ふぐり三十郎
シチュエーション


「やめてください」

天下の大道で娘の悲鳴が上がった。見ればこの辺りのごろつきとして悪名高
い鬼六一家の若衆が、五人も揃って娘一人をからかっている所であった。

「俺たちと付き合えよ。ちょっと酌でもしてくれりゃあいいんだ」

ごろつきどもは酒の肴に娘を持ち去ろうというさもしい根性のようで、しきりに
誘い込もうとする。

だが普通に考えて、この昼日中から酒をかっ喰らおうという奴等と、どうして
付き合えよう。娘は嫌、嫌と頑として首を縦には振らなかった。すると痺れを
切らしたのか、

「かまわねえ。このまま、連れ去っちまえ」
「おう」

そう言って、ごろつきどもは娘を自分たちの乗ってきた車に押し込もうとしたの
である。

「嫌!誰か助けて!」

通りには人もいるが、何せ相手が悪い。皆、関わりを怖れて、娘を助けようと
はしなかった──と、思われたその時、

「めーん!」

大音声と共に、竹刀がごろつきの頭に振り下ろされた。まさに乾坤一擲、脳天
に会心の一撃を貰ったごろつきは、もんどりうって転倒する。

「な、なんだ、てめえは!」
「痴れ者!お前らに名乗る名など無い!」

竹刀を振るうのは何とセーラー服を身にまとった、見目美しい少女だった。ま
だ十五、六くらいだが、太刀筋は中々、堂に入っており、剣道の有段者と思わ
れる。容貌の美しさもさることながら、驚くべきはその胆力であろう。地元でも
悪名高いごろつき五人を向こうに回して、大立ち回りをやってのけるとは、並々
ならぬ胆の持ち主と見える。

「お、覚えてやがれ!」

ごろつき五人はあっという間に打ち倒され、ほうほうの体で逃げていった。少女は
さらわれかけていた娘の傍らに近寄り、無事かどうかを確かめる。

「怪我は無い?」
「はい。あ、ありがとうございます」
「私が通りかかって良かったわ。それじゃあ」

少女が立ち去ろうとした時、娘が追い縋った。

「あの、お名前は」
「我龍院智香」

その名を聞き、通りがかった人々が驚きの声を上げる。

「あの女修羅と異名を取る、ヒネモグラ女学院の我龍院とは、あれか」
「そりゃ、鬼六一家の連中もかなわないはずだ」

この町において、ヒネモグラ女学院の我龍院智香の名は、清廉潔白、正義の象徴
として崇められていた。

幼少から獄門流剣術を学び、十五歳にしてすでにその技は中伝の域にまで達し、剣
の世界では名を知らぬ者がいないという有り様で、おまけに曲がった事が大嫌い。当
然、先ほどのような場面を見れば、黙ってはいられない性格だった。去って行く後姿に
も隙がなく、ごろつきの五人など何ほどの事があろうかという余裕ぶり。娘も含め、通
りにいる誰もが見惚れるのも無理はなかった。

しかし、おさまらないのはごろつきの方。建物の陰に潜んでいた、先ほど智香に脳
天を打たれた一人は歯噛みしながら、

「その名前、しかと覚えたぜ・・・」

と、痛む頭をさすっていたのである。

「ただいま帰りました」

百坪はあろうかという大邸宅、それが我龍院家の住まいだった。父は資産家で、
母は華道の師匠をやっている為、家を空ける事が多い。どちらも不在のようだが、
留守と分かっていても帰宅の挨拶をするのは、単なる習慣である。

自室へ戻って鞄や竹刀を置き、部屋着の浴衣に着替えてから風呂場へ行く智
香。鬼神の如き剣術家とはいえやはり女の子、帰宅したらすぐ汗を流したいの
である。

「あー、疲れが取れるな・・・」

シャワーを浴びかけたその時だった。ばりばりという戸を打ち破る音が、浴室内
に響いたのは──

「はッ!」

慌てて振り向くと、先ほど打ちつけたごろつきたちが闖入してくる所だった。大邸
宅とはいえ風呂場は手狭、智香はあっという間に押し込まれてしまう。

「さっきのお礼をさせてもらいにきたぜ!」
「ひ、卑怯な!」
「押さえたぜ。縄を持ってこい!」

浴室の壁に押さえつけられ、智香は身動きが取れなくなってしまった。流石に無
手ではごろつきといえども、男の力にはかなわない。抗う間もなく、智香は罪人の
ように縛られ、体の自由を奪われた。

「さて、お嬢ちゃんにはこってりと付き合ってもらうぜ」
「外道が・・・」

睨みつけようともすでに囚われの身、ごろつきどもが怯むような事は無い。それど
ころか、裸身を晒した智香の乳房や尻に手を這わせ、その肉感を楽しみ始めたの
である。

「思ったより柔らかいぜ」
「こりゃ、楽しめそうだ」

男五人に囲まれるようにして、智香は風呂場から放り出された。家人が留守の為、
今の状況は最悪といわざるを得ない。なまじ大邸宅のせいで、少々、騒いでも外
に声が漏れる事も無く、まさに絶体絶命であった。

「お前ら、恥ずかしいと思わないのか。女一人にこんな真似をして」
「恥ずかしい思いをするのは、お前さんの方さ。えーと、智香ちゃんだっけな」
「近づくな!」

にじり寄るごろつきは五人。両手を縛られていては、走ってもすぐに追いつかれて
しまう。さりとて、格闘戦に挑む事も出来ず、智香はただ冷や汗を流すばかり。

「さあ、覚悟しな!」
「あッ!」

肩を掴まれた智香はバランスを崩し、板の間に転がった。そこへごろつきが砂糖に
群がる蟻の如く集まり、少女の足を力任せに開かせた。

「ああッ!いやあッ!」
「ははは、良い声だ」

生まれてこの方、誰にも見せた事の無い場所を、無理矢理、しかも見られる相手が
ごろつき五人とくれば、智香の心情には遣り切れない物があるだろう。だがごろつき
どもは更なる辱めを与えようと、各々、衣服を脱ぎ始めるのである。

「ああ・・・」

さすがに鬼六一家の若衆だけあって、皆、肌には見事な彫り物が施されている。そ
して、反り返った男根には揃って、シリコン玉が埋め込まれていた。智香はそれを
目の当たりにしてうなだれる。

「おい、そこの戸板を外して、お嬢ちゃんを乗せようじゃねえか」
「まな板の上の鯉ってわけか。しゃれてるねえ」
「裏から四隅に縄をかけて、両手足を縛るんだ。その方が手間がねえ」

ごろつきどもは戸板を外し、それを智香に背負わせて、両手足を四隅に括りつける。

そして戸板をそのまま後ろに倒せば、ちょうど智香は大の字になって寝転ぶ形にな
った。勿論、露わになった秘部を隠す事も、抗う事もままならない。これぞ、鬼六一家
秘伝の女縄地獄といわれる辱めであった。

「お前らは狂ってる!女一人にこんな事が出来るなんて、人間じゃない!」

智香が叫べども、ごろつきどもはへらへらと笑って取り合わない。どころか、

「誰が一番にやる?」
「俺、俺」

などと言って、順番争いをする有り様だった。

そうして、ついに一番手が智香の下半身へと近づいてきた。大ぶりな男根には、肉傘
の部分に玉が埋め込まれており、どうにも物々しい。

「さっき、お嬢ちゃんに殴られた分、きっちり返させてもらうぜ」
「ち、ちくしょうッ!あ──ッ・・・」

じり、じりりと、生木を裂くように男根が、智香の未熟な女を割裂いていく。哀れ、可憐な
少女の純潔は、薄汚いごろつきの手によって散らされてしまった。

「しかし、キツキツだぜ。処女ってのは面倒くせえな」
「そんなにキツキツかい」
「動く事もままならんね」

ごろつきどもはそう言って、智香の道具を品定めするのである。破瓜の痛みもさる事な
がら、あまりの悔しさで智香は泣き崩れるのだった。

それから智香はごろつき五人による、連続姦を味わった。入れ替わり立ち代り、
刺青を背負った男たちに陵辱され、終いには気を失っていた。目が覚めたとき
には縄も解かれ、手足の自由が戻っていたが、下半身に残る鈍痛が無碍なる
暴力に晒された事を嫌でも教えてくれる。

「うッ、うッ・・・こんなの、酷い・・・」

泣き崩れても純潔はもう戻らない。こうして智香は最悪の処女喪失を終えたの
である。

幾日かしてまた、天下の大道──例によって鬼六一家の若衆が、睨みを利か
せながら歩いている。だがその中に、おおよそ身分違いな可憐な少女の姿が
あった。

「おう、智香。今日は遅くなるって言ってあるんだろうな」
「・・・はい」

ごろつきと共に歩く智香の姿を見て、他の通行人は眉をしかめた。そこにいる
のがあの我龍院智香である事は、誰だって分かる。だが、どうしてごろつきども
と行動を共にしているのかが分からない。

智香はそのまま、ごろつきどもの車に乗った。行き先は鬼六一家の本拠地で
ある。そこは、的屋やら博徒やらが朝から晩まで、引っ切り無しに出入りする
魔窟であった。中でも女郎部屋と呼ばれる小屋からは、一日中、女の啜り泣き
が聞こえるとして無気味がられている。

格子窓から漏れる明かりを頼りに小屋の中を見渡すと、刺青を背負った若衆が
何人もいて、一人の少女を囲んでいるのが分かる。少女は、智香だった。

「兄貴、このアマッ子、どうするんです?」
「器量がいい上に剣の腕も立つ。オヤジの用心棒に仕立てようと思ってな」
「そりゃ、良い考えだ」

若衆に囲まれ、智香は震えている。

ごろつきどもはどこまでも智香を嬲り尽くすつもりだった。犯しただけでは飽き足ら
ず、鬼六一家の親分である、灘鬼六の情婦にしようというのだ。その為に、執拗な
までに智香のもとを訪れ、脅し、なだめすかしてここへ連れて来ている。断れば、
自分たちに陵辱されたと世間に喧伝してやるとも言われて、どうしようもなかった。

智香の白い肌には良くなめした縄がかけられている。被虐の愉しさをこれから
たっぷりと味わってもらう為、あえてそのようにしてあった。

「そんなに怖がるな。男の良さを時間をかけて、たっぷりと教えてやる」
「・・・はい」

智香はもう、以前の自分には戻れないと分かっていた。ごろつきどもの男根の餌食
となり、親分の情婦となるしか道が無い。

周りを見渡せば反り返った男根が何本もあって、今からあれで自分が女である事
を知らしめてくれるのだと思うと、何故だか下半身が熱くなる。そして、

「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

智香はゆっくりと頭を下げ、ごろつきどもの前に傅いたのであった。






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