機装怪盗PTフィズ第一話『勝利?敗北?…崖っぷちの初戦!』後半
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シチュエーション


漆黒の電脳空間…サファイアブルーに輝く鎧。
その胸と腰…本来ブラとパンティのあるべき部分から覗くピーチの白い肌。
その美しい顔は涙に塗れピンクの長い髪まで濡らしていく。
淫熱に頬を染め怯える表情…背景の闇すらもセクシャルな演出と化している。

「お願いだから…おまんこ…だけは…!……舐めないで……っ!」

四肢を空間に圧迫され動けない少女の訴えを聞き入れる者がいるだろうか?
性器から滴る果汁が言葉の意味を逆転しているのだ。
加虐的な意味でも求めるものを与える優しさの意味でも攻めないわけがない。

…しかし。『舌』はどちらの意味も解さずただ無感動に機械的に動作した。
駅の自動改札に切符を入れれば吸い込む。そんな風に当然のことのように。

「んくうぅうう………ッ!!」

対するピーチはそれだけで絶頂したように顎を天に向け喘ぐ。

(あ………あ………クリが…クリがぁ………っ)

制圧された証明をその膨張で示す。
既に制圧されていた胸だが…敵の意図とは関係なく呼応して乳首が震えた。

(感じちゃう………感じちゃうよ………だって………
勃起させられてるんだもん………っ!)

乳房責め同様、単調な舌の愛撫がピーチの花芯で再現される。
一定の間隔で繰り返し舐められるだけ…
理科の実験で使うシンプルな水車が股間をくすぐるような…

「んく、ん!……やん……っ

こんな…ことで……イかされたく……ないぃ…………ん、あん!」
そう思っても高密度イメージの結晶である自身の性器…
そこから発される信号は超級の快感……抗えない。

(おもちゃ…なんかに…イかされるなんて………っ)

敵の性能を罵倒する意味で、自身を叱る意味で思ったことだが…
ピーチの周囲に舌ではなく『おもちゃ』が具現化される。
…大人のおもちゃではない。
ウサギが太鼓を叩いて笛を吹く、イヌが歩いたりしゃがんで吠えたりする…
…乳幼児向け玩具。正真正銘のおもちゃだ。

「な…なに?………あ!……そんなこと………やめてえぇ!
あん…っ…ん、ぅ……く………っ……ひぃ…………っ!」

タンタンタン♪タンタンタン♪ピっピっピっピっ……
ガショガショガショガショ…キャンキャンキャンキャン♪

ウサギが太鼓の代わりに乳首を叩きイヌが股間へ行進し吠える動作でクリを嬲る……

…完全にバカにされている。
だが。真の屈辱は…それでも回路を走る快感信号……喘いでしまう自分……
愛液として具現化されているプログラムを敵は舐めとることで吸収、
玩具などを具現化できるまで機能を高めていったのだ。
マニアックな放置プレイのような仕打ち……

「ひん!…ぅ………ぐ………っ
こんなんなら……舌のほうが…マシよ………あふ!……ん!」

言い返して後悔する。再び舌が具現化されるが……
それは先程までの舌ではない。
動物…ケダモノの荒々しさ、巧みな舌技を合わせ持つ…最強の舌責め!

「ん、ふああぁあ………っ!」

情報、データが愛液に変換され洪水となり漏洩する。
舌はそのジュースを零すことなく入念に舐めとる。そこに含まれる情報…
一部の舌は手へと進化し、繊細な指使いで花芯や菊門、乳首をなぞる。
悪循環…それにより愛液は勢いを増し…ピーチはより深みへと追いやられる。

(あう……あうう!……これじゃ………このままじゃ……ひあ!
反撃どころか……防御も………ひうう………っ)

胸と股間だけではなく胴体全体の鎧も取り外され…愛撫は大胆に激しくなる。
淫らな水音とピーチの喘ぎだけ……電脳空間の音響は淫らな意味しか持たない。

大きな蛇まで具現化されてピーチの乳房を絞り
股間をうねり、舌でもう片方の乳首をチロチロ舐める。

(あ……蛇…っ?……毒?……だめえ!……噛まれたら……きっと………)

「きゃあああっ!……志由ぅ!……たすけ………助けてぇ!………ひぁう!……っ?!」

毒…ウイルスの恐怖……引き攣りつつも、まだ噛まれてなくとも悶えてしまう…
股間を弄っていた指がピーチの目前に突き出された。
その手の根本…既に人影すら形成されつつある。
敵にそれだけの力を与えるほどの情報が含まれているピーチの愛液に塗れた指……
舐めなければウイルスを注入する…そんな脅しの意図を抜きにしても…

(舐めるしか……ない………っ)

はしたなく口を開け…舌を伸ばし指を…己の愛液を……ピーチは音を立てて舐める。
堪らない屈辱感…

「ちゅぷ………ん!………ぴちゃ………う………覚えてなさい………
志由が本体に着いたら……焼き殺して…やるんだから………っ!………ああんっ」

悶えつつ強気な台詞を吐いたあとで気付く。

(志由……?…っ!……私!志由って言っちゃった?!)

とんでもない大失態。…これでは仮に逃げだせてもフィズの正体がバレてしまう。
…フィズ=志由も…自分も…二人ともが完膚なき勝利を納めない限り確実に破滅……

(こんな…状況から………?
有り得ない……無理よぉ…………っ………はう!…くふぁ?!……っ)

舐めていた指が…いつの間にか男性器へ変貌していた。
三本ほどの肉棒がローテーションで股間と顔を往復しているのだ。
ピーチの花唇でその強張り全体に蜜をたっぷりと付けてピーチの鼻先に……
指とは比較にならない屈辱……

(それでも……舐めなきゃ……)

愛液はもともとピーチの情報だ。自身で舐めたところで敵ほどの能力向上は望めない。
そもそも舐めとれる量より垂れ流す量のほうが数倍も多い。
それでも敵の強化を減らすことが出来る。微々たる効果だが…
コンマ以下の、今もってグングン下がり続けている勝利への可能性…
その減少率をわずかに緩和出来るだけ……

(でも!…あきらめない……志由……せめて…志由だけでも…………っ)

献身的…無論、志由に対してだが…積極的に肉棒をおしゃぶりするピーチ。
その様子から判断したのか敵はピーチの右腕の鎧も開放する。
自由に動くようになった右手で別の肉棒に付いた愛液を拭うように扱くピーチ。
残る肉棒が胸の間に納まるのと左手の開放は同時だった。
左手と敵の具現化された手のパーツを連携させて両乳で挟み扱く……

…その動作はピーチ自身の意思で行われていたが…
それ故に両腕をも制圧された事実に気付けない。
……今の行為が導く『結果』にも……気付けるわけがなかった。

(このまま……イかせれば……敵の能力を削ぐことが………ふああ………っ)

「お願い……イってえ!………熱いの………かけてえ………っ!」

(……じゃないと……はうん!………私のほうが…………あ……ぅぁ…………っ)

愛液として情報を漏らしているピーチは
敵に射精させれば機能を低下させられると考えていた。
その為には恥ずかしい台詞でも何でも吐く。
だが…演技のはずが…
自身でも敵との性行為を望んでいるような錯覚まで芽生えてしまう。
分泌される情報は増加するばかり……
両足の鎧も開放され、今や端から見ればピーチは三本のバイブに自ら奉仕する肉奴隷だ。
舌や指、触手のように絡む蛇…それらに如実に快感を覚えている発情った牝………

「せーえきぃ!………欲しいのォ!……ふあ………
いっぱい………白いので………ドロドロにしてえ!………あん!あぁ……んっ!」

牝奴隷そのものの叫び……
呼応するように両乳で包んでいた肉棒が目前に浮きピーチの顔に照準を合わせる……

「あ………あ…………っ」

敵を弱体化させられると思い込んでいるピーチ…
惚けた表情に歓喜を混ぜて目の前の漲りから発射される瞬間を待つ…。が………

ビュ!…ピュル!

「っ?!……ふあ?!……やあああぁあ…………っ!
くさい……にがいよぉ………っ
ひあっふ!……ら、らめえぇーっ!………っッ!!
…っ…ふひあああぁあぁ………っッ!!」

口で奉仕していた肉棒は右乳に、右手で扱いていたペニスは左乳に……
三本が相次いで白濁をピーチに注いだ。…圧倒的な制圧力を持つウイルスを。
そしてピーチは…かけられた以上の愛液を潮として噴いた……
そう、…絶頂という恥態と一緒に…致命的な情報まで……晒してしまった。



思いもよらない絶頂からピーチはまだ降りてこれない。
機能のほとんど…首から下は全て…中枢も深刻な域まで浸蝕されている状況だ。
無理もない。
イく寸前の時点で既に制圧域が尋常ではなかった。
結果として敵の機能と相当量の同調が起こってしまったのだ。
己の絶頂だけではなく射精三回分の絶頂まで味あわされた。
非生物であるピーチには生殖本能はない。
故に射精に対しての怯えは全くなかったのだが…
ウイルスの効果と相俟ってその意味を、恐怖を学習した。
凌辱の最終段階……相手の欲望の炸裂……自らの絶頂と併せて心底より屈した証明……
もう何も出来ない。完膚なく勝利どころか完全なる敗北……

(…志由………しゆ………ごめん………………
わらひ……イかされ………ちゃた…………もぉ………制圧………されちゃう………よぉ………)

残る機能を全て論理爆弾として使用し敵もろとも自爆しようかなどとも思う。
それほどにピーチは追い詰められているが

…そんなことをしても双方の防壁消失=志由の立場が悪くなるだけ…
絶頂の余韻…薄れゆく思考回路は最後に志由の姿を確認しようとする。

(ぁ……ぁ………志由………あんな姿に…………)

罠から抜けだすべく下着とバイザーだけの衣装で泣きじゃくるフィズ……

…機転を利かしスプリンクラーを作動させる少し前だ。
ピーチの電脳裏に自分は何も出来ない無力が満ちる…が。
それだけではなかった。疑問も生じる。

(これだけ…制圧されてるのに映像は…美術館の制御は…まだ取り上げられてない?)

そして今のこの無防備状態でも…未だ完全制圧されてない……

(もしか……したら……っ!)

砂浜に砂利ほどの希望…可能性…コンマ以下は相変わらずだが…砂一粒よりは大きい。
強風の中、飛ばされる木の葉が一時だけ何かにひっかかった程度の幸運………

(それでも………まだ………っ…………あ?…………そんな…………そんなぁ!)

最低限の防壁を組み直し備えるピーチの…極小の希望すら吹き飛ぶ……
…敵は…その姿を『ヒト』として具現化していく。
ぼんやりと…次第に明確になっていくイメージ……

……『桃木志由』……バイザーすらない全裸の少女だった。

「志由………お願い……今は……ダメぇ…っ!
きゃっふぁ……ッ!……はうう!……あううぅんっッ!」

『志由』に乳首を甘噛みされたピーチはそれだけでイったような喘ぎを放つ。
絶頂直後で感度が高すぎるせいもある。少女らしからぬ舌技、指技のせいもある。
だがそれ以上に…『志由』に責められているという事実がピーチを狂わせるのだ。

…敵の幻影だとは理解している。その性技術、何より股間から反り返る立派な男性器……
明らかに本物ではない。
だがそれ以外は、ピーチの記憶から忠実に再現されたその姿は…
本物同様に可憐で華奢、愛くるしいこと極まりない。
微細なディテールまで完全完璧に創造されていた。
それほどに事細かなデータを保持している…ピーチ。
どれほどに志由を大事に想っているのかが伺える。
敵の造り出した幻…偽者というよりも
ピーチの電脳内の志由が具現化されたといったほうが適切かも知れない。
少なくともこの空間においては、ピーチにとっては、『志由』そのもの…
抗えるわけがない。そして彼女から施される『悪戯』は……

(しゅ、しゅごいぃ……キモチぃ……キモチいよぉ……っ!
志由が……しゆが……わらひの…おっぱい……イジめてるぅ………はぅ!……ん!)

双乳をおもちゃにされながら感じる至福。
電脳全体に「もっと!もっとぉ!」と淫らな信号が駆け巡る。
その情報すら愛液で示してしまう。
『志由』はそれに応じて優しくキスをしながらピーチの花芯を撫であげる。

「ん……っ………ちゅ!……ちゅ………っ
志由…らめえ……クリ…キモチよすぎりゅのォ!
そんなにされたら……熱暴走しちゃう………フリーズしちゃうよぉ………ッッ!!」

それこそが敵の狙いだろう。
先程は同調しすぎていた為に隙だらけのピーチに対し何も出来なかった。
今度は自身はイかずに、機能に余裕がある状態でピーチをイかせる。
ピーチとしては絶対に阻止しなくてはならない事態だが…

…もうそんな事は考えられなかった。快楽だけを演算、処理してしまう。

「んはぅ!……志由ぅ……っ
しゆぅ…っ………いい……いいのォ………っ!
もっと……あんッ!………もっとおぉ………ッ!!」

志由に抱き着いて躯を擦りつけてしまう。指に合わせて尻が弾む。

…不幸中の幸いと言えるかどうかは微妙と言うしかない。
それほどに発情しているからこそ敵の同調を誘うことができた。
が。それは即ち、敵の発情…責めの激化も意味している。

「ひゃああう!…ひゃああん!
クリ……ペロペロしちゃ…噛んじゃ…らめえっッ!!
愛液……噴いちゃううぅッ!!…はう!…あ!……あああんっ!」

上体をのけ反らせ振り乱す。いつイっても不思議ではない。
いや、既に昇り始める過程にあるのか……?
『志由』はこの制圧行為を終わらせるべく…
肉棒をピーチの割れ目に擦り…その挿入に備える。

「あ……あっ………くああっ!……んっく………ッ!」

志由のペニスに花芯、若芽を擦られるとそれだけで中枢が真っ白になっていく。
かろうじて絶頂を堪えられたのは敗北を恐れてではない。
挿入されたかったから。激しく突かれてイきたかったから……
…その一方で最後の警告も響く。

(挿入られたら……ぜっ…たい……イっちゃう………
中に…射精されたら……ぜっ…たい………制圧されちゃう…………)

しかし…その警告すら…今のピーチにはアクセルとなる。

「いい!……もういい!
せ、制圧してえ……はぅあ!……しゆの…おちんちんで…イきたいのォ……
いれてぇ……ッ!……ひう!……こすられてりゅだけで……らめえぇ…ッ!
…おちんちん……はぅ……いれて……志由の…せーえき……中で出してぇッ!!」

…ヌチュっ!!

濡れまくりの花唇はさしたる抵抗もなく肉棒を受け入れる。

「くひぃ!…ひゃう、ひゃあうぅ……っ!……あっ……あ……ぁん!!」

先端が入っただけで達しそうになったピーチを押し止めたのは志由の表情………

(志由?…志由もキモチいの……?
……わらひも…キモチいっ!……志由!……しゆっ!
一緒に………ああぁ!……一緒にィィ………っッ!!)

電脳空間だからこそ可能な体位…体面座位から『志由』が立ち上がったような
立ちバックから仰向けに変えたような…現実で再現するなら
志由の腰の位置までの台が必要だろう。
敵の性能の限界なのか『志由』は無言で腰を抜き差しするが…
荒い吐息とせつなげな表情がその快楽を示す。

『志由が自分に挿入して感じてくれている』

…それだけで中枢に響く超快感に耐え、自らも全身で跳ねるのだ。

「キモチいぃ!…あふっ!……ちんちんっ!……志由ちんちん……いぃん……ッッ!!
ひゃふ!……イく!……イくイくぅ!……まんこぉ!…ちんちんんぅ……ッっ!!
志由ぅ!……好きぃ……っ……だいすきぃ………ッッ!!」

正確には腰を突き立てられるたびにイっている。突かれる度に高みへ飛ばされる。
愛液が噴水のようにバシャバシャと飛沫を上げ続け
二人は性器どころか全身びしょ濡れだ。
イきながら…叫びながら…ピーチは到達する。
『志由を愛している』と言う事実に。

その瞬間!…断続的な絶頂から…さらに高い領域にまで飛ぶ。
二人の絶叫が響く。

「うぁ!あああぁアあアアア…………ッッっ!!」
「ひゃひいいいぃん!……ひゃあああぁあア…………っッッ!!」

……

一際深く挿入されたペニスから白濁のウイルスがピーチの膣内に注入された。
力の限り抱きしめ合う二人の結合部から愛液と混じり零れる………。

……そう。
制圧は完了した。ただし……ピーチが敵を制したのだ。

ほとんどを制圧された状態…その状態における機能の同調…
…ピーチの超絶なオーガズムを敵AIも体感したのだ。
一度目の絶頂の際にも機能障害を起こしていた。
敵の射精を受けての連鎖絶頂でそうなるのだから…

『こちらの絶頂で射精…敵の絶頂を促せば…より大きな機能障害を引き起こせる』

…それがピーチの最後の策だった。
結果として敵は機能障害どころか完全にフリーズ……
再起動をかけるオペレーターもいない。
…辛くも一応の『完膚なき勝利』を得たのだ。

……だが。
本当に危なかった。何度勝手にイきかけたことか…
作戦の性質上、敵も絶頂が近い状態でイかなければならなかった。
でなければ、一方的にこちらのみのダメージとなり…負けていた。
ピーチが耐えることが出来たのは…敵に勝利するためではない。

(しゆ……志由………あいしてりゅ………)

愛おしい存在…ひたすらに『相手』を想っていた。一緒にイきたかった。
だからこそ……機能の限界を越えて耐えることが出来たのだろう。
ピーチ自身が意図したことではないからこその奇跡とも言えた。

……しかし。


(…わらひも………もぉ……らめぇ…………
熱いのが………しゆの…せーえき……おまんこに……いぱい………あふぁ…………
………再起動……しなきゃ…………動けな………ぃ…………………ふぁ………)

かけられた、膣に中出しされたウイルスに対するリカバリと再起動………
勝利の代償だが…どれほどの時間を要するのか……
その間、装備のほとんどを失ったフィズが
最強級の『漢』相手に持ちこたえることが出来るのか……
今のピーチには計算不能だった…………

………
……


目的の部屋…その扉を開け放った瞬間、フィズの背筋は凍りついた。
スプリンクラーで濡れた身体にブラとショーツだけだからではない。
凄まじいばかりの『氣』が部屋全体に漲っていたからだ。

(な……何?…………何か……いる?…………っ)

その『氣』を発する者は…実はフィズの視界の中にいた。
しかしフィズはその姿を彫刻か何かだと思った。
理由の一つは…あまりにも逞しい肉体。
あまりにも巨大で…一糸纏わぬ全裸の『漢』は美術品と見紛っても無理は無い。
もう一つの理由…それはその『氣』がヒトのモノとは思えなかったからだ。
猛獣か何か…悪魔や怪物…それほどに異質な『氣』。
『Fizz』は怪盗であって戦士ではない。
その『氣』が闘気や殺気の類だと知り得る経験など皆無だった。
だからその『氣』そのものが振動して音声のように聞こえた時、
かつてないほどに驚愕し…恐怖した。

「……深呼吸せい」

「ひゃっ……?…………………っッ!!!!」

悲鳴より先に身体が怯む。腰が抜けて膝を立てて尻を落とす。
それでも少しでも対象から離れようと上体を背中の方へ傾けてしまう。
脱力した下半身は伴わないため、自然に両手は上体を支える為に床に……
正面から見れば足はM字……真横から見ても腕、胴体、足でやはりM字……
女の子としてあるまじき姿勢…それ以前に完全なる畏怖を体現していた。

「きゃ…きゃああああぁあっッ!!……っ?!?!………っ!
……〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

絶叫…少女が発声できる限界の絶叫が響く。
次いで肉体に異常なまでな震えが起こり…少しだけ失禁してしまった。
尿の温もりをわずかにショーツに感じ…
志由特有の鋭敏かつ強大な羞恥心が本格的な決壊を堪えさせる。
それが結果的に志由…フィズの自意識を保ったのだが…
絶大な恐怖、驚愕を改めて認識するだけだ。
言葉など出るはずもない。思考すらままならない。
本能が最大音量で「逃げろ」と警鐘を鳴らす。
だが身体は震えることだけに全力を尽くす。

「深呼吸せい」

目の前の…彫刻だと思っていた物体が再び同じ台詞を言っても
フィズはカチカチと歯の音を鳴らし泣き震えるだけ。
『漢』は仕方なさそうに言葉を補則していく。

「少女の身でありながら『組織』に刃向かおうという猛者がいると聞き…
それほどの胆力の持ち主ならば…
あるいは我と闘い得るかと思い出向いてみたのだ……」

彼なりに幼子に言い聞かせるようにゆっくりと語る。
純真な志由…フィズはその『漢』の心意気を察し…理解しようと恐怖を抑える。

「だが無理なものは無理…
恥じることはない。まさに『無理もない』のだ……
今から我は…この昂ぶりを鎮めるために…うぬを犯す………
だから『深呼吸して』媚薬を吸い、せめて苦痛を緩和せよと言うのだ…………」

志由はようやく理解した。
『深呼吸』は『ギブアップ』と言い換えてもいい。
そして…『Fizz』としての自分も思いだす。
言わば『漢』は宝の番人……『組織』を敵に回すということを…
今、本当の意味で知った。心底、骨身に、染みた。
…ここで立ち向かえなければ…本当にギブアップするしかない。

……


(怖い……ホントに……怖い……
でも………戦えなきゃ………ここで………終わる……………っ!!)

敗北は必至……しかし。白旗を上げるわけにはいかない。

(たとえ……負けても……ヤられちゃっても……
ぜったい………諦めない!……死なないかぎり……戦う!)

今は屈しようとも…『次』に繋げる。望みを捨てない。

フィズは…よろよろと立つ。
震えは止まらない。涙も止まらない。
少女に出来る精一杯、極限の意思表示なのだが……
目撃者がいたとしても…立っただけ、フィズに戦意など感じられないだろう。
だが目の前の『漢』には伝わった。

「………ふむ。…………では……参る」

台詞と共に拳を構える、今にも放たれそうな一撃……

(ぁ………ダメ………足が……動かない…………)

喰らってはいけない、そう思いつつも身体は反応してくれない。

ドコォォッ!!……ドガッ!!

『漢』のパンチがフィズを吹き飛ばし壁に激突させた。
勢いよく弾かれ、まるで弾丸のように壁に一直線……
バイザーのエアバリアが出力全開で全身を保護してなければ…
か弱い少女の身体は破裂していたかも知れない。
バリアのおかげで物理ダメージこそ軽微だが…精神的ダメージは計り知れない。

(い…一発で……バッテリーがこんなに消耗してる………っ
っ!……それに…ショックで……キャンディ…噛んじゃった………っ!)

銃弾すら弾くエアバリア…
マシンガンの斉射を受けてもここまでバッテリーを酷使しない。

…あと二回も喰らえば全容量を使い切るだろう。
飛ばされた際に舌の上から見失ったキャンディ…
壁にぶつかったときに奥歯で砕いてしまった。唾液に当たる面積が増えた。
…加速して溶けていく…あと5分維持出来るか否か。
叩きつけられた壁から身体が離れるとそのまま俯せに倒れてしまう。

「…よくぞ耐えた。…もう充分であろう?…うぬは戦った。
結果、敗れた……それだけだ。…敗北を…糧に強くなれよう……」

…台詞の後に「深呼吸しろ」と幻聴が聞こえた気がする。
フィズは腕だけで上体だけ起こし哀願する。

「…お……お口で!……お口でご奉仕………しますから!
…下手かも知れませんが……まだ……処女なんです!
…お願い……挿入れるのだけは……許して…くださぃ……」

乙女にあるまじき台詞…それでも志由の選択できる唯一の言葉だった。
改めて『漢』の反り返るイチモツを見る……
壁まで飛ばされ距離が開いていも大きい…
先程の立体映像の男たちとは比べるべくもない巨大さ……
志由の腕と較べても遜色ないほどに見える。
そんな肉棒で秘部を貫かれては……
媚薬を吸えば痛みは緩らぐのかも知れないが…それだけはしたくない。
…志由が性に臆病なのは…快楽の凄まじさを知っているから。
年頃の娘だ…生理現象で発情してしまうこともあった。
だが軽く触れるだけで…発狂しそうなほどの快感が走った。
故に本格的に自慰をすることすら今まで無かったのだ。
…媚薬でどれほど淫らな牝になるのか…見当もつかない。

(今の気持ち…「戦う意思」すら…失ってしまうかも……
絶対に……媚薬だけは…………っ!)

そう思っている間にも漢はゆっくり近付いてくる。
そして腕だけで上体を支えている、半分は倒れたフィズの前に片膝を着いて座った。

「案ずるな、最初から挿入する気などない………」

そう言いながらフィズの頭を、髪を整えるように優しく撫でる。

「その体躯では我のモノはどう挿入れようと苦痛のみ…
回数を重ね…ゆるりと拡張調教を施してから突いてくれる……
今回は…そうよな、この肉棒で…その秘所を擦りつける……
うぬは愛液を撒き散らしながら太股にて締めるがよい」

頭を撫でる手はそのままに尊大な笑顔で言う漢。
志由は涙に濡れたまま表情を戸惑い、困惑に変える。
それを解そうというのか漢は言葉を続けた。

「まだ齢17、8といったところと見受けた……
見知らぬ男になど触れられるだけで苦痛であろう?
…くわえるにしてもだ。…うぬが望むなら存分に頬張らせてやろう。だが…
いずれにせよ媚薬を吸って乱れてしまえと言っておる。
媚薬のせいにして快楽を純粋に楽しめ………
その後も…うぬにとって決して悪いようにはせぬと誓う………全てを委ねよ」

志由は…思わず深呼吸してしまいそうになる。
表情に赤みが差し…流れる涙の意味も変わった。
目前の巨躯は…自分を敵として扱いながらも「女」として
彼なりに敬意を払ってくれているのだ。
己が欲望だけを突き詰めてくるだけではない。
そして…自分ですら幼く見える外見を無視して相応の年齢と見抜いた漢……
その器。…好意、恋愛感情まではいかないが……彼になら……などと思ってしまう。

(でも………でもぉ……………………っ!…………!)

少女としての迷い………それを断ち切るように……
『フィズ』は顔を上げ、目を閉じた。唇を結び……待つ。

……気配。……『漢』の顔が自分の顔に近付くのがわかる。
唇に唇の近付く気配…触れるか否かの刹那!

「ッ!!」

『フィズ』は目を見開く。同時にバイザー左耳部から極小の機械音!
シュッ!と風を切る音……
これも今回初めて使う機能……フィーズパラバルカン!
3cm程度の極細麻酔針を連射するニードルマシンガンだ。

(凄いヒトだもん…普通に撃っても…きっと…避けられちゃう…から……)

自分の騙し討ちに罪悪感を覚えるフィズ。
本当に迷っていたのだ。敵だが何故か信頼できた。
彼の囁きに…股間は水とも尿とも違う湿り気を感じたほどだ。
だからこそ応じられなかった、負けられなかったとも言える。

(カラダを許したら……ドレイみたくなっちゃたかも……)

頬を染めて…改めて『漢』の顔を確認する。そして…絶句。浮かれた妄想など吹き飛ぶ。

「っ!?…〜〜〜〜〜〜〜ッ!!??」

先程の尊大な、優しげな笑顔ではない。
嬉々として笑み…その上で狂気を感じる。
ニヤリと口が大きく歪むのを、射抜かれるような鋭い眼光を、フィズは見てしまった。

(なんで……?!………なんでぇ……ッ?!!)

先程の再現…フィズは尻餅を突いて手で上体を支え後ずさる。
やはり失禁しそうになる。今度は意思だけでは止め切れない。
片手で性器全体を押さえるようにしてようやく止まるが…
股間の布はしっかりと温かい。押さえる指すら尿に濡れる。
羞恥と驚愕は先程より大きい証拠だ。

…漢の巨体はその場を動いてない。避けてない証拠だ。
麻酔針銃を今まで使わなかったのは…
麻酔が強力すぎるから…一針で鯨も動けなるほどにだ。
これを数発も喰らって平気など有り得ないにも程がある。
だが『漢』は…もっと有り得ない方法で防いでいた。
漢の手が不自然に顔の横にある。目を凝らすと…指々の間に麻酔針が……

『至近距離から高速射出された無数の針を掌で防ぐどころか全て指で挟んだ』

結果からみるとそうとしか考えられない。

その手はそのままに漢は立ち上がった。

「フハハハハハハッ!」

豪快、大音量の笑いが響く。フィズはそれだけで吹き飛ばされそうな気分になる。

「素晴らしいぞ!…心から詫びよう!…うぬを見くびっておったわ!」

…とんでもなく上機嫌な漢は饒舌に語り始める。

「実際…迷ったのだ。うぬが口奉仕を申し出た時…
無言でしゃぶらせたほうがよいか?…とな!
もしさせておったなら…捕れなかったやも知れぬ!
顔を狙ってくれたからこそ、殺気に反応し目が追いついた……
いや!実に危なかった!…敗北を受け入れた様子で油断させての不意打ちも見事!
実力差をものともせず我に攻撃する気概も絶賛しよう!
フィズと言ったな!…その名、しかと覚えたぞ!」

…あまりの興奮ぶり。本当に無邪気に笑う…ある意味怖いが……

(…もしかしたら…このまま……見逃してくれる?)

恐怖と羞恥で混乱するフィズは甘い期待を抱く。
「万全の状態で戦いたい」などと言ってくれるのではないか?と……
無言で次の言葉を待ったが…

「心底より気に入ったわ!
…組織の連中からは『今回は様子見、最後は逃がせ』と言われておったが…
絶対に逃さぬっ!…フィズ!…うぬは今日…この我が貰い受ける!
我が性奴隷としての調教を…今!この時より開始する!
もう媚薬など吸う必要はないぞ!
…媚薬で得られる快感より…千倍は凄い快楽を与えてやる!
有無を言わさぬ!」



フィズは本当に何も言えなくなった。
漢は本気だ。やると言えば必ずやる…それだけの自信と気迫が凝縮されている。
だが性に未熟な志由には千倍の快楽と言われても思慮の外だ。
媚薬の快感ですら未知…それが少女の想像の限界……
故に性調教には怯えずに済んだ。漠然的すぎるからだ。
そして…困難ではあるが…まだ手はあった。

(……フィーズノヴァ…
残りバッテリーでも……ギリギリ……あと一回撃てる!…最大…出力でっ!)

問題は…発射前に一秒、いや一呼吸の間がかかる。
その隙に如何様にも対処されてしまうだろう。どうやって当てるか……
さらに化け物のような漢の体にどれほどの効果があるか…
一般人相手には命の保証は出来ない、対人に向けて使用することすら想定していない、
戦車すら軽く撃ち抜くフィズ最強の破壊兵器だが…
目の前の漢には逆にどこを狙えば行動不能に出来るかを考えなければならない。
…だがその思考も徒労に終わった。

「…返すぞ」

短い言葉の後、漢は軽く手でフィズを扇ぐ仕草をする。
フィズにはその動作しか認識出来なかったが…
エアバリアは作動した。…数秒遅れてフィズは気付く。
バイザーの耳の部分に自らが放った麻酔針が刺さっているのを。それも両耳側の装甲に。
オートで作動するエアバリアを貫通して…
さらにフィズの体表をナノ単位で被う無色透明の防護膜すら破って刺さったということ…
当然エアバリアは先程同様全開…バッテリーも異常に消耗した。
…それ以前に麻酔針で体を狙われていれば微塵も動くことが出来なくなっていた。








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