魅惑の皇后
-2-
シチュエーション


リテイアはシャロスの上に馬乗り、その妖艶な肢体を見せ付けた。
その途端、シャロスの心の中にあった敵意が雲散し、リテイアに対し愛慕の感情が胸の中に広がった。
敵がしかけたことだと知っていても、シャロスは感情をせき止めることができなかった。
リテイアにもっと魅了されたい感情と、敵のいいなりになってしまった屈辱感がシャロスの顔で混じり合う。

「あははは!いいわ、その表情!自分を情けないと思っているその悔しい気持ち!
……はぁあ、それを見ただけでゾクゾクするわ!あなたの父さんもそれぐらい素直でいれば、
この国をもっと速く乗っ取れたのに」
「やはり、あなたが父さんを……!」
「ふふっ、それはどうかしらね。さあ、無駄話はおしまいよ。
これからは、わらわの可愛い傀儡人形になってもらうわ!」

そう言うと、リテイアの両目は妖しく輝き出した。
彼女に抵抗できなくなったシャロスは、すぐさま虚ろな表情となって、彼女の赤色の瞳に見惚れてしまった。

「シャロス、今日起きたことは、全てあなたの体の髄まで刻まれる。
ただし、わらわがあなたに惚れ薬を飲ませたことだけ、あなたの記憶から消され、永遠に思い出せない」
「はい……」

「シャロスは王子様だから、時々イライラすることがあるでしょう。
そういう時、今日わらわがしてあげたように、自分のこのことを気持ちよくさせないさい。
その時、必ずわらわの姿を思い浮かべて欲情しなければならない。
よーく覚えてね、あなたはわらわのことを考えずに、決してイクことができない」
「……はい……」

シャロスは今のリテイアの姿を目の奥へ焼き付けるように、嘗め回すように見渡した。

「ふふふ……頭のいい子は好きよ。さあ、体も疲れたでしょうから、ゆっくり眠りなさい」

リテイアは慈しむようにシャロスの目を閉じさせ、彼をベッドに寝かせた。

「……これからもっともっとエッチで、スケベな男に成長させて、
毎日色事しか考えられないように、してあげるわ」

リテイアが冷酷にほくそ笑んだ。
彼女が両手を叩くと、さきほどの双子の召使いが入室し、リテイアに向いて恭しく礼をした。
リテイアが命令するまでも無く、一人はリテイアの身を清めて彼女にドレスを着させ、
もう一人は部屋についた汚れを消した。

「エナ」
「はい」

床掃除をしているポニーテールの少女は仕事を止めた。

「あなたはここに残って、王子様の世話をしなさい」
「はい」
「今日の一件で王子様に私への欲念を植え付けたが、彼の敵意をすべてかき消したわけではない。
あなたは彼にその感情を忘れさせるように、彼の欲望を常に引き起こしなさい」
「承知いたしました」

ポニーテールの少女は淡々と返事をした。

彼女とは対照的に、ショートヘアの娘は頬を膨らませる。

「あら、マナは何か言いたいことあるかしら?」
「リテイア様、エナばっかりずるいです!マナも王子様のそばにいたい!」
「ふふふ……せっかちな子ね。王子様を淫蕩に耽らせるには、順序があるのよ。
マナにはマナの役目があるから、その時が来たら頼りにさせてもらうわ」
「本当に?」

リテイアがうんと頷くと、マナは踊り出そうになった。

「分かりました!エナ、それまで王子様の『教育』、しっかり頼んだぞ!」
「はい」

明るいエールを送るマナに対し、エナは無表情のまま答える。

「さあ、行くわよ、マナ。太子派の人達に異変が気付かれないうちに帰るわ」
「はい、リテイア様」

マナはエナに大きく手を振った後、リテイアの後を追った。
近いうちに王子に起こる変貌を想像しながら、皇后の顔にはいつまでも淫靡な笑みが浮かんでいた。

(この国がどうでもよくなるような、タメダメ王様に仕立ててあげるわ。うふふ……)






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