シチュエーション
最近、シャロスはイライラするようになった。 皇后邸の出来事から数日の間、シャロスは毎日欠かさず自慰をしていた。 彼が行為をする時、いつもリテイアの妖艶な肢体を思い浮かべていた。 黒いブラジャーに包まれた、豊満な乳房。 絹の薄地を通り抜けて、見えそうで見えない乳首。 悩ましい腹や、背中のライン。 そレースの刺繍を施されたショーツ。 刺繍の合間に、女性の淫靡な茂みが浮かんでくる。 そして、その体の持ち主が、魂を吸い込むような深い瞳で、 シャロスの行為を見下ろしながら、薄笑いを浮かべ…… そこまで想像すると、シャロスは例外なく果ててしまう。 残されるのは激しい疲れと、自分に対する虚しい気持ちだった。 欲望に負けて自慰に耽ってしまい、そしてリテイアを思いながらオナニーしてしまうことは、 彼にとって屈辱的なことであった。 召使いとして彼の側にいるエナも、厄介な存在だ。 最近、シャロスは自主的に彼女と距離を置くようにしていた。 エナは確かに一流のメイドだ。 彼女が用意してくれ服飾はその日の気候に相応しく、シャロスに快適な一日を過ごさせてくれる。 彼女が調理してくれ食事はシャロスの食欲を満たし、今まで食べ慣れた宮殿料理に無い味を作ってくれる。 喉が乾いたと思った時に、紅茶を持ってくる。 疲れたと思った時に、肩を程よい力で揉んでくれる。 シャロスが口に出さずとも、彼女は彼の心情を的確に読み取ってくれる。 彼女の奉仕は、実に用意周到で気持ち良いものだ。 そして、その存在感も、徐々に大きな物へと変化しつつある。 シャロスは彼女の可愛らしい姿を見るたびに、頭を悩ませた。 エナの背後に、皇后の陰謀が隠れていることは明白だった。 しかしその一方で、彼はエナをはっきりと拒絶することができない。 エナの艶やかな柔肌と、少年の性欲をくすぐる身のこなし。 それに、彼のどんな命令にも従ってくれる絶対的な従順さ。 皇后リテイアとは違い、彼女はまた違うタイプの魅力があった。 今日もシャロスはぼんやりと、腹心であるレイラから報告を受けていた。 彼はほとんど聞き流しながら、数日前に見たエナの半裸を思い返した。 「……それと、殿下……あのエナという者ですが、彼女は明らかに皇后側の人間です。 そのような者を殿下のお側で置いていかれるのは、いかがなものかと」 「ああ……」 「…………殿下!」 突然、レイラは口調を強めた。 彼女の意志がこもった口調に驚き、シャロスは目を丸くして我に帰る。 「お言葉ですが、殿下は最近、心が廃れているように思われます」 「えっ?」 「何よりも、殿下は以前のような気迫がございません。 殿下は万民を救う立場の者、どうかご自分を戒め、その示しをつけてください」 レイラの表情は厳しかった。 彼女にそれほど叱責されるのは、子供の時以来のことであった。 シャロスは生来高貴な立場にいた者だが、彼は他人の忠告を素直に受け入れる人間である。 だから、シャロスはすぐさま自分の失態に気付いた。 「……すまない、レイラ。お前の言うとおり、私は最近どうかしている。お前のおかげで、目が覚めたよ」 「分を超えた言葉で申し訳ありません。どうか、お許しを」 「いいえ、それでいいのだ。お前はいつも私の鏡のように、私の過ちを諌めてくれる。これからも、私を支えてくれ」 「勿体無いお言葉です」 レイラは頭を深々と下げた。 彼女にとって、シャロスの言葉はいかなる時でも至上のものであった。 シャロスは目を輝かせ、表情を明るくさせた。 それに伴って、彼は聡明な頭脳を素早く回転させた。 「こうしてはいられん、レイラ!」 「はっ」 「税務管理局のイルバフ長官に伝えろ。王国陸送隊の貿易収支を徹底的に調査させろ」 「はっ。しかし、それは……?」 「陸送隊指揮官のザーロンが提出した出納帳に目を通したが、前年と数字が合わない箇所がいくつもある。 ザーロンのやつ、私をひよっこだと思って油断しているだろう。あやつは、皇后派に賄賂を贈って今の地位に登り詰めた者だ。 ふん、皇后の傘に入っていれば問題無いと思って安心しているだろうが、そうはさせない」 「はい。……ふふっ、あの『狐目のイルバフ』にかかれば、すぐに尻尾が掴まれることでしょう」 レイラは思わず笑いをこぼした。 税務局主席を努めるイルバフ氏は、その老獪さで王宮内外に知られる棘だらけな人間で、 干からびたパンから水滴を絞りだせると評価される人物である。 彼にザーロンを搾り取らせるには、これ以上ないほど適任している。 「証拠のつかみ次第、それをオイバルト卿に伝え、ザーロンを弾劾させよ」 「はっ」 「それと……先日に行った皇家艦隊再建の進展はどうなったか」 「相変わらず宰相のトーディザード卿が所々横槍を入れているため、資金の調達が停滞しているようです」 レイラは難色を浮かべた。 シャロスの国は周辺諸国の宗主国になって、長い間戦争が起きなかった。 そのため王国軍の戦力は下がり、とりわけ存在価値の低い海軍隊は完全に廃れた。 しかし、シャロスの代になってから、海賊や他国の秘密私掠船が横行し、 海上運輸が思うように進まない状態になっている。 そこで、皇家海軍隊の復建を打ち出すのは急務だったのだ。 「やはりか」 シャロスの視線が鋭く険しいものとなった。 彼は立ち上がり、窓の方へ歩んだ。 秀麗な顔立ちは光に照らされ、色の深い瞳に知恵の輝きが宿りはじめる。 レイラはそんなシャロスの姿を見るのが大好きだ。 彼の凛々しい後姿は、決して他者の追随を許さない。 早熟した英断は、どんなことも解決してくれるような安心感がある。 ――王子様はいずれ英邁な国王となり、歴史に名を残すほどの名君となるだろう。 レイラは、そんな尊敬の意を心に抱き、憧れがこもった視線でシャロスを見続ける。 ふと、シャロスは対策を思い浮かんだかのように振り返り、 「テクド商会に使者を遣わせろ。彼らに資金投資を協商させよう」 「……テクド家は財界でも屈指の商人連合。あそこは中立しているとはいえ、我々に協力してくれるだろうか」 「一年前、テクド傘下の商人グループが冤罪をかけられた時、私が手配を取り消したことがある。 テクド家のライト子爵は恩義を重んじる男だ。やつなら、我々に協力してくれるだろう。 艦隊が建設できた暁に、海上貿易を彼らに率先させよう。そうすれば、喜んでついてくれるだろう」 「なるほど。テクド家は長年、皇后派に味方するハエリオン家とライバル関係にある。 これで我らの味方に引き入れれば、一石二鳥ですね」 「ああ。それと、王族の出費もできるだけ節約させよう。 今年の南テドン地方は干ばつだと聞くが、減税を命じよう」 「民もさぞ、喜ぶことでしょう」 「我々上部の人間が浪費しているんじゃ、格差が広がってしまうばかりだ」 「殿下、なんとお優しい心を」 「これぐらいは当然の事だ。レイラ、私はまだまだ足りない部分が多いが、 できるだけ多くの人を幸せにしたいと思っている。今後とも、あなた達の良き働きを期待する」 「有難い御言葉でございます。……では、私はこれにて」 レイラは一礼をすると、部屋から退出した。 その後も、シャロスは憮然と眉をしかめて考え事をした。 毎年、王室の出費は高額なものとなっている。 その一番の原因を、シャロスはよく知っている。 皇后リテイアの浪費なのだ。 後宮に関する支出項目には不透明なものが多く、額面も非常にでかい。 彼女の権力や地位もあって、シャロスの配下が表立って詰問することは難しい。 (この問題、やはり私自身が決着をつけなければ……) シャロスはため息をつくと、部屋から出た。 「王子様、どちらへ……」 シャロスはそばを見ると、そこには恭しく待っていたエナの姿があった。 (ふん、私を監視するつもりか) 「剣技場だ。私がどこへ行こうと、お前の意見を聞く必要があるのか」 「いいえ、滅相もありません」 シャロスはわざと冷たい口で答えると、エナはうつむいた。 そうでもしないと、エナの妖しい魅力に惹かれそうで恐いのだ。 シャロスはまつりごとはもちろん、剣術、馬術、弓術などの武術も一通りできる。 そして、彼は日課のように毎日何らかの運動を行ってきた。 最近特にあらぬ感情に惑わされたこともあって、シャロスはそれを運動で発散しようとした。 シャロスは早足で皇居を出て、苛立った気持ちで御道を歩いた。 エナはそれ以上のことを尋ねず、ただ黙ったまま彼の後を付いた。 ちょうどその時、向かい側からやってきた一両の馬車は、彼の横に止まった。 壮麗な金色紋章が施されたキャリッジは、持ち主の豪華にこだわる風格を物語った。 馬車の窓から、柔らかい女の声が伝わる。 「あら、やはり殿下でしたね」 皇后リテイアの美しい笑顔が覗き出て、シャロスに向けられる。 彼女の妖艶な目元を見ると、シャロスの心は大きく動揺した。 「リテイア皇后……!これは、奇遇ですね」 「ええ、そうですわね。付き人がほとんどいなかったものですから、最初は殿下だと気付きませんでしたわ」 「私は、堅苦しいのが嫌いですからな」 「殿下らしいお考えですわ。わらわは、丁度ライフォン夫人のところから帰ってきたところです」 ライフォン夫人の名前を聞いて、シャロスは眉をしかめた。 貴族の中では、身分や皇后の威光を頼って、奢侈な生活を送る者が大勢いる。 そんな浪費者達に、シャロスは快いと思うはずが無い。 彼の心情を読み取ったのか、リテイアの宝石のような瞳が輝く。 「あら、今日の殿下は随分とご機嫌斜めですね」 「ふん……そんなことは無い」 シャロスはリテイアから目を逸らした。 彼女の美麗な顔立ちを見ると、あの淫らな記憶を思い浮かびそうで恐かった。 「ところで、殿下はこれからわらわと一緒に来て頂きませんか?もちろん、エナも一緒に」 「えっ?」 リテイアの突然の誘いに、シャロスは無意識のうちに顔を真っ赤に染めた。 (リテイアのところに行けば、またあんなことを……でも……) シャロスは戸惑った表情を浮かべた。 心の中で理性の警鐘が鳴り響いた。 その一方で、リテイアの誘いに従いたい欲望が膨らみ上がってくる。 彼女の挑発的な瞳は、まるでねっとりとした網のように、シャロスの心と体を絡め取っていく。 そんな目で見られると、ひそかにシャロスの股間が硬くなりはじめた。 御者台からマナが降り、馬車の扉を開けて恭しく頭を下げた。 「王子様、せっかく皇后様からのお誘いです。どうか、彼女の厚情をお受けください」 「う、うん……」 シャロスはついに甘い感情に打ち勝つことができず、複雑な気持ちで馬車に乗り込んだ。 エナは馬車の扉を丁寧に閉めると、マナとともに前方の御者台へのぼった。 「どーっ!」 外でマナの元気一杯の掛け声が叫ばれると、馬車はゆっくりと動き出した。 シャロスは馬車に揺られながら、隣に座るリテイアの体を感じた。 彼は一生懸命自分の気を逸らそうとしたが、忘れようとすればするほど彼女を意識してしようがなかった。 今日のリテイアは羽飾りの帽子をかぶり、人の目を惹く真紅のシルクドレスを着ていた。 絹のすべらかな材質は光沢を反射し、首より下げた銀のネックレスははだけた谷間にぶら下がる。 大きな胸元は、ギリギリなところまで露出し、その豊満さをたっぷりと見せ付ける。 目の外縁から入る彼女の乳房は、馬車の動きと同調して揺れ、シャロスの欲望をかきたてる。 馬車が道を曲がる時、シャロスはうっかりリテイアと体を密着してしまい、その肌の柔らかさにどぎまぎしてしまった。 その時リテイアの体から発される香りは、シャロスの眠っていた感情を呼び起こした。 (……はっ、この匂いは……) シャロスは思わず、生まれて初めて女性にイカされた夜のことを思い出した。 あの夜も、リテイアの体からこの香りが漂っていた。 この淫靡な香りはあのいやらしい行為とともに、 シャロスの脳の深い場所に烙印をつけ、彼女の虜にしょうとしていた。 「殿下ったら、またぼうっとしちゃって。わらわと一緒にいるのは、そんなに退屈なのでしょうか」 リテイアは意地悪そうな笑みを浮かべながら、甘ったるい声で言った。 意識が薄れたシャロスは、自然と「いいえ、そんなこと無いよ」と答えそうになった。 しかし、彼が口を開こうとした時、ふとリテイアは自分にそのセリフを言わせるのが目的であると感じ取る。 (しっかりせねば……!皇后のやつ、また色仕掛けようとしたな。だが、今回こそ……!) シャロスは自分に言い聞かせるようにして、努めて正気を保とうとした。 「……いいえ、私はただ考え事をしまして」 「おや、わらわの見当違いでしたか。して、一体どんなお考え事を?」 「ついさきほどまで帳簿と睨めっこしていたが、今年の王宮予算のやりくりは大変厳しくて。 これでは、王子である私が、先に餓死してしまうじゃないかと、不安で不安で仕方がありません」 「ふふ……殿下の冗談はまことに面白いですわ。王子様が餓死なんてしたら、この国では誰も飽食できませんわ」 「ははは、確かにそうかもしれません。しかし私は、王室が少しでも浪費を抑えなければならないと考えている。 皇后様にも、ぜひ自分の振る舞いを見直し、私に協力してほしいかと存じます」 シャロスの口調は一転して、鋭いものへとなった。 「あら、わらわが無駄使いをしているとおっしゃるのですか」 リテイアは目を細め、声を低く抑えた。 だが、シャロスは一歩も引かなかった。 「……かねてから、私は皇后様の出費に疑問を持っております」 彼は目線を伏せながらも、言葉を緩めなかった。 ここで押し進まないと、また皇后が言い逃れてしまいそうだからだ。 「そんなことを言われるとは、心外ですわ。 ……そうですね、せっかくですから、殿下にはあそこを見てもらいましょう」 「あそこ、とは?」 「ふふふ、とてもいい場所ですわ。……この暑い季節を過ごすのに、ぴったりの施設ですわ。 これを見ていただけたら、殿下もきっと考えが変わることでしょう」 シャロスはまだ質問しようとしたが、途中で口を閉じてしまった。 なぜならこの時、リテイアは孔雀の羽毛で編まれた扇子を取り出し、自分の体をあおぎ出したのだ。 彼女はさきほど何か激しい運動をしたのか、体から汗の匂いや、 それ以外に何かいやらしい感情を催す匂いが染み出る。 それが彼女の香水と混ざり合い、扇子のそよ風に乗って伝わってくる。 その匂いを嗅いだだけで、シャロスの頭はぼうっとなり、股間の一物に血が集まった。 リテイアの女性特有の体臭は、シャロスがまだ知らない官能的なものであった。 彼は自分自身でも気付いていないうちに、リテイアによって性への欲求を開発されていた。 思春期にある純潔だったはずの幼き心は、淫猥なものに興味を抱き始め、徐々に黒い欲望によって染まられていた。 シャロスは自分の中で膨張する未知なる興奮に、うすうす背徳間を抱いていた。 しかし、まだ色事を接して日が浅い彼には、その感情はどうすればいいのか分からなかった。 目線が泳いでいる間、突然リテイアの滑やかな腋が目に入った。 白く透き通った腋は、その露出した胸や背中と同調して、美しいラインを描いていた。 彼女が扇子を軽くあおぐ度に、綺麗な柔肌が見え隠れしてシャロスの視界をくすぐる。 「殿下、わらわの体になにかありますか?」 「えっ?い、いいえ……」 シャロスは顔を真っ赤にして、慌ててうつむいた。 彼の恥じらう仕草に、リテイアはかすかにほくそ笑む。 彼女はさりげなくシャロスの股間に腕を伸ばした。 「殿下の様子は、何かおかしいですわ」 突然、リテイアの人差し指に力を入れ、シャロスのすでに勃起した股間の先端を軽くつついた。 「あぁっ!」 「あーれー、どうしたのかしらね?殿下のあそこ、ビンビンに立っていらっしゃるわ」 リテイアは悪魔のように口元を吊り上げる。 シャロスが取り乱している間、リテイアは掌を彼の股間の上を乗った。 手の重さに反応して、彼の心も一物もビクンと躍った。 その妖しい感触に、シャロスは皇女を非難することさえ忘れ、口をどもりながら身じろぎした。 「ひょっとして……殿下は最近、溜まっていらっしゃるんですか?」 「な、なにを仰いますか、皇后様」 「うふふ……でも、殿下のあそこのほうが、正直みたいですわ?」 「あぁっ!」 リテイアが少しりきむと、シャロスは腰を一瞬震わせた。 シャロスは口をパクパクさせて、どう答えるべきか分からず狼狽した。 普段なら一寸と乱れる論理を繰り広げる弁舌も、今では跡形も無かった。 勃起を見破られた恥ずかしさだけでなく、彼女に下半身をいいように操作されたことに、シャロスはいらだちを感じた。 「あれれ、本当に溜まっていらっしゃったんですか。殿下の欲求を解消させるために、 エナをわざわざ置いたというのに。殿下、彼女に抜いてもらいませんでしたか?」 「い、いいえ……」 「はぁ、これじゃあメイドとして失格ですわ。あとで、彼女に厳しいお仕置きをしなくては」 「いいえ、違います!これは、エナのせいじゃありません」 「そうですか。では、どうして殿下の御体が、こんなに苦しい思いをしているのかしら。 ……まさか、殿下は自分で慰めていたりして」 「えっ?そ、それは……」 いきなり図星を突かれて、シャロスの顔は青ざめた。 彼がはっきりと否定しない様子を見て、リテイアは驚愕の表情を作った。 「あら、本当にそうなされたのですか」 「う……」 「殿下は国主たる者です、ご自由に振る舞いって結構ですが…… ご自身の手で自分を慰めるなんて、大変お恥ずかしい事ですわよ」 リテイアはあざ笑うかのような、軽蔑するかのような口調で言った。 シャロスはそれを感じ取ると、自分のことがとてつもなく惨めに感じ、恥ずかしい気持ちで胸いっぱいだ。 いま目の前に穴があれば入りたい気持ちになった。 リテイアの言葉は鋭利な刃物となって、普段からの威厳の防壁をズタズタに切り裂く。 そこで剥き出されたのは、年上の美女に弄ばれるウブな少年の姿だった。 「まあ、それだけ殿下が大人に近づいた証拠ですから、わらわは嬉しく思いますよ。 でも、せっかくエナをお側にはべらせておりますから、彼女を使ってあげてください」 「そ、そんなんじゃ……」 「どうか遠慮なさらずに。エナもきっと、そうされることを期待していますから」 「……」 シャロスは母親になだめられた子供のように、顔をうつむいた。 会話してから早々、シャロスにはリテイアを言い返す余裕が無くなってきた。 幸いなことに、そこで馬車が止まった。 マナが外から扉を開けると、シャロスはまるで逃げるように降りる。 彼のあたふたとは対照的に、リテイアはマナの手を借りて、優雅に足を地面に置く。 外の新鮮な空気に触れてから、シャロスの頭はようやくはっきりしてきた。 (くっ……またこの女狐のペースにはまってしまった……このままでは、またあいつらのいいなりになってしまう……) シャロスは心の中で嘆きながら、周囲を見渡した。 リテイアに気を取られたため、途中の道のりをほとんど覚えていなかった。 目の前に王宮にも負けない絢爛な屋敷があり、入り口から高級石材をふんだんに使われ、壮麗に積まれている。 正門の真正面に大きな噴水があり、その真ん中に黒曜石の彫像がそびえる。 あたりは半径数百メートルにも渡って、手入れをされた緑の低木が広大に囲み、目を一新させる麗しい光景を作り出す。 白石で舗装された道は、設計の意図を凝らして低木群とともに円周を描く。 「ここは……?」 「わらわの別荘でございます」 「別荘?」 「ええ。娯楽用に建築されたものですわ。いかがかしら?国中の職人を集めて、作られた場所です」 「……この壮観の裏にどれだけの民が虐げられたかと思うと、心が痛んで甚だしい」 シャロスは心を鉄にして、リテイアへの嫌悪感を思い立たせる。 「民というのは、王室である我々に仕える者。わらわ達を満足させられることこそ、至高の幸福ではないかしら」 「ふん……」 シャロスは鼻を鳴らし、明らかに不満を示した。 それに対し、リテイアは相変わらずの微笑で、 「どうやら、殿下は気が召されないようですわね。ならば中の様子を、直に見せてあげますわ」 言い終わると、マナが「さあこちらへ」とシャロスをいざなった。 シャロスは仕方なく、渋々と彼女の後についた。 屋敷の中では、外の景観に負けないぐらい豪華なつくりとなっていた。 扉から真紅の絨毯が敷かれ、靴越しに高級そうな踏み心地を感じる。 道中随所に珊瑚の木、東洋の白磁、翡翠や瑪瑙といった貴重な装飾が置かれ、 今まで見た事も聞いた事も無いような品々が、廊下を通り過ぎるたびに出てくる。 シャロスはそれらに目を奪われながら、心の中で疑念を募った。 王子である彼よりも、まるで皇后リテイアの方が金持ちであるようだ。 彼の思考を断たせるように、リテイアは心を撫でる様な柔和な声で話しかけた。 「ところで、殿下は最近お疲れのようですわね」 「どうしてですか?」 「わらわの気のせいなら申し訳ありません。でも、最近の殿下はどうもうわの空が多い様子ですわ。 御体には、もっと気を使うべきですわ」 リテイアの含みのある言葉に、シャロスは顔を赤らめる。 彼は何かを言い返す前に、リテイアは言葉を続けた。 「ここにお越しいただいたのは、殿下の疲れを取るためですわ」 「それは、どういうことだ?」 「殿下は、サウナという言葉を聞いたことあるかしら?」 「サウナ?それは一体……」 「異国より伝わる健康法ですわ。蒸気を発生させ発汗させる事で、 体をほぐす機能があるですわ。ぜひ、殿下にも試して頂きたくて」 「ふん、私にはそんな暇など無い。まだやることが山ほど残っているため、帰らせて……」 「殿下、たまにはごゆっくりなさっても、いいじゃありませんか」 リテイアは湿気を帯びたピンク色の唇を軽く弾ませ、シャロスの腕にしがみついた。 「国も仕事も何もかも忘れ、わらわと二人で、気持ちいいことをしましょう。……ねぇっ?」 リテイアの潤いだ瞳に見られると、シャロスはまるで心が霧に覆われたかのように、意志が朦朧としてきた。 腕に彼女の豊かな乳房が密着し、男の本能を呼び覚ます。 彼女の言葉には危ない香りが含んでいた。 だがそれは男にとって、また刺激的な事柄であった。 まだ成年していないシャロスでも、その先の事をなんとなく想像できる。 「さあ、一緒に行きましょう」 リテイアはくすりと笑うと、シャロスの手を引っ張って歩き出した。 その女性らしい柔らかい感触に、シャロスの心に甘い感情が広がり、彼女の後に従った。 程なくすると、シャロスは一つの個室に連れ込まれる。 そこにはすでに六人の女召使いが控えていた。 彼女達は左右に三人ずつ分かれ跪き、頭を深く伏せていた。 「「お帰りなさいませ、リテイア様」」 彼女達は頭を下げたまま、語頭から語尾までぴったり一致するように言葉を発した 「今日は、大事なお客様がお見えになるから、丁寧になさい」 「「はい、リテイア様」」 メイド達が異口同音に返事すると、スカートの裾を掴み優雅な姿勢で立ち上がった。 その動作もまた見事に揃っていて、まるで長い間訓練されてきたようだ。 三人の召使いはリテイアに、残りの三人はシャロスの周りに立ち、マナとエナはその場から退いた。 彼女達は顔をうつむき目を伏せていたが、どれもスレンダーな体系をし、上質な美少女であることがうかがえる。 シャロスが怪訝していると、一人の召使いが彼の上着のボタンをほどき、もう一人は背後から脱がせる。 残りの一人は、彼女達から服を受け取ると、丁寧にハンガーにかけた。 三人とも目線を伏せたままで、シャロスと面を合わせなかった。 しかしその動作は非常に慣れたもので、お互い隙間がまったく無い。 そのため、シャロスは抵抗する時間もなく、またたく間に半裸となってしまった。 「ちょっと、これはどういうことだ!」 「殿下、これはこれから行う事のための準備ですわ」 「しかし……」 いいかけた言葉を飲み込み、シャロスは息を止めた。 すでに裸となったリテイアの姿は、彼の心を射止めた。 真っ先に、眩しいほど白くてたおやかな乳房が目に入った。 その色白さは、まるで漆のようにシャロスの脳内を真っ白に染めあげる。 リテイアは恥じらいの表情を微塵とも表さず、メイド達が奉仕する中、 その美しい裸体をシャロスに存分に見せつけた。 彼女のへそのラインに沿って、シャロスは視線を下へ滑らした。 しなやかな腰つきや、肉感のある臀部。 そして正面の股間には、女性の性徴でもある、神秘なる茂みがあった。 シャロスはこれで生まれて初めて女性の陰部を目にした。 何もかも不思議な光景で、リテイアが持つ独特の妖艶さによってそれらがより一層蠱惑的に表現され、 シャロスの男性的な欲情を催した。 リテイアはシャロスの視線を捕らえ、余裕っぽい表情でニコッと微笑みかけた。 その時、シャロスは初めて自分の失態に気付き、思わず顔を熟したトマトのようにして顔を伏せた。 ――裸になっているのは相手だというのに、なぜか自分のほうがずっと恥ずかしい。 その屈辱的な状況はさらにシャロスを焦らせ、平常心を失わせる。 ふと、シャロスは自分がメイド達によって椅子に座らされたことに気付く。 そして次の瞬間、メイド達は貴族服の下半身部を正確にもぎ取る。 「あ、そ、それは……」 賢明な少年王を演じてきたシャロスは、すぐにあたふたするばかりの男の子に成り下がった。 メイド達は素早く彼のズボンを、さらに下着まで除去すると、シャロスのいきりたった一物が空気に触れた。 まだあどけなさが残っている陰茎だが、シャロスの意志とは関係なく醜く腫れ上がり、 彼の身体が求めていることを暴露した。 周囲のメイド達は彼の一物を見て、心なしかあざ笑うかのような目付きになるような気がした。 シャロスの心拍数は一気に上がり、反射的に股間部を手で遮った。 そのぎこちない仕草を見て、リテイアは再びくすりと笑った。 「殿下、王族たるものには、恥ずかしい部分は何も無いはずですわ。 どうかその高貴な体を隠さず、堂々としていてください」 「あ、うん……」 リテイアの優しい口調に諭され、シャロスはややためらった後、ついに両手を離した。 次の瞬間、大勢の女性の中で性器を晒しだすみじめな感情が、彼の心を襲った。 「さあ、わらわについていらっしゃい」 「あっ……」 シャロスは心細い気持ちになり、できる限りリテイアの裸を見ないようにしながら後についた。 股間で硬くなった一物が、歩行すると同時に左右へ揺れ動く。 彼はまわりのメイド達が、含み笑いをしているじゃないかと疑心暗鬼に陥った。 しかし、彼女たちの顔を直視して確認する勇気は、どこにもなかった。 自分がまったく知らない環境、全裸となって歩行する。 今の彼は、目の前のリテイアにすがりたい気持ちで一杯だった。 次の一室までたどり着くと、そこは暖かい湯気が立ちこめていた。 青いタイルで敷かれた床や壁は、光に反射して輝く。 メイド達はそこに備えてあった水がめから湯を汲み取り、シャロスやリテイアの体にやさしくかける。 シャロスの綺麗な金色のロングヘアはメイドに解かれ、水で濡らされる。 暖かい水流に体中の筋肉が一気にほぐされ、なんともいえない気持ちよさにシャロスは心を穏やかにした。 しかし横目でリテイアの裸体がちらちら見えてしまうと、シャロスの緩めたばかりの神経はまたすぐに緊張した。 逞しい陰茎だけ、いつまでも暖かい水流に逆らって怒張していた。 「殿下、そんなに固くならないで。これからは殿下に享受してもらうものですから、 殿下が疲れては、意味がありませんわよ」 「う、うん……」 湯気がかったリテイアの体は、見え隠れする分より魅力的なものとなった。 彼女の豊満の乳房に気をとらわれたため、シャロスは言い返す言葉を思い浮かべることができず、 ただぼうっとしていた。 ある程度体を流されると、メイド達は白い粉末を盛った壷を取り出した。 彼女達はその粉末をしゃくると、それをシャロスの体にしみこませるように塗る。 「これは……?」 「塩でございます」 「塩?なぜそれを?」 「体の悪い脂肪だけを溶かし出し、皮膚呼吸を正常化させ、美容する効果があるのです。 ちなみに、この塩は大変貴重な自然塩ですの。南海の海水を引き込み、 五年間をかけ濃縮した結晶を収穫した最高級のもので、他所ではまず手に入らないでしょう」 皇女が説明している間、他のメイド達は絶えずシャロスの体を撫で回す。 塩が体に付着する気持ちよさに、シャロスは反感を抱くことさえ忘れた。 メイド達の手つきは彼の胸板に触れ、敏感になった乳首をなぜる。 両腕を上げられると、彼のつるつるの腋に粉末が添えられる。 太ももを塗られ、最後は足裏まで揉まれる。 思わず目をつむりたくなるような気持ち良さだが、このままではリテイアの思うつぼに嵌るような気がすると、 くすぐったい気持ちになった。 彼はリテイアのほうを盗み見すると、全身に流れる血液がさらに加速し出した。 リテイアのグラマーな肢体はメイド達の手によって撫でられ、弾力に富んだ様がより一層強調された。 とりわけ二つのたわわな乳房は背後から揉まれ、白い粉末がその表面に吸い付く。 そのいやらしい感触を想像すると、シャロスの股間の一物はますます硬くなり、情けなく自己主張をし続けた。 全てを塗り終わった後、メイド達は二人に薄いデシン質の肌着を着させた。 塩まみれになった体の上から、シルクのすべすべした服が密着して、なんとも歯痒い感覚であった。 シャロスの困惑した表情を見ると、リテイアはニッコリと微笑み、 「殿下、これからはいっぱい汗をかくために、この装束を着させていただいたですわ。 ……それとも、裸のままの方が、良かったかしら?」 「そ、そんなことはないよ!」 「うふふ……今のは、ほんのした冗談ですから、気になさらないで下さい」 「くっ……」 リテイアはからかうような笑みのままで、奥の部屋へと進んだ。 シャロスは悔しいながらも、薄い肌着に包まれた彼女の体を追うしかなかった。 さきほど目に焼きついたリテイアの裸が布一枚越しにすぐ目の前にあると思うと、 シャロスはどうしても落ち着けなかった。 衣に隠された彼女の肉体は、裸の時とはまた一味違った魅力を醸し出していた。 うっすらと浮かぶ臀部や胸の輪郭は、シャロスの性欲を常時くすぐる。 最奥の部屋に導かれると、メイド達は扉を開き、恭しくひざまずく。 その部屋はこれまでに無い濃い霧に包まれ、蒸し暑かった。 シャロスはリテイアに従って入ると、背後の扉を閉められた。 途端に、全身がまるで温かい蒸篭に入れられたように、暑苦しくなってきた。 「わらわは熱いのが苦手なものですから、低温サウナにしております。この程度なら、 少々激しい運動をしても、体に危害を加える心配は無いですわ。殿下もすぐ慣れると思いますが、いかがですか?」 「私は、大丈夫だ」 シャロスは不安な気持ちで周囲を眺めた。 先ほどまでとは違い、部屋全体は木材で作られ、ヒノキの独特の香りが蒸気と共に部屋中を充満する。 中央の堀には熱く焼けた石が置いてあり、その側に水を盛った桶や杓子があった。 どうやら、その石に水をかけることによって、蒸気を発生させる仕組みになっているようだ。 さらに堀から少し離れたところで、ござが敷き詰められた二つの寝台が用意されてあった。 寝台の上には柔らかそうなビロードが敷かれ、見た者にその上を寝転がったらどんなに気持ち良いかを連想させる。 入り口のすぐ側で、いつの間に素衣に着替えたマナとエナが侍っていた。 シャロスやリテイアが現れると、彼女達はまったく同じタイミングでお辞儀をした。 その華奢な体つきは甘い果実のように、シャロスの視界に別の刺激を加える。 エナはロングヘアをなびかせ、相変わらず無表情のままで、シャロスを寝台の方へみちびく。 髪がうなじにかかるマナはリテイアに奉仕しながらも、 時々シャロスに向かって悪戯っぽい笑みを浮かべ、彼を赤面させる。 台の上にうつ伏せにさせられると、シャロスは服下から伝わるビロードの感触に心酔した。 蒸気で湿った敷き布は生暖かく、彼の生まれつき滑々な肌を静かに受け止める。 マナとエナは、何やら植物の枝葉を束ねたもの取り出した。 シャロスの疑問に満ちた表情を察すると、リテイアは柔和な声で語りだした。 「これは高原でしかとれない、シラカンバの木からとったものです。 体にはたくことによって、発汗作用をよくさせ、血行を促進する効果があるらしいわ」 「……そうなのか。皇后様は、よくいろいろとご存知ですね」 「ふふっ、殿下は療養に関してまったく気をつかわないからですわ」 シャロスは悶々としたが、それ以上皮肉を言わなかった。 今までの見聞きしてきた限り、ここでの全てのものは、かなり贅沢に作られたものだと推測できる。 エナが振り下ろしたシラカンバの葉は、やさしくシャロスの背中を叩く。 葉自体それほど痛くない上、エナはほど良く加減しているため、心地よい刺激がシャロスの脳髄を襲う。 枝葉が背中から腕、太ももへと叩くうちに、シャロスはたちまち昏々として、まぶたをおろした。 体が鉛のように重く鈍くなり、少しも動きたくなくなった。 しばらくすると、体中から汗が噴き出て、服との間の隙間を滴るようになった。 全身を撒かれた塩はその汗に流され、シャロスの体を洗浄する。 小さな粒に体を磨かれる感じはくすぐったいが、確かに気持ち良い感触でもあった。 葉枝のリズミカルな叩きとあいまって、汗水は肌着を湿らせる。 シャロスはついに目を閉じた。 今まで仕事に勤しんできた心は、気持ち良さに流れて緩んできた。 ふと、全ての悩み事を忘れられたらどんなに楽だろうか、とシャロスは思った。 彼は小さい頃から立派な王様になることだけを考え、今までの人生を過ごしてきた。 その間、彼は趣味といえる趣味は無く、享楽を追求したことも無かった。 王宮で権利闘争を繰り返す日々に、彼は一度も心の防壁をはずすことが無い。 それだけに、今日のように心から何かを興じることは、彼にとって新鮮な経験であった。 「失礼します」 エナは小声で言うと、シャロスの体を優しく仰向けにさせた。 彼女の行き届いた気遣いは、シャロスの心を満足してくる。 宮殿生活という異常な環境下で、シャロスは平常の少年とは異なる思春期を過ごしてきた。 男女の営みを知識として知っていたが、実際の誰かを愛意を抱く体験は無かった。 そのため、目の前にいるエナの小綺麗な顔立ちは、彼に恋意を催す魅力的なものであった。 彼女が自分に尽くしている姿を見ると、脳内では今まで感じたことも無い甘い幸福感が充満する。 そう思うと、シャロスの下半身は突然せつなくなった。 数日前エナが自分に施した淫らな行為を思い返すと、いやしい煩悩が再び胸を焦がした。 股間の一物も今までの鎮まりをはねかえし、肌着の下から段々と突きあがってきた。 (あっ、だめ……!) シャロスは歯を食いしばって、懸命に欲望を抑えようとした。 しかし、心の中を抑えれば抑えるほど、性への意識が昂ぶってしまう。 さきほど目に焼き付けたリテイアの裸姿が鮮明と浮び、シャロスの抵抗を弱める。 「殿下、いかがなさいました?温度が熱すぎたかしら?」 シャロスは声の方に振り向くと、リテイアは足を組みながら嫣然と微笑みかけてくれた。 マナは彼女の足元でしゃがみ、足の爪を丹念に磨いていた。 「い、いいえ……」 シャロスは曖昧な返事をしながら、リテイアの体を見つめ、ごくりと唾を飲んだ。 蒸気や汗がしみ込んだ薄着は、半透明な膜となって彼女の体にぴったり貼り付く。 そのため、体のラインはおろか、その下にある肉体まで見えてしまう。 服の吸いつき具合によって見える面積が違ってくるが、 その不規則な見せ方はかえってエロティックなものだった。 彼女が両足を重ねて組んで座っているため、裾の下から真っ白な太ももがそのまま露出している。 胸部の布は大きく押し上げられ、覆い隠しきれない谷間がシャロスの脳内を占領する。 先端の突起はそのまま服を突き、うっすらと乳輪が見える。 いけないことだと知っていても、シャロスは淫らな欲望を抑え切れず、いつまでも彼女の体をながめた。 自分の体の表面の粉末はほとんど汗に溶け、ねっとりとして液となって肉体を摩擦する。 シャロスは高ぶる心を静めるため、意を決して首を曲げようとしたが、 その直前リテイアの秋波のような瞳に見つめられると、まるで意識を吸い取られたように動けなくなった。 その魂を抜かれたような様子を見て、リテイアは妖艶な笑みを作る。 シャロスは彼女の一挙一動に反応して、心拍数が急激に変化した。 そうしているうちに、彼の頭の中は、リテイアの事以外なにも考えられなくなった。 「マナ、エナ、もう下がってよいぞ」 「はい」 「はい」 二人はまったく同じ角度で会釈すると、部屋の扉から出て行った。 生温い蒸気のこもった部屋は、微妙な雰囲気に変化した。 聡明なシャロスには、これは相手のたくらみであることにうすうす気付いていた。 しかし知ったところで、彼にはもはやリテイアの魅力を跳ね返すほどの自制力を持っていなかった。 「どうしたの、シャロス」 「……!」 リテイアの慈しむ声で名前を呼ばれると、彼女と過ごした淫らな記憶が無理やり引っ張り出された。 それはシャロスにとって、快楽のトラウマでもあった。 「ねぇシャロス、もう誰もいなくなったわ。わらわのとなりに来ないの?」 「っ……」 リテイアの甘い誘いは、シャロスの脳内に激しい闘争を起こした。 敵の立場にある彼女の命令を従うのは、とてつもなく屈辱的なことである。 その一方で、リテイアのみずみずしい肉体は悪魔のような香りを放ち、シャロスの心を鷲掴みにする。 リテイアは足を組んだまま、誘惑の微笑を向けた。 その耐え難い魅力に、シャロスはついに心が折れ、リテイアの寝台へ歩き出した。 「ふふふ、そうよ。わらわの言うことを聞いていればいいわ……」 リテイアはシャロスの体を自分の方へ招き寄せた。 朦朧となった意識で彼女のとなりに座ると、 服越しに柔らかい乳房がシャロスの体と接触し、彼の神経を鈍らせた。 また彼女に負けてしまった悔しい気持ちと、女の肉体を感じる良い気持ちが混ざり合って、シャロスの精神をせめる。 「皇后様……」 「はい、もう一回。二人きりの時、わらわのことをどう呼ぶべきかしら?」 「……お、お母さん……」 シャロスは悔しい気持ちでいながら、その言葉を吐き出してしまった。 一度崩れた心の防壁は、もはやふせぐことはできない。 「うん、これでもう完璧に覚えたわね。ふふ、良い子にはご褒美をあげなくちゃ」 リテイアはそう言うと、シャロスを抱きしめた。 「あっ?!」 突如な出来事に、シャロスは抵抗することさえ忘れ、リテイアの胸の中に顔を埋めた。 最初は脱出しようと考えもしたが、やがてリテイアの胸に染み付いた官能的な匂いに魅了されていった。 女性に抱きしめられる安心感や欲情が入り混じって、シャロスを少しずつ溶解していく。 リテイアは彼の耳側に唇をそっと当てて、小声で囁いた。 「シャロス、今からわらわだけ考えて。それ以外の事、みーんな忘れなさい。 ……うふふっ、あそこがビンビンになってるわね。 さっきから私の体をじろじろ見てて。そんなに良かったのかしら?」 「そ、それは……」 シャロスは悪いことをした子供のように、口をどもらせた。 リテイアは彼の肉棒の先端に人差し指を当て、服越しに滑らせる。 「っああ!」 「あら、もう我慢できないぐらい敏感になってるじゃない。 本当、いやらしい子だね。皇后であるわらわに欲情するなんて……」 「うっ……」 「でも、心配しないで。シャロスは男の子だから、女の体を見て欲情するのは、当たり前なことなのよ。 これからも、わらわの体を見ただけで、すぐにあそこを勃起させられるようにしなさい。いいわね?」 リテイアは目を細め、シャロスの亀頭の裏筋をクリッと押し捻った。 「あぁん!」 シャロスは甲高い声をあげ、無防備になった脳はリテイアの言葉を刷り込まれる。 「ふふふ……シャロスは、本当に女の子みたいだわ。 綺麗な顔に、輝かしいブロンド。それに、肌がこんなにすべすべしているなんて」 「あっ……」 リテイアはシャロスの服の中に手を入れると、彼の汗に濡れていた体を触れた。 肋骨に沿って下腹部を掠め、そして細長い指で鎖骨や首筋に撫でる。 それはそれで気持ちいいが、同時に自分がペットのように扱われたような気がして、悔しい気もした。 やがて、シャロスは麻酔を注入されたかのように、リテイアの体に寄り添って動けなくなった。 まわりは生暖かい水蒸気が充満し、まるで雲の中に漂うような気分になる。 気持ち良さの頂点に辿りつこうとした時、リテイアは突然両手を収めた。 「はぁ、もし王子は本当に女の子だったら、 わらわがもっといろんな事をしてあげられたのに。少し残念ですわ」 「あ、ああっ……」 シャロスは物足りない気持ちを抑えきれず、小声を漏らしてしまった。 残されたムラムラ感に、シャロスは歯痒さを感じずにいられなかった。 彼は潤いだ目でリテイアを見上げると、彼女はくすりと微笑んだ。 「良かったわ。わらわは最近、てっきりシャロスに嫌われたと思ったわ」 「どうして……?」 「だって、最近はまたわらわをいやがる顔を向けてきたじゃない。 この前二人きりで会ったときあんな仲良かったのに……わらわは、とても悲しかったわ」 「そ、そんなことは……」 「あ・る・よ。ついさっきだって、わらわから逃げようとしたじゃない」 リテイアのやや拗ねた態度に、シャロスは完全に翻弄されてしまった。 彼には一国の行方を英断する力があっても、女性の甘い言葉を対する免疫力が無かった。 相手が自分を誘惑していると分かっていても、彼は無意識のうちにリテイアの機嫌を取り直すように心が動いた。 「い、いいえ、あの時はただ疲れただけで……」 「ふふっ、本当かしらね。もしそうであるのなら、そうね……ここでわらわに口付けをしなさい。 そうすれば、その言い訳を信じてあげてもいいわよ」 「えっ?」 シャロスは心をドクンと躍らせ、リテイアの口を覗いた。 やや開いた唇は湿気を帯びて潤い、悩ましい息を吐いていた。 「どうしたの。それともやはり、わらわを誤魔化しているのかしら」 リテイアは挑発的な目でシャロスを見つめた。 それはまるで獲物を見下ろすような、雌豹の睨みであった。 「いいえ、私はそんなつもりはありません」 「じゃあ、してくださるのね」 そう言うと、リテイアは静かに目を閉じた。 彼女の無防備な構えに、シャロスの理性が飛び弾けた。 シャロスは震え気味になりながら、リテイアの肩をつかみ、彼女の魅惑な唇に口を重ねた。 次の瞬間、口の表面に甘い感触が広がる。 彼がしばらく浸っていると、やがてリテイアの方から唇を押し開け、シャロスの口中に舌を忍び込ませる。 彼女はまるで水蛇のように軽快に動き、シャロスの舌を絡めとる。 そして彼の口中で舌を吸い付き、思う存分に蹂躙する。 彼女の熟練したテクニックに、シャロスはただ相手の思うがままにされるしかなかった。 全身の血流が早まり、股間の一物はビンビンにいきりたつ。 ようやくリテイアが離れた頃、シャロスは虚ろな目で荒れる呼吸を繰り返した。 口の中では、女性の甘いエキスが残る。 彼が恍惚な表情を浮かべたのを見て、リテイアは笑みを浮かべた。 「わらわとのキス、そんなに気持ちよかったかしら?」 「う、うん……」 「ふふふ、素直で良い子だわ。……はぁ、少し熱くてなってきたわね」 リテイアは額の汗を拭き取ると、自分の肌着に手をかけ、首下の部分を左右へ緩めた。 彼女の白い両肩は露出し、胸の谷間もほとんどあらわとなった。 乳首の部分だけギリギリ見えないが、それがまた男の視線を絶妙に惹きつける。 真珠のような水玉は彼女のうなじから乳房の上部に垂れ落ち、そして谷間の中央を経て滑り落ちる。 そのいやらしい様子に、シャロスは喉奥から唸り声を上げた。 目線が自分の胸に釘付けとなった事を気付くと、リテイアは悪魔のような笑みを浮かべる。 「ねぇ、シャロス王子……私の胸、舐めてみる?」 「ええ?!」 唐突な発言に、シャロスは一瞬戸惑った。 しかしその言葉の淫靡な響きを汲み取ると、彼の心の奥底から限りない欲望が盛り上がる。 「ふふふ……見ているだけじゃ、物足りないでしょ?」 シャロスの口内はカラカラに渇いた。 リテイアの乳房は室内の光に反射して、魅惑な輝きを照らす。 プライドの高い彼にとって、相手の言いなりになるのは屈辱的なことである。 しかし、今はそんなプライドよりも、劣情の方が確実に上回っていた。 「ほら、シャロス。遠慮なんてしないで。自分の欲望のままに……していいんだよ」 リテイアの悪魔の囁きは、シャロスの葛藤を徐々に溶解していく。 彼は心臓をドキドキさせながら、やがて皇后の胸に口を近づき、舌を出して乳房の上に這わせた。 充分に濡れていた乳房の表面は塩分を含み、味わいのあるものだった。 シャロスは自然と舌を谷間に滑らせ、そして乳首に吸い付いた。 「はぅっ……あぁん!」 リテイアは頬をやや赤く染め、くぐもった喘ぎ声を漏らした。 その仕草は、シャロスの欲念に油を注いだ。 彼はリテイアを寝台の上に押し倒し、血走った目でリテイアを見下ろす。 自分の股下で、リテイアは弱々しく横たわる。 彼女の濡れた髪は四方へ拡散し、乱れた息をしていた。 ピンク色の唇が呼吸するたびに、豊満な胸はリズミカルに上下し、シャロスの獣欲をそそる。 肌着の前方の開いた部分から白い肌が見え隠れし、男なら誰でも理性を失わせる魔の魅力を放つ。 シャロスの股間の一物はビクン、ビクンと脈打つ。 リテイアの半開きの目は拒んでいるようにも、誘うっているようにも見える。 その火照った顔を見つめると、シャロスは我慢できるはずがなかった。 彼はリテイアのうなじに唇をそえ、懸命に舐めまわす。 両手は彼女の柔らかい乳房を掴み、本能が赴くままに揉んだ。 「はぁん、ああっ……!」 リテイアは放蕩な呻き声を上げ、シャロスの劣情を確実に煽る。 彼はリテイアの腋や、おへそに舌先を立てて、ぴちゃぴちゃと音を立てて吸い付く。 そしておへそより下へ進むとき、その邪魔な腰帯をほどいた。 次の瞬間、シャロスの目の前に女性の下半身が晒された。 つややかな茂みと未知なる場所に、シャロスは思わずくい込むように見入った。 自分の股間は今まで無いぐらいにギンギンと疼いた。 「王子様、それ以上は……我々は最後の一線だけは、越えてはならない身分だわ」 「……!」 リテイアの言葉はシャロスの脳天に直撃した。 彼のどす黒い欲情にまみれた心に、かすかな倫理感がよみがえる。 (そうだ、彼女は名目上でも、父上の妻である。それに、父上が亡くなられたばかりというのに……) 心の中では分かっていても、目線はついついリテイアの淫裂に移る。 滾っていた欲望の中で、残りわずかな理性はギリギリのラインでさまよい、シャロスの劣情を抑えた。 彼が必死に自制する様子を見て、リテイアは心の中で嘲笑した。 「残念ですわ。わらわは普通の女だったら、王子様に尽くせたのに…… シャロス王子も年頃の男の子だもん、女の体がほしくてたまらないよね。 ふふふ、今日だけ、特別に気持ちいいことをしてあげますわ」 リテイアは潤いだ瞳でシャロスを見つめ、彼の両手を握った。 そして腰を浮かせて、陰唇の割れ目を彼の一物の上に乗せた。 「中には入れられないけど、これで気持ちよくさせてあげるわ」 そう言いながら、彼女は腰を前後に揺らして、淫裂でシャロスの肉棒をしごいた。 「あああぁっ!」 ビンビンになった肉棒の上に、リテイアの濡れきった秘所が滑る。 いやらしい愛液がふんだんに塗りたくられ、シャロスの触感を刺激する。 皇后と股間を擦り合わせるこの行為は、淫猥で背徳な快楽をもたらした。 それは、シャロスの最後の理性を摘み取ったことにほかならなかった。 リテイアの腰の動きとともに、彼の瞳から理性の光が消えていく。 「ねぇ、シャロス、気持ちいい?……ひゃっ!」 突然、シャロスはリテイアの腰を掴んだ。 それから、彼女の淫らな割れ目に、本能のように自分の一物を入れた。 「はあぁん……うっ、あぁん!」 リテイアは悩ましい喘ぎ声を吐いた。 シャロスは獣のように瞳孔を広がせ、原始的な欲望に駆られるまま動いた。 淫らな襞の合間に、硬くなった肉棒が突き込んでいく。 先端の先走り汁とリテイアの淫液が混ざり合って、彼と彼女の間を濡れ合せる。 初めて味わう女性の中に、シャロスは雄叫びを上げた。 窄めた小さな穴の入り口を、彼の最も敏感部分である亀頭が押し広げる。 カリが陰唇を捻りこむと、肉棒がずぶずぶと彼女の中へ入っていく。 途端、相手に包み込まれた感触が股間から拡散する。 肉棒を覆う蜜壷は、まるで何十本ものミミズが織り交ぜたように蠢く。 淫液が溢れる穴の中で、肉棒と膣の襞はよく擦れ合い、シャロスの一物を絶えずしごいた。 そこは一度飲み込んだら、全て搾り取るまで離さないような、淫魔のような膣であった。 「はぁう……ああぁん!」 リテイアがシャロスを掴む手に力が入ると、彼女のあそこも追随して、ねっとりと彼の根元から締め付けた。 「ぐっ……がぁああ!」 シャロスは呻き声をあげながらも、懸命に腰を抽送しつづけた。 初めて感じる異性の中は、天にも昇るような絶妙な境地であった。 「はぁん、ぐっ……ああん、ああんっ!」 リテイアは喘ぎ声をあげて、淫らな表情を浮かべてシャロスを見上げた。 胸がぷるんと揺れるたびに、純潔な水玉が弾き飛ぶ。 もやもやした視界の中、彼女のしなやかな肢体はシャロスをさらに興奮させる。 シャロスはただリテイアの姿に見惚れたまま、自制が効かなくなった腰を突きまくった。 リテイアの中では、膣の筋道が数段に分かれて、 シャロスが腰を上下すると共に、肉棒への刺激に強弱をつける。 無数のひだひだは時には彼に密着し、時には彼から離れ、緩急を分けて空間をすぼめる。 その微妙な力加減に、シャロスの欲望は徐々に拡大されていく。 初めて性行為を行うシャロスには、もちろんそれを耐えられるはずが無かった。 「はぁ、気持ちいい……体が止まらないよ!」 「あぁん、はぁんっ!ああ……王子様、だめ……そんな力いっぱい突かれた、おかしくなっちゃう……!」 リテイアが快楽をこらえるような表情は、シャロスを阻止するどころか、 彼をますます欲望の虜へ変化させた。 妖艶な皇后を好きのように蹂躙できる征服感や、自分の股下で淫らに乱れる光景は、 どんな媚薬よりもシャロスを興奮させた。 数分もしないうちに、シャロスの体に溜まっていた熱いたぎりが股間の根元に集まっていく。 「はあっ、もうだめ……出る……精液が出るぅ――!」 「はぁん……ああぁぁぁ!」 シャロスは体を前屈みにし、食いしばった口からよだれが零れ落ちた。 最後は肉棒全体を強く締め付けられると、熱い白液がリテイアの中でほとばしった。 その瞬間、シャロスは天にも昇ったような気持ちになった。 頭の中から何も消え、ただ欲望を放射する快感だけ彼をとらえる。 それは今まで手でしごかれたよりも、はるかに気持ちいい体験であった。 シャロスは足の爪先まで力を込め、精液を全て吐き出すまで腰を突き上げた。 そしてしばらく痙攣した後、脱力した体をリテイアの横に倒させた。 おびただしい量の白液とともに、醜い肉棒が吐き出された。 彼女の淫裂はビクビクと震え、シャロスの精液を溢れさせた。 「はぁ……はぁ……」 シャロスは虚ろな目で天井を見つめ、絶頂を迎えた後の余韻に浸った。 心頭はようやく明るみを取り戻し、さきほどの快楽に溺れる自分を思い返しながら、段々と自己嫌悪に陥った。 「はぁ……シャロス、わらわの中にだしてはいけないと、あれほど言ったのに」 「……ご、ごめんなさい……」 「このことが外に噂されたら、どうなると思う?母と子が交えたことは、国中に大きく噂されてしまうのよ。 そうなったら、王室の威信もガタ落ちになってしまうわ」 「全て私が、悪かったです……」 シャロスの心は悔恨の念に満ちた。 欲望が全て消え去った今、自分がどれだけの愚行をしてきたか、嫌というほど分かってしまう。 疲れきった体だけに、その衝撃は重かった。 「でも、安心しなさい」 リテイアはシャロスを胸でそっと抱きしめ、 「今日のこと、わらわが全部内緒にしてあげるわ」 「お母さん……?」 「いいかしら?これはシャロスとわらわの二人だけの秘密。誰にも教えてはなりませぬ。 あなたにとってどんなに身近な人でも、どんなに信頼できる人でも。できるわね、シャロス?」 「は、はい!」 「ふふふ、いい子だわ……もしそれを守れた、今度はまた、気持ちいいことをしてあげてもいいわよ」 「お、お母さん……」 リテイアの柔らかい胸の中で、シャロスの重いまぶたは徐々に垂れ下がった。 心身とも疲労に満ちた彼は、リテイアから得られる安心感を無条件に受け入れ、そして安らかな眠りに陥った。 「うふふ、今はゆっくり休んでね……これからはいずれ、わらわに服従する人形になってもらうから」 自分のふところの中で軽い寝息を立てる美少年を見て、リテイアは悪魔のような笑みを浮かべた。 それから一日後。 シャロスは今日も領内各地からの報告書に目を通していたが、 いつもとは違い、意識はなかなか集中しなかった。 「……ああぁぁぁ!」 彼は報告書を机の上に叩きつけた。 インクスタンドがその機にゆれ倒れ、机の上を黒い液体で汚す。 今日ほど不機嫌な日はなかった。 その原因を、シャロス自身もよく分かっていた。 目を閉じればリテイアの魅惑な微笑みが浮かび、耳をすませば淫らな声が聞こえるような気がする。 朝目覚めたとき、彼はたまらずオナニーをして自分を静めようとした。 しかし、一度リテイアの味を覚えてしまった体は、満足にイクことがなかなかできなくなってしまった。 女性の性器に挿入する幻想は、絶えず彼の思考を煩わせた。 「殿下、いかがなされましたか」 物音を聞きつけたレイラが現れた。 「何もない、大丈夫だ」 「しかし、さきほどは……」 「何もないと言った!出て行け……っ!」 「……はっ……」 これほど怒鳴られた経験は今まで無かったため、レイラは少し戸惑った。 彼女は伏せた顔を少しあげると、ふとシャロスの異様なめつきに気付いた。 その視線は、まるで自分が身に着けている制服を見貫くかのようの鋭かった。 そして、何か危険な感情がこもっているようにも感じた。 レイラはなぜかは分からないが、顔を赤らめてしまった。 「あ、あの……王子様?」 「うっ、ああ。すまない、レイラ。ちょっと疲れただけだから、心配はいらない。 お前に向かって大声をあげて、すまない」 「とんでもありません。殿下、どうか御体に気をつけてください。 もしよろしかったら、私が御医を呼びましょうか」 「いいえ、いいのだ。少し休めばいいことだ。お前はもう下がってよいぞ……今は一人にしてくれ」 「はっ」 レイラはそれ以上の進言をせず、シャロスの命令に従って部屋から出た。 彼女と入れ替わるように、メイド服を着たエナが現れた。 「王子様、一息休まれてはいかがでしょうか」 エナは香ばしい紅茶をシャロスの側に置くと、机上にこぼれたインクを片付けた。 「あ、ああ……」 シャロスはエナの白いうなじを見ながら、レイラの肢体を思い返した。 (くっ……私はいったい何を考えているんだ!) レイラは長年シャロスに仕えていたが、シャロスにとってレイラは姉にも似たような人物で、 一度も愛欲を思い浮かべたことが無かった。 だがリテイアと性交して女性の体を知った今では、 シャロスはレイラの体が気になって気になって仕方が無かった。 彼女の軽鎧の下に、魅力的な乳房やいやらしい性器が隠されていることを思うと、 どす黒い邪念がシャロスの心を充満する。 そして今も、目の前にいるメイドの美少女を欲望に満ちた目で眺めていた。 エナは無表情ながら、どんな命令にも逆らわないほど従順さを持っていた。 もしここで自分が強制すれば彼女ならきっと自ら体を晒し出すだろう。 その可憐な裸姿を想像すると、シャロスの股間は疼いた。 「王子様、僭越ながら申し上げますが、私には王子様が欲求不満に陥っているように見えますわ」 「ふん、そんなことあるか!」 シャロスは無理やり自分の顔を冷やせた。 しかし、その動きは数日前と比べると、随分と余裕の無いものになった。 「でも、王子様の御体の方は、そうでないようですが」 「くっ……」 「どうか、私に慰めさせてください」 「……ふん、好きにしろ!」 シャロスは溜まらず強がりのセリフを吐き捨てるが、 エナはまったく意に介せず、淡々と彼のズボンを脱がせた。 案の定大きく勃起した一物の先端から、先走り汁が溢れていた。 「では、失礼させていただきます」 エナは可愛らしい口をあけると、その怒張した一物を含んだ。 生暖かい口腔の感触は、すぐにシャロスの硬い心を溶かした。 彼は苦悶に満ちた表情を浮かべ、腰を浮かせた。 エナの慣れた舌の動きは、シャロスのウィークポイントを的確に暴き、 彼の意志を脆弱なものへと変貌させる。 リテイアとセックスした体験がさらに拍車をかけて、彼を絶頂へと導く。 シャロスは一際大きい呻き声上げると、エナの口の中でドロドロの精液をこぼした。 エナが淡々と自分の精液を飲み干した光景を見て、シャロスの頭の中に獣のような感情が蘇る。 彼は唇をかみしめた後、ぼそっとと呟いた。 「……エナ」 「はい」 「服を脱げ」 「えっ……」 エナが無表情のまま頬を少し赤らめた。 「……分かりました」 しかし、エナはシャロスの命令に抵抗しなかった。 彼女はおもむろに立ち上がり、襟のボタンをはずし、メイド服を脱ぎ去った。 ほっそりとした肩口や胴体は、素肌のままであらわとなった。 シャロスは両目を光らせて、彼女の手つきを追った。 エナの顔色は徐々に赤く染まったが、しかし手の動きが止まることはなかった。 彼女はスカーカを脱ぎ、さらにブラジャーをはずした。 流れるようなロングヘアが彼女の背後になびく。 そしてついに、彼女は白のショーツを膝まで下ろし、それを足に通した。 頭につけたフリル付きカチューシャと、黒のニーソックスのみを残し、 彼女の少女らしい裸は全てシャロスの前に晒された。 シャロスは瞳に欲望の火をともらせ、彼女の体を嘗め回すように眺めた。 その突き刺さるような視線を感じると、エナの顔はますます赤くなり、目を泳がせた。 普段の彼女が絶対に見せないたじろぎは、シャロスの嗜虐心を大きく煽った。 彼は乱暴にエナの細腕をつかむと、奥の寝室へ向かった。 「あっ!」 ベッドに身を投げられると、エナは小さな悲鳴を上げた。 彼女は可憐な小動物のように瞳を潤わせ、両足をうちまたに曲げて、さりげなく太ももの付け根を隠した。 メイドの黒ニーソックスに包まれた彼女の太ももは、シャロスの心を焼き焦がす。 彼は外に聞こえないように寝室の扉を閉め、エナの上にまたがった。 それから彼女の形の良い胸に舌を這わせ、もう片方の乳房を手でまさぐった。 「ああっ!」 エナはくぐもったような小さな声を上げ、耐え切れないようで体を蠢かせた。 その可愛らしい仕草を見ると、シャロスはたまらず大きく膨張したチンポを握り、 それをエナの中に挿入した。 「ああっ、あああぁぁぁぁ!」 エナはひときわ大きい悲鳴を上げた。 彼女の蜜壷は、リテイアのものより窮屈であった。 しかし欲情に満ちたシャロスは、それを考慮する余裕などなかった。 彼は硬くなった一物でエナの中を少しずつえぐると、やがて何かを突き抜けたように感じた。 次の瞬間、エナの秘所との結合部から、処女の血が溢れ出た。 それと同時に、彼女の両目から清らかな涙が溢れ出た。 「エナ……?これは……」 シャロスは思わず動きを止めた。 しかし、エナはすぐさま彼の体にしがみつき、乱れるように話した。 「はぁん、王子様……お願い、止めないで下さい……このままエナを、もっと痛めつけてください!」 彼女がシャロスに密着した勢いで、シャロスの一物はさらに深いところまで貫いた。 「ぐっ……ああぁっ!」 すぼまった襞がより強く擦り合うと、シャロスの戸惑いは欲情によって上書きされた。 エナの恥じらう顔に涙の粒が滑り落ちる。 その痛みをこらえる表情は、シャロスの陵辱心をかきたてる。 彼女のいつもとのギャップは、これ以上無い可愛いものであった。 シャロスは渾身の力で腰を振りおろし、鉄のように硬くなった一物を激しく上下に運動させた。 「あぁっ、うっ……ぐぅぅ!」 エナはベッドのシーツを強く掴み、可愛らしい顔立ちに苦悶の表情が満ちた。 肉棒が彼女の入り口から一番奥まで貫くたびに、エナは口を大きく開き、 我慢しているような喘ぎ声を小刻みに吐き出す。 そして激しい痛みをやり過ごすためのように、足の裏でベッドの上を何度もさする。 シャロスは荒々しい息になって、腰の動きを徐々に早めた。 今の彼には、もはや途中で止めることなどできなくなった。 それを察したのか、エナは潤いだ瞳でシャロスを見上げ、 「……シャ、シャロス様……どうか、エナの中に……熱いザーメンを一杯注いでください!」 彼女の熱っぽい口調は、シャロスの頭中のトリガーをはずした。 今まで溜まってきた欲情は一気に肉棒に流れ込み、彼のあそこをビクビク躍動させた。 「エナ……!」 「シャロスさまっ!」 エナはシャロスが出す直前に、腰を迎合させた。 そのはずみに、シャロスの亀頭は柔らかい子宮膜衝突した。 「うわああぁぁぁ――!」 シャロスの一物がドクドク震えると、熱くたぎった精液が彼女の中に注がれた。 「はぁああっ……」 エナは全身をわななかせ、体をえびの様に反らせた。 秘所の結合部から、精液と血が混ざり合ったピンク色の体液が溢れ出た。 欲望が萎縮していくと同時に、シャロスの体から力が抜け出た。 朦朧となった意識のまま、エナのそばに横たわり、彼女の胸の起伏を眺めながら息を整えた。 熱が冷えていくと、悔恨の念が徐々に心情を曇らせた。 (また、こんなことをしてしまった……) ついさっきまでいきり立っていた自分の性器は、みっともなく垂れ下がっていた。 事後の余韻を味わいながらも、シャロスはこの淫蕩な行いに対し複雑な思いを抱いた。 (これが、セックスの快感なのか。今までこの行為を憎んできたというのに……) 隣のエナはおもむろにベッドから立ち上がり、乱れた髪を整えた。 その顔から熱が引き、いつもの無表情になった。 彼女は秘所の狼藉をハンカチでぬぐと、一言も発さずにメイド服を着付けた。 そして、部屋外からお湯とタオルを持ち込み、シャロスの体をふきとる。 暖かいタオルの感触が、シャロスの陰茎を包み込む。 彼は顔を真っ赤にさせ、小声でつぶやいた。 「エナ、その……ごめん、私が強引に……」 「いいえ、王子様は何も悪くなんかありません。私の体はもう王子様のものですから、 どうか好きにお使いになってください。……あの、大変……気持ち良い痛みでした」 エナは最後だけ視線をそらし、ほのかに顔を赤らめた。 彼女の従順な仕草を見ると、シャロスの欲望は一段と強くなった。 ついさっき得られた快感を思い返すと、彼の一物はまたもや膨張し始めた。 その時ふと、心の中でリテイアの魅惑な笑顔が思い浮かんできた。 (皇后だって言っていた……私達身分の高い人を満足させられることが、彼らの至高の幸福だって ……エナもそれでいいというのなら、私は何も負い目を感じる事は無いだろう……) シャロスは発情した獣のように、目をギラギラ輝かせた。 その瞳には、早くもエナの艶かしい体しか映っていなかった。 □ 王子の寝室から遠く離れたところ、暗い部屋の中で居座るリテイアの姿がいた。 彼女は豪奢な貴人服を着て、手に持っているグラスに唇をそっとつけ、中にあるワインを口に注いだ。 顔をグラスから離れると、そこに彼女の艶かしい口紅の跡が残った。 その近くで、銀のトレイを持ったマナの姿がいた。 彼女はリテイアの機嫌を取るかのように、笑みを浮かべていた。 「これで王子様は、リテイア様のいいなりになったのも同然ですわね」 「ふふふ……これでシャロス王子は、女を見ただけで興奮するケダモノとなった。 セックスの快楽を知った彼には、もはや逃れることは無いでしょう」 「普通の男でも、一度リテイア様と交われば虜になっちゃうですもの。まして、王子みたいな童貞を捧げた人なんて」 「そうだね。彼にとってわらわとのセックスは、これから一生、記憶の深いところまで刻まれたことでしょう。 そして彼がセックスを重ねていけばいくほど、女色に溺れていくわ」 「あんな賢そうな王子が、エロエロのスケベ男になっちゃうと思うと、いろいろ楽しみですわ」 「ええ。いずれ国や民なんか、どうでもよくなるような王様に成長させるわ。 それまでには、エナにがんばってもらわなくちゃ」 リテイアがそこまで話すと、マナは頬をやや不満げに膨らませた。 「リテイア様、エナばっかり奉仕させてずるいですわ。マナも、王子様の側にいたいです!」 「あらあら、せっかちな子ね。……ふふふ、いいわよ。そろそろ王子をもっと堕落してもらう頃だもの。 マナ、今度はあなたの力で、王子を楽しませてね」 「やったー!ありがとうございます、リテイア様!マナ、体を張ってがんばっちゃいます!」 マナは子供のような明るい笑顔を作った。 その無邪気な素振りを眺めながら、リテイアは妖艶な笑みを浮かべた。 リテイアはグラスに注がれたワインを眺めると、近いうちにシャロスが彼女にひざまずく光景が見えてきた。 SS一覧に戻る メインページに戻る |