シチュエーション
![]() 昨日は「臭い!」だった。 毎朝、俺が大学に行く時間に反対方向から来てすれ違う女の子。 名前も知らない。どこか知らないけど制服着てるから高校生なんだろう。 長い黒髪。背は高からず低からず。顔はまぁ、かわいい。 どっちかって言えば冷たい感じ。クールビューティーって感じか。 その子はいつも俺のことをチラっと見て、すれ違いざまに俺のことを 一言、罵倒していく。それがもう1週間も続いてる。 一番最初は「キモッ」だった。 最初は耳を疑った。何で?何で見ず知らずの年下のガキにあんなこと 言われなきゃならないわけ? でも聞き違いだろうと思った。まさかそんな失礼な女がいるわけないと思った。 翌日もすれ違った。 「バカ」って言われた。 呆然として、その場で立ち竦んじまった。そんな馬鹿なって、頭ん中で 同じことがぐるぐる回ってた。 何故だ?何でだ? そりゃ俺はイケメンとかじゃないし、たいしたことない男だけど。 でも別にモテないわけじゃないし高校の時は彼女もいたんだ。 今は独りだけど、大学でちょっといい感じになりかけてる子だっている。 ま、そんなことはどうでもいいんだけど。 とにかくその高校生っぽい女の子から、俺はこの1週間ずっとすれ違う たんびに一言バカにされて、ちょっぴり傷つけられている。 そろそろいい加減頭に来てる。いったい何のつもりだって、怒鳴りつけたい。 最近痴漢冤罪事件とか多いから、もしあれだったら嫌だなって怖いけど。 でもこのままじゃいられないし。あの道を通らないわけにはいかないから。 だから今日、いつもみたいにあの子が俺に何か言いかけてきたから。 「おまえいい加減しろよ!いったいどういうつもりだ!」って怒鳴っちまった。 そしたらその子、「へっ」みたいに笑いやがったよ。 嘲笑っつーの?ほんとそんな感じの笑いで。 その子、急に俺の顔に自分の顔をぐって近づけて。俺の顔しげしげと見て。 何にも言わずに俺の手を握って、そのまま引きずるように歩き出したんだ。 で、今。 俺、その子と駅前のホテルの部屋にいる。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |