i hate tha sun
シチュエーション


警備員の仕事が終わると、スラムに帰る。
寄り道などせずに、ひたすらまっすぐ家に向かう。
傍らには身の丈の半分ほどある車輪つき装甲トランク。黒いコートを翻す。安全靴の音が路地裏に響き渡る。
そうして、切り立った坂を下りたところに、鳥の巣のようなアパートがある。
階段を上ると、少し緊張して、いつも通り決まったやり方でノックする。

「ただいま、クリスティーナ」

返事がない。ややあって、がちゃがちゃと鍵を回す音がした。
ドアが開くと、少女が立っていた。月の光を浴びて病的に白く透き通るような肌。今にも傾いて折れてしまいそうな細い体。
おどおどした瞳が僕を見つめる。

「おかえりなさい、クルト」
「何か変な人は来なかった? 怪しい影とかは?」
「ううん、いつも通り」
「そうか、それはよかった」

僕は一息つくと、部屋の中に入った。
ごつん、と頭をドアの天井にぶつけた。これで何度目だ。

「借りられてよかったのにこう言うのも何だが、小さいなあ、このアパート」
「クルトが大きすぎるのよ」
「まあ、そうだけど、それにしてもなあ……」

文句を言いながら、周囲を見渡して、ドアを閉めた。誰が見ているか分からない。

クリスティーナは以前勤めていた邸の富豪の養女だった。

初めての職場で右も左も分からずに色んな人にドヤされていた中、たまたま彼女を警護することがあった。
別荘からわざわざリムジンで運ばれてきた彼女を、僕は富豪の前まで連れていった。
彼女はまだあどけなく、そしてこの世のものとは思えないほど美しかったが、傍目に見ても極度の緊張の中にあった。
その理由は当時の僕には分からなかった。養父が苦手である程度のことだと思っていた。

その夜、先輩たちが呼び込んだ一室で、僕はとんでもないものを見ることになった。富豪が彼女を犯していたのだ。
鞭で彼女の背中を打ち、尻を腫れあがるまで叩き、見るからに彼女の体にふさわしくない凶悪な玩具を秘所にねじ込み、その小さな口に自分のものを咥えさせていた。

彼女はどうやら息ができないようで、富豪のものを吐き出すと、苦しそうにせき込んでいた。その度に富豪は彼女の背中を傷つけた。
僕は怒りで目もくらまんばかりになっていたが、そんな僕に先輩たちは言った。俺たちにも役得がある、と。
彼女が富豪のものを噛んでしまったらしい。富豪は激昂して、彼女を地べたに叩きつけると、「お前ら輪姦せ」と喚いた。
僕は従えなかった。「こんなことは人間のすることじゃない」と吐き捨てたように思う。富豪はますます激昂して、僕を鞭で打った。
先輩たちは僕を押さえつけると、ズボンを下ろした。怒り狂っていた僕の下半身は、呪わしいことに固く怒張していた。
富豪は自分の養女に向かって、「自分で入れろ」と言い放った。反応しない彼女を、富豪はつかんで僕の方に放り投げた。
茫然としている僕を尻目に、彼女は暗い目をして、僕のものを自らの秘所にねじ込んだ。
そこから先のことは思い出したくないし、正直あまりよく覚えていない。やがて僕は達し、彼女の中を汚した。
僕は下半身を丸出しにしたまま連れ去られていった。富豪のやや溜飲を下げたような残忍な笑みだけははっきりと覚えている。

そうしたことが何度か続いた。僕はやがて自分の意志で彼女を抱きながら、彼女を救ってやりたいと思うようになっていった。
僕は邸で一番背が高く、腕力にも自信があった。そしてここの警備員の武装は基本的に特殊警棒で、火器の類はなかった。
抱いている時に、一度だけ、彼女に確認した。「僕は君を逃がす。君はそれでいいか」と。
彼女は何も言わず、僕にしがみついた。僕はそれを承諾のサインと受け取った。
僕は女の子一人入れる大きさのトランクと大量の発煙筒を用意すると、邸のあちこちに煙を放った。
慌てた富豪と彼女を誘導し、人気のない部屋に連れ込み、富豪を一発殴って昏倒させると、彼女をトランクの中に押し込んだ。
煙だらけで混乱している邸を抜けだすと、そのまま駅に向かい、一番近くの大都市に向かった。そして二度と帰らなかった。

持っている金でアパートを借りると、部屋の中でようやく彼女を解放した。

「さて、これからどうする?」

彼女は息苦しそうに深呼吸すると、こちらをぼんやりとした目で見つめた。

「私、どうなったの?」
「あのデブ親父から解放した。このまま警察に行けば、保護されると思うよ。本当の親のところにも帰れるかも知れない」
「……私、帰りたくない」
「何で?」
「パパとママも私をいじめていたもの。そして私を売ったの」
「……それは惨いな。じゃあ、どうする?」
「……あなたが決めて」

彼女は無言で裸のまま僕に抱きついてきた。僕は何も言えず、彼女の頭を撫でた。
そういうことなら仕方ない。僕が彼女を守ってあげよう。どこまでのことができるか分からないが。そう、決意した。

その後、邸からの追手は特に来なかった。
僕は警察に相談し、孤児院を探した。いざとなれば、僕が奴らに袋叩きにされても、彼女だけは無事に逃さねばならない。
警察は事情を呑み込むと、原則孤児院の方が望ましいと言いながらも、僕と彼女の同居を認めてくれた。
僕が人さらいだということは、言わなかったので不問に付された。
僕は新しく警備員の仕事を見つけ、その金で二人で生活した。

彼女は日の光を嫌った。ずっと部屋の中にこもり、買い物は僕と一緒に夜行くことが多かった。
僕は買い物して部屋に戻ると、簡単な料理を作り、体を鍛えたり、携帯電話で撮った写真を彼女に見せたりして過ごした。

「ほら、猫の写真だよ。にゃーん。可愛いね」
「……うん」

彼女は内向的だった。自分で何か物事を決めることがひどく苦手なようだった。言葉かずも少なく、ぼーっとしていることが多かった。
窓から射す月光に照らされて全裸でベッドに横たわる彼女は、人と言うより、何か意志を持たない精巧な人形に見えた。

(そりゃ、あんなひどいいじめられ方をしていれば、そうなるか)

僕は彼女を日の下に出そうとしたり、言葉を引き出そうとしたり、いろいろした。だが、基本的にその試みは全部失敗し続けた。

いつしか、僕は再び彼女を抱くようになっていた。
年の差とか、彼女の心の傷とか、いろんなことが頭をよぎったが、押し流されていた。
彼女の触れば壊れてしまうような脆い美しさに、頭をやられてしまっていた。

月光を浴びて、彼女が僕の前に裸体をさらけ出す。

「いいよ、クリス。綺麗だ」
「やだ、クルト、恥ずかしい……」
「ポーズ変えてみようか。そこに横に座って、足を組んで、膝に手を組んで、こっちを見る」
「うん」

彼女は自分では動かないが、僕のいうことはよく聞く。これも養父に仕込まれたのかと思うと嫌な気分になったが、そういうことは言っても始まらない。

「よーし、いいぞ。モデルさんそのまま動かないで、よっ……と」

シャッターを下ろす。美しい芸術が一つまた完成した。
その後も彼女は僕の要求に従い、その美しい姿を次々とさらした。

「よし、今日はこんなもんでいいだろう」

僕は携帯電話を閉じると、彼女を後ろからふわりと抱きすくめた。

「あっ……」
「背中見せて」
「えっ? あっ! いやっ!」

彼女は急に身を固くして、僕の体を押しのけようとする。でも、体の大きさが全然違うので、びくともしない。
僕は彼女の肩に手を置くと、ぐい、と背中をのぞいた。養父につけられた傷跡が、生々しく残っていた。
美しい体に隠された醜い傷跡は、それでも僕にとっては退廃的に美しかった。

「やだっ、恥ずかしい!」
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ。ほら」

僕は傷跡に唇を這わせた。彼女の抵抗が急激に力弱くなっていく。

「あ……ひっ……!」

傷跡を伝う舌の感覚に彼女が震える。

「こ……こんな傷痕、汚くない?」
「汚くない汚くない。大丈夫だよ」
「ほ……本当?」
「本当本当本当。ほら」

そう呟くと、僕は傷跡を吸った。

「あっ……!」

彼女が一際大きく身を震わせると、がくりと膝を折った。

ぐったりした彼女を、ユニットバスにお姫様抱っこで運んだ。

「ローション、そろそろ残り少なくなってきたな」

ローションをお湯に混ぜると、彼女の秘所に塗り込んだ。

「じゃあ、入れるよ」
「……うん」

僕は浴槽の角に座ると、彼女を僕の上に座らせた。彼女は僕の手を握ると、ぎゅっと目を閉じた。
僕の凶暴なものを、小さな体にねじ込んでいく。彼女のその姿が、痛々しくも美しかった。

彼女は無口だが、抱かれている時は比較的よく声を上げる。その仕草が可愛くて、僕はよく携帯電話で写真を撮った。

「……あっ、あっ、あっ」
「そうだ。そのまま動いてみてごらん」

彼女が軽い体を上下させる。狭く熱い感覚が、僕を締め付ける。
身長差で、抱きかかえると丁度彼女の顔と僕の顔が同じ高さになる。赤い顔で何かに耐えているような彼女の口元に口づけると、舌を入れた。
「むぐ……うーん……」

耳たぶをぱくりと咥えると、舌を突っ込んだ。彼女の声に甘さが混じる。耳が弱いのだ。

「はああ……ん……」

彼女が身をよじらせる。腰の動きに粘りが生じる。
僕は無心になって彼女の入口をかき回した。彼女と僕の動きが少しずつ同期していく。噛み合っていく。

「あ……あ……あ……だめっ」
「ん?」
「このままだと、私、いっちゃう」
「いいじゃない。いけば」
「でも、私、その、あの」
「……ははあん」

言いたいことが分かった。何度か経験がある。

「いいんだよ。だからユニットバスでやってるんじゃないか」
「で、でも、でもお……ひいっ!?」

彼女の体が、急激にびくびくと痙攣する。

「あっ、あっ、あーっ……!」

不意に、俺の下半身に、生温かいものが広がっていった。

「あーっ……」

彼女が泣き顔になって、身をぐったりを後ろに傾ける。

「おしっこ……ごめんなさい……」

消え入りそうな声で彼女が呟く。僕はそんな彼女を優しく抱きかかえた。

「シャワーで洗い流せばいいさ。それより、まだ大丈夫か?」
「……知らないっ」

目をそらせて赤くなって呟く彼女が、可愛い、と思った。

「よし。じゃあ、僕の方も」

いっそう動きを激しくする。彼女の中はぐにゃりと弛緩していたが、さっきより激しく熱を帯びていた。

「……じゃあ、いくよ、いいね」
「んっ……!」

彼女をぎゅっと抱き締める。骨の音がきしむような感覚がある。彼女の悲鳴が聞こえる。
僕は何かの機械のように、奥に打ち付けるように、一気に僕の熱情を放った。

「んあああああっ……!」

苦痛とも快楽ともつかない声を上げて、彼女ががっくりと崩れ落ちた。

僕らはシャワーを浴びた。彼女の秘所を、念入りに洗い流す。

「大丈夫、クリス? 温かい? 熱くない? 冷たくない?」
「うん、丁度いい」

彼女がぼんやりした顔で僕を見る。僕は汗ばんだ彼女の体を丹念にふくと、自分も着替えた。
そのまま彼女をベッドの上まで再びお姫様抱っこした。

「じゃ、寝ようか」
「うん」

僕は彼女を寝かせると、彼女の横顔を見つめた。彼女はとろんとした目になっていたが、やがてすうっと眠りに入った。

「……可愛いなあ」

僕は携帯電話でその横顔を撮ると、冷蔵庫からビールを取り出した。

ふと、自分のやっていることを顧みることがある。
僕は僕の心のままに、彼女が好きだし、綺麗だし、もっとよく知りたいから、半ば力ずくで彼女を従わせて体を重ねている。
そういう体の重ね方が、こういう生き方が本当にいいことなのか、よく分からない。多分まずいことをしているのだと思う。
翻って彼女はどうか。彼女が何もしたくない、何のやる気もないことは知っている。僕の言われるままに動く方が楽なのだろう。
それが彼女にとっていいことかは分からない。彼女を弱いままにしておく悪い弱さだと思う。
だからといって、彼女に今すぐ自分の意志で何かしろと言っても、それは無理な注文だ。世の中には出来ることと出来ないことがある。
そして、僕はそんな抵抗しない彼女につけこんで、自分の欲望を吐き出している。

それでいいのか? 本当に?
俺は彼女とこんな生活をするべきではないのか? 彼女と別れて孤児院に入れた方がいいのではないか?
僕はそうしたくない。彼女とずるずるといつまでもこういう爛れた生活を続けていたい。
どうする?

月光に照らされる彼女を見る。全裸で横たわる彼女は、人形のように美しく、僕の思考を停止させる。
やっぱり、僕はそんな彼女を失いたくない。彼女は僕のものだ。これは理屈抜きの感情だった。

「いつか……」

いつか。何らかの結論を出さねばならない時が来る。
その時まで、一緒にいよう。それでいいこととしよう。

僕はそっと彼女に口づけをした。彼女は何も知らずに、どこまでも深く、昏々と眠り続けていた。






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