シチュエーション
月と約束した町――中央ヨーロッパの山地の一角に、そんな幻想的な名を付けられた町がある。 天頂にはまるで手が届かんばかりの質感のある月がめぐり、ある晩は山地の清浄な空気が、またある晩には近くの清流から立ち上る薄い霧が、またある晩には群れをはぐれた狼の悲しげな遠吠えが彩る。 特に満月の光景はあらゆる詩人に天啓を与え、あらゆる芸術家に秘められた感情を呼び覚ますとまで語られる。 そして、今この街をさらに幻想的にしているもの。それは怪盗の少女の存在だった。 あらゆる警報装置をも潜り抜け、いかなる警備員をもかわし、月下すべてが己の庭であるかのように自由自在に街を闊歩する謎の少女。 普通の泥棒と違うのは、なにも盗まないということ。彼女は忍び込んだ屋敷に、ただ一枚のカードを残すのみだった。 『我が欲するこの世に二つとない宝、ここにあらず 怪盗十六夜』――と。 そして、もし侵入した屋敷の主が悪事を働いていた場合、まるで立ち去りぎわのついでとばかりに悪事の証拠を暴きたてて行ってしまう。 そのため警察の方も、怪盗少女をというよりもむしろ彼女に悪事を暴かれた屋敷の当主の方を逮捕するといったありさまだった。 その不可思議なメッセージと、悪事を見逃さない清廉なふるまい、そして数少ない目撃例の全てが語る麗しい少女の姿。この街の住人は、二人集まれば必ず怪盗少女の噂をすると言ってもよかった。 そして、その町のとあるカフェでも、また。 「怪盗イザヨイ、また現る! しかし望みの宝は得られなかった模様、ね――」 二人がけの席に新聞や雑誌を並べて、カップを手にした少女がゆっくりと午後のひと時を楽しんでいる。 紙面に躍るのはどれも怪盗十六夜に関する情報だ。どれもこの国の言葉で書かれているが、少女が呟いているのは日本語だった。 ただでさえヨーロッパの小国に東洋人がいるのは目立つ。しかも彼女の格好は、日本の高校の学生服。傍目ではそこまでわからなくても、たった一人でカフェを楽しむには無理のある装いだ。 だが、少女の姿は、この『月と約束した町』の一角に自然と溶け込むほどに、優美であり幻想的だった。 すらりと伸びた手足と整った姿勢、そして女性らしい丸みと膨らみを帯び始めた若々しくも華奢な肢体。穏やかな微笑を口の端に浮かべ、整った美貌を艶やかな長い黒髪が彩っていた。 手に持つカップに口を付ける動作は優雅そのものだったが、思わぬ熱さにびっくりして可愛らしい表情を見せることもあった。カップの中のカフェオレは湯気がかなり薄くなるくらいぬるい様子だが、少女はたいそうな猫舌のようだ。 そんな少女を眺めているだけで、午後のひと時を幸福に過ごせそうな、存在そのものが芸術品であるかのような少女だった。 「いったいイザヨイの目的は何なのか。この世に二つとない宝とは何を意味するか……」 雑誌の読者投稿欄には、彼女が求めているのは理想の恋人だとか高名な詩人の遺作だとかいろいろと推理が載せられている。 それらを斜め読みしていた少女の背後に、無作法に近寄る影。 「姉ちゃん、怪盗イザヨイに興味があるのかい?」 無防備な仕草で少女が振り向くと、背後には近寄られただけで威圧されそうないかつい男が立っていた。少女を姉ちゃんと呼んでいるが、どう見ても男の方が年も体重も倍以上はありそうだ。 「俺がいろいろ教えてやってもいいぜ?」 「ノーサンキューですよ、お兄さん」 「その可愛い顔に傷をつけられたくないだろう?」 猫なで声をあっさり捨てて、男が少女の肩に手を置いた。その無骨な拳にかかれば、少女の華奢な肩など一息で砕け散りそうではある。 はあ、と少女がため息をついた。 月と約束した町……その幻想的な町には、非常に生々しいというか、うんざりするような問題がある。 幻想的な月夜の光景を守るため、州が『夜間の照明を制限する条例』『煙を出す器具の利用を制限する条例』『そもそも電気を使わなきゃいいじゃん条例』を次々に制定。 その結果、確かに月夜は中世のころと同じような素晴らしい光景を保ったが、町の明るさと治安も中世に逆戻り。 屋内での娯楽をほぼ完全に制限された若者が夜の町に大挙して繰り出すという事態に。 闇に包まれた夜を女性が歩けば、強姦される確率は500パーセント……一晩で五回犯されるという意味で……という、先進国としてありえない事態に発展。 しかも、条例に守られた暗闇を利用してマフィアなどの犯罪組織が街に集結、そして潜伏。特に人身売買の一大マーケットに。 この街の最大の収入源たる観光客が来なくなることを警戒したこの街は、治安が最悪であることを必死で隠蔽する一方で、有力者たちでとある会議を組織した。 裏社会に通じた者だけが知っている。この街の混沌とした犯罪の坩堝という現状と、この街を支配する一つの組織の名を。そしてそれは、ヨーロッパ最大の人身売買組織の名前でもあった。 その名は…… 「私みたいな観光客に手を出そうなんて、あなたは『満月会議』のひとさらいですか?」 「ゲッ、グッ」 少女がその名を出した瞬間、男は顔中を蒼白にして奇声を発した。 「……その名前を気安く口にするんじゃねえ。翌朝には豚小屋で種付けされてることになるぞ」 などと、その他にも口汚い罵り言葉をぼそぼそと呟き、男はその場を立ち去ってしまった。 少女はもはや男のことなど忘れたように、再びぬるいカフェに恐る恐る口を付ける。 「……お嬢ちゃん、さっきの男の言ったことは本当だ。その名前は二度と口にしない方がいい」 カウンターで飲んでいた老人が声をかけてきた。その声には偽りのない心配の響きがある。 「記事を見ろ、怪盗イザヨイは多くの悪事を暴いてきたが、その中に人身売買は一つも入っていない。それはつまり、あの怪盗の娘っ子すら、満月会議には怖くて手が出せないってことだ」 「それは怖いですね」 どこまで本気なのか、少女が相槌を打った。 「そういえばつい先日も、日本から来た修学旅行の高校生たちの中で、少女が二人さらわれたって聞く。この街で観光客に手を出して無事に済むのは満月会議の人間だけだ。そうなりたくないのなら、おとなしくしてさっさと帰りな」 「まあ、そんなことが。行方不明になった少女の名前はご存知ですか?」 「んん? いや、わざわざ覚えているわけじゃないが」 少女は雑誌の背の閉じる部分を指先でもてあそびつつ、優しい微笑を見せた。 「行方不明になった少女の名前は、高良唯。それを探している私の名は、望月陽炎と申しますの」 「……まさか……!? お前さんは、行方不明になった二人の娘っ子の一人……!?」 老人が愕然となる。だがその時、少女の机の上に並べられていた雑誌のページが一斉に宙を舞った。少女が指先で装丁をなでた時に、本を閉じる糸がやんわりと引き抜かれていたのだった。 舞ったページがカーテンのように少女の姿を隠し、そして舞い落ちた時には、少女の姿はどこにもなかった。 ただ、机の上に、どうやら猫舌のせいで飲み切れなかったらしいカフェオレのカップと代金の小銭が残っていただけだった。 その日の晩――満月から一日だけ進んだ月夜、その欠落の生む暗闇を舞うように、黒く塗りつぶされた小型の風船が『月と約束した町』の上空を飛んでいた。 そして驚くべきことに、一人の少女までもその風船にぶら下がるように空を飛んでいた。 人間を支えられるようには見えない小型気球で夜闇を飛ぶのは、カフェで望月陽炎と名乗った少女だった。小さな気球で体を浮かべる姿は、陽炎という名の通りの幻影であるかのようだ。 彼女の着ている衣服は、カフェでの学生服からかなり様変わりしている。 東洋の着物に似たデザインながら、肩と腿でばっさりと切り落とされて健康的な手足を見せる黒衣。剥き出しの白い腕と足には同じく黒い布で作られたウォーマーが肘と膝を覆っている。 足につけているのも黒い足袋だった。腰に差した脇差サイズの直刀すらも黒で塗りつぶされている。 彼女を下から見上げる者がいたとしても、変わった形の雲か鳥としか思わないだろう。だがその姿を日本通の人間、あるいはアニメや漫画を趣味にするものが見たとすれば真っ先に『ニンジャ』、もっと詳しいものなら『クノイチ』を連想するはずだ。 決して卑猥でも扇情的でもなく、最終的な露出度で言えば決して高くはないが、剥き出しの二の腕や腿、帯で締められた腰、胸元を押し上げるふくらみはたいへんに刺激的だった。 黒い布を目元に巻いただけの簡素な覆面で顔を隠し、さらには長い布を首元にひるがえしてマフラーのように口元を隠しているが、美しい顔立ちのラインは隠しようがない。 カフェではいかにも落ち着き払った令嬢といった風情だったが、腰まで届く長い髪を後ろでまとめて流しているせいか、瑞々しい生気に満ちた様子だった。 怪盗十六夜。それが、今の望月陽炎の名前だ。 「風向き、よし。誰にも気づかれた気配は無し……」 すぐに、彼女が目的とする建物が見えてきた。 広い敷地と広い庭に囲まれた豪勢な屋敷。観光地として土地の値段が高いこの街ではそれだけで富豪であることを意味する。 その屋敷が通常の豪邸と違う点は、庭に動き回る無数の犬の存在だった。 この屋敷の主は軍用犬の調教で名をなした人物であり、屋敷の一切は……警備はもちろん家事に至るまで、すべてを犬がこなしている。 逆に言えば、屋敷の中に主人以外の人間がいないということ。人身売買の中継地点としてこれほどふさわしい場所もなかった。なにせ、秘密をもらす可能性のある人間がいないのだから。 「ユイ。必ず助けてあげるからね」 高良唯、文学部の才媛にして陽炎の大親友。修学旅行でこの街に来た時には、あらゆる詩人を追体験できると舞い上がっていた愛しい少女。 そして、迂闊にも夜中に出歩いてしまい、そのまま消息を絶ってしまった。その時に一緒にいなかったことを陽炎は今でも悔やんでいる。 この街での人身売買は、すべて『満月会議』がとりしきっている。そのことを知った陽炎は、帰りの飛行機から一人抜け出し、町に舞い戻って怪盗となった。 親友が誰によって拉致され、いまどこに監禁されているかを知るために、満月会議を敵に回して一人闘う怪盗十六夜として生きることを決めたのだ。 「使用人が一人もいない屋敷。ここに拉致された人たちが監禁されていても不思議じゃない」 庭を歩きまわっている犬たちを眼下に眺めながら、陽炎の気球はゆっくりと屋敷の屋上に近づいていく。どれだけ犬が庭を警戒しようと、飛び越えてしまえば意味はない。 だが、その時、屋上の一角に何かの気配を感じて陽炎は動きを止めた。 「んん……?」 目を凝らすと、これまで屋上にべたりと伏せていた漆黒の犬がふに立ち上がって猛然と彼女に向かって走り寄って来た。 それも一頭ではなく、三頭もの黒犬が、一直線に並んで陽炎へと駆けて来た。恐怖で怪盗少女の顔が青ざめた。 (しまった、屋上にも待機していたの!?) もちろん下調べは入念に行った。だが、屋上にべたりと伏せた黒犬は遠距離からでは発見のしようもなかった。 逆に言えば、それだけ静謐な待機を犬に科すほどこの館の主人は優れた調教師であるといえる。 とっさに陽炎は気球を操って上昇し、犬の跳躍でも飛び付けない高度へと退避する。 だが、次の瞬間、先頭の犬がばっとうずくまり、二頭目の犬が一頭目の背中を踏んで真上に飛ぶや、三頭目の犬が二頭目の背中をさらに踏み台にして高く跳躍した。 まるで犬の組体操、あるいは戦隊ヒーローの合体技。さらに例えるならば、踏み台にする動作を取り入れたジェットストリームアタックと呼ぶべきか。 犬の常識をはるかに超えた大ジャンプを見せた黒犬は、流星のように気球へと迫った。がうっと開いた口に鋭い牙が並ぶ。 安全だと思っていた場所に飛びつかれた陽炎はなすすべとてなく、恐怖で体をすくませた。 「ひっ!」 思わず悲鳴をあげてしまった少女ではなく、その体を支える気球を犬の牙は引き裂いた。流星のごとく飛び去った犬の口元には渋い笑みが浮かんでいた。 「あ……」 引き裂かれた気球はすでにボロ布に等しく、地上二十メートルほどの高さで上空に放り出された陽炎は庭の中央に向けて落下を始めた。 しかし、ここからが陽炎の怪盗としての意地の見せどころだった。空中で自由落下しながらボロ布と化した気球を正確に解体し、風呂敷のように両手の間に広げたのだ。 それは、いわゆるムササビの術の変則版とも言うべきものだった。かろうじて空気を捕らえた少女は減速しつつも地面に結構な勢いでたたきつけられたかに見えたが、巧妙な受け身で地面を転がった少女には目立った負傷はない。 しかし、無事に着地できた陽炎に休む余裕はなかった。 庭で待機していた十数頭もの犬が、彼女を完全に包囲していた。いずれも鍛え上げられた犬の獰猛な唸りをあげており、逃げようとするそぶりを見せれば即座に噛み殺されそうだった。 『どうかね、私の犬は?』 「まあ正直、世界一の調教師を自負するだけのことはあるわね」 唐突に聞こえた声に、陽炎は動揺を抑えながら答えた。 この屋敷の主人、軍用犬調教師の声に間違いなかった。重々しくもしっかりとした口調には不快感は感じなかったが、それだけに恐ろしさを覚える。 声のした方を見れば、包囲から離れた所にいる一頭の犬の首輪にスピーカーのようなものがついている。まるで犬がしゃべっているかのようだが、実際にその犬が指揮官であるようだ。 屋敷の主人の勝ち誇った声を聞き、彼女の周囲を取り囲む犬の群れが歓喜の咆哮をあげた。実際、これだけの犬に囲まれては身じろぎの一つもできなかった。 『君も私の犬にしたい』 「最悪……」 あまりにも直接的な言葉を受けて、少女がげんなりする。 『抵抗しなければ痛くはしない。さあ私のかわいい犬たちよ、あたらしい仲間をここに連れて来ておくれ』 「遠慮するわ」 一言で切り捨てると、陽炎は自分の口元を覆い隠すマフラーを解いた。 ほっそりとしたあごのラインと可憐な桜色の唇が月下に露わになり、犬たちがなぜか興奮して唸り声をあげた。 『自ら素顔を見せてくれるのかね?』 「十六夜忍法、水月」 嬉々とした声にはこたえもせず、陽炎は解いたマフラーを束ねると口元に寄せ、ふっ……と自らの甘い呼気を閉じ込めるように吹き込んだ。 『かかれ!』 陽炎の動作に危険を感じた調教師が指令を下し、十数匹の犬が一斉に陽炎に跳びかかった。 犬たちはまず陽炎の髪を咥えて地面に引きずり倒すと、その手と言わず足と言わずいたるところにかぶりついた。 だが、次の瞬間、犬たちは自分がくわえているのが少女ではなく少女の残したマフラーだけであるということに気付いた。そして、マフラーから転がり出たお手玉から噴き上がる無臭の催眠ガスをまともに嗅いで、次々にその場に昏倒した。 「あなたたちが見たのは水面に映る月。どれほど手を伸ばしても天の月には触れられない」 包囲を脱した地点で、陽炎は静かに解説した。いわゆる空蝉の術の亜種と言おうか、マフラーを自分に見せかけて犬たちを引き付けたのだ。 彼女を包囲していた十数匹の犬たちはすべて昏倒し、唯一無事だった調教師のスピーカーを付けた犬と怪盗十六夜は向かい合った。 『見事な手並みだ。君はいい雌犬になれるだろう』 「あなたなりの褒め言葉だとしても、素直に受け取れません」 余裕で言葉を交わす陽炎だったが、内心ではかなり焦っていた。 マフラーを失って顔の下半分が丸見えになっているのも誤算なら、催眠ガスの詰まったお手玉も彼女の切り札の一つだった。それをここで失ったのは正直痛い。 『ぜひとも屋敷に招待したい。君のために日本から伝統的なドッグフードを取り寄せてある』 「ドッグフード?」 『主食となる米を皿に盛り、味噌を使ったスープをかけたものだ』 「それって、犬まんま……ですか?」 『試しに食してみたところ、なかなかの美味だった。君も満足できるだろう』 「食べたんですか」 あきれ顔で陽炎は突っ込んだ。調教師の口調は真剣であるだけに力が抜ける。 「私にはこのまま逃げ帰るという選択肢もあるんですけどね」 力が抜けた陽炎は、ついぽろりと内心を零してしまった。次々に誤算に襲われて思考が後ろ向きになっていることを知られてしまったと、口にした後で後悔する。 それでも彼女の発言は事実だった。目の前の犬をかわして屋敷から逃げ去ることは、それほど難しくはない。 そんな彼女の内心を見透かしたかのように、調教師は決定的な一言を口にした。 『だが君にはまだ、世界に二頭といない犬を見せていないのだが』 「……! まさか、唯がそこにいるの?」 陽炎の顔がこわばる。世界に二つとない宝、怪盗十六夜の目的、それがあると調教師は言った。 『世にも素晴らしい日本の雌犬だ。だが一頭ではさびしそうなのでね。君が仲間に加わってくれたら彼女もさぞ喜ぶだろう』 「唯を……犬呼ばわりするなッ!」 始めて感情をあらわにして、陽炎は激昂をそのままに叫んだ。 『私にとっては最大級の賛辞なのだが……これ以上どう褒めればいいか見当もつかないほどに』 弁解がましい口調と、同じく言い訳するような表情の犬を睨みつけ、陽炎は唇をかむ。 (ここに唯がいるなら、逃げるわけにはいかない。どんなひどい目に遭っているかわからないんだから) 調教師に犬扱いされている大親友の痴態が脳の片隅で繰り広げられるも、渾身の気力でそれを無視。 「いいわ。その挑発に乗ってあげる」 彼女は言い捨てると、眼前の犬に向かって疾風の如く駆けた。 犬が反射的に彼女に跳びかかるが、その一瞬前に幻の如く跳躍した陽炎は、なんと向かってくる犬の頭に跳び乗ってもう一段の跳躍を見せた。 踏み台にされた犬自身もまるで羽にふれられたかのようにしか感じられない、体重を全く感じさせない動きだった。 その人類の常識を超えた跳躍で二階の窓に飛びついた時には、陽炎が腰から抜いた短刀が窓ガラスに亀裂も入れずに貫き、閂を正確に切り落としている。 『招待すると言っておるのに』 「玄関からは入らない主義なの」 そう言い返して、怪盗十六夜は窓をからりとあけると幻のように部屋の中へと飛び込んだ。 SS一覧に戻る メインページに戻る |