精一とユキの話 1
シチュエーション


成人の日の前に、ユキがハタチになった。

「年が明けたら名実ともにオンナになるんだから」

この間のベッドの中で、ふふんと笑ったその顔は、赤ん坊の時からちっとも変わらない気がする。
もっとも、そんなことを言おうもんなら、しばらく口をきいてくれないだろう。

ユキも大学2年になって、だんだん勉強だけじゃない忙しさに追われるようになった。
サークルや友達づきあい、ってやつだ。
それはそれでいいことだ。
いいことなんだが。

ユキはパッと見は、美人なタイプじゃない。
時間がたつにつれ打ちとけ話をしていくうちに、だんだん惹かれていくようなタイプだ。
どちらかと言うと童顔で、可愛らしい印象をもたれやすい。
するめイカじゃないが、味があるというか、親しみやすいというか。
……他人から見た評価はどうでもいい。
俺は心配事が増えたことに、正直苛立っていた。

俺が36で、ユキが20才。
この差は、どうしようもない。
学校へ行くユキを見送る時でさえ、些細なことで焦る自分がいる。
……そのスカートの丈はどうなんだ、とか、肌の露出が多い、とか。
つい、上げそうになった声を辛うじて飲み下すこともしばしばだ。
親でもないのだから……と言って、『カレシ』と言うにも気が引ける。



「ね、どう……? かな」
「なにが」
「どこか……違う?」
「……ん? 何のことを……あそうか、今年初エッチだ」
「……違う! もう、エロオヤジ」
「また言うか……あ、そうか……オトナ、かー」
「…………うん……もう……あ……っんああ」

すっかりとろとろになったそこに、ゆっくり2本の指を挿入していく。
舌と指でじっくり愛撫したから、たっぷりの愛液が押し出されて卑猥な音をたてていく。

「……どこが違う、って昨日今日でそんなに変わるかよー」
「あ、あっ……笑わ……ないでっ……は……やあんっ」
「……じゃあ、今日からユキがもっと淫乱になったとか……」
「やあっ……いんらんって……ひどっ……はあ……んっ」
「いいことだろー。……ユキ、オトナって言うならさ……リクエストしていい?」
「や……あん……あ……な……に? ああやああん!」

指をかき回すようにしながら、抜き差しして、親指でクリトリスを捏ねた。
びくびくと揺れるユキの耳へ口をつけて、舌で耳たぶをつついた。
確かに、最初の頃に比べると、徐々にオトナの反応になってきたよな。

「あのさ……俺の上に乗ってくれる?」
「あん……え? あ……そん……な」
「オトナになった記念に。やだ?」
「や……精さん……やだ」

顔を真っ赤にして拒否の言葉を口にするけど、促されればそうするだろう。
良いのか悪いのか、ユキは俺に従順だ。
罪悪感が無いといえばウソになる。
俺がそうさせてしまったのだから。

「乗って」
「や、恥ずかし……」
「じゃ、イかせてやんない」

座位で抱き合ったことはあるが、騎乗位はしたことがない。
戸惑うのも無理はないか……。
はあはあと息を弾ませて昇りつめ始めた体の、愛撫の手を止めた。

「やっ……止めないで!…………精さん……」
「……意地悪なことして……ごめんな」

耳たぶを舐めてから、体を少し浮かせた。
俺の下で目を潤ませたユキが、体をくねらせて急かすように腰を揺らす。
すぐにしがみついてきて口づけ、自分から舌を差し入れてくる。
ねだる時に見せる、必死なユキのなまめかしい姿態だ。
俺の髪の毛を乱暴に撫ぜながら、くうと鼻を鳴らす。

こんなユキが可愛くて、つい毎回意地悪くしてしまう。
口中にユキが一杯になって、俺も堪らなくなってユキを抱きしめた。
そのまま、ごろんと背中からベッドに転がった。

「ほれ、ユキが上になったぞー」
「な……」
「続きは、ちゃんとするから」
「も……ひど……」
「ユキの中、入れて」

さらさらと顔に落ちてくる猫っ毛の向こうに、ユキの怒ったような照れたような表情が見える。
ユキが、意を決したようにきゅっと目を閉じて、ゆっくり開けた。

「恥ずかしいんだから……目、瞑っててよね」

ユキの手で瞼を閉じさせられて、じっと待つことにした。
俺の上の重みが、下半身の方へ移動していく。
焦らされているようで、体が次第に熱くなってくる。
俺は大人しく待っていられるわけでもなく、薄眼を開けた。
ユキが俺を跨いで、たて膝になったところだった。

綺麗だった。
夜の部屋の中で、薄明かりに照らされたユキの体が神々しいほどだ。
ユキの中で果てる時にだけ出てくる、俺の獰猛な欲求が早くも顔をのぞかせる。
ユキがなんとか自分の中に入れるために、手で俺のそれを掴んだ。
おそるおそる両手で包み込むようにしている。
俺は額に腕をあてて、浮いた汗を拭った。
強引に貫いてしまいたいのを堪えて、呻き声を上げそうだ。

ユキがやっと股間に……蜜口にあてがって、亀頭を擦りつけた。
ちゅぷ……とかすかな水音が耳に届いた。
もう少し、我慢しなければ……ユキが自分から飲み込むのを見たい。
もう遠慮なくユキに視線を合わせると、緊張した表情で腰を沈め始めながら、長い溜息を吐いている。
俺の剛直にいきりたったものが、ユキのピンク色の襞の間を押し広げていく。
中からじゅぶ……と音をたて泡立つ蜜が押し出されて、とろとろと俺のモノをつたっていく。
徐々に、ぬるみの中に俺の塊が飲み込まれていく。

ひどく熱くて、溶けそうだ。
熱く柔らかい襞に包まれていくうちに、喉の奥で唸っていた。
ユキは眉を歪ませて、唇を噛みしめている。
我慢するな、と言いたかったが、呻き声が漏れ出てきそうで止めた。
その代り、突き立つ俺を半分飲み込んだ秘所に、手を伸ばした。

「きゃ……あん」

行為に没頭していたユキが、小さく悲鳴を上げた。
自分とユキの境目をそっと、何度もなぞる。

「すごい……な。ユキが咥えてる」
「……そんなこと、言わないで……」
「もっと、深く」
「だめ……あっ…………ゆっくりじゃないと」

奥へ奥へと誘い込むような、自分の肉の襞の動きをユキは知らない。
探り出したクリトリスを指の先で弄ると、体が跳ねてぐっと腰が落ちた。

「あっあああん!」

慎重にしていた動きに、自分で知らずに焦れていたのだろう。
自分の重みで貫かれた衝撃で、ユキは喉を仰け反らせ、更に腰を落とした。

「やっやっああん……はんっ」
「ユキ、ほら…………動い……て」

俺も一気に昂るのを抑えるのに必死だ。
もったいないだろ、こんなにいいのにすぐ終わっちまったら……。
なんとか呼吸を整えて、ユキの濡れた秘所への愛撫を続けた。
すぐに、ユキがわずかに腰の動きを繰り返しているのを感じた。

「自分で、気持ちいいと思うこと、してごらん」
「そんな……できなっ……あう」
「……大丈夫だから」

出来ないと言いつつ、腰の揺らぎが確信的なものに変わっていく。

「オトナになったんだろー?」
「も……そういう……あっあっ……い……いじわるっ」

ユキのぷっくりした尻を撫でて、腰に両手をかけた。
最近ウエストのくびれが深くなり、それでいて腰が少し丸くなった。
少女の体から、徐々に女の体になってきた。
たぶん本人よりもそんな変化に気付けることが、密かに嬉しくもある。
その腰を掴んで、ぐるぐると揺らしてやった。

「ああっ、やああ……っ」

その動きから、ユキの腰を掴んだままぐっと俺の腰を突き上げた。

「きゃっ……ああっ……はああ!」

何度もそれを繰り返す。
突き上げるたびに豊かな乳房が揺れて、赤く尖った乳首が跳ねた。
ユキは泣き叫ぶように声を上げて、頭を振ってされるがままになっている。
戸惑いながら全身をピンク色にして、一生懸命揺れるユキを見ていると、
切ないような気持ちになり、堪らなくなってきた。
やっぱりその温かな肌を抱きしめたくなる。
俺は体を起してユキを両腕で包むように抱きしめた。

座位になると、ユキが飛び込むように体を預けてきた。
首に腕が巻きついて、ぎゅっとしがみついてくる。
上気した肌が、しっとり滑らかに俺の肌に吸いついてきた。

「いやあ……おく……奥に……せ……さ……ん、イヤ……ヤっ……」
「奥……が……いいんだな……?」

少し冷えた体を温めるように、俺はユキを揺すりあげた。
片方の胸のふくらみを手でぎゅっと握って、掌で尖った先端を擦ると、ユキの締め付けがキツくなった。

「騎乗位……嫌だった?」
「…………」
「……ごめん……辛かったか」

ユキが首を横に振った。

「……ちが……はあっ……あ……きもち……い」

下からの水音が、じゅぶじゅぶと大きくなってきた。
もう一度繋がった部分に指を這わせた。
とたんに白い喉が目の前に動いて、また、イヤイヤと泣き始める。
細い腕を俺の首に巻きつけて掴まり、背中を反らせて高く声を上げた。

窓も閉まってるし、ユキの両親は無事成人式を終えた次の週だということもあり、
一泊の温泉旅行に出かけている。
だから遠慮なく、ユキの喘ぎ声や嬌声を存分に聞くことができる。
そんなことを思ってる俺は、すっかりオヤジだな。

……こんな俺に……ユキ――。
どんどんユキの時間が流れていって、大人になっていき、いろんな出会いを経験して……。
いつか、俺のことはどうでもよくなって、本当に好きなヤツができるかもしれない。
一方で俺の時間は停まったようなもんだ。
家で引きこもってやってる、地味な自営業の三十路の男だよ。
そのうち年を重ねて、ユキとつり合いが取れなくなっていくのかもしれない。

ユキ。
愛してるって、何度も言えても、それが永遠とは限らないよな。
俺はユキしかいないってこの歳になってやっとわかったけど。
でも、ユキはどうなんだ……って。
俺といて、ユキは幸せなんだろうか。
俺だけを見てきてくれて、俺に『初めて』をくれて。
その上、ユキの『これから』を奪うのかと思うと……怖い気がするんだ。

でもユキ。
それでも俺は何度でも言わないといけないんだよな。
愛してるって。
たぶんこれからも俺にはユキしかいないから。
子どもから大人になっていくユキを眩しく思いながら、放したくないと思いながら。

ユキがどこかへいってしまわないように、死ぬほど照れくさい言葉を、なんとか口にしてユキに伝えないと。
ユキがぶつけてくれたように、体温だけじゃなく、想いを伝えていかなければ。
ユキ……。

「愛してる」

ぐっと突き上げながら、血が体中を駆け巡っていくのを感じた。
ユキを自分に押し付けるようにして、何度も突き上げた。
ユキがいやいやをしながら、途切れ途切れに声を上げる。
もう、俺の声なんか聞こえてないくらい、ユキは昇り詰めている。
それでも俺は抱きすくめたユキの耳に、最後まで何度もつぶやき続けた。






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