にもそれを何度かからかわれたこともあった。

乳首のときもそうだったけど、あたし、なんでこんな変なとこだけ子供っぽいんだろう……?

耐えられなくてまた隠そうとしたとき、せいちゃんが答えた。

「別に。気にならない」

膝の内側にキスされて、どんどん唇が狭いほうにと登ってくる。ももの付け根の内側あたりまで来たとき強く吸われて、あたしは思わずのけぞった。

「あっ……」

今なんかあそこのあたりがじゅわってなった。そのまませいちゃんがぺろぺろと合わせ目に近いところを舐めだしたので、あたしは慌てた。
「や、やだ、そんなとこ舐めないで」

足を閉じようとして、手で強引に押し広げられた。せいちゃんは一旦顔を離してあたしに聞いてきた。

「……今まで、されたことないの?」
「な、ないよっ!」

ほんとは前の前の彼氏に一回舐められそうになったことあったけど……、なんか気持ち悪くて嫌がったらすぐに向こうも止めちゃった。それで前の彼氏はH自体があんまり好きじゃないみたいだったから、こういうことは絶対しなかった。

「なんで? 嫌?」
「うん。だって、そこ汚いとこだよ!?」

ちょろっと自分でも見たことあるけど……、なんかグロくて口をつけるとかありえないよ!

するとせいちゃんはふぅっと息を吐いた。あ、諦めてくれたみたい。

……と思ったら

「ひゃぁぁっ!」

あそこの入り口にぬめっとした快感が走った。なにこれ……。手でいじられるときとは全然違う!

「はぁ……ぁんっ!」

もう一回同じところをせいちゃんの舌が通り過ぎていく。恥ずかしさよりも結局気持ちよさが勝っちゃって、あたしは閉じようとしていた足の力をゆるめた。

「これでも、やっぱりやめてほしい?」

……いじわる!

唇を噛みしめながら首を横に振ると、入り口の上のほうの……たぶん出っぱってるんだろうなって部分に吸い付かれた。

「……っぁあ!」

体をのけぞらせて快感に耐える。だめ……、あたしこのままじゃ、またすぐイッちゃう……!

くちゅくちゅと何かを吸うような音がする。はぁはぁと途切れがちに息をしていると、口がやっと離れた。

暗いんだけど口元になんかトロっとしたのが付いてるがわかる。それって……あたしから出た愛液だよね。なんかもう、恥ずかしくて見てられないよぅ……。

「はい」と言って枕元にあったティッシュを差し出した。せいちゃんはそれで口を拭うと、すぐに丸めて部屋の隅に投げ捨てた。
「次はちょっと、触らせてもらうよ」

そう言って入り口にせいちゃんの指が押し入ってくる。

すでに十分濡れていたあたしのあそこは、せいちゃんの指をぬるっと飲み込んでしまった。

「うわ……」

驚いたように呟いた。ああ、あたしの体どれだけスケベなんだ。

せいちゃんは根元まで入れると、ゆっくりと中を掻き回しはじめた。

「あぁ……ふっ……」

雨の音に混じって、ぐちゅぐちゅと粘っこい音が聞こえる。あたしの中を動くせいちゃんの指が、蜜と擦れて立ててる音だと思うといやらしくて仕方ない。

「声、だしていいよ」

口に両手を当てて声をかみ殺してるあたしに、せいちゃんがそそのかす様に言う。

「で、でも、お隣さんとかに、聞こえちゃう」
「こんな雨なら聞こえないだろ」

雨はずっと強く降ってて、ときどきせいちゃんの声も聞こえないほど。

いつのまにか口を押さえてた手が外れて、せいちゃんの片手と繋がれてた。なんか、こんなことでも嬉しい気がしちゃうのって、あたしって単純?

なにもかもを押し流してしまうような強い雨にあわせて、せいちゃんの動きも激しくなった。

「あッ……、いい……、ああん……っ」

奥の気持ちいいポイントを付かれて、子供みたいに甲高い声が出ちゃう。

頭がボーっとしてくる。ふわふわと舞い上がるみたいな気分。

「ふ……、うぅ……ん」

このまま上がり続けるとどうなるんだろう? ……と思っていると、ふいに手の動きが止まった。

「ミュウ、あの……いいかな」

口ごもりながら聞いてくる。そろそろせいちゃんも限界……なのかな。

改めて聞かれたのが気まずくて顔も見ないまま頷くと、せいちゃんは後ろを向いてトランクスを脱いだ。

がさごそという音が聞こえる。多分、ゴム、つけてるんだよね。

ひょい、とあたしの上にとび乗ってくる。手で脚を広げられて、その間にせいちゃんは固くなったアレの先っぽを押し込んできた。

「や……っ、おっきい……」

あたしが思わず呟くと、せいちゃんはすぐに固まった。

「あ……、ごめん」

あたしが「いや」って言ったからせいちゃんは不安になっちゃったみたい。せいちゃんは体が大きい分、比例してアレも……、なんだかずいぶん大きい気がする。全部は入りきってないはずなのに、あそこがきつくてもう……すごく苦しくて辛い。

でもアレが大きいって言われてヘコむ人って珍しいんじゃない? あたしは引きかけた彼の腰に腕を回した。

「……と、大丈夫か?」

このまま続けても、と聞いてくる。

「うん、大丈夫……」
「ホントに? 無理しなくても……」

そう言ってあたしの頬を指の背で撫でた。その手をとって顔の近くでぎゅっと握り締める。

「ううん、平気だよ。せいちゃんのなら我慢できる」

あたしが言うと、せいちゃんは顔を真っ赤にしてあたしの上半身に倒れこんできた。

ぎゅっと頭を抱え込んで抱きしめられる。せいちゃんの体はとってもあったかくて、素肌同士でくっついてるとすごく気持ちいい。

「そんなこと言われたら、それだけでもうイっちゃいそうなんだけど」

……そんなこと言われたら、あたしの方こそすぐイッちゃいそうなんですけど。かわいい。あたしより30cmぐらいでかいクセに、かわいくて、死ぬ。

チュッ、チュッと2回ぐらい軽いキスをしてから、せいちゃんは体をまた少し離した。

ゆっくりと太いモノがあたしの中を突き進んでくる。壊れちゃいそうなくらい奥まで入ったとき、やっと動きが止まった。

「ミュウ……。すげー……いい」






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