ジャスティアス3
-3-
シチュエーション


彼女がそういい終えた瞬間、触手たちが一気にジャスティアスの体に襲い掛かった。
快感の波状攻撃がジャスティアスの気力と体力を徐々にそぎ落としていく。
やがて、消耗し切った彼女の両足を、触手たちがゆっくりと左右に開いていき……。

「ああっ!!…やめろぉ!!…やめてくれぇえええええっ!!!」

自らの欲望が生み出した惨劇を止めようと叫び続ける少年の前で、
快楽と苦痛がねじり合わさった極太触手が入り口の部分にあてがわれる。

「ひぃ…うあ……ああっ…」

そして、小さく悲鳴を漏らしたジャスティアスの膣内へ、触手が一気に挿入される。

「ひぐぅ…うああああああああああああああっ!!!!!」

未だ一人の男も知らなかった少女の中に、破瓜の痛みと挿入の快感に伴って、
触手の与える強烈な快感と苦痛が叩き込まれる。
流れ落ちる赤い血さえも潤滑油に変えて、激しいピストン運動が始まる。

「ふう、一時はどうなる事かと思ったけれど……」
「ああ、これでジャスティアスも終わりだ………」

双頭の魔人の見下ろす中、真の地獄への扉がついに開かれたのだ。

「あっ…うああっ…くぅ…や…あああああああんっ!!!!!」

じゅぷじゅぷと、ピンクと紫の触手がジャスティアスの膣内を攪拌する。
極太触手の物理的な破壊力と、注ぎ込まれる苦痛と快楽のパルスによって、
彼女はマトモな性行為ならば絶対に味わう事はあり得ない、凄絶な感覚で膣内をいっぱいにされる。
渦巻く凄まじい快感と苦痛は彼女の神経を体の内側から徹底的に焼き尽くす。

「そんな…痛いのに…苦しいはずなのにぃ……なんで…こんなぁあああああああっ!!?」

やがてそれらの感覚は、体の外側からピンクと紫の触手で責められた時と同じように、彼女の中で混ざり合い一つになっていく。
迸る快感と苦痛の濁流はもはや人間の脳ではまともに認識する事もできない。
次第にそれらは、ただ圧倒的な熱量の塊と知覚され、ジャスティアスはその灼熱に翻弄されていく。

「だめぇええっ!!…そんな、奥突かないでぇええっ!!!熱いのっ!!熱くて…熱すぎて…私、もう……っ!!!」

通常の触手二本分を一つにした極太触手の質量と存在感が、ジャスティアスの膣内の奥の奥までを侵略する。
触手の先端が子宮口を強かに叩くたびに、彼女の体を呼吸が止まりそうなほどの快感の電流が流れていく。
体の内側から、快感と苦痛の炎に神経を焼かれ、大質量の触手に内側から徹底的に破壊しつくされる。
他の触手たちも、ジャスティアスの体のあらゆる場所を愛撫し、地獄と紙一重の悪夢のような快楽で彼女の脳内を埋め尽くす。
だがしかし、触手達に込められた欲望は、その程度で納まってくれるものではなかった。

「…ふあぁ…そこ…ちがうぅ……っ!!」

一本の触手が彼女の後ろの穴に忍び寄り、その入り口の部分を愛撫し始めたのだ。
可愛らしく窄まったその穴を触手は快感攻撃で徹底的に蕩かして、次第にその締め付けを緩ませていく。
そして、ヌルリ、触手は小さく開いた隙間からその身を中に滑り込ませた。

「ひやぁあああああああっ!!!!だめぇええっ!!うしろっ…そんな奥まで入らないでぇええええええっ!!!」

お尻の中に入り込んだ触手は、ピストン運動を繰り返しながら、次第に奥へ奥へと侵入していく。
本来なら、快感を得るためにはそれなりの経験が必要な筈のアナルセックスは、
触手が直接送り込む快感の波動に塗り潰され、本来感じるはずの苦痛を全く感じる事が出来ない。
その事があまりにもおぞましく、ジャスティアスは身をよじって、これ以上の触手の進入を妨げようとするが、
彼女の心とは裏腹に、触手は直腸のS字カーブを越えて,腸の内部を蛇のように這い進んでいく。

「ひ…ぐぅう…ああ…くぁあああっ!!…奥へ…どんどん奥へきてるぅ…こんなのおかしいっ!おかしいよぉっ!!」

ぐねぐねと曲がりくねった腸内が、触手に犯され、おかしくなりそうなぐらいの快楽にお腹の中が満たされていく。
そしてやがて、十二指腸を越えた触手は胃の内部に侵入し、そこからさらに食道を這い上がってくる。

「あ…かはぁっ!!…しょくしゅ…からだのなか…のぼってくるよぉおおおおっ!!!」

触手によって臓腑を満たされる未知の感覚に、ジャスティアスの全身がゾクゾクと震える。
触手はついには食道を登り切って、喉の奥から姿を現す。

「んぅ…んんぶぅ…くぁ…あがぁああっ!!…いやぁ…こんな…いやぁああああああっ!!!」

食道から喉にかけては触手の太さでパンパンに膨らみ、呼吸すらままならない。
しかし、それ以上に強い快感を触手から流し入れられて、彼女のお尻の穴から口までは一本の長大な快楽器官へと成り下がってしまった。
その快楽器官を犯しぬくため、ジャスティアスを串刺しにしたその触手はゆっくりと前後運動を始める。

「う…んくぅ…んんっ!!…んぉおおおおおっ!!!…んぅ…あ…くぁああああっ!!!!」

最初は穏やかだった貫通触手の動きは、次第に内臓にダメージを与えかねないほどの激しいものへと変わっていく。
だが、体の中全てを蹂躙され、喉を触手に塞がれて呼吸も困難なのに、ジャスティアスはこの陵辱に対して快感しか感じる事が出来ない。
腸が、胃が、食道が、喉が、触手に満たされ、メチャクチャに破壊される事に歓喜の声を上げている。
このままでは、この快感によって殺されかねない。
恐怖のあまりジャスティアスの瞳から零れ落ちた涙は、しかし、すぐに快感に打ち震える喜びの涙へと変わる。

(だめ…こわされちゃうっ!!アソコをぐちゃぐちゃに犯されて気持ちいいのか苦しいのかもわかんなくなって、
内臓をぼろぼろに壊されてるのに気持ちいい事しか感じられなくて……このままじゃ…私……っ!!!)

膣内を蹂躙する苦痛と快楽の灼熱嵐、内臓全体を快感漬けにされ壊されていく貫通地獄、
二つの穴を信じがたい方法で犯されて、ジャスティアスは自分の心がボロボロと音を立てて崩れていくのを感じていた。
このまま犯され続ければ、遠からずこの地獄の陵辱だけに反応する、生きた屍へと変えられてしまうのは目に見えていた。
だが、今の彼女には何一つ脱出の手段は存在しなかった。
抵抗するためのごく僅かな力さえ残されていなかった。

「ひぐぅ…ああっ!…んくぅうううっ!!!…んんっ!!…ん…あああああああぁっ!!!!」

アソコが、お尻の中が、お腹が、焼き切れそうに熱くて気持ちよかった。
全身をしつこいぐらいに愛撫してくる触手によって、体中がべとべとの粘液に塗れ、アーマーのほとんどは跡形もなく壊されてしまっていた。
涙で滲んだ視界には、苦しそうな、悔しそうな表情で俯いた祐樹の姿が見えた。
自分の欲望が引き起こした陵辱劇を、止める事もできずただ見ている事しか出来ない苦痛に、彼はぼろぼろと涙を零しているようだった。
違う。あなたは悪くない。
そう言ってあげたかったけれど、喉まで触手に犯されている現状で、何か言葉を発するのは不可能だった。
いまや、ジャスティアスは正義の変身ヒロインなどではなく、触手達の欲望を満たすための肉穴にすぎないのだ。

「……ああっ!!?…んんぅ…んくぅ…っ…ん…ああ…ひああっ!!!!」

と、その時、ジャスティアスのアソコの周囲に、新たに四本の触手が接近してきた。
ピンクと紫がそれぞれ二本ずつ。
それが、ピストン運動を繰り返すねじれ極太触手の両サイドに取り付いて……

「あっ!…ひああっ…や…いやぁあああああああああああああああっ!!!!!」

自分の入る隙間を見つけると、一気にそこから進入して、ねじれ触手と一体化する。
二本だった触手が、六本に増え、ジャスティアスのまだ幼いアソコは引きちぎれそうな苦痛を味わう。
だが、それ以上に3倍に増えた苦痛と快感がそれぞれに増幅し合い、彼女の膣内をさらなる焦熱地獄へと変えていく。

(…ああああっ!!…熱いっ!!…こんな……熱すぎるよぉおおおおおっ!!!!!)

身を捩じらせ、一気に増大した苦痛と快楽に耐えようとするジャスティアス。
しかし、今度はお尻の穴の付近に、新しい触手が接近してきて……。

「ん…んんっ!!?…んぅうううううううううううっ!!!!!?」

これもまた僅かな隙間から侵入し、そのまま腸を、胃を、食道を這い上がってくる。

二本に増えた触手は互いにうねりながら、ジャスティアスの内臓を犯し、さらに激しい快感で内側から彼女を溶かしていく。
さらに、触手達は地獄の責めにのたうつ彼女の体を、そっと道路に横たえて……

(えっ?…道路?…アスファルト?…私、なんでこんな所に寝かされて……!?)

戸惑うジャスティアスの周囲に、怪人の針によって操られている人々を呼び寄せる。
男も女も、老いも若きも、あまつさえまだ幼い子供達までもがギラギラとした瞳でジャスティアスを見つめる。

(…あ…何?…この人たち…一体何を……?)

そして、ある者は硬く勃起した自分のモノを取り出し、ジャスティアスの肌に押し付けて擦り始めた。
また別の女性は、ジャスティアスの上半身を起こし、触手に混じってその繊細な指先で乳房への愛撫を始めた。
兄妹なのだろうか、幼い男の子と女の子は、ジャスティアスの耳たぶにしゃぶりついて、ぬちゃぬちゃと舌先で愛撫し始めた。
ジャスティアスの手を使って、自分のモノをこする者がいた。
膝の裏や、腋の下に、同じく自分のモノを押し付けて、激しく腰をゆする者がいた。
貫通触手が飛び出したジャスティアスの口に、さらにディープキスを行う女性がいた。
人々は、触手に蹂躙され抵抗できないジャスティアスの体を、徹底的に弄んだ。
押し付けられる肉棒の熱、複数の人間による愛撫、それらは既に限界を超えていたジャスティアスをさらなる深みへと落としていく。
(ああっ!!だめええっ!!体中…おかしくなっちゃう……っ!!)

やがて、自分の肉棒をジャスティアスの体に擦りつけていた男たちが、次々に射精を始める。
降り注ぐ、灼熱の白濁シャワー。
濃厚な臭いとその熱が、触手によって快感を徹底的に刷り込まれたジャスティアスの全身を襲う。
一発浴びせられる度に、彼女の体はビリビリと震え、意識は何度も寸断される。
その間にも触手による陵辱は絶え間なく続き、苦痛と快楽と熱の嵐の中で彼女は確実に壊されていった。

(ああっ…だめっ…私…熱いのも、苦しいのも、気持ちいいのも、ぜんぶうけいれちゃってるよぉ……っ!!!)

ジャスティアス自身もそうやって自分が壊されていくのを全身でひしひしと感じていた。
快楽はまるでジャスティアスの精神を砂糖菓子のように蕩けさせる。
苦痛はジャスティアスの全身をズタズタに引き裂いていく。
そして、それらが混じりあった凄まじい熱が、彼女の心を、体を、魂を徹底的に焼き尽くす。
高まり合うそれらの感覚が、もうすぐ自分の中で限界に達しようとしているのを、ジャスティアスは感じていた。

(うあ…いやぁ…このままじゃ…わたしっ…わたし、きえちゃうよぉ……っ!!!!)

蕩かされて、引き裂かれて、焼き尽くされて、ジャスティアスの全てが消されてしまう。
既に思考はほとんどマトモに働かず、拘束された体はされるがままに嬲られている。
このままでは、僅かに残った彼女の魂さえ、押し潰されてしまいそうだ。
だが、彼女にはもう何もできない。
単に抵抗する力がないというだけではない。
与えられる熱を、苦痛を、快楽を、彼女自身が激しく求め始めているのだ。

(ひぅ…くあああっ!!…だめっ!!…だめなのにっ!!!…わたし、ほしくてほしくてたまらないよぉおおおおっ!!!!!)

触手の束がジャスティアスの膣内を抉るように犯しぬく。
貫通触手のもたらす快楽に心と体が溺れていく。
操られた人たちに陵辱されて、玩具にされて、歪んだ快感に酔い痴れてしまう。
熱い。
体中が熱い。
だけど、熱くて熱くておかしkなりそうなのに、心と体はさらなる熱を欲しがってしまう。

(うあああっ!!!…だめぇっ!!…わたし…もう…しんじゃうぅ!!しんじゃうぅううううううううっ!!!!!)

その瞬間、ジャスティアスのアソコを犯す触手が今までで一番深く強く彼女に突き入れられた。
貫通触手が口からお尻の穴まで一気に引き抜かれて、内臓が擦られる感覚に全身が歓喜する。
ジャスティアスの中で無限に増幅され続けた熱が、一気に爆発した。

「ひあああああっ!!!イクイクイクイクぅううううっ!!イっちゃうぅううううっ!!わらひ、イっちゃうよぉおおおおおおっ!!!!」

巨大なダムが決壊したかのような、凄まじい絶頂感がジャスティアスを呑みこんだ。
心と体が砕け散って、彼女の体は激しく痙攣し、やがて全ての力を失いぐったりと横たわる。

「ぁ……ぅぁ…ぁ…ぁ……」

うわ言を呟きながら、焦点の定まらない瞳で宙を見つめる彼女に、かつての面影は残されていなかった。
触手から解放された彼女の無残な姿を見ながら、祐樹は声を殺して泣いていた。

「う〜ん、どうやら終わったらしいね」
「そうだね、後は後始末を残すのみだ」

眼下の陵辱劇に決着が着いた事を見届けた双頭の魔人は、翼を開き宙に飛び出す。

「ふふふ、素敵だったよジャスティアス。正義の味方とは思えない、イキっぷり、楽しませてもらったよ……」
「例の少年君もね。君がいなければ、この復讐はなりたたなかった。本当にありがとう……」

双頭魔人が機械の右腕を真下に向ける。
すると、その右腕は音を立てて変形し、巨大な砲身に姿を変える。

「「さあ、消えてくれ!!君たちは、もう、用済みだっ!!!」」

膨大な量の光の粒子が溢れる砲口が、ジャスティアスや祐樹達に向けて照準される。
力尽きたジャスティアスも、泣きじゃくる祐樹も、それに気付く事はない。
だが、その時である。

「させるかよぉおおおおおおおおおっ!!!!!!!」

叫び声と共に真紅のバイクが飛び出した。
自衛隊・Dフォースのために開発された大型装甲バイク・ロードクラッシャー。
Dレッド=赤崎はジャスティアスを助け、街の人々を操る怪人を倒すべく、ここまでやって来たのだが……

(畜生っ!!遅かったのか……?)

無残な姿で横たわるジャスティアスの姿を見て、Dレッドは悔しそうにうめく。
怪人に操られた人々の数は、Dレッドの予想を遥かに上回り、幾重にも渡る防衛網を突破するため、かなりの時間がかかってしまった。
(それでも命だけは…っ!!嬢ちゃんの命だけは消させるわけにはいかねぇ……っ!!!)

ジャスティアスを狙う双頭魔人の大砲と、Dレッドの乗るバイク、どちらが早くジャスティアスの元に辿り着くかの勝負だ。
下手をすれば自分まで消されてしまいかねない状況だったが、今のDレッドにそれだけの事を考える余裕はなかった。
ただひたすらに全速力でジャスティアスの元へと走る。

(きっと、嬢ちゃんは俺のことを恨むだろうな……)

たとえ間に合ったとしても、怪人にされた少年や操られている周囲の人々まで助け出す余裕はない。
心優しい正義のヒロインには耐えられない事だろう。

(だけど、それでも構わねえんだっ!!!もう一度っ!!もう一度、嬢ちゃんの声を聞かせてくれっ!!!)

疾走するバイクにアルベルとガンデルは気付いていたが

「今はこちらを優先しよう。彼にも随分恨みはあるけれど、それは追い追いにね……」
「ああ、わかってるよ。早くあの目障りな女を消し飛ばそう……」

あえてそれは無視して、ジャスティアスの抹殺にだけ意識を集中させる。
おそらく、バイクは彼女を助ける事ができない。
発射前に間に合っても、力なく横たわるだけのジャスティアスを助け起こす時間はない。
上手くすれば、二人まとめて消し飛ばす事ができるかもしれない。
そして、その事にはDレッド自身も気が付いていた。

(駄目だ、このままじゃ、嬢ちゃんを助けるどころか……)

しかし、その時、奇跡が起こる。
力尽きていた筈のジャスティアスが足をふらつかせながらも、自力で立ち上がったのだ。
これならば、彼女を助け出す事ができる。

「嬢ちゃああああああんっっ!!!!!」

Dレッドが叫ぶ。
彼女の体を捕まえるために腕を伸ばし、ジャスティアスに呼びかける。

「俺の腕につかまれぇええええええっ!!!!」

ジャスティアスとの距離が近付く。
彼女はゆっくりとDレッドの方に振り向いて……。

「……隊長さん…」

今や目の前にまで近付いたバイクを、Dレッドの姿を見つめ……。

「………ごめんなさい…」

しかし、Dレッドが伸ばした腕を掴まなかった。

「なっ!?」

呆然とするDレッドに、ジャスティアスは申し訳なさそうに微笑んで、そして上空で大砲を構える双頭の魔人を睨みつけた。

「ジャスティアス…何のつもりだ!?」
「ぼ、僕らを舐めているのかい……っ!!!」

ジャスティアスの行動の意味を理解できず、双子は苛立たしげに叫んで、

「「いいだろうっ!!!そんなに消されたいのなら、望み通りにしてあげるよっ!!!!」」

その苛立ちごと消し飛ばすかのように、砲口から光の奔流を解き放った。
ジャスティアスは、迫り来るエネルギーの塊に対して、怯んだ表情も見せず、そっと頭上に手をかざす。

「ジャスティー・シールドぉおおおおおおっ!!!!!!」

そして叫び声と共に、祐樹や、操られている人々を守るように光のドームを発生させる。
双子の放ったビームをジャスティアスの張った光のドームが受け止める。

「嬢ちゃん……お前ってヤツはどこまで……」

その光景を見つめながら、Dレッド=赤崎は悔しそうに、悲しそうに呟いた。
あの時、ジャスティアスが立ち上がったのは、ただひとえに双子のビーム攻撃から周りの人間達を守るためだったのだ。
彼女はどこまでも正義の味方だった。
ボロボロになった体を、ただ人々を守りたいという一心で奮い立たせたのだ。
おそらく、これが無謀な行動である事は、彼女自身が誰よりもわかっていたのだろう。
今の彼女には、ビームを耐え切るだけの力は残されていないのだ。
あの光のドームも、ほとんど火事場の馬鹿力だけで発生させているのだろう。
だからこそ、彼女は『ごめんなさい』と言ったのだ。
彼女を助けに来た赤崎の願いをないがしろにして、無謀な勝負に出る事を詫びていたのだ。

「ばっかやろぉおおおおおおおおおっ!!!!!!」

Dレッドの悲痛な叫びを聞きながら、一方のアルベルとガンデルはニヤニヤと笑っていた。
最初にあのバリアーを張られた時は驚いたが、どうやらジャスティアスにはそれを維持し続けるだけの余力はないようだ。

「このまま出力を上げて押し切ってあげるよ」
「出来もしない事はやらずに、あの赤いヤツと逃げていた方が見のためだったねぇ…」

じわじわとビームのパワーを上げていく。

光のドーム=ジャスティー・シールドの耐久力はもはや限界らしく、全体の形状がビームに押されて歪み始めていた。
だがしかし、双子の攻撃に耐え続けるジャスティアスの瞳には一点の曇りもなかった。

「守ってみせる。みんなを、守ってみせるんだ……っ!!!」

激しい陵辱に、彼女の心は、体は、魂は、一度は砕け散った筈だった。
だが、『人々を守りたい』、ただそれだけの気持ちが、ギリギリのところで彼女を蘇らせた。
怯む事も、恐れる事もない。
心の奥底から湧き上がるその気持ちこそが、ジャスティアスの力の最大の源なのだから。

そして、その背後で、そのジャスティアスの姿を、祐樹はずっと見つめていた。
人々を守るため、巨大な力に立ち向かうジャスティアスの背中。
そこに祐樹は、とある少女の影を重ねる。

(…僕はどこまで馬鹿だったんだろうな、穂村……)

祐樹を救おうとして、祐樹に『偽善者』と罵られた少女、穂村あすか。
だけど、今の祐樹には分かる。
彼女は偽善者などではない。
祐樹を庇っていじめの首謀者達に立ち向かったその瞳に、嘘も偽りも存在しなかった。
ただ、彼女は救いたかっただけなのだ。
今のジャスティアスが一心に人々を救おうとしているように、穂村あすかも祐樹の事を救おうとしていたのだ。
祐樹の心の奥底から、強い一つの感情が湧きあがってくる。
それは……。

(守りたい。彼女を…ジャスティアスを……っ!!!)

祐樹の欲望が作り出した怪人に陵辱されながらも、彼女は再び立ち上がった。

その命の炎を、こんな所で消させてなるものか。
祐樹の心が、体が、理性が、本能が、つまりは彼の全存在が叫ぶ。

(…僕が助けるっ!!!彼女を絶対に死なせるものかっ!!!!!)

すると、その心の叫びに応えるかのように、ゆらりと、祐樹を取り込んだ怪人の体が立ち上がった。

「これは…一体?」

どれだけ叫んでも、ジャスティアスへの陵辱をやめなかった怪人の体が、今は祐樹の意のままに動く。
不思議に思っていた祐樹だったが、やがてある事に気が付く。

(そうか、あの時の僕は……僕が死ぬ事で全てを終わらせる事ばかりを考えていたから……)

汚く醜い自分が死ぬ事で、他のみんなが、ジャスティアスが救われる。
だが、結局のところ、それは自分を否定するか、世界を否定するかの二つしか選択肢を持たない破滅的な感情だったのだ。
それでジャスティアスを救おうなどと、それこそ『偽善』というものだ。
だから、この怪人の体はそれを敏感に嗅ぎ取り、祐樹の持つ破滅への願望をジャスティアスに叩きつけたのだ。
全ては自分自身の罪、祐樹には悔やんでも悔やみ切れない。
だがしかし、今の彼はただ一心に、ジャスティアスを救う事だけを願っていた。
本能も理性も欲望も、全てひっくるめた祐樹自身がそれを望んでいた。

だから……っ!!!!!

「ジャスティアスっ!!!!」

祐樹は彼女の名を呼び、彼女の腕に、足に、触手を巻きつける。

「えっ!?…柳原君…っ!?」

一瞬動揺したジャスティアスだったが、次の瞬間には祐樹のやろうとしている事を理解していた。

(体に力が漲る。エネルギーが流れ込んでくる……っ!!!)

この触手がジャスティアスの生命エネルギーに干渉できるなら、
同じ要領で彼女に自分のエネルギーを分け与える事ができるのではないか。
それが、この土壇場で思いついた祐樹の策だった。
単にエネルギーを与えるだけでなく、陵辱によって乱されたジャスティアスの生命エネルギーの流れを整え、彼女を回復させる。
砕け散ったアーマーはみるみる修復され、力を取り戻したジャスティー・シールドはビームを押し戻していく。

「「うわああああああああああああああああああっ!!!!!!」」

ジャスティアスと祐樹、二人の叫びが重なる。

「な、何が起こってるんだ!?」
「まずい、このままじゃ、逆に僕らの方が吹き飛ばされかねない…っ!!」

迫り来るビームから逃れるため、アルベルとガンデルは右腕ごとビーム砲を切り離して離脱する。
その直後、ビーム砲は押し戻されてきたエネルギーに飲み込まれ、完全に消滅した。
そして、アルベルとガンデルの見下ろす先には、完全復活したジャスティアスの姿があった。
彼女の背中には、彼女に全ての力を分け与え、普通の人間に戻った祐樹がもたれ掛かっていた。
自分を傷つけ、死を選んでまでも、ジャスティアスを助けようとしてくれた少年。

(柳原君の想いが、最後に私を救ってくれたんだ……)

ジャスティアスは力尽きた彼の体を、一旦その場に横たえさせようとして

「…ほむらぁ……」

その言葉を聞いた。

「…ありがと、ほむら…ごめんな……」
「柳原君……」

胸にこみ上げる熱い想い。
もう絶対に負ける事はない。
そして、体中に漲るエネルギーが、ジャスティアスのさらなる力を呼び覚ます。

「ハイパー・ジャスティーソードッッッ!!!!!!」

迸る紫電と共に、ジャスティアスの胸部装甲から、彼女のエネルギー源であるクリスタルが分離する。
そして、そのクリスタルを中心に金色に輝く剣が形成される。
それは、ジャスティアスの身長を遥かに越える巨大な剣だった。
ジャスティアスは巨大剣を両手で掴むと、背部ブースターで空中高く舞い上がる。

「アルベル、ガンデル、観念しなさいっ!!!」
「くぅ…おのれ、ジャスティアスぅうううううっ!!!!」
「僕達が二度もやられると思うなよっ!!!!」

双子魔人はジャスティアスを睨みつけ、左腕から新たな武器を出現させる。
それは……

「デモン・スクリーマーッ!!!!」

それは、Dレッドの武器、レッド・スクリーマーのコピーだった。
唸りを上げる三連チェーンソーが、ジャスティアスに突きつけられる。

「さっきは私のフォトンバズーカのモノマネで、今度は隊長さんのモノマネだなんて……」
「モノマネとは失敬だな」
「これは君たちの原始的な武器を、僕達兄弟の力でパワーアップさせたもの、ただのコピーと思ってもらっては困るんだよ!!」

互いの獲物を構えて、正義のヒロインと双頭魔人は敵めがけて突撃する。

「うぉおおおおおおおおおおっ!!!!!!」

「「死ねぇえええええええええっ!!!!!」」

激突っ!!

ジャスティアスの金色の長剣はぶつかり合った三連チェーンソーをまとめて叩き斬り……

「隊長さんのは、そんなナマクラじゃなかったわよっ!!」

「「くそっ!くそっ!畜生ぉおおおおおおおっ!!!!!」」

そのまま双頭魔人の体を斜め袈裟に切り裂く。

「こ、こんな馬鹿な……」
「僕達が、また死ぬというのかっ!?」

そしてその直後、特殊細胞が蘇らせた悪魔の双子は、強烈な爆発と共に今度こそ消滅した。

アルベルとガンデルに今度こそ引導を渡し、地上に戻ってきたジャスティアスを迎えたのは、
こちらに向かって走ってくるDレッド=赤崎の姿だった。

「心配かけやがって、この馬鹿娘がぁあああああああっ!!!!」

ガシッ!!パワードスーツを装着したままの太い腕が、ジャスティアスの体を抱きしめる。

「痛いっ!!痛いです、隊長さんっ!!パワードスーツの抱擁は、ほんとに死んじゃいますからぁあああっ!!!」

「うるせえっ!!これぐらい当然の罰だああああああっ!!!!」

そのまましばらくの間、じゃれ合っていた二人だったが、不意に赤崎が腕の中からジャスティアスを解放し……

「ど、どうしたんですか、隊長さん?」
「………すまなかったな…」

そう言って、ヘルメットを外して、深々と頭を下げる。
その顔に浮かんだ沈痛な表情に、ジャスティアスは言葉を失う。

「もう少し、ほんの少しでも早く助けに来れたら、嬢ちゃんをあんな目に遭わせずに済んだかもしれないのに……」

今回の戦いでジャスティアスが受けた陵辱は、今までに彼女が味わったものとは比較にならない凶悪なものだった。
ジャスティアスは無残にも処女を失い、体中を蹂躙し尽された。
それは、戦いが終わっても拭う事の出来ない、深い深い傷跡として彼女の心に刻み付けられた。

「そうですね。今だって、辛くないって言ったら嘘になります」
「嬢ちゃん……」

ジャスティアスは自分の受けた陵辱の数々を思い出し、自分の体をぎゅっと抱きしめる。

「たぶん、これからずっと夢に出てきたり、思い出して苦しくなったりすると思います。だけど……」

そこで、ジャスティアスは顔を上げ、赤崎に対して精一杯の笑顔で微笑んで、こう続けた。

「だけど、私にはみんながいてくれるから……。
Dフォースのみんなや、学校の友達、お母さん………それに、何より隊長さんがいてくれる……。
みんなが私に、どんな辛い事にも負けない勇気を、元気を、私に与えてくれるんです………」

そこまで言うと、ジャスティアスはそっと赤崎の胸の中に体を預け

「だから、辛い時にはこうやって、隊長さんから勝手に元気をもらっちゃう事にします。………いいですよね?」

彼の体をぎゅっと抱きしめながら、そう言った。
赤崎はそんな少女の小さな肩を優しく抱き寄せる。

「わかったよ。いつでも来てくれりゃあいい。それで、嬢ちゃんが元気になれるんなら……」
「えへへ、正義の美少女ヒロインにモテモテで、隊長さん、幸せ者ですね……」
「そうだな。俺はきっと、とんでもない幸せ者なんだろうな………」

照れ隠しのつもりで少し茶化したジャスティアスの言葉にも、赤崎は素直に答える。
そんな言葉が返ってくるとは思わなかったのか、少し頬を赤らめたジャスティアスは、赤崎の腕に抱かれながら一人思う。
あの絶体絶命の状況の中で柳原祐樹が自分を助けてくれた事。
いつも自分を気遣い、助けてくれる赤崎の存在。
連なり合う無数の絆が、今の自分を守ってくれる。
辛い事も、苦しい事も、きっと限りはないけれど、この絆がある限り、自分は、ジャスティアスは絶対に負けたりしない。
自分を抱きしめる赤崎の腕の優しい感触が、その事を何より強くジャスティアスに確信させてくれた。






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