シチュエーション
月明かりの下、広い道路の左右に、ほぼ同形の建物が整然と立ち並んでいた。 天輪学園第17学生寮。 広大な学園敷地内にある寮の中でも3番目に多くの学生を収容している。 道路に隔てられて男子学生エリアと女子学生エリアに分けられたこの寮は、 夜ともなればそれぞれの部屋の灯りに明るく照らされている筈であった。 だが、現在、この寮の周辺は異様な光景に包まれていた。 ほとんどの部屋の窓には灯りが見当たらず、頼りなく点滅する街灯だけが周囲を照らし出している。 その薄明かりの中に浮かび上がるのは、どこまでも広がる粘液の海。 そして、その中で蠢く無数のスライム状の人型……。 そのスライム人間の群れの真ん中で可笑しそうに笑う女性のシルエットがあった。 「あはははは、愉快ねぇ!ちょっと前まではいっぱしの学生面してた奴らもみーんなこの有様!!」 彼女もまた、半透明のゲル状物質が集まったスライム人間だった。 だが、ただ這い回るばかりで、理性の存在を欠片も感じさせない周囲のスライム人間とは彼女は違った。 その瞳に映るのは、嘲りと歪んだ優越感だった。 「あらあら、あんな姿になっても性欲はあるのね。……ううん、あんな姿から、理性が剥がれ落ちて本能がむき出しになっているのかしら?」 彼女の視線の先、いたる所でスライム人間達がその粘液で出来た体を絡ませあっていた。 斜めに傾いだ街灯にの上に腰掛けて、スライム女はスライム人間達をあざ笑う。 「あははは、ほんと、たまらないわ。ねえ、あなたもそう思うでしょ、ちっちゃな特装風紀さん?」 そして、今度は、スライム女は自分の傍らに視線を転じる。 そこにあったのは、十数体ものスライム人間が積み重なり、絡み合って作り上げられた大きなスライムの塊だった。 そして、その真ん中に、グリーンの装甲に覆われた強化服を身にまとう、小柄な少女がいた。 特装風紀・九龍アヤナ。 彼女はスライム女の学生寮襲撃の際、偶然その近くに居合わせた。 本来なら味方の到着を待つべきだったのかもしれなかったが、彼女にそれは出来なかった。 特装スーツを身にまとい、スライム女の前に躍り出た彼女だったが、しかし、今回ばかりは相手が悪すぎた。 格闘タイプのアヤナの特装スーツと、あらゆる打撃を無効化するスライム女の能力はあまりに相性が悪かった。 そして、スライム女の持つ特殊能力がアヤナをさらなる窮地へと追いやった。 「ん……くぅ…あぁ……や…め……」 今も彼女にまとわりつき、彼女の体をまさぐり、ねぶり回すスライム人間達。 その全てがこの学生寮に住む学生達の成れの果てなのだ。 スライム女にまとわりつかれた者は1分と経たずスライム人間となり、さらにそのスライム人間が次のスライム人間を増やす。 鼠算式に学生達はスライム人間に変えられてゆき、気がつけばアヤナは孤立無援の状態で敵に取り囲まれていた。 「くぁ…ふぅ…あはああっ!!…やだ…そこ…なめないでぇええええっ!!!」 「おやおや、随分元気がなくなってきたわね。そんなんじゃ、アナタもその内こいつらの仲間入りよ?」 スライム女の能力は、彼女をはじめとする不良獣達を人間から怪物へと変身させるベルトに由来すると思われた。 そこから発せられる何らかのエネルギーが、スライム女を経由して、学生達までをもスライム人間に変えてしまったのだ。 そして、今はアヤナまでもがその危機にさらされていた。 今は強化服のエネルギーによってスライム女のパワーを遮断しているが、既に残されたエネルギーは少ない。 このままではスライム達に陵辱され尽くした挙句、彼らの仲間にされてしまうのも時間の問題だった。 まとわりつくスライムにほとんど溺れるようになりながら、アヤナは全身を嬲られ続ける。 細くしなやかな脚を粘性のスライムが這い登り、敏感な太ももの内側を絶え間なく刺激する。 そのままさらに上へ上へと登ってきたスライムは、アヤナの全身を覆うボディスーツの上からでも判る可愛いお尻の割れ目と、 大事な部分を覆う箇所にうっすらと浮かんだ秘裂に群がり、徹底的にその部分をこねくり回し柔らかな肉を嬲る。 次々と押し寄せる怒涛のようなスライムの質量がアヤナの体の最も感じやすい所を蹂躙しつくす。 延々と続く刺激の波を味わい続けて、ボディスーツの内側のアヤナのアソコは既に自ら染み出した愛液によってぐちゃぐちゃになっていた。 やがて、スライム達はその密度と勢いにまかせて、ボディスーツごとアヤナの秘裂の奥へと侵入しようとし始める。 「…あっくぅ…や…そんな…むりやりぃ……いやぁあああああっ!!!!」 必死にもがき、脚を閉じて少しでも侵入を阻もうとするアヤナだったが、定まった形を持たないスライム相手には無駄な抵抗だった。 押し寄せるスライムがぐりぐりと割れ目を圧迫して、次第に奥へ奥へと通り道を作っていく。 じわじわと、しかし確実にスライムは進入してくる。 そして侵入が進めば進むほど、スライムによる刺激はより強く激しくなっていく。 「…や…ひぁ…ああっ…やめ…やめてぇええっ!!!」 次第に強烈になっていく悪夢の如き快感に、アヤナは身悶え、だんだんと抵抗する気力さえ失っていく。 スライム化エネルギーの侵食はさらに進み、力を失った強化服は色褪せ、そこかしこにヒビが入り始める。 ギシッ……ミシミシッ…… スライムの群れに圧迫されていた胸部アーマーがついに崩壊を始める。 同じように、肩で、腕で、脚で、エネルギーを失ったアーマーが砂糖菓子のように崩れ、壊されていく。 スライムの泥沼の中で、アヤナは無力な少女に変えられていく。 「…あひぃ…むねぇ…だめっ…だめなのにぃいいっ!!…ああっ…わきのした…そんなにいじらないでぇ……っ!!!」 アーマーの破壊が進んだことで、スライムの責めはさらに容赦のないものになる。 その年頃にしては控えめに膨らんだ胸を、スライム達は徹底的に揉みくちゃにし、 スーツ越しにもわかる、ピンと立った先端部分をこねて転がし、敏感すぎるそこを苛め抜く。 腋の下に入り込んだスライムはその粘性の体を押し付け、なぞり、這い回り、息をつく暇も与えず責め立てる。 アヤナはそれらの苦痛とも快楽ともつかない凶悪なまでの刺激に精神力を削り取られ、その瞳からは次第に輝きが失われていく。 「あ…くぁ……も…やぁ……はぁはぁ…はぁ……あっ…んむぅうううううっ!!!!」 そして翻弄され続けた体に酸素を取り込むべく、小さく開いたアヤナの口にまでスライムは押し寄せる。 僅かな隙間から口腔内に侵入してきたスライムは、そのままのどの奥を通りアヤナの体内深くまで侵入しようとする。 咄嗟に口を閉ざしたアヤナだったが、既に侵入したスライムはアヤナの舌に絡み付いて、人間には不可能なその動きで嬲り尽くす。 舌をめちゃくちゃに愛撫される刺激に、再び閉ざされていたアヤナの唇が開くと、スライム達は怒涛の勢いでアヤナの体内に潜っていく。 そしてスライム達は体の内側から、スライム化エネルギーでアヤナの体を侵し始める。 (…だめっ…このままじゃ…私までこの寮のみんなと同じに……っ!!) 焦るアヤナ。 だが、邪悪なそのエネルギーはアヤナのそんな危機感すら蕩かして、次第に彼女をスライムの与える快楽の従順な僕へと変えていく。 今まで必死に抗ってきたその快楽を、アヤナの心が、体が、受け入れ始めてしまう。 「ひぅ…ああっ……だめ…なのにぃ…腰ぃ…勝手に…動いてぇ…っあああああ!!!!!」 物欲しげに小刻みに揺れ始めた腰。 スライムを阻むために閉じていた股が少しずつ開いて、そこにスライムが次々と襲来する。 ボディスーツ越しの強引な挿入はその深度を増し、アヤナの膣内をスライムが好き勝手にかき乱し始める。 全身を、それこそ指と指の隙間までをもスライムにまとわりつかれ、いまやアヤナは快楽によって踊らされる憐れな肉人形へ堕ちようとしていた。 その先にある破滅、自分がスライム人間に変えられてしまうという末路を知っているのに、アヤナにはもう自分を止める事が出来なかった。 「あっ…いっ…いいっ!…いいよぉっ!!!…スライムで全身ぐちゃぐちゃにされて…私…もう……っ!!!」 瞳に涙を浮かべ、喜悦とも苦悶ともつかない悩ましげな表情を浮かべ、アヤナが壊されていく。 ガクガクと動く腰はもう止める事などできず、全身を駆け巡る快楽に理性は溶かされ消え去ってしまう。 だらしなく開いた唇からスライムに侵入され、舌を弄ばれるのが気持ちよかった。 小さな胸を、コリコリの乳首を、敏感な腋の下を、おへそを、背中を、体中の感じやすい所全部をスライムに犯し尽くされる。 ほんの僅かに残された理性と危機感は、もはや背徳感によって行為をより刺激的にするスパイスにしかならない。 乱れ、泣き、嬌声を上げ、やがてアヤナはその快楽の頂点へと押し上げられる。 「あああああああっ!!!!…も…イクっ!!イクイクイクぅううううっ!!!イっちゃうのぉおおおおおおおおっ!!!!!!」 はしたないイキ声を上げて、絶頂の中で崩れ落ちる特装風紀アヤナ。 圧倒的な絶頂感はついにアヤナの意思を根こそブラックアウトさせ、無力な彼女は敵のなすがままとなる。 「あははっ!!情けないわねっ!!これじゃあ、あなたがスライム人間に変わるまでそんなに時間はかからないわね……」 アヤナの抵抗が止み、強化服のほとんどが破壊された事で、スライム化エネルギーの流入は一気に加速する。 快楽の底なし沼に囚われ、もはや息も絶え絶えのアヤナに抵抗の術はない。 激しい絶頂の衝撃のため、今の彼女はろくに手足も動かせない有様だ。 粘液にまみれてぐったりと横たわる彼女の体に、スライム達は執拗なまでの愛撫を続ける。 「ひっ…うぁ…ああっ……ダメ…こんなの…イったばかりで…敏感になってるのに……」 スライムに身体の上を這い回られる度に駆け抜ける凶悪な快感に、アヤナは華奢なその背中を何度もビクビクと震わせた。 一度快楽に屈したその肉体はあまりにも感じやすく、小さな絶頂の連鎖がアヤナの思考を滅茶苦茶にかき乱す。 しかも、スーツの崩壊と、スライムの持つエネルギーの流入に伴って彼女が味わう快楽はおぞましい程に増大していくのだ。 「ひっ…ひゃぁ…あああっ!!…またぁ…またイっちゃ……ふぁあああんっっ!!!」 スライム人間に占拠された第17学生寮区画に、快楽の地獄で悶え苦しむアヤナの悲鳴が響き渡る。 だが、彼女を助けられる人間などこの場所には存在しない。 やがて、崩壊の進んだ各部アーマーは一欠片も残さずアヤナから取り払われ、 最後の防衛線であるボディスーツもスライムの侵食によっていよいよ限界に達しようとしていた。 「あ…や…いやぁ……スーツが…溶かされて……うあ…入ってこないでぇええええっっっ!!!」 そしてついにエネルギーを失ったボディスーツはそこかしこで溶解し破れ始めた。 特にスライム達が念入りに攻撃を重ねたアヤナの大事な部分を守るスーツはどろどろに溶かされて、 その内側からしとどに濡れたアヤナの薄桃の花びらが姿を現す。 そして、露になった少女の弱点にスライム達が一気に殺到する。 「ひは…あああ…また私…犯されちゃう…や…いやぁああああああああああっっっ!!!!」 アヤナのアソコの柔肉を割り裂いてドロドロのスライム達が膣道の奥へ奥へと侵入して行く。 下腹部の内側を満たすスライム達はアヤナの体内で好き勝手に暴れまくり、限界まで張り詰めた彼女の性感を嬲り尽くす。 「あひぃ…やめて…おねが…とまってぇ!!…でないと…私…このままじゃ…ヘンに……ひぅうううううっっっ!!!!」 進入口が開かれた以上、定まった形を持たないスライムを押し止める事はもはや不可能。 しかもアヤナの周囲にはほとんど無尽蔵と言って良いほどの大量のスライムが存在するのだ。 それらのスライムがアヤナを犯し、自分たちと同じ不良獣のしもべへと堕とすべく押し寄せてくる。 彼らは次々とアヤナの膣内への侵入を試み、小さな少女のお腹はスライム達によって満たされてしまう。 だが、それでも彼らは止まらない。 既に許容量いっぱいのアヤナの膣へ、その奥の子宮へ、スライム達はアヤナの身体に与えるダメージなどお構いなしでどんどん進んでいく。 「あぐぅ…うぁ…あああ……くるし…もう無理なのに…来ないで……」 涙ぐんだ瞳に恐怖の色を浮かべて、アヤナはイヤイヤと首を横に振る。 しかし、いまや力のほとんどを失った彼女にはスライム達の陵辱行為を止める事は出来ない。 アヤナの目の前で、ぺったんこだった少女のお腹がぷっくりと膨らみ始める。 限界を越えて増大し続けるスライムの流入にミシミシと悲鳴を上げるアヤナの身体。 スライム達はそんなアヤナの肉体の内側から自分たちのエネルギーを流し込む事で彼女の体を改造しようとしていた。 刻一刻、不良獣の力に侵食されていく体は、やがてスライム達の凶悪な責めにさえ快楽を感じるように変えられていく。 「あうっ…あああっ…なんで!?…こんなのくるしいだけ…痛いだけのはずなのに…ひぅ…ああっ…体が熱いぃいいいいいっっっ!!!!」 その圧力で膣と子宮を内部から破壊せんばかりに暴れまわるスライムの動きに、 いつの間にか快感を感じ始めている自分に気付いてアヤナは恐怖する。 変わっていく。 変えられていく。 狂気じみた責めにさえ嬌声を上げ、泣き叫ぶ自分の心と体。 もうほとんどぼろ切れ同然にまで溶かされズタズタにされたボディスーツの各所から侵入したスライムに 体中を揉みくちゃにされ、蹂躙され、駆け抜ける快感にアヤナは幾度となく神経を焼かれる。 だが、アヤナを犯すスライム達の欲望はまだまだ充足されない。 彼らは次に、ボディスーツの溶解によって無防備に晒されたアヤナの後ろの穴に目をつける。 「…ひっ…ひゃあんっ!?…だめ…そこ…きたな…うぁあああっ!!!…やめて…お尻…いやぁああああっっっ!!!!」 控えめなすぼまりを強引に押し広げてアヤナのアナルの奥へとさかのぼって行くスライムの洪水。 荒れ狂う濁流の如きソレはアヤナの腸をめちゃくちゃにかき乱し、段々とその内部を満たしていく。 自分の体の内側が刻一刻とスライム達の領域に変えられていく。 だが、そのぞっとするような危機感さえ、スライム達の持つ催淫作用によって溶かし流されていく。 「あぐぅうううっっ!!!…お腹の中…ぜんぶスライムに犯されてるぅううっ!!…だめぇ…こんなの…私ぃ…私ぃいいいっっ!!!」 およそ人間同士の行為では得る事の出来ない悪夢の如き快楽に、 アヤナは全身を震わせ、髪を振り乱して、ただ泣きじゃくる。 膣と子宮、腸内の全てを満たしたスライムが互いに圧迫し合って新たな刺激を生み出す。 体の内と外でぐちゃぐちゃと粘つく音を立てながら少女を犯す無尽蔵のスライム。 その中でアヤナはスライム達のもたらす快楽をただ受容するだけの肉の塊へと変えられていく。 「…あ…ふぅ…うぁあ…私…溶けてく…溶かされてく…中も外も犯されて…気持ちよくされて…このままじゃ…私…消えちゃうのに……っ!!」 朦朧とするアヤナの意識はどろりとした流体の如き快楽の中で溶け崩れていく。 もう何も理解できない。 わからない。 ただ、全身を這い回り、内臓をかき回すスライムの感触が気持ちよくて、それだけしか感じる事が出来なくて……。 しこり立ったクリトリスがスライムに弄ばれてビリビリとたまらない刺激が駆け抜ける。 揉みくちゃにされた小さな胸は内側から尋常ではない熱を発し、さらなる快感を求めてアヤナを苛む。 そしてさらに、スライム達が新しく目をつけた場所、それは……。 「ひっ…あああ……そこ…無理ぃ…そんなとこに入れられたら…ひあああああああっっっっ!!!!」 間断なくアヤナの肢体を愛撫し続けるスライムが新たに見つけた攻撃点。 僅かに開いた入り口とその奥に細く長く通じる穴は、せいぜい限られた量の液体を排出するのが精一杯な筈なのに……。 「ああ…そんな…おしっこの穴犯されて…痛いのに苦しいのに……それなのに、どうしてこんなに気持ちいいの……」 全ての感覚器官が、神経が、ただ性的快楽を得る為だけのものに変化している事に愕然とするアヤナ。 本来ならば痛みしかもたらさない筈の尿道への蹂躙は、アヤナの全身を甘やかな刺激で震わせた。 うねり暴れながら、アヤナの尿道をさかのぼって行くスライム。 それはやがて膀胱を満たして、彼女の体の内側の圧迫感をさらに増大させる。 後ろの穴を犯すスライム達はついに腸を突破し、胃の内部を満たして、ついには食堂を上っていく。 膨大なゲル状生物の沼に溺れて、内も外もなく犯し尽くされ、アヤナは絶え間なく襲い来る快感にじわじわと精神を蝕まれていく。 (ああ……私…もうダメなんだ……) ぼんやりとする頭に浮かんだ思考は、諦めというよりは、ただ定められた運命をそのまま言葉に変えたようにアヤナには感じられた。 もうこの流れから逃れる事は出来ない。 間もなくアヤナの体はスライムによって完全に侵食され、本能のままに動く、不良獣の僕へと変えられる。 それはもう変えることの出来ない客観的な事実。 だけど………。 (いやだ…そんなのぜったい……風紀のみんなと、シズカと戦うなんて…ぜったいにいやなのに……) あまりに無力な自分が悔しくて、溢れでた感情の塊が涙となってアヤナの頬を伝う。 だが、そんな彼女の切なる願いも、想いも、スライム達の陵辱がもたらす人外の快楽が全て呑み込み、押し流していく。 「あ…ぐぅううっ!?…ひぅ…あああああっ!!!ひや…やら…からだ…ぜんぶ…ぐちゃぐちゃになって…ふぁあああああんっっっ!!!」 スライムの持つエネルギーに侵食され、媚薬じみたその力に隅から隅まで犯され侵された体。 その体が、全ての細胞が強烈な熱をもって燃え上がる。 僅かに残された理性を、途切れ途切れの思考を、アヤナという少女そのものを焼き尽くす快楽の炎。 (うあ…ああ…おかされてるのに…からだもこころも…ビリビリって…しびれて…きもちよくて……) 膣道が、アナルが、尿道が、通常では考えられないほどに大きく押し広げられ、 その内壁を擦りながら無尽蔵のスライムの群れが出入りを繰り返す。 秘所を濡らす愛液が、後ろの穴から迸り出た腸液が、スライムの圧迫によって漏れ出た小水が、 アヤナの穢れなき白い肌の上にしぶきとなって降り注ぐ。 溢れ出る汗と涙はスライムの粘液と混ざり合ってアヤナの全身を濡らし、鋭敏化された皮膚をどろどろにして責め苛む。 アヤナの意識には、スライムに犯される全身の各所が、もはや狂った熱の塊のようにしか感じられなかった。 渦を巻く快楽の炎の中で、アヤナはただ肉の悦びに震える、人形へと変えられていく。 押し寄せる快楽の地獄の中で、泣きじゃくり、喘ぎ、嬌声を上げる。 ズタズタに切り裂かれた思考の合間に押し込まれた快感が、アヤナから自己を認識する意識を奪い去っていく。 「ひあっ…あはああああっ…ああっ…きもちいいっ!!わたしぃ…きもちいいのぉおおおおっっっ!!!!」 心と体の全てを快楽に埋め尽くされて、一人の少女が壊れていく。 (…ああ…きもちいいの…もっとほしい…もっとわたしのこと、おかして!!めちゃくちゃにして!!!!) 全てを奪い去られた哀れな少女には、もはや体を満たす快感以外にすがれるものなどありはしなかった。 スライム達はそんなアヤナの心の声に応えるように、少女への責めを加速させる。 スライムに犯され続ける三つの穴はそれぞれが荒れ狂う快楽を味わい、細胞の最後の一片までが悦びに震える。 やがて、壊れたアヤナの求めるまま与え続けられる快感は、ついには肉体の限界を振り切る。 そして、破滅的なほどの快感の衝撃が、アヤナの心を粉々に打ち砕いた。 「ああっ…イクっ!イっちゃうぅうううううっ!!!!スライムきもちよくて…わたし…イっちゃうのぉおおおおおおおおっっっ!!!!!」 雷の如く、全身を撃ち貫く絶頂。 弓なりに反らされたアヤナの体が壊れた玩具のようにビクビクと痙攣を起こす。 それからゆっくりと、力を失った体は崩れ落ち、スライムの沼の中に沈み込む。 (ああ……まっしろになっちゃった……こころもからだも…わたしのぜんぶ…まっしろに……) 全ての力を失い、ぐったりとその体をスライムの沼にあずけて、アヤナの輝きを失った瞳が虚空を見つめる。 だが、その時彼女はぼんやりと見上げた空に何かを見つけた。 (あれ……?なんだろ、そらに…なにかひかって……?) アヤナの見上げる空の上、月を横切る一筋の光が見えた。 それは驚異的なスピードでこちらに向かって近付いてくる。 「あら…アナタのお仲間がようやくご到着かしら?」 スライム女もその存在に気付き、空を見上げた。 不良獣の優れた視覚はすぐにその正体を見破る。 「なぁんだ…パワードスーツじゃないの……」 巨大なフライトユニットを装備したパワードスーツ。 驚異的な性能を誇る特装スーツに比べれば、パワードスーツの性能は見劣りするものだ。 加えて、内部の人間とスーツの動きとの間に発生する宿命的なタイムラグ。 それを補う為にパワードスーツはその開発の当初からチームでの戦闘を前提に作られていた。 だが、あのフライトユニット付きは命知らずにも一人でこちらに向かってきている。 いいだろう、相手になってやる。 しかも、ここには彼女の作り出した無数のスライム人間達がいるのだ。 負けるはずがない。 スライム女がそう考えたのも無理からぬ事だった。 しかしっ!! 「私の仲間にっ!学友達にっ!!随分と好き勝手を働いてくれたな、不良獣っ!!!!!」 響き渡った男の声と共に、フライトユニットを捨て敵陣のど真ん中に踊り込んできた白いパワードスーツ。 その無骨な腕が携えた刀はスライム女の片腕を一閃のもとに切り落とした。 「なっ…なぁあああああっ!!!?」 不良獣の知覚を持ってしても捉え切れなかった一撃に、スライム女は戦慄する。 「外したか…やはりパワードスーツは性に合わんな……」 「何なの!?こいつは…い、一体何なのよっ!!?」 スライム人間達を壁にして、パワードスーツの男と距離を取るスライム女。 その顔には明らかな恐怖の表情が浮かんでいた。 「くぅっ!!やってしまいなさい、私のスライム達っ!!!」 スライム女の掛け声と共にスライム人間達がパワードスーツに襲い掛かる。 360度、あらゆる方向からの一斉攻撃にも、しかしパワードスーツの男は一切怯まない。 「学友に拳を振るうのは気が引けるが、今は許せっ!!」 鈍重なはずのパワードスーツが信じられないほど滑らかな動きでスライム達の間をすり抜け、 それでもかわし切れない相手にのみパンチを見舞いながらスライム女へと接近していく。 (コイツ…このパワードスーツの挙動を完全に自分のものにしている……っ!!) じわじわとしかし確実に近付いてくるパワードスーツは、スライム女にとって恐怖そのものだった。 スライム女は手勢のスライム人間達をパワードスーツの男に集中させ、次々と突撃させていく。 怒涛の如く襲い掛かるスライムの群れは徐々にパワードスーツを破壊していくが、それでも彼は止まらない。 「こぉのぉおおおおっ!!!!喰らえぇえええええっ!!!!!」 追い詰められたスライム女は破れかぶれに、自らの体を構成するスライムを巨大な津波に変えて男めがけてそれを放つ。 「くっ…しまった!!」 巨大な壁となって押し寄せるスライムに、さしもの彼も一瞬動揺を見せる。 しかし、彼は慌てる事無く、腰のマウントに一旦収めていた刀をもう一度抜き放つ。 そして…… 「はぁあああああああっ!!!!」 凄まじい気合と共に、津波に向かって突撃した。 巨大なスライム津波は周囲のスライム人間もろともパワードスーツを飲み込み、全てを押し流していく。 「あは…あははははは……あんな危ないヤツがいるなんて、この学校も案外物騒なのね……」 自らの最大級の一撃の威力に勝利を確信したのか、スライム女は気の抜けたような笑い声を漏らす。 しかし、彼女は決定的に見誤っていた。 眼前の敵の秘めたる力、それをあまりに侮っていた。 ドバァアアアアッ!!!!! その瞬間、スライムの津波がしぶきを散らして爆ぜた。 そこから飛び出した白い影はスライム女の懐へと一直線に迫る。 「ひっ!!ひぃいいいいいいっ!!!!」 横一文字に疾った斬撃は、しかしギリギリでスライム女が後ろに下がったために彼女の急所、彼女を不良獣に変身させているベルトを破壊するにはいたらなかった。 「くっ……届かなかったか……」 地上に降り立った白い影は、先ほどまでのパワードスーツではなかった。 白ランを見にまとい、木刀を携えた長身の少年。 整った顔立ちには一見して何の表情も浮かんでいないように見える。 しかし、鋭い瞳の奥には静かに怒りの炎が揺らめいている。 「ア…アナタ何よ?…何者よっ!?」 「特装風紀が一人、望月ユウマ……」 名乗りながら、ユウマは再び木刀を正眼に構え、その切っ先をスライム女に向ける。 「うふふ…本当…とんでもないヤツもいたものね……でもっ!!」 ユウマの発するプレッシャーに気圧されながらも、スライム女はニヤリと笑う。 ゆらり、ユウマの周囲の道路が揺らめいたかと思うと、ひび割れたアスファルトの隙間から無数のスライム人間達が姿を現した。 さらに、スライム女は自らのスライムを使って、自分の周囲に幾重にも壁を張り巡らせる。 パワードスーツを失った今、ユウマがこの囲みを突破してスライム女の変身ベルトを破壊できる可能性は皆無に近い。 「ちょっとびっくりさせられたけれど、これでゲームオーバー……所詮、アナタ一人じゃあ私を倒すなんて……」 「一人ではないぞ」 「えっ!?」 鉄壁の防御を敷いて、悦に入った表情を浮かべるスライム女に、ユウマは不敵に笑った。 次の瞬間。 キキキキ―――ッ!!! アスファルトとの激しい摩擦音を響かせて、道の向こうから突如、一台のバイクが現れた。 「新手っ!?」 それを操るのは巨大なバイクには少し不釣合いな小柄な少年と、少年の背後にタンデムで座る黒髪の少女。 「血路は開いたっ!!シズカッ!コウタッ!!後は頼んだぞ!!!」 「「はいっ!!」」 少年と少女の声が響き渡った。 「コードDF、起動っ!!!」 少女がバイクの後部座席から空高くジャンプする。 次の瞬間、左手首にはめられたブレスレットから強烈な光が溢れ、少女の全身を包み込む。 そして、その光の中から現れたのは、黒のボディスーツと白と赤のアーマーに鎧われた戦士の姿。 「特装風紀シズカ、校則違反を取り締まらせてもらうわっ!!」 そして、地上を走るバイクの少年も 「変形っ!!」 叫び声と共にバイクはその構造を組み替えパワードスーツに変形した。 パワードスーツは脚部のローラーを使って、ユウマの攻撃によりかき乱された防御陣の合間を走り抜けていく。 その肩に、変身を終えたシズカが降り立つ。 既に敵の本陣、スライム女とそれを守るスライム人間達の群れは間近に迫っていた。 「コウタ君っ!今よっ!!」 「わかりました、シズカさんっ!!」 シズカの声に応えて、少年・コウタがパワードスーツの腕に装備された巨大な砲を構える。 インパクトキャノン。このパワードスーツの最大の武器である。 「アヤナさん…みんな……絶対に助けるから……っ!!」 小さく叫んで、コウタは引き金を引いた。立て続けに三発、放たれた弾丸は空を切りスライム女めがけて飛んでいく。 「あははっ!!そんなものでこの私をどうこうできると思ってるの?」 しかし、三発の弾は全てスライムの壁によって受け止められ、軌道を逸らされ、スライム女には命中せず彼女の周囲に着弾する。 「ほ〜ら、言わんこっちゃない……」 ニヤニヤと笑うスライム女。だが、次の瞬間である。 「えっ!?…これ…どうなってるの!!?」 彼女を守っていたスライム人間達の動きが停止した。 さらにはアヤナを捉えていた巨大スライムも、合体がとけて元のバラバラのスライム人間に戻ってしまう。 「抗不良獣エネルギー弾、一応効いたみたいね!!」 シズカがガッツポーズをする。 これこそが今回の彼らの奥の手だった。 変身ベルトからのエネルギー供給を絶つ事で、不良獣を一撃で人間に戻してしまう特殊弾。 しかし、毎回不良獣が倒されるのと同時にベルトまでもが粉々に爆破されてしまっていた為、その開発は遅々として進んでいなかった。 先ほどコウタが撃った試作品も、不良獣を人間に戻すような力は持っていない。 だが、不良獣のエネルギーを断ち切る事で、スライム化してしまった学生達を一時的に行動不能にまで追い込んだのだ。 「正直、使ってみるまで通じるかどうか、ヒヤヒヤものでしたからね」 ともかく、無事に作戦は成功し、スライム人間達を失った事で敵は一気にパワーダウンした。 「すまなかったな、九龍……遅くなってしまった…」 「ううん…ありがとう…望月先輩……」 スライム人間に変えられる寸前だったアヤナも、ユウマによって助け出された。 今や形勢は完全に逆転、スライム女は窮地に立たされる。 「さあ、これでお前一人だぞ、不良獣っ!!」 「く…うぅっ!!!」 ユウマの叫びに、スライム女がたじろいだ。 スライム人間達の数をあてにした戦闘しかできない彼女には、単独で特装風紀に勝つ力などない。 「アヤナの味わった痛みと苦しみ、十倍にして返してあげるわっ!!!」 シズカが腰の両サイドのホルスターから、レイ・セイバーを抜き放つ。 「く、来るなぁああああああっ!!!!!」 スライム女は必死にスライムの壁で敵を阻もうとするが、シズカの両手に握られた光の刃はそれをやすやすと切り裂いてしまう。 「覚悟しなさいっ!!」 「ひっ!!いやぁあああああああああっ!!!!!」 恐怖に駆られ、その場から逃げ出すスライム女。 しかし、シズカは慌てる事なくレイ・セイバーをシューターモードに切り替え、さらにその二丁の銃を前後で連結する。 「レイ・ボルテック・シューター……」 光の粒子を集めて輝く銃口は、まっすぐスライム女の変身ベルトに向けられる。 この一撃で全てが終わる。 その場にいた誰もがそう思っていた。 だが……。 「させんぞっ!!」 レイ・ボルテック・シューターの射線上、スライム女の前に立ち塞がるように巨大な影が立ち塞がった。 「仲間がいたの!?」 それは巨大な二本角を持つ猛牛の頭を持った不良獣だった。 複数の敵との戦いも想定して訓練を積んできたシズカだったが、これまでの所、不良獣は必ず一体で襲撃してきていた。 その事が生んだほんの一瞬の躊躇を敵は見逃さなかった。 「喰らえいっ!!アース・バレットッッ!!!!」 ウシ型不良獣の豪腕が道路を抉り、その衝撃波が凄まじい勢いでアスファルトや土砂を巻き上げながらシズカ達に襲い掛かる。 「くぅ……っ!!」 シズカは迫り来る衝撃波に向けて、レイ・ボルテック・シューターの引き金を引いた。 必殺の一撃は爆発的なエネルギーで衝撃波を飲み込み、かき消していく。 だが、土煙が晴れたとき、既にスライム女の姿はなく、悠然と拳を構えるウシ型不良獣が道を遮るように仁王立ちしていた。 「学生共をスライム人間に変える事でこの一帯を完全に制圧したつもりだったが、まさか逆転されるとは、見事な手並みだな」 「それはどうも……で、あなたは誰?」 「申し遅れたな。我が名はタウラスタイタン、不良獣四天王が一人だ」 「不良獣…四天王……!?」 タウラスタイタンと名乗る不良獣の言葉に、シズカの表情が険しくなる。 (四天王……そんな肩書きがあるって事は、やっぱり不良獣達の背後には彼らを操る組織があるんだ……っ!!) それは、最近の不良獣達の行動パターンからも予想されていた事だった。 これまで、不良獣達の多くは学園の人目のつかない場所で悪事を働いてきた。 圧倒的な力を持ちながら、やる事といえばレイプや金品の強奪、抵抗の術を持たない生徒達に暴力を振るって楽しむなど、欲望に任せの衝動的な行動ばかりだった。 特装風紀に倒され、警察に引き渡された後も彼らは自分に変身ベルトを渡した人物について簡単に白状した。 だが、イーヴルプラントとの戦いの辺りから、それが変わり始めた。 目立つ場所で、多くの生徒達をターゲットに破壊や陵辱の限りを尽くし、戦いに敗れ逮捕されても動機や背後関係についてははぐらかすばかりでハッキリと答えない。 彼らの行動には何か一貫した目的があり、その為に行動しているのは明らかだった。 学園の裏に潜む怪物でしかなかった不良獣達は、ある種のテロリスト集団になろうとしていた。 (ついに、本命のお出ましってわけね……) 目の前に悠然と立つ不良獣の姿は、今までの敵には無かったプレッシャーを感じさせた。 「貴様が特装風紀シズカか…ここでそちらの戦力を削っておくのも悪くは無い」 タウラスタイタンは呟いて、深く腰を落とし突撃の姿勢を取る。 「くっ……コウタ君!」 「わかってます、シズカさん」 シズカは二丁のレイ・シューターを構え、その背後でコウタも通常弾をセットしたインパクトキャノンを構える。 「ゆくぞっ!!」 タウラスタイタンが叫ぶ。 次の瞬間、その丸太のような巨大な脚が大地を蹴り、不良獣の巨体は特大の砲弾となってシズカ達に放たれた。 「タイタンッホーンブレイクッッ!!!!!」 迫り来る大質量の超突撃技。 しかし、それに対するシズカ達の反応は冷静だった。 シズカのレイ・シューターが、コウタのインパクトキャノンが同時に同じ標的を、タウラスタイタンの左の角を狙う。 「くらえっ!!」 「ぐぅっ!!?しまった……っ!!!」 二本の光線と一発の弾丸が不良獣の角に命中。 無論、それだけで敵の勢いを止められるものではないが、その進行方向が僅かばかり逸らされる。 そして、今度はシズカの方が不良獣めがけて飛び出した。 「コードJ、起動っ!!」 左腕のブレスレットから溢れ出る光。 精神の力をエネルギーに変換する特装スーツの奥の手である。 シズカは右手に持ったレイ・シューターをセイバーモードに切り替え、タウラスタイタンに挑みかかる。 「レイ・ギガンティック・セイバーッッッ!!!!」 「何を…その程度の技……っ!!!」 ギャリリリリリリッッッ!!!! ぶつかり合った光の刃と巨大な角が凄まじい音を立てて弾かれ合う。 「きゃあああああああっ!!!!」 「ぐぬぅ…何という威力…だがっ!!!」 互いに吹き飛ばされたシズカとタウラスタイタンだったが、ここでウェイトの差がシズカの不利に働いた。 大質量をさばき切れず、シズカは空中で態勢を崩してしまった。 タウラスタイタンはシズカの落下点に向けて、もう一度突撃を仕掛けようとするが…… 「うああああああああっ!!!!!」 「何っ!!?」 その懐にコウタのパワードスーツが飛び込んでくる。 インパクトキャノンの砲口を不良獣の体に押し当て、ゼロ距離で引き金を引いた。 「ぐあああああああっ!!…くそっ!!貴様っ!!!」 「シズカさんは…やらせないっ!!」 「ええいっ…これ以上の邪魔はさせんぞっ!!!」 しかし、次の瞬間、捨て身のコウタを巨大な衝撃が襲う。 タウラスタイタンが全力で拳を振り下ろしたのだ。 咄嗟にインパクトキャノンを盾に防御するコウタだったが、不良獣の拳はそれを砲身もろとも破壊し、一撃でパワードスーツの駆動系は粉砕されてしまう。 さらに、もう片方の拳がコウタのパワードスーツを思い切り吹き飛ばした。 だが、吹き飛ばされ、叩きつけられた学生寮の壁に寄りかかったまま、コウタは痛む体に鞭打って左腕をタウラスタイタンに向ける。 駆動系が死に、ただの金属の塊になったパワードスーツは重く、コウタの腕はガクガクと震える。 しかし、そこには本体とは別系統のエネルギーで動く武器が装備されていた。 「守らなきゃ…シズカさんを……っ!!」 小出力の簡易版レイ・シューターから放たれた光線がタウラスタイタンに命中する。 ほとんど手傷を負わせられなかったものの、敵が攻撃に気を取られている隙にシズカは態勢を立て直し、再び光の剣を構えていた。 「く…見事だ。単なるパワードスーツと侮ったか……しかし」 「コウタ君のくれたチャンス、無駄にはしないっ!!」 再び一定の距離を取って、向かい合うシズカとタウラスタイタン。 正直なところ、この不良獣の強さはシズカを圧倒するものがあった。 既にサポート役のコウタもダウンし、果たして今の彼女に勝機があるかどうかはわからない。 「でも、負ける訳にはいかないんだからっ!!!」 シズカの気合と共に、出力が上昇し、レイ・ギガンティック・セイバーの光刃が強烈な光を放ち始める。 勝負は一撃。 シズカとタウラスタイタンは眼前の敵だけを見つめ、その瞬間を待つ。 だが、その時…… 「な、なんだ……っ!!?」 タウラスタイタンが驚きの声を上げたのと同時に、上空で強烈な光が放たれた。 「眩しい……っ!!」 強烈なビームがタウラスタイタンを襲ったのだ。 「新手か?だが、あの姿は……あれもパワードスーツなのか!?」 シズカ達は見た。 月をバックに、輝くフレアを噴射しながら、巨大な翼で宙に舞うその姿を。 全身を装甲で鎧われ、各部関節には駆動用のモーターらしきものも見える。 だが、その全体のシルエットは彼女達の知る、軍用も含めたどんなパワードスーツとも違うものだった。 ブルーメタリックのボディはスマートでありながら力強く、まるで研ぎ澄まされた日本刀を思わせる。 悠然と佇むソレは両腕をタウラスタイタンに向けて構えた。 すると、腕部装甲が展開し、そこから四連装ビームガンが出現し、怒涛の勢いでビームの雨を発射した。 「なんて無茶な……ここが学生寮のど真ん中だってわかってるの?」 シズカが叫ぶ。 彼女の周囲には負傷したコウタやアヤナ、生身のユウマ、そしてスライム女の支配から解放され元の体に戻った数百人の学生達がいる。 身を守る術を持たない彼らに、流れ弾の一発も当たればどんな事になってしまうか……。 だが、謎のパワードスーツは彼らがまるで存在しないかのように、さらに強力な武器を使用する。 大ぶりな両肩アーマーに装着された高出力ビームが火を噴く。 背部にから発射された小型ミサイルがタウラスタイタンの周囲を焼き払う。 だが、今までに無い強さを誇る不良獣は、それらの攻撃にも怯む事はない。 「撃ち落してくれるっ!!アースバレットぉおおおおおっ!!!!!」 タウラスタイタンが拳を振るい、捲り上がったアスファルトの無数の破片と衝撃波が上空のパワードスーツめがけて襲い掛かる。 謎のパワードスーツはその攻撃を凄まじい機動力でかわしながら、タウラスタイタンへの攻撃を続ける。 頑強な不良獣と高速のパワードスーツ、一歩も引かず戦いを続ける両者の攻撃によって周囲の建物に被害が出始める。 「あの人、なんて戦い方を……このままじゃ、みんなが…っ!!」 シズカが悔しそうに呟いた。 熾烈を極める両者の戦いを止める事は今のシズカには出来ない。 飛び散るコンクリート片をレイ・シューターで撃ち落し、倒れてきた電信柱をレイ・セイバーで切り払い、自分の背後の学生達に被害が及ばないようにするのが精一杯だ。 「このままでは埒が開かんっ!!くらえ、ダブルアースバレットッッッ!!!!」 一進一退の戦いに突破口を見出すべく、タウラスタイタンは両腕同時のアースバレットを放つ。 「!?」 二倍の量で押し寄せるアスファルトと土砂の津波に、さしものパワードスーツの人物もたじろぐ。 そして、土煙が周囲を覆い尽くしたとき、タウラスタイタンは大地を蹴って宙に舞った。 土煙の煙幕に紛れて必殺の一撃を決めるのだ。 「タイタンホーンブレェエエエイクッッ!!!!!!」 砲弾と化した不良獣の巨体は煙の向こうの敵めがけてまっしぐらに飛んでいく。 だが、煙幕を抜けたとき、タウラスタイタンは驚愕した。 「…………」 敵は両腕に銀色に輝く長剣を展開し、タウラスタイタンめがけて突撃を仕掛けようとしていた。 逃げるでもなく、防御するでもなく、真っ向から不良獣の大技に勝負を挑んできたのだ。 「ええいっ!!負けるかぁあああああっ!!!!!」 交差する二つの影。 凄まじい衝撃が周囲の空気を激しく震動させた。 そして…… 「ぬぅ……不覚だな…」 地面に降り立ったタウラスタイタンの胸には×の字の傷が刻まれていた。 だが、同じく着地したパワードスーツの左腕もモーターが壊れたのか、力なくだらりと垂れ下がり煙をふいていた。 さらに、二本の長剣はボロボロになり、右側の剣は根元から折れてしまっていた。 岩石の如きタウラスタイタンの体を切り裂きはしたものの、その硬さに刀身が耐え切れなかったのだ。 「傷はさほどでもないが、あの特装風紀の女と両方を相手にするのは厄介だな。仕方あるまい、ここは退くか」 ダンッ!!! タウラスタイタンはその剛脚で宙に舞い上がり、学生寮の屋根に飛び乗る。 そして、パワードスーツを睨みつけ、 「勝負は預けたぞ」 そう言って、屋根から屋根へと飛び移り、その場を去っていった。 残されたシズカ達は呆然とその様子を見送る。 と、その時…… 「なるほど、君たちが特装風紀……随分と無茶な戦い方をするものね」 パワードスーツの人物がシズカ達に話しかけてきた。 機械を通したくぐもった音声だったが、それでも女性とわかる声だった。 「あなたは……何者なんですか?」 そう尋ねたシズカに向かって、パワードスーツの女性はヘルメットを外し、答えた。 「私は氷室レイカ……明日からこの学校に赴任する英語教師よ」 SS一覧に戻る メインページに戻る |