シチュエーション
![]() まるで「どう?」と言わんばかりに、ゆかりは誇らしげに語ってみせた。職員室にそれ だけの子分を作れば、ゆかりは学校全体をも動かせるようになるだろう。今後の二年間で その割合はもっと増えていくはずだ。 美緒と彩華は苦笑しているが、内心では相当驚かされ、小さな焦りを覚えている。 胸に去来するのは「年下に負けた」――という小さな劣等感である。 美緒や彩華の魅力がゆかりに劣るわけではない。この二人の姉とて、落とそうと思った 男はすべて落としてきた。並みの男では太刀打ちできないしたたかさは当然持ち合わせて いるし、体を利用しての誘惑に苦労することなどもあり得ない。 けれども二人の姉はどうしても、「ゆかりは自分があの歳の頃より凄い」との点を意識 せざるを得ない。将来どんな女に育つのか考えると、空恐ろしくなるのだ。 もっともゆかり自身、「もう二人の姉にも負けやしない。むしろ、もう私のほうが上で しょうね」――などという意識を胸の内に潜ませてもいる。 この三女に言わせれば、末っ子の自分は美緒や彩華の卓越した手練手管を見て育ってい るのだから、幼くして追いついてしまうのは当然なのだが。しかも男の籠絡を目的として 楽しんでいるのだ。上手くならないはずがない。 「ああ、そうだ。今度さ、ミオ姉の店に行ってもいい?」 「ええ、別に来てもいいけど……どうかしたの?」 美緒が働いているのは、女性用下着メーカーの直販店である。 「それがさ、今日感じたんだけどね〜、下着が合わないかもしんないの。今のサイズじゃ ブラのほうが小さいのかも」 「えっ?」 またしても美緒と彩華が驚いた。Hカップでもなお小さい? 「ゆかり……あんた、またバスト成長したの?」 「まだ未確認。ただね、ちょっと今日キツさを感じたからね。一度サイズを測ったほうが いいかと思って……いつもこの感覚が来ると大きくなってるからさ」 これ以上大きくならなくていいんだけど、とゆかりはつぶやく。GからHに育った時も 実は同じことを言っていたのだが。 「わかったわ、ゆかり。今度、私の店にいらっしゃいな。きちんと測っておくのは大事だ からね。でもIカップのブラジャーなんて、今は店頭にないわよ。大きくなってたら発注 するから」 「ゆかりぃ、もう顔よりおっぱいのほうが大きくなるんじゃない?」 彩華がにやにやとからかいの笑みを浮かべながら、バックミラーでゆかりの顔を見る。 三女は肩を竦め、自分のバストの存在主張に呆れるばかりだった。 「そんなに大きいんだし、ブラもオーダーメイドに切り替えたほうがいいわ。そのほうが バストのためにもなるんだから」 「あ〜、やっぱり?私もそうしたほうがいいと思うんだけど、値段も高いし……」 「お金ならあなたに心酔する男から引っ張ればいいでしょ。中学の笠原先生ってあなたの 言いなりだったんだし。貢がせてもいい男は他にもいるんじゃない?」 彩華はまた苦笑する。美緒姉さんもサラッと恐ろしいことを言うな〜、と。 「う〜ん……わかった。折角大きくなったんだし、バストは大事にしなきゃね」 三姉妹の歓談はまだまだ続く。家に帰るまで終始この調子だった。 男たちの心を巧みに捕え、並み外れた色香で籠絡と恫喝を繰り返す三姉妹。 その奔放な誘惑と色仕掛けは、しばらく終わりそうにない。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |