シチュエーション
成人の日の前に、ユキがハタチになった。 「年が明けたら名実ともにオンナになるんだから」 この間のベッドの中で、ふふんと笑ったその顔は、赤ん坊の時からちっとも変わらない気がする。 もっとも、そんなことを言おうもんなら、しばらく口をきいてくれないだろう。 ユキも大学2年になって、だんだん勉強だけじゃない忙しさに追われるようになった。 サークルや友達づきあい、ってやつだ。 それはそれでいいことだ。 いいことなんだが。 ユキはパッと見は、美人なタイプじゃない。 時間がたつにつれ打ちとけ話をしていくうちに、だんだん惹かれていくようなタイプだ。 どちらかと言うと童顔で、可愛らしい印象をもたれやすい。 するめイカじゃないが、味があるというか、親しみやすいというか。 ……他人から見た評価はどうでもいい。 俺は心配事が増えたことに、正直苛立っていた。 俺が36で、ユキが20才。 この差は、どうしようもない。 学校へ行くユキを見送る時でさえ、些細なことで焦る自分がいる。 ……そのスカートの丈はどうなんだ、とか、肌の露出が多い、とか。 つい、上げそうになった声を辛うじて飲み下すこともしばしばだ。 親でもないのだから……と言って、『カレシ』と言うにも気が引ける。 * 「ね、どう……? かな」 「なにが」 「どこか……違う?」 「……ん? 何のことを……あそうか、今年初エッチだ」 「……違う! もう、エロオヤジ」 「また言うか……あ、そうか……オトナ、かー」 「…………うん……もう……あ……っんああ」 すっかりとろとろになったそこに、ゆっくり2本の指を挿入していく。 舌と指でじっくり愛撫したから、たっぷりの愛液が押し出されて卑猥な音をたてていく。 「……どこが違う、って昨日今日でそんなに変わるかよー」 「あ、あっ……笑わ……ないでっ……は……やあんっ」 「……じゃあ、今日からユキがもっと淫乱になったとか……」 「やあっ……いんらんって……ひどっ……はあ……んっ」 「いいことだろー。……ユキ、オトナって言うならさ……リクエストしていい?」 「や……あん……あ……な……に? ああやああん!」 指をかき回すようにしながら、抜き差しして、親指でクリトリスを捏ねた。 びくびくと揺れるユキの耳へ口をつけて、舌で耳たぶをつついた。 確かに、最初の頃に比べると、徐々にオトナの反応になってきたよな。 「あのさ……俺の上に乗ってくれる?」 「あん……え? あ……そん……な」 「オトナになった記念に。やだ?」 「や……精さん……やだ」 顔を真っ赤にして拒否の言葉を口にするけど、促されればそうするだろう。 良いのか悪いのか、ユキは俺に従順だ。 罪悪感が無いといえばウソになる。 俺がそうさせてしまったのだから。 「乗って」 「や、恥ずかし……」 「じゃ、イかせてやんない」 座位で抱き合ったことはあるが、騎乗位はしたことがない。 戸惑うのも無理はないか……。 はあはあと息を弾ませて昇りつめ始めた体の、愛撫の手を止めた。 「やっ……止めないで!…………精さん……」 「……意地悪なことして……ごめんな」 耳たぶを舐めてから、体を少し浮かせた。 俺の下で目を潤ませたユキが、体をくねらせて急かすように腰を揺らす。 すぐにしがみついてきて口づけ、自分から舌を差し入れてくる。 ねだる時に見せる、必死なユキのなまめかしい姿態だ。 俺の髪の毛を乱暴に撫ぜながら、くうと鼻を鳴らす。 こんなユキが可愛くて、つい毎回意地悪くしてしまう。 口中にユキが一杯になって、俺も堪らなくなってユキを抱きしめた。 そのまま、ごろんと背中からベッドに転がった。 「ほれ、ユキが上になったぞー」 「な……」 「続きは、ちゃんとするから」 「も……ひど……」 「ユキの中、入れて」 さらさらと顔に落ちてくる猫っ毛の向こうに、ユキの怒ったような照れたような表情が見える。 ユキが、意を決したようにきゅっと目を閉じて、ゆっくり開けた。 「恥ずかしいんだから……目、瞑っててよね」 ユキの手で瞼を閉じさせられて、じっと待つことにした。 俺の上の重みが、下半身の方へ移動していく。 焦らされているようで、体が次第に熱くなってくる。 俺は大人しく待っていられるわけでもなく、薄眼を開けた。 ユキが俺を跨いで、たて膝になったところだった。 綺麗だった。 夜の部屋の中で、薄明かりに照らされたユキの体が神々しいほどだ。 ユキの中で果てる時にだけ出てくる、俺の獰猛な欲求が早くも顔をのぞかせる。 ユキがなんとか自分の中に入れるために、手で俺のそれを掴んだ。 おそるおそる両手で包み込むようにしている。 俺は額に腕をあてて、浮いた汗を拭った。 強引に貫いてしまいたいのを堪えて、呻き声を上げそうだ。 ユキがやっと股間に……蜜口にあてがって、亀頭を擦りつけた。 ちゅぷ……とかすかな水音が耳に届いた。 もう少し、我慢しなければ……ユキが自分から飲み込むのを見たい。 もう遠慮なくユキに視線を合わせると、緊張した表情で腰を沈め始めながら、長い溜息を吐いている。 俺の剛直にいきりたったものが、ユキのピンク色の襞の間を押し広げていく。 中からじゅぶ……と音をたて泡立つ蜜が押し出されて、とろとろと俺のモノをつたっていく。 徐々に、ぬるみの中に俺の塊が飲み込まれていく。 ひどく熱くて、溶けそうだ。 熱く柔らかい襞に包まれていくうちに、喉の奥で唸っていた。 ユキは眉を歪ませて、唇を噛みしめている。 我慢するな、と言いたかったが、呻き声が漏れ出てきそうで止めた。 その代り、突き立つ俺を半分飲み込んだ秘所に、手を伸ばした。 「きゃ……あん」 行為に没頭していたユキが、小さく悲鳴を上げた。 自分とユキの境目をそっと、何度もなぞる。 「すごい……な。ユキが咥えてる」 「……そんなこと、言わないで……」 「もっと、深く」 「だめ……あっ…………ゆっくりじゃないと」 奥へ奥へと誘い込むような、自分の肉の襞の動きをユキは知らない。 探り出したクリトリスを指の先で弄ると、体が跳ねてぐっと腰が落ちた。 「あっあああん!」 慎重にしていた動きに、自分で知らずに焦れていたのだろう。 自分の重みで貫かれた衝撃で、ユキは喉を仰け反らせ、更に腰を落とした。 「やっやっああん……はんっ」 「ユキ、ほら…………動い……て」 俺も一気に昂るのを抑えるのに必死だ。 もったいないだろ、こんなにいいのにすぐ終わっちまったら……。 なんとか呼吸を整えて、ユキの濡れた秘所への愛撫を続けた。 すぐに、ユキがわずかに腰の動きを繰り返しているのを感じた。 「自分で、気持ちいいと思うこと、してごらん」 「そんな……できなっ……あう」 「……大丈夫だから」 出来ないと言いつつ、腰の揺らぎが確信的なものに変わっていく。 「オトナになったんだろー?」 「も……そういう……あっあっ……い……いじわるっ」 ユキのぷっくりした尻を撫でて、腰に両手をかけた。 最近ウエストのくびれが深くなり、それでいて腰が少し丸くなった。 少女の体から、徐々に女の体になってきた。 たぶん本人よりもそんな変化に気付けることが、密かに嬉しくもある。 その腰を掴んで、ぐるぐると揺らしてやった。 「ああっ、やああ……っ」 その動きから、ユキの腰を掴んだままぐっと俺の腰を突き上げた。 「きゃっ……ああっ……はああ!」 何度もそれを繰り返す。 突き上げるたびに豊かな乳房が揺れて、赤く尖った乳首が跳ねた。 ユキは泣き叫ぶように声を上げて、頭を振ってされるがままになっている。 戸惑いながら全身をピンク色にして、一生懸命揺れるユキを見ていると、 切ないような気持ちになり、堪らなくなってきた。 やっぱりその温かな肌を抱きしめたくなる。 俺は体を起してユキを両腕で包むように抱きしめた。 座位になると、ユキが飛び込むように体を預けてきた。 首に腕が巻きついて、ぎゅっとしがみついてくる。 上気した肌が、しっとり滑らかに俺の肌に吸いついてきた。 「いやあ……おく……奥に……せ……さ……ん、イヤ……ヤっ……」 「奥……が……いいんだな……?」 少し冷えた体を温めるように、俺はユキを揺すりあげた。 片方の胸のふくらみを手でぎゅっと握って、掌で尖った先端を擦ると、ユキの締め付けがキツくなった。 「騎乗位……嫌だった?」 「…………」 「……ごめん……辛かったか」 ユキが首を横に振った。 「……ちが……はあっ……あ……きもち……い」 下からの水音が、じゅぶじゅぶと大きくなってきた。 もう一度繋がった部分に指を這わせた。 とたんに白い喉が目の前に動いて、また、イヤイヤと泣き始める。 細い腕を俺の首に巻きつけて掴まり、背中を反らせて高く声を上げた。 窓も閉まってるし、ユキの両親は無事成人式を終えた次の週だということもあり、 一泊の温泉旅行に出かけている。 だから遠慮なく、ユキの喘ぎ声や嬌声を存分に聞くことができる。 そんなことを思ってる俺は、すっかりオヤジだな。 ……こんな俺に……ユキ――。 どんどんユキの時間が流れていって、大人になっていき、いろんな出会いを経験して……。 いつか、俺のことはどうでもよくなって、本当に好きなヤツができるかもしれない。 一方で俺の時間は停まったようなもんだ。 家で引きこもってやってる、地味な自営業の三十路の男だよ。 そのうち年を重ねて、ユキとつり合いが取れなくなっていくのかもしれない。 ユキ。 愛してるって、何度も言えても、それが永遠とは限らないよな。 俺はユキしかいないってこの歳になってやっとわかったけど。 でも、ユキはどうなんだ……って。 俺といて、ユキは幸せなんだろうか。 俺だけを見てきてくれて、俺に『初めて』をくれて。 その上、ユキの『これから』を奪うのかと思うと……怖い気がするんだ。 でもユキ。 それでも俺は何度でも言わないといけないんだよな。 愛してるって。 たぶんこれからも俺にはユキしかいないから。 子どもから大人になっていくユキを眩しく思いながら、放したくないと思いながら。 ユキがどこかへいってしまわないように、死ぬほど照れくさい言葉を、なんとか口にしてユキに伝えないと。 ユキがぶつけてくれたように、体温だけじゃなく、想いを伝えていかなければ。 ユキ……。 「愛してる」 ぐっと突き上げながら、血が体中を駆け巡っていくのを感じた。 ユキを自分に押し付けるようにして、何度も突き上げた。 ユキがいやいやをしながら、途切れ途切れに声を上げる。 もう、俺の声なんか聞こえてないくらい、ユキは昇り詰めている。 それでも俺は抱きすくめたユキの耳に、最後まで何度もつぶやき続けた。 SS一覧に戻る メインページに戻る |