シチュエーション
![]() 新たにやって来た男は、スーツケースを引いて部屋に入った。 何語か新蔵と相談し合うと、得心したような顔つきでトランプの背後に回った。 男はまずトランプの顎を持ち上げると、ボールギャグを口から外した。 数回咳をし、トランプは新蔵に向って叫び散らす。 「何をする気なの! 放して!」 「怪盗に入っておいて放して、とは都合がよすぎないかね、お嬢さん?」 その言葉にトランプが言い返す前に、背後の男が動いた。 骨張った大きな手が、トランプのふくよかな胸を撫でたのだ。 「ひっ」 揉むとも触るともつかない、表面をなぞっていくような触り方は、ただただおぞましく感じた。 胸だけではなく、ゆっくりと身体のラインを確かめるように全身の輪郭を撫でていく。 「ん、やっ……だ!」 身を捩るが、鎖に繋がれたトランプは逃げることは出来ない。 「ふむ……胸はDといったところでしょうかねえ」 粘り気のある声で、男が新蔵に向けて言った。 (どうして……分かるのよ) 悔しそうな顔をしながら、トランプはきっと新蔵を睨みつける。 しかし新蔵は取り合いはせずに、頷くだけだった。 男が、下から持ち上げるようにトランプの胸を揉む。 「――ッ!!!」 今までに感じたことない感触に、彼女は顔を歪めた。 時には乱暴に、時には優しく包むように、あらゆる触り方で胸を揉みしだいてくる。 「いやっ、やめてよ、この、ちょっと!!」 ジャラジャラと響く鎖の音が、どこか虚しさを伴う。 「初心じゃのう、ええ、怪盗さんよ」 まるで観察するような視線で、新蔵がトランプの身体に目を向ける。 その視線は、身長や顔つきにそぐわぬふくよかな胸、服の上からでもわかる細い腰つきに注がれている。 「こ――このッ」 蹴りあげようとする。 ガタン、と音はするものの、足は繋がれた鎖からは離れない。 ここに来て、怪盗少女は初めて恐怖というものを覚えた。 十六年生きているのだ、女であることを差っ引いても、そういう知識が皆無というわけではなかった。 (私……何をされるんだろう) とたん、言い様のない不安がトランプの全身をめぐった。 男は胸を揉んでいた手の片方を、腹部を撫でるようにしてゆっくりと下に下ろしていく。 行きつく先は、言わずとも知れた。 「いやっ、やだやだ、お願いやめてっ!!」 身体を前後に揺すってみる。 その怪盗の必死さに、新蔵と男は含み笑いを漏らした。 まるで男の上で腰を振っているかのようで、ひどく煽情的な動きに見えたのだ。 ガシャガシャと鎖を打ちならしながら腕を振っても、痛みが返ってくるだけ。 しかしトランプはそこに触れさせまいと、抵抗を止めなかった。 男の手は焦らすように、そんな怪盗の行動を愉しむように、ゆっくりとトランプのスカートを押しのけていく。 つん、と男の指がトランプの股間に触れた。 「い、ひいっ」 自分でも滅多に触らないところを、知らない男に触れられる気色の悪さ。 他人に触られたことによるショック。 おぞましさ。 吐き気。 悔しさ。 恥ずかしさ。 ありとあらゆる、そう言った感情が、トランプの意識を侵食していく。 「ゴスロリなんて、まるでラブドールのようですね」 男がトランプに言い聞かせるように、耳元で囁いた。 (私が、ラブドール、ですって!?) 男の言い草に、かっとトランプの顔が朱に染まった。 股間に触れられているからか、愛玩人形だと言われたからか、どれかが呼び水となって、トランプはいっそう暴れる。 「ぐっあああッッ! こんなことして、ただで済むと思わないでッ! 絶ッ対に、許さないっ――!」 ガシャガシャ。 ジャラジャラ。 ガチャガチャ。 ジャリジャリ。 その間にも、感じたことのない感覚を、トランプは感じてしまう。 男に揉まれる胸の感触。 男に触れられる股間の感触。 そのどれもが吐き気を催すくらい気持ち悪く、 相手の腹をかっ捌いてやりたいほど憎たらしい。 それなのに、その気持ち悪さに嫌がっている姿さえ、この男どもには愉悦に映ってしまうのだ。 だから、 「おや、感じているのですか」 身に覚えがないのに、そう捉えられる。 「そんなはず、ないじゃないッッ! 気色悪い、汚い手で触らないでよ!!」 男の片手が鎖骨を撫でると、どうしてもびくんと身体がのけぞってしまう。 股間をこすられると、太ももに力が入ってしまう。 「ほらほら」 男はあらゆる手を使って、トランプを弄んだ。 ねっとりとした生温かい舌が、耳の穴に入って来た。 「ひゃああぁっ!!??」 思わず、声が出てしまう。 ゼロ距離で響く水の「びちゃびちゃ」という音が、生理的に受け付けられなかった。 「んッッ、ふっ、はあぁっ」 右耳、左耳、うなじ、鎖骨。 剥き出しの肌で舐められなかったところはない。 「はあ、はあ、はあ」 必死の抵抗と、身の毛もよだつ感触で、トランプは早くも肩で息をしていた。 しかし、トランプに休む暇など与えられるはずもなかった。 男の手がトランプの顔を引き寄せると、抵抗する間もなく男が口づけをした。 「んむぅッ!?」 男の口から離れようと、トランプは身を捩る。 それよりも強く、男は口を押し付ける。 男の舌が、開けまいと閉じているトランプの歯ぐきや唇、歯を舐める。 「んんぅ、うう、ん」 顔を振りみだすも、男はがっちりとトランプの顔を掴んで離さない。 息が出来ず、鼻で息をすると、鼻をつままれた。 「んっんっ――んんんっ」 息を求めて、あられもなく頭を振り動かす。 満足したのか、男が口を離すと。 「げほっおえっ、うえっ」 トランプは噎せこんで、口の周りについた男の唾液に顔を顰めた。 「なんてことすんのよっ!」 薄らと涙目で、男を睨む。 その勝気な表情さえ、男たちをひるませることは出来ない。 「初めてだったかな?」 唇を舐めまわしながら男が言う。 トランプにとってキスは神聖な行為だった。 いや、自身の身体さえ、見ず知らずの人間に触らせようとさえ思わない。 いつか好きな人と。 そう思っていたのに。 トランプの瞳にみるみる涙の膜が張り、それを破らないようにと彼女は必死に目を見張った。 男は自然な動作で、再度ボールギャグを噛ませた。 「はっ、いいのう、女怪盗が惨めな姿を晒すというのは」 黙りきっていた新蔵が、声を張り上げた。 「どうじゃ、貴様が謝罪をするのならば、拘束を解いてやらんこともない」 その言に、しかしトランプはぷい、と顔を背けた。 涙を見せないためか、拒絶の意を示しているのかは分からなかった。 「ふん、まあ良い。いずれ、貴様は我が手中に落ちるだろうよ」 新蔵は男に、また何事か囁いた。 男はキャリーケースをトランプの傍らに置くと、何やら背後で機器を弄りだした。 何かの駆動音がすると、 ブゥゥン。 とトランプが跨っている機械が小刻みに振動し始めた。 最初は何事かと思ったトランプだったが、すぐにこれがとんでもない機械だと知らしめられる。 「ッ! ンンンンッッ!?」 ちょうどトランプの股間の下が、隆起している事を初めて感じた。 その隆起が、振動によって彼女の股間を執拗に刺激するのだ。 (や、何これ!? 怖い、やだ) なんとか振動から、隆起から逃れようと腰を持ち上げようとするのだが、がっしりとした拘束によって叶わない。 それどころか、まるで押しつけらる様に、ぴったりと股間に隆起が当たる。 「んッんっんッン」 ぴりぴりとした痺れが、つま先から頭までを駆け抜ける。 気を抜いてしまうと、びくんと身体が弓なりに仰け反ってしまい、それは何だか男を喜ばせるような気がして嫌だった。 つま先に力を入れて耐えようとするが、機械が前後にグラインドしたりもするので、ことごとく当たる個所や感覚が変わって、にわかには慣れない。 (いや、動か、ないでよ……! ンッはあ、やだ、なんか擦れてる) 隆起はいぼのようになっていて、それが振動とグラインドによって様々な感覚をトランプに与える。 トランプ痺れるような振動に身を焦がしている間、男は親指ほどの大きさをした卵型の何かを取り出した。 「これが何だか分かるか」 目の前に持ってこられても、それが何だかはわからなかった。 しかし、そのピンク色の機械が、自分をいたぶるための物だということはどうしようもなくわかった。 「これはローターって言ってな」 だらだらと涎で股先を汚して喘いでいるトランプに、はっきりとした口調で言う。 「まあ実践で、どう使うか体感しなよ」 言うや否や、男がその機械をトランプの下着の中に突っ込んだ。 「ンうっ!」 (下着の中、少し触られた……!) それはとてつもない恥ずかしさを、トランプにもたらした。 かさ、と綺麗に生えそろった陰毛に男の手が擦れる度、じんじんと頭が痛くなる。 男が卵型の機械に繋がった、もう一方をトランプの前に掲げる。 こちらは長方形で、つまみの様なものが付いている。 「さて、また良い声で鳴いておくれよ」 男の指が、つまみを少しだけ回した。 すると、 「――ッ!!!!!」 声にならない叫びが、トランプの口を衝いて出た。 その機械も、トランプが跨っている機械同様に振動した。 しかし、それがもたらす感覚は下の機械とは比べるべくもないほどに強烈だった。 ガクガクと太ももが震える。 思わず握りこぶしを作って耐える姿勢を取ってしまう。 身体は前のめりになり、小刻みにびくびくと揺れた。 「はは、ちょっと刺激が強かったかな? まあ初っ端からクリトリスにローターはきついよなあ」 内容とは裏腹に、愉しむようにぐりぐりとローターを押し付けてくる。 その度に、言葉にならない音がトランプの口から壊れたテープのように漏れ出る。 つまみの方も片手で持つと、男は空いた手でトランプの胸を揉みしだいた。 そして左右の胸を等しく楽しむと、その手でボールギャグを外してやる。 塊になった唾液が男の掌に落ちた。 「あああああああっ!!! いや、いやいや、これ、止めて、止メてッ!」 下からの振動、そしてローターからの振動で、トランプの首の後ろがずっとびりびりし続けていた。 びくんびくんと、面白いくらいに身体をくねらせるトランプに、新蔵も鼻息が荒い。 「おい、もっと振動を強くしろ」 新蔵が男に命を下すと、男は意を得たりとつまみをぐるっと大きく回した。 「う、ああ、あああああああっああっああああッッッッ!」 トランプの太ももがぶるぶるとし、開いては閉じを繰り返す。 時折くる波で、胸を突きだすように身体が反応する。 ガシャンガシャンと鎖を揺らしながら、駄々っ子のように頭をあらゆる方向に振り回している。 トランプはこのあり得ないほど頭を痺れさせる感覚から逃れることしか頭になかった。 身体は冷や汗を掻き、ブラウスやブラジャーはもう肌に張り付いている。 首や額にもうっすらと汗が噴き出す。 「はは、面白いように感じているんだな、怪盗さんよ」 男はトランプの頭を掴んでゆすって、馬鹿にするように、あざ笑うように言った。 それははっきりとした口調だったが、少女には届かなかった。 「っはああ! うあ、んあ、やっやめて、これ、と、とめて、もう、も、もう無理だからぁっ!」 半ば鳴き叫ぶように、恥じらいを持った乙女が声を張り上げる。 つまみを弄って振動数などを調整すると、怪盗少女の反応が猫の目のように変わる。 小康状態のように肩で息をし、ときおり、喘ぐ様。 臨界点に達したのではないかと思うほど、甲高い声を漏らす様。 身体をくねらせ、よじらせ、逃れられない感覚から逃れようと煽情的な動きを見せる様。 そのどれもが、新蔵と男の熱を高めていった。 怪盗少女のミニハットがあっちへこっちへ引っ張られる。 フリルの多い衣服が揺れると、少女が面白いくらい身体をくねらせる。 顔を上げると、汗で光る首元や鎖骨の白さに目を奪われる。 ローターとロデオの振動で狂っているのではないかと思うくらい暴れる姿は、あられもなくそそった。 「と、止めてっ! いい痛くなってきたっッあああっううっン、アァあっ!」 ぎゅっと目を瞑り、歯を食いしばって耐えるトランプに、新蔵はにやついた声音で提案する。 「ほう、ではワシに屈服するということ、かな?」 屈服。 その言葉の響きに、トランプの矜持が反応する。 「……だっ誰がぅっ、あ、アンタなんかの――ッ! アンタなんかに、屈ッッあっ、服なんて」 ブウゥゥン……。 ローターとロデオの振動が、沈む太陽のように収まっていく。 「っはあ、はあはあはあはあ、はっ」 大量の汗をかいたトランプは、肩どころか全身を使って息を求めている。 「屈服してしまえば楽だぞ? 少なくとも、こんな苦痛は終わりになる」 「……そ、んな保証はっ、どこにも、ない、でしょう、がっ」 「そうか、なら今までのを、貴様が屈服するまで続けるまでだが」 新蔵は目を細めていうと、片手を上げた。 と同時に、再度、跨いでいる機械が振動する。 「ぐっああっ!」 振動が収まる。 「どうじゃ、ワシの言うことを聞く気になったか?」 「はあはあ、だ、れが、あんたみたいな卑劣で汚い男の言うこと、なんか」 「ふむ、まったく強情じゃのう。では、より卑劣で汚い真似をさせてもらおうかね」 ちらりと新蔵が男に目配せをすると、男は背後の壁まで下がって、何やらまた弄り始めた。 ゴウン、と大きな音がしたかと思うと。 両手を繋いでいる鎖が、床に向かって下がっていく。 しかし緩んだわけではなく、あくまでも張り詰めている。 鎖の下降が止まると、万歳の様な恰好から、気をつけから少し腕を広げたような格好となった。 ダンベルを持ち上げるように腕を上げてみるが、やはり鎖は強固で外れることはない。 男が戻ってくると、トランプの腰を持って少し前に位置をずらした。 すると、下のロデオも動き、まるでM字開脚のような姿勢を取らされる。 「――ちょっと!」 振動が股間に当たることは無くなったとはいえ、この姿勢はあまりも屈辱的だ。 目の前に座る新蔵には、自分のアソコが見えてしまうではないか。 「口は口でも、下の口は正直じゃな」 かっと、トランプの顔が熱を持ち、目一杯眉間にしわを寄せた。 (最低っ、こんな恰好……あんまりだ) 恥ずかしさに耐えるように震えていると、新蔵が顎をしゃくる仕草を見せた。 男が、またあのピンク色の機械を持ち出した。 またあの、得も言われぬ刺激に耐えないといけないの――? トランプは涙目を見られないように、きゅっと目を閉じた。 しかし、男の次の行動はトランプが思っていたよりも最低だった。 男はトランプのショーツを横にずらすと、濡れそぼったそこになじませるようにローターを宛がった。 「……っ」 ぬるぬるとした感触が行き来して、思わず太ももが閉じかける。 そして、期は熟したとばかりに、男はぐい、っとローターを押し込んだ。 「――えっ!?」 ソコにそれを入れるという発想にまず驚いた。 何よりも、それを受け容れてしまったということが、あらゆること以上にトランプを刺激した。 「入れ――、私、私……」 おろおろと、新たな未知の感覚に戸惑いを隠せない。 ここまできてしまえば、怪盗とは言えども一人の女でしかなかった。 そして、男がローターのつまみを最後まで回した。 「ひっああああああぁああぁぁぁああぁああぁああッッッッ!?!?!?」 内から来る振動は、先ほどまでのものとは比べようもないくらい、刺激が強かった。 まるで身体の中から全身を揺さぶるような感覚に、無意識に身体がびくびくとあらゆる方向に跳ねてしまう。 「ああああっ、だめッ、いやあああッああッあ」 男は空いた手で、少女のクリトリスを擦るように弾く。 中からは振動、外からは異常に反応してしまう箇所を、指でいじりまわされる。 このダブルパンチに、トランプはがんがんと頭を鈍器で殴られ散るような錯覚に陥った。 きゅ、っと股間が、なぜだかローターを包むように圧迫する。 そうすると、振動が余計に伝わってきて、普通よりも身体が反応してしまう。 そんなことが、三十秒に一回ほどやってくる。 こんなもの締め付けたくないのに、身体が勝手にやってしまう。 まるでもっと強く、と身体が求めているように。 「アッァッアッアッアッ――――――ッッッ!!!!」 それを何度か繰り返しているうちに、トランプをまたもや未知の感覚が襲う。 尿意に近い、けれどそれ以上に何かを外に解放するような感覚だった。 「イヤッッ! 止めて止めてっ、も、もうヤダああアッ!」 ひと際大きな声で懇願すると、振動が弱くなって、押し寄せていた波が引いていく感じがあった。 「――…………う、あ?」 びくびくと身体を打ち震わせながら、空ろな目でトランプが前を見た。 「ほう、なんじゃ、イきそうだったか?」 イ、く? はあはあと息を漏らしていると、新蔵が呵々と笑った。 「おい、徹底的に寸止めしてやれ」 新蔵が言うと、男も興奮した様子で再度、つまみを回した。 「あ゛っ!?」 ブブブブブと徐々に強くなっていく振動に、きゅっと股に力が入る。 まるでそこで全てを感じようと、神経がローターを包み込む感覚に集中していく。 「ああぁう、はああ、ンッううっあっあっぁう」 頭が熱で蕩けそうだった。 湯気が出てしまっているのではないかと疑うくらい、顔や身体が異常な熱を持っているのが分かる。 男の手が胸を揉みしだき、舌が耳やうなじをなめくじのようにはうたびに、身体がくの字に曲がる。 何だか自分のからではないみたいだ。 男が、ローターを引っ張ると、また異常な刺激が、落雷のようにトランプに落ちた。 「うあああああああッッッッ!!!!!!?????」 きつくしまった壁を押しのけるようにして出ていこうとするローターの振動と、擦れる感覚が脳天に突き刺さる。 そしてまた、あの尿意にも似た感覚がトランプを支配する。 (あああ…………この機械が外に出たら――) 何も考えられないような頭で、不意に首をもたげたその気持ちに、トランプ自身が頬を張られた。 (わ、私、いま何を考えて) そんな思考をさえぎるように、また股間が熱くなる。 そして尿意が限界になろうとしたところで、ふっと振動が止んだ。 「――う、あああああ」 虚構の振動を求めるように、トランプの股間がひくひくと動いている。 「はは、どうした怪盗さん、おもらししたみたいにびしょびしょじゃないか」 新蔵が揶揄を飛ばす。 「おも……らし、ですって」 ちら、とそちらに視線を降ろせば、ピンクホワイトの可愛らしいフリルのついた下着は、たしかに濡れていた。 「……こんなの、私じゃない、私じゃ、ないん、だからっ!」 自分ではない誰かの身体のような感覚。 間違いなく、自分自身が機械によってこうなってしまったという事実。 変なことを考えてしまう自分。 それらが一緒くたにトランプにのしかかり、彼女の頬をとうとう涙が伝った。 「気勢が強くても、所詮は女だな」 新蔵が立ちあがると、トランプの元に歩み寄った。 「ぐっ」 頬を掴み、鼻先がくっつかんとする距離にまで近づいて、男の手からローターのつまみを受け取る。 「さて、どこまで耐えられるかな」 つまみを最大限にし、 「ああアアああああああアッ!!」 下着と襞を掻き分けて、新蔵の太い指がトランプの中に入ってくる。 「イヤだッ、止めろ、ヤメロ!!! 汚い手で、触ら、ないで、よッ!」 トランプの決死の言葉も虚しく、新蔵はぐっとローターをさっきよりも少し先に押し込んだ。 「――ッウああああぁああぁぁぁウうううんっッッ!!!!」 「もっと声を荒げてみせろ!」 「アアアアっっ、ダメ、だっ、あ゛ッッ、ああアッ、ヤっ、いっふああああアッ」 ガクガクとトランプの脚が震える。 ぴん、とつま先を張って。 拳をあらん限りの力で握りしめて。 ぐいぐいと新蔵が指を出し入れする。 「ウああアッ、ダメ、おかっおかしくッなるっッウ、アんッンっあぁぁぁッッ」 ちかちかと、閉じた瞼の裏で光が明滅する。 「膣がひくひくしているぞ、この淫乱め、どっちが本物の口なのだか」 新蔵にたくさんの罵詈雑言を浴びせられて、しかしその一つに言い返す余裕がトランプには無かった。 膣がきゅうきゅうとローターと新蔵の指を、逃すまいと締め付けるのが分かる。 そしてそれを力任せに引き抜かれた時の、あの爽快感が膣を通って身体の芯にまで届いてくる。 「イきたいか?」 「ああアッ、わた、私ッはぅ、イきたくっなんかッ、ナイッ!」 気丈に、よく通る声でトランプは言った。 「アッンタなんかのッ、言うことを聞くッ――あっ、くらいならッ、死んだ方がまし、だわッッ!」 もう頭の中は真っ白で、酷使された肉体はこの次をどうしようもなく求めている。 けれど、心までは屈っしはしない。 それが最後の、砦なのだから。 「そうか、イきたくないか」 はははと哄笑する新蔵は、手持無沙汰となった男がこれまで見たこともないような笑顔だった。 「では――――そんなにも嫌なら、思う存分にイかせてやろうではないか」 男の抽出動作が大きくなる、指がより奥まで入ってきて、それをトランプが呑み込んでしまう。 (こんなやつのなんかを、どうして……?) ローターは奥で止むことなく振動し続けていて、もう感覚はほとんどマヒしていた。 新蔵の指がくい、と曲げられる。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!??」 どれだけ未知の感覚があるのだろう。 どうしてそれをもたらすのがこの、欲にまみれた汚い豚なのだろう。 そして、なぜこの豚にいいように嬲られて、あまつさえこんなになっているのだろう。 分からない、これが女だからなのか、それとも私だからなのか。 「ああああっダメ、やめてえええっ、お願い、ダメ、もう、なんか、来るッ」 ぐじゅぐじゅと淫靡な水音を響かせながら、新蔵が荒い息を吐きながら言う。 「イってしまえ、落ちた怪盗め、ただの雌に成り下がるまでこのわしがいたぶってやる」 感電したように、もうトランプの身体はびくびくとあらゆる方向に跳ねている。 「ダメダメダメ――ッ!! アッ! あっ! あっ来るッ来ちゃうッッ!」 身体を目一杯のけぞらせながらも、トランプの口から漏れるのは自分でも聞いていて恥ずかしい甘い嬌声だった。 下半身が痙攣しているのが分かる。 感覚がマヒしてしまっていて、何だ何だかわからない。 分かるのか、わからないのか、どっちなのかももう――知るものか。 ただこいつに屈しないことを貫き通すしか、もう私にはないのだ。 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 そしてトランプは、生まれて初めてイくという感覚を、好きでもない男で知った。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |