特装風紀シズカ2
-3-
シチュエーション


アヤナの気配を察知して、イーヴルプラントが驚愕の声を上げる。
弾丸の如き勢いで突っ込んでくる彼女を見て、イーヴルプラントは周囲のツタを自分にまとわせて、たちまち巨大な姿へと変わる。

「…そんな…こけおどし…なんて………っ!!!」

だが、10体の武装風紀システムの内、最大のパワーを与えられたアヤナの強化服をその程度で止める事など不可能だ。

「…がっ…ぐはあああああああああっ!!!!?」

不良獣の巨体はアヤナの拳を喰らって舞い上がり、そのまま背後の木の幹に叩きつけられる。
しかし、それでもアヤナの勢いは止まらず、イーヴルプラントが叩きつけられた木をなぎ倒し、そのまま相手を宙に吹き飛ばす。
さらに、傍らにあった木を無造作に引き抜き、ダメ押しとばかりにイーヴルプラントに投げつける。

「……今のうちに…シズカを……」

敵が身動き出来なくなっている隙にシズカを助けなければ。
周囲を見わたしたアヤナは、陵辱を受けた無残な姿でツルに捕らわれたシズカの姿を見つける。

「…シズカ…しっかりして……っ!!!」

ツルを引きちぎり、シズカの体を地面に横たえて、アヤナは必死で呼びかけた。
無残に引き裂かれたボディスーツ、ひび割れ、砕かれたアーマー、あまりに悲惨な陵辱の傷跡にアヤナは奥歯を噛み締める。

「あ……アヤナ…どうして……?」

やがて、アヤナの呼びかけによって目を覚ましたシズカが薄っすらと瞼を開く。

「…助けに…きたの……」
「…だめ…だよ…アヤナの武器はまだ………それに、今の私は……」

この時、アヤナは気付いておくべきだったのだ。
痛む体を起こそうとするシズカの下腹部、そこが僅かにではあるが、ぽっこりと奇妙に膨らみ始めている事に……。

「…大丈夫…不良獣を倒そうとまでは思ってない…でも、シズカや八峰君、他のみんなを助けないと………」
「違うの…っああ……今の…今の私の中には……ああっ!!…いやあああああああっ!!!!」
「…シズカ……しっかりしてっ!!…シズカ……っ!?」

突然悲鳴を上げたシズカに、アヤナは戸惑う。
だが、彼女はすぐにその原因に気付く事になる。

「……えっ!!?」

シュルルルッ!!!!
アヤナの首に、腕に、胴に、巻きついていくツタ。
突然の攻撃に、敵の正体を見極めようとしたアヤナはそれを目にしてしまう。

「…そ、そんな……シズカ…!?」
「いや……ぁ…見ないで……お願い…アヤナ……」

シズカの秘裂から伸びる何本ものツタ、それは徐々に本数を増やし、彼女の膣穴を押し広げていく。
そして、やがて彼女の子宮の奥から、ツタで編み上げられた体を持つ緑色の赤子が姿を現す。

「ああっ!!…いやぁ…やだ…私…こんなのでイっちゃうの……うああ…ああああああああっ!!!!!」

ビリビリと、全身を痙攣させて、借り腹による擬似出産の刺激に絶頂を迎えるシズカ。
本来、出産に伴う筈の凄まじい苦痛は、媚薬粘液の効果によっておぞましいほどの快楽へと置き換えられている。
捕らえた女性の生命の最後の一滴までをも、快楽を餌にして搾り取ろうという悪魔の業だ。

「…シズカっ!!…シズカっ!!!……くぅ…このバケモノぉ……シズカから出てけぇ……っ!!!!」

アヤナはシズカの胎内から生まれようとしているツタの怪物と必死で格闘する。
しかし、怪物のツタは引きちぎっても引きちぎっても次から次へと出現し、逆にアヤナの体に絡み付いていく。

「……これぐらいで……私の動きは…封じられないっ!!!!」

確かに、か弱いツタがいくら集まろうと、パワータイプのアヤナの強化服を封じる事は出来ない。
しかし、ツタの怪物、異形の赤子の目的はそれとは全く別の所にあった。

「……っああああ!!!!出るっ!!赤ちゃんっ!!…不良獣の赤ちゃん、出てきちゃぅうううううっ!!!!!」

シズカの叫び声と共に胎内から完全に姿を現した緑の赤子はアヤナの顔に向かって飛びつく。

「…きゃ……ああぅ…な、何を……そんなの…口にねじ込むな…あ…んむぅううううっ!!!!」

アヤナの口に、緑の赤子の体に咲いた花がねじ込まれ、粘液が流し込まれていく。
それは、あっという間にアヤナの力を奪い去り、神経を淫らな熱で冒していく。

「あっぷ…うぁ……ああ……そん…なぁ……」
「ああ……アヤナぁ……」

ガクリ、その場に膝をつくアヤナを、シズカの胎内で得た生命力を使い一気に成長した赤子、植物怪人のツタが拘束する。

「案外と造作もないものですねぇ……ですが、特装風紀を二人も相手に出来るとは、素晴らしい幸運だ……」

そして、力尽きたアヤナの耳に、癇に障る男の声が届いた。
ようやく木を押しのけて復活したイーヴルプラントが再びこの場に戻ってきたのだ。
形勢は再び逆転、イーヴルプラントは邪悪に顔を歪ませながら、こう言った。

「ふふふ、存分に楽しんでください……なにしろ、あなた達の相手は、ほら、こんなにいるんですから……」

アヤナとシズカの周囲を、いつの間にか植物怪人達が取り囲んでいた。
絶望的な状況の中、淫欲の宴の第2幕が始まろうとしていた。

じゅぷじゅぷ、ぬちゃ、ぴちゃぴちゃ。

粘つく水音が木々の合間に響き、それに混じって切なげな二人の少女の艶声が悲痛なハーモニーを奏でる。

「…ぁ…うぁ……あぁ…も…やだ……やめて…んぷぅ…んんぅっっ!!!」

粘液まみれの顔を無理矢理持ち上げられ、植物怪人の擬似男性器を小さな口にねじ込まれるアヤナ。
強化服は既にシズカと同じくズタボロに破壊され、幼いその肉体を無残に晒している。
彼女の小さなアソコは、入り口をツタによって強引に広げられ、彼女の体には大きすぎるほどのモノをねじ込まれている。
しかし、シズカと同じく媚薬粘液によって被虐の悦びに目覚めさせられたアヤナは、その破壊的なピストンにも嬌声を上げてしまう。
「…っあああ…あ…はげし…やめ……そんなの…むりぃいいいい……っ!!!」
「…ああっ…アヤナっ!!…アヤナぁああああああっ!!!!!…いやっ…こんな…アヤナまで…ああああああっ!!!!」

目の前で陵辱を受ける親友の姿に、必死で手を伸ばそうとするシズカだが、彼女を取り囲む植物怪人達がそれを許さない。
媚薬成分によって限界まで感度を高められた肉体は、彼等の乱暴な愛撫にも蕩ける快楽を感じ、
凶悪なピストンで膣奥を強かに打ちつけられる度に、小さな絶頂に意識をホワイトアウトさせられてしまう。

「ひあっ…あああっ…また中に種、出されてるっ!!…出されながら…私…また…イっちゃうのぉおおおおおおっ!!!!」

イーヴルプラントの淫花が植えつける種子が膣内を通り、子宮に送り込まれる異物感さえ、今の二人にとってはたまらない快感だ。
二人の子宮にもう既にいくつも送り込まれた種子たちは、彼女達の生命力を糧に成長している。
次第に膨らみ始めたシズカとアヤナの腹部の様子を見て、イーヴルプラントは呟く。

「くっくっくっ……そろそろかな…?」

やがて、シズカとアヤナ、二人の腹部の変化は限界に達する。

「あっ…いやっ……また……また……なの…!?」
「だめぇ…もうやだっ…もう産みたくないのにぃいいいいいっ!!!!」

響き渡る二人の少女の悲鳴。
植物怪人達は一旦、彼女達のアソコから擬似男根を引き抜き、呪われた赤子の為に通り道を開ける。
やがて、彼女達の胎内の奥深くから、這いずるようにしてそれは姿を現す。

「ああっ!!…あああああっ!!!……なんで!?…どして…こんなのが気持ちいいのぉ!!!!」
「いや……イきたくな…ぁ…うあああああああああああああっ!!!!!!!」

まずはツタで編まれた小さな手が、次に緑色の頭が出現する。
緑の赤子の肉体は母親達の膣壁を擦り上げ、高濃度の媚薬成分を含んだ羊水を塗りつけて、シズカとアヤナを強制的に快楽に導く。

「ああああっ!!!イクぅううううううううううっ!!!!!」
「…イっちゃうぅううっ!!!…イクのぉおおおおおっ!!!!!」

おぞましい強制絶頂と共に、ボトリ、ボトリと、緑の赤子が地面に落ちる。
そして生れ落ちた2匹の赤ん坊は母親の体から奪い取った生命力を使い、一気に成長を遂げる。
そして、彼らもまた、二人の少女を犯す陵辱者の一員となるのだ。

「ははははは、母体の卵子を使わない借腹の擬似出産とはいえ、交合の歓びと、産みの喜び、二つを同時に味わえるとは、
あなた達はこれ以上ないくらいの幸せ者ですよっ!!!!!」

心底愉快そうに笑うイーヴルプラントの声も、今の二人には届かない。
無限に続く陵辱地獄の中、望まぬ快楽の炎に心と体を焼かれ、擬似妊娠と出産によって生命力を奪われ、シズカとアヤナの二人は確実に衰弱していく。

「…ごめんね…アヤナ…ごめん……私のせいで…こんな…ひどいこと……」
「……いいよ…シズカと…いっしょなら…私…辛くない……」

もはや完全に戦意を失ったアヤナとシズカの体を、植物怪人達は子供に小用を足させる時の様な姿勢で担ぎ上げる。
そして、二人の体を強引に密着させて、さらなる行為を続ける。

「ああっ…アヤナ…熱いよ…アヤナのからだ……すごく熱くて…私ぃ……!!!」
「…シズカ……好きなの…大好き……だから…ああああっ!!!!」

絶望に沈む少女達は、目の前にある愛する友達のあたたかみに救いを求めた。
粘液塗れの体を擦り合わせ、互いの敏感な部分をまさぐり、幾度となく口付けを交わす。

「んっぷ…うぅん……んくぅ…ぴちゃぴちゃ……あ…アヤナ…アヤナぁああああっ!!!!」
「ふあっ…あああっ……シズカのおっぱい…やわらかい……」

ボロボロと涙をこぼしながら、互いの肉体を貪り合う二人の少女達。
その間にも、植物怪人達の容赦ないピストン運動は続き、二人の心と体を快楽の底なし沼に引きずり込んでいく。
親友の優しい指先に、媚薬で蕩かされた快楽神経を撫で回され、何度も嬌声を上げる。
今や、シズカとアヤナにはほとんどまともな思考力は残っておらず、快楽に流されるまま二人は乱れていく。
ボトリ、ボトリ、再び二人の胎内から緑の赤子が産み出されるが、もはや二人がその快感に対する拒否反応を示す事もない。

「…んっ…ああ…赤ちゃん、また生まれて……ああ…気持ちいいのぉ……」
「…シズカ…もっともっと犯してもらお……それで…もっともっと赤ちゃん産も……ずっと一緒に、気持ちよくなろ……」

擬似出産の狂った快楽に脳髄の芯まで冒されながら、二人は舌を絡ませ合い、深く深く口付け合う。
陵辱に直接参加できない植物怪人達も二人に向かって媚薬粘液の雨を降らせ、
もはや何が善で悪なのか、何が正しくて何が正しくないのか、全てを見失った二人は快楽の中で壊れていく。

「ああっ!!…またくるっ!!!またきちゃうのっ!!!アヤナぁあああっ!!!!」
「うん、シズカ…いっしょに…いっしょにイこう…きもちよくなろぉ……っ!!!!!」

嵐のようなピストン運動が、シズカとアヤナの体を滅茶苦茶に揺さぶる。
二人はしこり立った互いの乳首を、唾液に濡れた唇を、熱く燃える肌を擦りつけ合って、歪んだ幸せの中で限界へと近付いていく。
植物怪人達の、そしてシズカとアヤナの行為はこれまでにない最高潮に達し、
そしてついに二人の意識は最大級の絶頂の中で白い闇に呑み込まれて掻き消える。

「ふあああああああああっ!!!!アヤナっ!!!!アヤナぁあああああああっ!!!!!」
「シズカぁああああっ!!!!あっ…ひあああああっ!!!!…シズカぁあああああああああっ!!!!!」

ひときわ大きな悲鳴を上げて、もはや全ての力を失った二人の特装風紀は、糸の切れたマリオネットのようにその場に崩れ落ちた。

それからほどなくして、突然に立ち上がったイーヴルプラントが愉快そうに声を上げた。

「ふふふ、どうやら、君達の最後の希望も潰えたらしいぞ……」

林の向こうから、植物怪人達が何かを運んでくる。
それは、ツタにがんじがらめにされたコウタのパワードスーツだった。

「そんな……コウタ…くん……」

空ろな意識の中、シズカは絶望の声を漏らす。
彼を危険に晒すまいとして先走った挙句、親友を巻き込み、さらには救う筈だったコウタまでもが捕まってしまった。
自分の軽率な行動が招いた最悪の事態に、シズカは涙を流す事しかできない。
だが、そこで彼女は妙な事に気付く。

「……あれ、パワードスーツの装甲が開いて……中が……」

装甲の隙間から垣間見たパワードスーツの内部、そこには誰もいなかった。
やがて、イーヴルプラントも同じ事に気がつく。

「ど、どういう事だ?スーツを捨てて逃げたのか?だが、林の周囲には見張りを立てて……」

驚愕の声を上げたイーヴルプラント。
彼の疑問は次の瞬間、回答を与えられる事になる。

「えっ!!?」

キラリ、林の奥、そこだけが高く盛り上がった小高い丘に光が見えた次の瞬間

ドガァアアアアアンッッッ!!!!!

爆音と共に何体かの植物怪人が吹き飛ばされた。

「インパクト……キャノン…?」

呆然と呟いてから、シズカは気がつく。
抜け殻となったパワードスーツの右アームから本来ある筈のその武器が消えている事に……。

「くっ……次ぃ!!!」

木々に囲まれた丘の中で唯一見晴らしの良い岩の上にコウタはいた。
本来はパワードスーツ用の武器であるインパクトキャノンの重量と反動に耐えながら、冷静に一発一発砲撃を打ち込んでいく。
外す事はできない。
林の中には、シズカやアヤナだけではなく、不良獣の陵辱を受けた女子生徒達がいるのだ。

「やっぱり、反動がとんでもないな……でもっ!!!」

これだけがコウタに残された策だったのだ。

コウタのパワードスーツでは、イーヴルプラントを守る植物怪人の大群を破る事はできない。
しかし、シズカを見捨てて逃げ帰る気も、彼には更々なかった。
彼はパワードスーツを脱ぎ捨て、それを囮に自分はインパクトキャノンを抱えて砲撃が可能な場所を探した。
予想通り大した知能のない植物怪人はそれに引っかかり、コウタはこの場所に到達する事ができた。

「待っててください、シズカさん、アヤナさんっ!!!!」

一発砲撃を撃つ度に、全身の骨が軋み、悲鳴を上げる。
しかし、彼は手を休めようとはしない。
何故なら、この攻撃は二人を助ける最後の策に繋がっているのだから……。

「ええいっ!!なかなかやってくれるじゃないですか……ですが、それではあなたの居場所は丸解りですよっ!!!」

苛立たしげに叫びながらも、イーヴルプラントはこの攻撃が自分の優位を揺るがすものだとは考えていなかった。
あの程度の攻撃では、不良獣である自分を仕留める事など不可能。
ならば、後は時間の問題だ。

「行けっ!!あの忌々しいガキを捕らえろっ!!!!」

叫んで、植物怪人達に命令する。
コウタがいる場所まで、植物怪人達なら一分もかかるまい。
コウタさえ捕らえてしまえが、今度こそ敵は全滅だ。
入念に準備した作戦を、最後でかき乱されたのは不愉快だが、それで全ては終わる。

「はははっ!!!無駄な抵抗というのは、美しくないものですねぇ……」
「どうかな、無駄とは限らんぞ?」

しかし、その瞬間、イーヴルプラントの背後に音もなく降り立った影があった。

「なっ……お前は…」
「望月ユウヤ……侍だっ!!」

振り返れば、木刀を片手に携えた白ランの男子生徒がそこに立っていた。
周囲には、いつの間に倒されたのか、植物怪人達が死屍累々と横たわる。

「ど、どういう事だ!?」
「佐倉達に仕掛けた罠を、今度はお前が仕掛けられた……そういう事だ…」

コウタはパワードスーツを捨てる直前、本部に通信を入れて作戦を伝えた。
まず、パワードスーツを捨てて砲撃を行い、シズカ達の周囲の敵を倒す。
そして、その後も砲撃を続ける事で、コウタは敵に対する囮となる。
敵がコウタを捕らえるために植物怪人達を差し向け、イーヴルプラントの周囲が完全に手薄になった所で助っ人がシズカ達を助けに向かう。

「だ、だが、今更、生身の貴様一人が増えた所で……」
「問題ない。私の役目はただの運び屋だからな」

そう言って、ユウヤは肩に担いでいたソレをアヤナに手渡す。

「これ……!?」
「デストロイアックス……プロトタイプの部品を使って強引に組み上げたので、性能は十分ではないが……」

巨大な斧を手に、一度は力尽きた体に鞭打って、アヤナは立ち上がる。

「デストロイアックス……起動…」

アヤナの声と共に、デストロイアックスにレイ・セイバーと同種の巨大な光の刃が形成される。
シズカもレイ・シューターを構えて立ち上がり、形勢は完全に逆転、進退窮まったイーヴルプラントはじりじりと後ろに下がるが……
「レイ…ボルテック…シューターッ!!!」

シズカの放った強烈なレーザーがイーヴルプラントの右腕を吹き飛ばす。

「くっ…うおおおおおおおおっ!!!!…こうなればっ!!!!!」

追い詰められたイーヴルプラントが叫ぶと、周囲にいた植物怪人達がツルに解けて彼の元に集まり始める。
無数のツルでより強く、より巨大な体を作り出すつもりなのだ。

「これでぇえええ…どぉおだああああああああっ!!!!!!」

完成したのは、10メートルを超える超巨体。
圧倒的な威容を前にして、さしもの特装風紀達もたじろぐ。
だが、しかし……

「アヤナッ!!!」
「ふえっ?…シ、シズカ……?」

デストロイアックスを構えるアヤナの背後にシズカが回りこみ、アヤナの手の平に重ねるように自分の手の平を置いたのだ。

「大丈夫だよ……二人なら、アヤナと私でなら、きっと出来る!!!」

振り返ったアヤナが見たのは、陵辱に塗れ絶望に屈した先ほどまでのシズカではなかった。
不器用なアヤナの手を引っ張り、一緒に歩き続けてくれた最高の親友の、頼もしい横顔だった。

「うん……シズカ、わかった……」

アヤナも、覚悟を決めて肯く。
シズカは右腕のブレスレットに仕込まれたシステム、心の力をエネルギーに変換するコードJを起動する。
迸るエネルギーが、アヤナとシズカを包み込んでいく。

「いくよっ!!…シズカっ!!!」
「わかった!!!!」

凄まじい勢いで宙に舞い上がり、巨大化したイーヴルプラントの真上で二人はデストロイアックスを振り上げる。

「なぁあああめぇえええるぅなああああああああああああっ!!!!!!」

絶叫と共に繰り出される巨大不良獣の拳。
しかし、二人の特装風紀は臆する事無く、それに向かっていく。

「「くらえぇえええええええええええええええええええええっっっっ!!!!!!」」

二人の叫び声が重なり、デストロイアックスが振り下ろされる。
強大な光の刃は緑の巨人をやすやすと切り裂き、アヤナとシズカはそのまま地面に着地する。
そして、まばゆい光を発しながら、イーヴルプラントは光の粒子となって消滅したのだった。

「あ、あの………コウタ…君…」
「は、は、はい……シズカさん…」

ようやく事件が解決し、不良獣から人間に戻ったイーヴルプラントも警察へと連行され、
全てが終わった平穏の中で、コウタとシズカは向かい合っていた。
互いに言葉がなかなか出てこない。
シズカは自分の行動が最悪のピンチを招いてしまった後悔し、
コウタはシズカがどれほど自分の事を心配していたか、それを十分に理解できていなかった事を悔やんでいた。

(……私のせいで、コウタ君もアヤナも、あんな危険な目に………)
(…僕がちゃんとシズカさんの気持ちをわかってたら、あんな無茶をさせずに済んだかもしれないのに……)

というわけで、二人はおっかなびっくりのまま互いに何も言い出せず、しかし相手の前から離れる事も出来ず、気まずい時間を過ごしていた。
シズカの頭にあった感情も、コウタの頭にあった理屈も、本来どちらが正しいというものではない。
必要なのは互いに心を通わせ、その上でどう考え、どう動くかを模索していく事。
そして、それは何度もの失敗を繰り返しながら、次第に築き上げていくべきものであるのだ。
だから、今の二人に必要なのは、互いに相手ときちんと向き合う事なのだけれど、
言うは易く行うは難く、そうそう人間理想どおりに行動できるものではない。
だが、このどうにもならないこう着状態を破る者が一人いた。

「…シズカ……八峰君……」

「えっ!?」
「ふわっ…ア、アヤナ!?」

俯きっぱなしの二人を、アヤナの腕がぎゅうっと抱き寄せた。
そして、戸惑うシズカとコウタに向かって、彼女はこう言ったのだ。

「二人とも……無事でよかった………」

シズカとコウタのピンチに夢中で飛び出したアヤナ。
そんな彼女にとっては、今二人がこうして生きてここにいてくれる事がなによりの喜びなのだ。
そんなアヤナの笑顔に、シズカとコウタの表情もゆっくりと和らぐ。
完璧にはほど遠く、迷う事は山ほどある。
それでも、この仲間達と一緒なら、きっとどんな困難も乗り越えられる。
二人の胸の中には、そんな希望が芽生えはじめていた。






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