あるスパイの男
シチュエーション


あるスパイの男がいた。
敵国で諜報網を築き上げる社交性、手に入れた情報を精査する分析力、時には自ら死地に潜入し情報を盗み出す隠密行動力エトセトラ…。
スパイにおおよそ必要であろう能力を一通り揃えた、まさに天才スパイであろう。
しかし彼には唯一弱点があった。
女性経験の無さである。
彼はずっと裏の世界で生きてきたので、恋人といった存在は不要どころか足枷にもなりうる邪魔な物としか見ていなかった。
しかし今その事が彼を追い詰めていた。

彼は敵国の女性諜報部員と対じしていた。
女の振るうナイフが右から左から容赦なく男に襲いかかる。
彼の暗殺や敵スパイと交戦するときのためにかなり鍛えられた 体術は、確実に女のナイフを回避していたが、彼の思考は千々に乱れていた。
敵の女は短いスカートを穿き、シャツは上からいくつかのボタンが外されていた。
女が動くたびに柔らかな胸の谷間やスカートから覗く太股が男の思考を奪っていく。
そして男は足下の水溜まりに足を奪われてしまった。「(まずいっ…うっ)」
その時男の目に飛び込んできたのは、追撃のために前屈みになった女の谷間だった。

「うわっ!があっ」

受け身も取れずに倒れた男の鳩尾を女のナイフの柄が強かに殴り付けた。

「ちくしょう…」

肺から空気が絞り出され男の意識は暗転した。

筋弛緩剤と覚しき物を投与され、監禁された男は後悔の念に苛まれていた。

「クソッ、こうなるなら教官の助言を素直に聞いておけばよかった」

彼はスパイの養成所の頃、教官に再三「お前は全てにおいて優秀だが、女性経験の欠如だけが問題だ。その女性に弱い所を克服しておかないと、後々困ることになるぞ」
と言われていた。
しかし本当に女性経験が無かった彼は、
女性というものをを知った自分がどうなるのかが怖かった。

「その結果がこのザマか」その時、ドアが開いて一人の女が現れた。
「あはっ、目が覚めたんだね」
「お前は…そうだ、さっきのスパイか」
「ご名答♪貴方は本当だったら国家機密漏洩で即刻拷問したあとに処刑だったんだけと、私が掛け合ったの」
「恩でも売るつもりか?違うな。俺をどうする気だ?」
「貴方は私の性奴隷として、部下として、ふふっ
恋 人
として尽くしてもらうわ」
「ふん、だれが貴様のようなあばずれに屈するものか」
「貴方のプライドとか意地とかそういった余計な物は私の必殺の色仕掛けでぜーんぶ溶かしてあ げ る」






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