従姉弟
シチュエーション


進藤司(しんどう・つかさ)と古河千早(こが・ちはや)は、従姉弟どうしであり、同時に家も歩いて5分ほどの近所にある幼馴染でもある少年と少女だった。
ちなみに、つかさの方が年下──13歳の少年であり、ひとつ年上のちはやからは、長年弟のような扱いを受けてきた。
実際、母どうしが双子姉妹のせいか、ふたりは下手な兄弟以上によく似ていた。また、進藤家の両親は共働きのうえに出張がちで、両親が留守の時はつかさは古河家に預けられることも多かったのだ。
それはそれで嫌なわけではない。むしろ、美人で頭が良く、明るく積極的な「姉」がいることは、他人からは羨ましがられることも多かったし、つかさ自身も誇らしく思うことが多々あった。
しかしながら、思春期を迎える頃から、多少は色気づき始めたつかさは、いつしかちはやのことをひとりの女性──恋愛対象として意識するようになっていた。
中学に入ったちはやがモテることも、つかさを焦らせた原因かもしれない。
ある日の帰り道、つかさはちはやを滅多に人の来ない公園へと誘って自らの想いを打ち明けた。
驚いてはいたものの、ちはやは真剣に彼の話を聞き、翌日まで回答を保留させてほしいと答えた。
そして翌日──ちはやは、条件つきで彼と恋人同士になることを了解してくれた。
つかさは天にも昇るような気持ちだった。
しかし、彼が彼女の口元に浮かぶ微笑みをもし見ていたなら、そんな無邪気に喜べなかっただろう。

ちはやの出した条件とは、「ふたりきりの時は、ちはやの言うことを何でも素直に聞くこと」。
人によっては生殺与奪の権利を与えたに等しいが、つかさはちはやのことを信頼していたから、それほどヒドいことはされないだろうと踏んでいたのだ。
……その信頼は、残念ながら破られることになるのだが。

──それは巧妙に張られた罠だった。
冬休みを目前にした12月の半ば、懸賞で当てた温泉旅行に両家の親たちが揃って出かけたのに対して、数日間子供ふたりで留守番することなったのだ。

両親が不在の時は、つかさは古河家にお世話になるのが数年来の習慣であり、この時もそうすることに彼は何ら疑問を感じていなかった。
勝手知ったるなんとやらで、お泊りセットすら持たずに、つかさは着のみきのままで、ちはやの家へと向かった。必要なもの──着替えや歯ブラシなどは、古河家にも置いてあるからだ。
もちろん、中学生ともなれば、恋人とふたりきりということに、多少の期待感もある。

だが、玄関で出迎えたちはやは、イイ笑顔で少年にこう告げた。

「これから3日間、ふたりきりだね」

と。
それが、彼女の謀略の幕開けであった。

折悪しく小雨に降られたつかさは、ちはやに命じられて、とりあえずは濡れた服を着替えることとなった。
だが、ちはやからなぜかリボンのかけられた紙袋を渡されたつかさは、首を傾げながら閉じられたテープを剥がし、中を覗く。
「……ちはやちゃん、袋が違うみたいだけど」
「そんな事無いわよ。ちゃんと確認したから」
「でも……」

つかさは中身をそっと掻き分け、有り得ない物を発見し、慌てて手を抜いた。

「やっぱり違うよ。その……下着、入ってるよ、これ」

困惑するつかさを見つめるちはやは落ち着き払った笑顔で宣言する。

「それも含めてつかさ君が着るのよ。
あ、嫌なら別にそれでもいいわよ?ただ……あの約束のことはわかってるわよね?」

付き合いが長いと以心伝心で済む事が多々ある。
つかさはひしひしと嫌な予感を感じた。

「えっと……」
「寂しい年末を過ごしたければ、断ってもいいわよ。それで?着るの?着ないの?」

惚れた弱みと、失うかもしれないという恐怖が、羞恥心を上回った。

「き、着る、よォ」

つかさは消え入りそうな声で承諾した。

――三十分後。
つかさは、女装姿のまま、古河家の玄関先で震えていた。

「うぅっ、さ、さむいっ、ちはやちゃぁ〜ん……まだぁ?」

ちはやは、つかさに、その姿のままコンビニに買い物に行くよう命じたのだ。
ちはやの普段着を着せられ、わざわざ髪型までいじられたつかさは、さすがは従姉弟同士というべきか。遠目には十分「古河千早」に見えた。
親しい友達とかならバレるかもしれないが、少なくとも顔見知り程度なら十分騙されるだろう。
とは言え、さすがに顔なじみの店だと正体がバレる可能性もあるので、必然的につかさは普段あまり行かない、少し遠くのコンビニまで足を延ばすこととなった。

ちはやが用意した首回りまで包むピンクのセーターは暖かいけれど、お揃いのミニスカートが足元から体温を放出し、少し厚手のニーソックスを履いていても外気に直接晒す事に慣れていない太股では耐えられない寒さだった。
正午を回ったばかりなのに太陽はときおりしか顔を出さず、雪でも降りそうな雲行きが気温を下げている。
ダッフルコートを羽織ってはいるものの、冬の冷たい風が吹き抜けるたびに下腹部から冷え、片道10分足らずの普通なら何でもない時間距離が限りなく遠く感じられる。
オマケに古河家に帰ってきたところで、このように玄関先で待たされたのだ。

「お待たせー、もういいわよー」

寒さに足踏みしながら、待つことおよそ5分あまりで、ようやくインターホンから、OKの言葉が聞こえた。
ドアのオートロックが開かれると同時につかさは中へと飛び込み、外気から遮断された空気の暖かさに一息つく。

「ふぅ〜、助かったぁ……」
「くすくす、大袈裟ねぇ。あたしはその格好で毎朝登校してるんだけど?」

そう言われてはグゥの音も出ない。

「そりゃそうだけど……て、あれ?」

謝りかけて目を丸くしたつかさの前で、ちはやは両腕を広げてクルリと回る。

「身長が同じくらいだから着れるかなぁって。似合う?」
「同じじゃないよ、僕のほうが1センチ大きいもん!」

目の前のちはやは、つかさの服を着こんでいる。

「乾いたんなら返してよー」
「ダーメ、今日はその服を着てて貰うからね。それとも、逆らう気?」
「で、でも……いつまでもこんなの嫌だよ」
「あたしとつきあう条件、忘れたの?それでも嫌だって言うなら、あたしにも覚悟があるわよ」

つまり、着替えた時点でお別れと言うことだ。

「うぅ……」

心底困った表情を見せるつかさ。

「ほら、来て。お部屋を暖めておいたわ」

優しく手を引かれた、つかさは拒否する機会を失い、流されるまま彼女に従った。

東向きの階段を上がった短い廊下。その突き当たりがちはやの部屋だ。

「入って」
「う、うん」

広い室内は充分に暖まっていタ。
正面のベッドを見てドギマギしたつかさは、悟られまいと視線を勉強机や本棚、テレビなどに落ちつか無げに移す。
とりあえず座ろうかと考えたものの、一応部屋の主の許可を得ようと、ちはやを探して振り向く。
彼女はクローゼットを閉じる所だった。何かを取り出したようだが……。

「あ……えと……」
「つかさ君、コート脱ごうよ」

背後からファスナーに手を掛けられる。

「う、うん」
「あ、立たなくていいわ。膝立ちで丁度いいから、手だけ真っ直ぐ下してて」
「わかった」

素直に膝立ちとなって腕の力を抜いた。
ちはやがファスナーを途中まで下し――襟を掴んで開きながら背後へ引く。

「え?あれ?ちはやちゃん、これじゃ脱げないよ」

コートが肘の少し上で引っ掛かりつかさの腕を拘束した。
丈夫さが売りの上着はつかさが暴れたくらいでは壊れやしない。

ちはやはコートの両袖を引き降ろして共に縛ると、つかさに告げた。

「今日は、つかさ君に、あたしをあげるね」

男として恋人に言われたらうれしいはずの言葉なのに、なぜかつかさは不安しか感じなかった。
そして……その予感は正しい。
つかさの背後でズボンのファスナーを下ろす音が響く。
つかさのズボンを履いているちはやは、その下に、黒光りするペニスバンドを着けていた。
もしつかさが自分の女装姿に意識を取られていなければ、男装したちはやを見て股間に不自然な膨らみがあると気付けたかもしれない。
もっとも、寒さでそれどころじゃなかったというのもあるかもしれないが。
ペニスバンドにアナルクリームを塗りつけたちはやは、おもむろにつかさのスカートをまくりあげる。

「あ、ちょ、なにを」
「だから、あたしをあげるの。ほら、横になりなさい」

ちはやに突き飛ばされ、つかさはバランスを崩して横に倒れた。
ちはやはつかさの足の間にしゃがみ込んでショーツをずらし、アナルクリームを入り口だけでなく中にも塗り込んだ。

「ふぅっ、うぐっ」

初めて体内をこねくり回されたにも関わらず、つかさはその異様な感覚に溺れ、目を閉じ、びくびくと足を痙攣させている。
下唇を噛み締めるつかさの反応を楽しんでいたちはやは、薄く微笑んで体を起こし、ペニスバンドをショーツの横から潜り込ませる。
目を開けたつかさに、上からちはやが微笑みかけた。

「つかさ君は今から「ちはや」になるの。あたしの分身になるのよ」

アナルに先端をあてがい、ちはやが笑う。

「な、何言ってんの?訳わかんないよ、やめてよ!」

ぐりぐりと回しながら押し込まれ、つかさは犯される恐怖でパニックになった。
だが。

「ダメ。じゃあね、「ちはや」ちゃんの処女もーらいっ」

冷たく言い放ち、ちはやは一気につかさにソレを突き刺した。
強引に体内に侵入される感触が内臓の奥へと伝わっていく。

「あがっ!あ、あ、あ!あ!」

つかさは目を剥いて首を反らし、耐えるしかない。
ちはやはつかさの背後に寄り添って腰を抱え、中をゴリッと擦った。
一瞬、痛みにも似た強烈な感覚に襲われて、つかさは苦鳴を漏らした。

「あぐっ……や、やめてよ、ちぃちゃぁん!」
「チハヤは貴女でしょ?あたしの事は……そうだね、ツカサ、でいいか。ふふっ、チハヤったら初めてなのに奥までしっかり呑み込んで。元々淫乱なのかな」

「な、何を、僕はつかさ……」
「あれぇ、まだそんな勘違いをしてるの?仕方無いね。ボクの愛情で目を覚まさせてあげる」

言うなり、ちはやは腰を前後に揺すり始める。

「うぁっ!あぐっ!ま、まって、頼むからっ」
「チハヤったらお願いくらいまともに出来ないの?ほら、ほらほら」

クリームで滑り良くずるずると出入する擬似ペニスは柔らかい。
表面に纏った血管のような膨らみが適度な刺激となってつかさのアナルを開発し始める。

「あ、あぁ……やめて、やめ、だめっ、ちはやっ」
「まだまだだね〜。ちゃんと言えたら止めてあげてもいいんだけど。このままだとイっちゃうかも。そうなったら、くすくす、
『もっとぉ』ってせがむ様になるんじゃない?いいの?」

ちはやの動きが一段と大きくなった。
つかさは突き込まれて女の様に求めることなど望んでいない。
けれど、擬似ペニスが時折甘美な疼きをもたらしているのも事実だった。
そして、それが逃れられない快感になる事を、つかさは恐れた。

「そ、そんなっ、やだよっ、お、お願い、やめて、やめてくださいっ」

犯されている事実が懇願という手段を選ばせる。
つかさは、既に完全に被支配者となっていた。
ちはやが腰を大きく引く。

「おしいねぇ〜。何を止めて欲しいのか言ってくれないと、解らないよっ!」

言い終えると同時に激しく打ち付けた。
直径僅か三センチの柔らかい棒が、ずしん、と響き、つかさは極太の杭を打ち込まれた様な錯覚に襲われる。

「ああっ!やめっ」
「あれあれ、そんなに仰け反る程よかったの?こうかな?」

ちはやは大きく腰を引いて、また突き出す。

「あうぅっ!」

つかさのあごが跳ね、それを見てちはやは目を細めた。

「気持ちいいんだ。くすくす……じゃあ、こういうのはどう?」

今度は密着したまま細かく腰を揺さぶる。
奥まで満たされた状態で擦られ、疼きが快感に変わり始めていた。
恐れていた感覚を得て、つかさは激しく首を振る。

「うああっ!ああっ!だ、だめっ、やめてっ、こんなのヘンだよォ!」
「チハヤは女の子でしょ?エッチのときに挿れられるのは変じゃないよ」
「違うっ、僕はっ……うぁっ!あっ!」
「ふふ、嘘吐いても無駄だよ。すぐに認めさせてあげるんだから」

ちはやの手が前にまわり、つかさの臍を探り当てると、そのすぐ下を押さえた。
何度も、強く。
その間も快感の増幅が続いている。

「あっ、くっ、ううっ――くあっ!はふっ!」
「強情だねぇ。さっさと女だって認めちゃいな」

再び大きな突き上げが始まった。

「ち、ちがっ、あっ、はぅっ」
「くすくす、良い事を教えてあげる。正面にテレビ台があるでしょ?そのガラス戸の中にカメラがあるの見える?記念すべき初エッチを撮ってるんだ」

つかさは快感と戦いながら確認して顔を真っ赤に染める。

「はぁっ、ま、まさか、今日は、最初から、ああっ、このつもりで、あうっ」
「やっと解った?でも、ほぉら、本格的に感じてきたね、もう逃げられないよ」
「な、なんで、こんなっ――」

強まる快感の中で突如、下腹部に湧き上がった衝動がつかさを慌てさせた。

「――あ、あああっ、だ、だめっ、やめて、やめて、お願い!ちはやっ」
「だから、チハヤは貴女だってば」
「ああっ、今は、そんな事はっ」

圧迫と突き上げが激しくなる。

「あっ、あっ、やっ、だめっ、いや、いやだっ」
「だったら認めなさいっ!あなたは誰?あなたの性別は?ほら、言いなさい!」
「あ、ぼ、ぼく、は」
「駄目!女の子なら『あたし』でしょ!」
「ああっ、はいっ、あ、あた……」

高まる快感の気配がつかさを妥協させる。

「あたしは、チハヤですっ……ね、言ったからっ」
「まだっ!チハヤは挿れられて気持ちよくなってきたんでしょ?正直に答えなさい」
「え、あはっ、あうっ、あ、そんなっ」
「じゃあ恥を選ぶんだね。あはは、いいよ、それでも」
「あんっ、あ、い、いい、ですっ……言ったからっ、もうお願い!」
「あはははっ、可愛いこと言うじゃないっ!お願いされたらしょうがないなぁ。イカせてあげる」

猛然と腰を振るちはやに揺さぶられ、体内を蹂躙される異様な感覚が快感へと繋がりつつあった。

「ち、ちがうっ、あ、あたし、そんな、つもりじゃ、ああっ、あ、ああ、だめ、えっ!あ!やめ!あ、や、やぁっ!いやだ、いっあっ」

体が快楽の予感に震える。

「いきなさいっ!イクのっ!チハヤっ!」

激しい羞恥につかさは涙を浮かべて首を振る。

「やっ!やだっ!やだっ!はふっ!」

ちはやが激しく突き上げ、緊迫感を刺激する。

「止めて欲しかったら『あたし』って叫んでみなさいっ、大きな声でっ、いかせてあげるからっ!」
「ああっ、やめっ、あ、あたしっ」
「もう一回!もっと大きな声で!」
「あんっ、あたしっ!あたしぃっ!」

その瞬間、すべての感覚が反転した。
いや、それは唐突に裏返ったわけではない。その直前までに、ゆっくりじっくりと変貌しつつあったのだ。
痛みから悦びへと。
違和感から快感へと。

「あっ!ああっ、あ、あ、あ、あ」

仰向けにされて、正常位の姿勢から抽送される擬似男根は、もはやチハヤの心を支配される悦びで満たしてくれる愛しく大切なモノだった。
ツカサはくすくすと笑い、ゆっくりと大きく腰を前後に動かした。

「この感覚に慣れなさい。クリームを使ってるから大丈夫だと思うけど痛かったら言ってね」
「はっ、ぁっ!はいっ、あふっ、だい、じょうぶっ」
「そう?ならいいけど。もしかして気持ちいいのかな?どこが気持ちいいの?」

ツカサはギリギリまで引き抜いて密着するまで押し込む。
ゆったりとした快楽に包まれたチハヤは、ぎゅうっとシーツを握りしめる。

「はぁっ、あっ、いっ、入り口っ、もっ、なかっ、もっ、ぅんんっ、っはぁっ!」

「あれれ、チハヤにとって――ここは入り口なのね?」

ツカサが大きく動いて中を擦り、そして、一気に突き刺す!

「ふあっ!あっ」
「返事も出来ないくらいに気持ちいいんだ〜。ふふっ、これならチハヤの躾のも早く済みそうだね」
「あっ、は、はずっ、か、」

チハヤが答えた瞬間、ずんっ、と奥深くまで満たしてリズムが変わった。

「しぃんっ!あっ!あっ!あぁっ!それっ!あっ!だめっ!」

早く浅い突き込みが数回繰り返され、一度だけ深く侵入してくる。
かと思えば体ごとチハヤの上に圧し掛かり、結合部を密着させたまま体から下りる動きで擬似男根をうねらせ、ゆっくり引き抜く。
そして、力強く腰を打ち付け、ぴたぴたと柔らかい肉がぶつかりあう音を響かせる。

「うああっ!ああっ!やっ!だめっ!あああっ!あああっ!あああっ!」

チハヤは、ツカサが生み出した悦びの渦に巻き込まれていた。

「ふふっ、どうかな?チンチン弄るよりもずっといいでしょ?」

激しくゆさぶられながら、チハヤは答えようとした。
しかし言葉にならない。

「いああっ!ああっ!ふうぅっ!いっ!ぃんんっ!」

目を閉じ、両手を固く握り締めて何度も頷く。
チハヤは激しく突き上げられる悦びに目覚めてしまった。
ツカサに太股をなでられて仰け反り、はだけた胸元から指先で乳首を擦られて悲鳴の様な嬌声をあげる。
単純な射精で得られる絶頂を超えた、翻弄される悦び。
愛情が体内を擦り上げ、チハヤを絶頂の渦に放り込む。
言葉は要らなかった。
抱きしめられる温もりと貫く太さが価値観の全てを壊し、今やチハヤはそれしか考えられなかった。
いつしか腕はツカサの首に絡みつき、足を大きく開いて全身で迎え入れている。

「いいっ!ああっ!あんっ!つかさくん!もっと!ああっ、もっとぉっ!」

叫ぶ口からは飲み込めなくなった唾液が涎となって溢れ、快感に歪んだ顔を左右に振ってはベッドを濡らした。

「こぉんなに足開いちゃって可愛い。ねえ、ちはや。後ろだけでイクとどうなるか知ってる?女になって二度と戻れないらしいよ。試してみよっか?」
「ああっ!はぁっ!つかさくんっ!いいっ!いいのっ!つかさくんっ!」
「くすくすっ、それどころじゃないって?知らないよ?」

ツカサはショーツの前部を引っ張ってチハヤのペニスを先端だけ出す。

「くすっ。女になっちゃいな」

体を起こして細かく早い突き上げを開始した。
小さめのショーツは遊びがない。
ピンと張ったようなゴムが、擬似男根の出入りに合わせてチハヤのペニスを刺激した。

「ああああああっ!なにっ!なにこれ!すごい!すごいぃ!」
「ほら、イっていいよ!男の子よりもずっと気持ちいいから!イキなさい、チハヤ!」

命令に対しても、チハヤは従順になっていた。
内腿がビクビクと痙攣する。

「ああああっ!はひっ!はひぃぃ!あああっ!あああっ!もうだめっ!もうっ!もうっ!」

それだけ言うと、目を固く閉じて胸の前で腕を縮め、歯を食いしばった。

「あぃっ!――!――くっ!――っぃいぃ!くぅ!」

その直後。
大きく震えたチハヤは、自らの顔にかかるほどの勢いで精液を飛ばして果てた。

***

年が開けて三日。
少女は大きな鳥居の横で恋人を待っていた。
何かの御利益があるらしいこの神社は、緩やかなカーブを描く広い坂道の上にあり観光バスが入ってくる事もあるけれど、いわゆる隠れ名所らしく極端に混雑することは無い。だから参拝者の殆どが地元の人間である。
カーブの死角から現れた少年を確認して、少女は携帯を開いた。約束の時間にはまだ早い。

少女は少し悪戯がしたくなった。
幸いにも周りは同じ様な人待ちが多く、彼方此方から聞こえてくる新年の挨拶に「探した」というフレーズが追加されている。
随分近付いたのに彼は彼女が居る事に気付いていないようだ。
少女も気付かないふりを決め込み、少しだけ様子を窺おうと考えた。

少年は、少女の横を素通りして立ち止まり、鳥居を見上げて深呼吸をしていたが、一拍の後、くるっと勢い良く回って正対する。

「早かったじゃない」
「ちぇっ、気付いてたんだ」

少女──チハヤは頬を膨らませる。
ツカサはいつもの優しい笑顔を浮かべた。

「何年幼なじみをやってると思ってんだよ。まあ、確信が持てなかったから一旦通り過ぎてみたんだけど。でも驚いた。似合ってるよ。可愛いね」
「えへっ」

照れて笑うチハヤは、濃紺のブレザーにエンジのタイを締め、グレーのスカートを履いた、まるでミッション系お嬢様学校の制服みたいな出で立ちだ。

「ママがね、近所でも人が沢山来るから余所行きの格好にしなさいって」

――あの日以来、ツカサとチハヤのふたりは、お互いが入れ代わったまま生活を続けている。
元々、いとこ同士であり、顔だちも背格好もよく似ているせいか、互いの家族にさえバレていない。
もっとも、これはふたりの両親が共働きで、平日はほとんど家にいないという環境にあるおかげだろう。
とくに、つかさの両親は、遠方で赴任中なので実は数回しか顔を合わせていないのだ。
このまま徐々に互いの生活になじんでいけば、本来のつかさがチハヤとなり、ちはやがツカサとして周囲に認知されることも容易だろう。

「でも、良くバレないよね。毎日顔合わせてるんでしょ?」
「んとね……普段は朝ごはんのあとくらいかな?あ、ママには流石にバレちゃった」

ここで言う「ママ」とは無論、本来の千早の母親のことだ。

「え!?それで大丈夫なの?ボクに一言も連絡無しとは……って責めたい所だけど、言わなかったのは大変な状態だったからでしょ。大丈夫?」

心配そうに見つめられ、チハヤはくすっと笑った。

「うん、さすがに事情を聞かれた」
「だろうね。なのにお咎めなし?」
「うん、ママは「もしかして」と思ってたみたい。でも、翌日は一緒にお洋服を買いに行ったよ。むしろ、「今のちぃちゃんの方が素直で可愛い」って好評だったし」
「ヲイヲイ」

我が母親ながら何考えてんだか……と肩を落とすツカサの腕に、チハヤがしがみつく。

「詳しい事は初詣の後に話すね。行こっ」
「そうだね、行こっか」

ツカサが優しく微笑んだ。
もう一度ひだまりの様な笑顔を見つめ、チハヤは微笑みを返して鳥居を潜った。






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