元旦2
シチュエーション


「犬も歩けば・・・・」
「ハイ!!」

翔太の元気のいい声が部屋にこだまする。
由紀は忌々しげに翔太を見る。

今日は元旦。由紀の家はお正月は親戚の家の翔太の家に集まるのが恒例だった。
新年のあいさつも済ませ、大人たちがカルタでもやろうと提案した。

「うん、やろう!やろう!」「やりたーい!」

双子の妹である恭子と真由美が食いついてきた。
由紀も嫌がる理由もなかったので、大人たちも交じってカルタをする事になった。

「目の・・・」
「ハイ!」

読み上げ文の初めの段階で、翔太がカルタを素早く取る。

「翔太君すごいわね〜!」

読み手である由紀の母親が翔太のその神技的なふだへの反応速度に感心する。

「えへへ、どのカルタがどこにあるか暗記してるもん♪余裕♪余裕♪」

(何が「余裕♪余裕よ♪」よ!泣き虫翔太の分際で!)

一つ年下の従兄の翔太は、普段はおとなしく性格でお転婆な由紀はよく大人たちに隠れて翔太をいじめ泣かしたりしていた。
そんな翔太が、今日は少々調子に乗っている。

「翔太は見たものをすぐに暗記できるのよね〜♪」

翔太の母親が誇らしげに翔太を褒める。

「へー、すごいなー翔太は!」
「お勉強もすごくできるしね」
「へへ〜ん♪」

大人たちに褒められた翔太は、ますます調子に乗り、どうだ!と言わんばかりのドヤ顔を由紀達に向けてきた。
そんな翔太を見て由紀はイラッとする。

(こ、こいつ〜!)

負けず嫌いな由紀は、何とかこのピノキオのように長くなった翔太の鼻っ柱をへし折ってやろうと意気込む。
カルタのふだに意識を集中し、読み手が文章を読み上げるのを待つ。

「さる・・・」

しめた!早い段階でふだを見つけることができた由紀は、ふだをとるため勢いよく手を伸ばす。
しかし、その手は空を切る。それより前にふだの位置を把握していた翔太が、由紀より早くふだをとったからだ。

「ふぎゃ!」

しかも、勢い余ってつんのめり無様な体制で床に倒れこんでしまった。

「あはははははっ!由紀ちゃん、がんばりすぎだよ!」
「ふふっふふふふ!由紀ったらもう!」
「はははははは!由紀姉かっこわり〜♪」

「ぐぐぐぐっ・・・・」

大人たちに笑われ、翔太にも馬鹿にされた由紀は怒りで震える。

(翔太のヤツ!後で絶対泣かしてやる!ものすっごい強力な電気アンマ股間に叩き込んでやるんだから!)

そう心に決める由紀だったが、負けず嫌いな由紀はそれでは気が済まない。
やはり、このゲームで勝って翔太の鼻を明かしてやりたい。
そのため、ますます由紀は気合を入れた。

「泣き面・・・」
「「ハイ!」」

由紀と翔太が同時に動いた。
しかし、札が翔太の近くにあっため、またもや由紀の手は空を切る。しかも、遠くのふだを無理やり通ろうとしたため、頭から勢いよく前に突っ込みまたもや床に倒れこむ体勢になる。

「ははははは!由紀ちゃん、パンツ見えてるよ」

勢いよく前に倒れこんだため、スカートがめくれあがえりパンツが丸見えになってしまった。
その事を親戚の叔父さんに指摘され、由紀は顔を真っ赤にして急いでめくれたスカートを戻す。

(ううっ・・・また、翔太に馬鹿される・・・)

そう思って恐る恐る由紀は翔太を見る。
しかし、翔太は予想に反した反応をしていた。
頬を赤らめ目線をそらし、恥ずかしそうにもじもじしていた。

(ん?こいつ、もしかして・・・・)

由紀は翔太のこの反応をみて、ある事を試してみようと思った。
由紀が床に倒れこんだため、ばらばらに飛んでしまったふだを戻しまたゲームが再開される。

「頭・・・」
「「ハイ!」」

翔太と由紀がまた同時に動いた。
しかし、この時由紀は読み上げられたふだが、どこにあるかは確認できていなかった。
確認できているふりをして、ふだをとるような体勢になっただけだった。
ただ、その時、足を大きく開き翔太に自分のパンツが見えるようにした。

「うっ・・・」

翔太の手の動きが目に見えて鈍ったのを由紀は見逃さなかった。

「ハイ!」

そのスキをつかれ、翔太の隣にいる恭子がふだをとった。

「えへへ♪」
「あら、よかったわね。恭子ちゃん」
「やっと、一枚とれたな」

無邪気に喜ぶ妹とそれを褒める大人たち、翔太の変化と由紀のしたことを気づいたものはいなかった。

その後、由紀は普通にカルタをしているふりをして何度か、翔太にパンツが見える体勢をとって見た。
すると、やはり翔太の手の動きが鈍くなり由紀は確信した。

(ふ〜ん?やっぱりね?これは使えるわ?)

由紀は心の中でほくそ笑んだ。

そして、カルタは翔太の一人勝ちで幕を閉じた。

「えへへへ♪」

翔太は満足気にほほ笑む。

「それじゃあ、お母さんたちは夕食の支度するから、4人は翔太の部屋であそんでらっしゃい」
「うん♪」
「「はーい!」」

カルタで圧倒的勝利を収めて上機嫌に部屋に向かう翔太。
それについていこうとする双子の妹を由紀は呼びとめる。

「「なーに?お姉ちゃん?」」

由紀は翔太にばれないように妹たちに耳打ちする

「えっ?そんなんで上手くいくの?」
「大丈夫、お姉ちゃんの言うとおりすれば、あの調子に乗ってる翔太を懲らしめることができるうえに、あいつのお年玉を私たちの物にできるわ?」

由紀は今現在、調子に乗りまっくている翔太の顔が泣きっ面に変わるところを想像し、顔がニヤける。

「ね〜?翔太君?もう一回私たちだけでカルタやらな〜い?」

翔太の部屋に行くと由紀が翔太をカルタに誘う。

「え〜?由紀姉たちじゃあ、弱すぎてつまんないよ〜」

(コイツ・・・相当のぼせあがってるわね)

普段は、由紀たちの前では弱腰な翔太だがさっきのカルタの大勝ちで、翔太は有頂天になっているようだった。

「え〜?いいじゃない?そうだ、それじゃあお年玉かけましょうよ?カルタ一枚につき千円で私たちのチームと翔太君で勝負するの?これならどう?」
「えっ?うーん・・・よし!わかった!やろう!やろう!」

(かかった!)

由紀は心の中でガッツポーズする。

「あっ、そのかわり、もしお年玉が足りなくなるくらい負けたら、カルタ一枚につき一分間のバツゲームよ?いいかしら?」
「うん♪別にいいよ♪」

翔太の事だ自分が負けるなどと、微塵も思っていないに違いない。
上手くいけば私たち3人のお年玉を自分のものにできる。そう思っているのだろう。

(目に物見せてあげるわ?)

カルタを床に並べると、翔太の正面に由紀、そして左右に恭子と真由美がすわり真由美がカルタを読み上げ役になった。

「じゃあ、読むね?」
「よ〜し!来い!」

床にあるカルタを一瞬で記憶した翔太は意気揚々と構える。
しかし・・・

バッ、バッ

左右の恭子と真由美が足を大きく開き、二人のパンツが丸見えになる。

「なっ・・・」

翔太の顔が真っ赤になる。

「あれ?どうしたの?翔太君?」

由紀が白々しく声をかける。

「な、なんでも無いよ!」

先ほどまでの自信満々の態度はどこへやら、翔太は大きく動揺した。

「河童の川流れ」
「ハイ!」

この日の勝負に翔太は3人のお色気攻撃により惨敗。お年玉を巻き上げられた上に、由紀の電気アンマで泣かされた。
これが翔太の恐怖の正月のはじまりだった。






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