シーフイントラップ 第二話中後編@
シチュエーション


「ほらほらさっきまでの威勢はどうしたんですかー?」
「チチ見られたくらいでギブアップかよ、情けない怪盗様だなオイ!」
「う、うるさいっ!」

客席からの野次に思わず反応するナイトリンクス。
それが、相手を喜ばせるだけなのはわかっている。
それでも、裸を晒した動揺が、冷静であろうとする心を押しのけてしまう。

(とっ、とにかく落ち着くんだ。状況は好転した、それは間違いないんだからっ)

いやらしい男達の視線から守るように胸を抱えながら、椿は状況を整理する。
耐え難い屈辱ではあるが、狙撃者達は露わなバストに見とれて銃撃は止まっている状態。
この好機を活かさないわけにはいかない。

(足場がこんなにぬるついてるんじゃ、最初のように立って進むのは無理か。
なら、このまま行くしかない、か……)

改めて自分の現状を直視する。
コスチュームは半壊し、上半身は丸裸で双乳はモロ出し状態。
目元から下を覆い、素顔を隠してくれている覆面はほぼ無傷。
下半身のスパッツは少々ダメージを受けてはいるが、まだ半分以上残っている。
現在位置は鉄棒橋のちょうど半分を超えたあたり。
体勢としては、客席に正対する形で足場に腰掛けているというやや不安定な格好。
進行方向の足場が濡れているこの状況で前に進むとなると、鉄棒に跨って行くという形しかない。

が、そのやり方では今までと比べて速度はガクンと落ちる。
しかし、時間制限がない以上はどんなにゆっくりであっても最終的に向こう岸に辿り着ければいい。
極端な話、例え裸に剥かれてしまったとしても、それは敗北には直結しない。
要はゴールしさえすればいいのだから。
無論、束前がそれで負けを認めるかは疑わしいが、その時はその時。
岸にさえ辿り付くことが出来れば、自由に身体を動かせるようになるのだからいくらでもやりようはある。

(よしっ)

方針を固めた少女怪盗は、善は急げとばかりに身体の向きを変え、両脚の間に鉄棒を挟んで跨ぐ体勢を取る。
少し情けない格好だが、今はプライドよりも歩みを進めることが優先。
見た目に拘っている場合ではない。
だが、いざ出発!という段になって椿は気付いた。
この体勢で進むには、どうしても両手を胸から離す必要があるということに。

(あ……ど、どうしよう!?)

鉄棒に跨ったまま前に進むには、前方の鉄棒を掴んだ両手で身体を引っ張って行くしかない。
例えるなら、しゃくとり虫のように。
そうなれば当然両手は塞がってしまうため、ワガママ巨乳を再び衆目に晒す羽目になってしまう。

「どうしたナイトリンクスちゃん、動きが止まってるぞ!」
「進めよ、はやくはやくっ」

そしてそれは、彼女の挙動を見つめる観客達も理解済みのことだった。
初心な乙女にストリップを強要するように、野次の声がヒートアップしていく。

迷っている時間はなかった。
時間の経過は敗北ではないが、不利は招く。
ただでさえ不自由な体勢なのだ、早く動き出すことにこしたことはない。
少女怪盗は、覚悟を決めた。

『おお……っ!?』

たわわに実った肉果実から腕を離していく半裸少女の姿に、男達の歓声が湧き上がった。
だが、その声はすぐさま落胆へと変わる。
椿は胸を隠す手を離した瞬間に上半身を前傾。
そして、前に伸ばした右腕をちょうどカーテンのようにして胸を男達の視線から隠したのだ。

「そう簡単に、乙女の胸を見せてあげるはずないでしょ、べーだ!」

観客席にあっかんべー(覆面のため舌は見えないが)を向けるナイトリンクス。
期待を裏切ってやったという満足感から、唇が少しほころぶ。
しかし、態度とは裏腹に、覆面の下は赤面顔であった。
確かにこの姿勢ならばバストを隠すことは出来る。
けれども、手を離しているのも紛れもない事実で、乳肌に当たる空気が心細さを感じさせてくる。
更に言えば、これはあくまで客席からの視線を防ぐだけの応急措置でしかない。
真正面からなら、隠すもののない双乳が完璧に見えてしまうのだ。
束前が公開している動画から、屋敷各所には隠しカメラが備え付けられているのは間違いない。
つまり、この真正面からのアングルも撮られている可能性は大で。

(それでも、直接見られるよりはマシだよ……っ)

見えない物を気にしていても仕方がない。
今は直接感じる下衆な視線から、処女肌を守る方が大事。

そう自分を無理矢理納得させて、それでも少女は心のどこかでカメラの存在を意識してしまっていた。

「ん……しょっ!と」

男たちの視線から肌を守り、飛来してくる銃弾を横目で警戒し、手を動かす。
やることは多いが、それでも椿は集中して再び進行を始めた。
新たな移動方法は、両腕の力だけで身体を進ませないといけないため、かなりの重労働。
だが、幸いにも鉄棒は束前の銃弾によって濡れているため、滑りがよく、思ったほどの負担ではない。

(これならいけるかも……)

ゆっくりと、しかし確実にゴールへと近づいていくナイトリンクス。
勿論、敵がそれを指をくわえて見ているはずもなく、銃撃が再開される。
しかし、不便な体勢ではあっても迎撃はそれほど難しいことではなかった。
既に上半身の衣服は完全に溶かされているために、守る必要はない。
そうなると、防御しなければならないのは素顔を隠す覆面と、下半身だけ。
二箇所を守るだけならそれほど難しくはないし、そもそも銃弾はもろいので手をかざすだけで防げる。
それどころか、射手達は何を考えているのか、未だコスチュームの残る上下をほとんど狙ってこない。
肩や脇腹、太ももやふくらはぎなど既に肌が見えている場所ばかりを撃ってくる。

(今度は何を……!?)

剥き出しの肌に次々と着弾する溶解液入りの銃弾に顔を顰める怪盗少女。
先程のことを考えても、敵が意味のないことをするとは考えにくい。

だが、現時点では狙いがサッパリ読めない以上、過剰に警戒するわけにもいかなかった。
飛んでくる銃弾全てを防いでいては、いつまでたっても前に進めないのだから。

(気になるけど、今は進むしかない。でも……うう、気持ち悪い……)

溶解液は粘度が高いらしく、肌にドロリとした感触を伝えてくる。
しかも、無色透明ではなく白濁としているため、椿の身体はすっかり白く汚れてしまっていた。
もしも敵の狙いが気分を不快にさせることならば、効果は絶大といわざるを得ない。

「うはっ、巨乳少女の白濁半裸姿とかw」
「これエロくね?いやもう束前さんわかってるにもほどがあるでしょ!」
「ああ、俺の白濁液もナイトリンクスにぶっかけてぇ…」

最悪な気分の怪盗少女に対して、最高の気分で叫ぶのは観客席の男たちだった。
椿はまるで理解していないが、今の彼女の姿はかなりエロい。
ねっとりとした白濁色の液体塗れのセミヌード少女。
この光景に、女怪盗の淫らな姿を見に集まった男たちが反応しないはずがない。

「んっ、な、なんなのあの人たち……ふぅっ」

手を動かしながら横目で観客席を見たナイトリンクスの背筋にうすら寒いものが走った。
意味は理解できなくとも、自分が視線で汚されていることを本能で感じてしまったのである。
早く彼らの視線から逃れたい。
その嫌悪感と恐怖の入り混じった感情が、処女怪盗の動きを加速させる。
だが、そんな彼女の動きを凍らせたのは客席から聞こえてきた一人の男の指摘の声だった。

「……おおー!!や、やっぱり見えてる!ナイトリンクスちゃんのおっぱいのさきっちょ!」
「なっ!」

ビクリッ!
突如上がったありえない指摘の声に、一瞬怪盗少女の動きが止まる。
だが、彼女よりも驚いたのは男の周りにいる者達だった。

「おいお前、嘘ついてんじゃねーぞ!腕がしっかりガードしてて見えてねーだろうが!」
「嘘じゃないって、俺おっぱいフェチだからズーム使ってずっと胸見てたんだよ、そしたら……」
「そしたら?」
「考えてもみろ、あの巨乳だぞ?息をするだけでプルプル震えるくらいの大きさだ。
そんな素晴らしいモノがついてる身体が前に引っ張られる、するとどうなる?」
「そりゃあ、すっげぇ揺れ……あ!」

男の説明に、同じ結論に至った男達が一斉に理解を示す。
裸の女が前移動すれば当然胸は上下に揺れる。
しかも、ナイトリンクスはGカップバストの持ち主。
とてもその細腕で揺れ動く乳房を隠しきれるものではない。
それは先端にひっそりと息づく可憐な桜色突起も例外ではないわけで。

「うわ、本当だ!」
「それになんだよあの揺れは……ゴム鞠かよっ」
「あっ、見えた!くそう、一瞬ずつしか見えないのが惜しいなぁ……」

思わぬ事実を気付かされた男たちは、我先にと双眼鏡のズーム機能を使用。
お宝を拝むべく少女怪盗の胸へと視線を殺到させる。

そこには確かに、魅惑的に上下に揺れる双乳があった。
少女の腕の影からぶるんっ!と浮き上がり、あるいは下に飛び出る挑発的な八十七センチ。
揺れるまでもなくはみ出ている上乳や下乳が、たぷたぷっと自己主張している様が、眼をひきつける。
一瞬姿を見せては隠れるサクランボ乳首も、まるで見るものを誘っているかのようだった。

「ひゃっ!なっ、何見てるのっ!?見ないでよっ!」

両腕を寄せて、左右交互に上下へ暴れる胸を押さえ込もうとする椿。
だが、あまりにも育ちすぎた小玉スイカは、主人の言うことを聞いてはくれない。
どんなに押さえつけようとしても、どうしてもボヨンボヨンと揺れてしまうのだ。

「揺れないでったら、私の胸……!」

ワガママな媚乳を叱りつける怪盗少女だったが、当然揺れが止まるはずもない。
窮屈さから解放された自由を謳歌するように、ずっしりと重い巨峰が胸元で元気に弾む。
両腕に寄せられてできた谷間には、人差し指どころか五本の指が全部入りそうで。
そんな刺激的かつエロティックな光景に観客たちは更に興奮。
何人かは、空中に想像したナイトリンクスの胸を十指でぐにぐにと揉みこねているほどだった。

「ああ、たまんねぇ……」
「胸もいいけど、尻だよなやっぱり!」
「スパッツ越しのあの丸みがたまらん」
「ちょっと見えてるパンツはしましまか、子供っぽいなw」

そして、注目を集めているのは上半身だけではなかった。
少女の痴態を観察する男たちには、鉄棒に密着しているお尻も見逃せない獲物だ。
椿のヒップは八十三センチと、バストに比べれば小さいサイズといえる。
だが、それは胸が目立っているだけで決して小さい数字ではない。
日々の鍛錬によってキュッと引き締まった桃尻は、しっかりと丸みを帯びて女の子らしさを見せ。
スパッツ越しに見える肌のハリも、パツンとした弾力を感じさせて瑞々しさを窺わせている。
あの鉄棒と代わりたい、あのお尻の下に敷かれたい。
そう彼らが願ったのも、無理もない話だといえる。

「もうっ、最低……!」

自分の胸やお尻に集まる視線を拒絶するように、言葉を吐き捨てる少女怪盗。
しかし、その腕の動きは一瞬止まりはしたものの、再び動き始めていた。
正直、やけくそ気味にでもならなければ羞恥心に飲み込まれてしまいそうだったのだ。

(見られてるところが、ピリピリする。な、なんでこんな……)

まるで視線がエネルギーを持っているかのように、少女の肌を刺激する。
椿はその巨乳と実力、そして容姿故に、注目を浴びることが昔から多かった。
今までは本人に性的な興味がほとんどなかったこと。
そして、嫌悪感の方が先立っていたことから邪な視線をここまで意識することはなかった。

しかし今、彼女は強制的に女性としての意識を目覚めさせられようとしている。
それだけの力が、男たちの欲望の視線にはあった。

「は、うぁっ……?」

ドクンッ……
柔肌の奥の鼓動が一際大きく高鳴ったのは、ゴールまであと三分の一ほどの地点でのことだった。
鉄棒に擦れた股間から、ビリッと電気にも似た衝撃が全身に伝わり困惑するナイトリンクス。

(何、今の……?)

気のせいだろうか。
初めて感じた感覚に、怪盗少女は困惑しながら再び足の付け根を鉄棒の上で滑らせる。

「あ!?」

ビリビリッ、ドクドクンッ……
先程感じた、痺れるような感覚が再び椿の身体を包み込む。
胸の鼓動が早まり、息が乱れる。
その原因は疲労や痛みではなく、別の危機感を煽る何かで。

(なっ、何?何なの、この感じ……!)

ついさっきまでは同じ行動をしても何も感じていなかったはず。
なのに少女の小柄な身体には確かな異変が起きはじめていた。
そう、発芽したのは意識だけではない、鉄棒の上に跨る身体にも同様に目覚め始めたものがある。
白濁液にこめられた、もう一つの成分。
媚薬―――それは男たちの欲望と共に、今ナイトリンクスの身体に牙を剥いた。






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