変態紳士大悟
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シチュエーション


「ただいまー」

玄関のドアを開けると、キッチンのほうからママが姿を現す。

「あら大悟、その靴どうしたの?」

自分が履いていたボロボロのスニーカーを見て、ママが不思議そうに聞いてくる。

「あれ、本当にどうしたんだろ?」

見ているだけで匂いが漂ってくるような、汚らしいボロボロのスニーカー。
ずっと履いていた気がするけど、ママが初めて見たんだから私のじゃない。
なんか気持ち悪くなってきたので、すぐに捨ててしまうことに決めた。

「じゃ、コーンスープ作るから手伝ってね」
「はーい」

ママと2人で並んで、キッチンでお料理。
自分で作った大好物のコーンスープは、いつもよりおいしく感じられた。

朝。今日もいつも通り7時半に起きられた。
ベッドから飛び起き、パジャマから洋服に着替えて下の階に下りる。
ダイニングではパパがパンをかじり、ママがパパのお弁当の準備をしている。

「おはよう」
「おはよう、大悟」

なんてことはない、朝の挨拶。
今日はそれすらも新鮮に感じてしまう。
昨日の残りのコーンスープとパンで朝食を済ませて、歯を磨き髪を梳かして学校に行く準備をする。

「いってきまーす」

途中でみかちゃん、あっちゃんと合流して、いろいろおしゃべりしながら登校。
苦手な体育こそなかったけど、算数では抜き打ちの小テストがあったり、
給食には苦手なトマトが出たりと嫌なことだらけ。
それでも楽しく過ごせたのは、やっぱり親友のみかちゃん、あっちゃんのおかげかな。
授業も終わり、いつものように3人で下校していると、
公園のベンチに汚らしいジャージを着た、見るからに変質者にしか見えない小太りの人が座っていた。
その気持ち悪い小太りの人は、気持ち悪い笑いを浮かべつつ
「みかちゃーん、あっちゃーん」と2人の名前を呼びながら私たちのほうに近づいてくる。

「うわ、気持ち悪ぅ」
「この時間だから大丈夫だと思ったのに」

2人は目の前にいる小太りの人を、露骨な嫌悪感を示しながらにらみつける。

「ひどいよぅ……親友なのにぃ……ふひっ」

フケだらけでボサボサの髪の毛。汚らしいジャージ。
それとつりあわない、女の子が履くような小さいリボンのついたストラップシューズ。

「おほぅ今日は知らない天使ちゃんがいるよぅ!」

キモい人は携帯電話を取り出し、パシャパシャと写真を撮りだした。
知らない人に写真を撮られるという恐怖に、思わずその場に座り込んで泣き出してしまう。

「泣くとかわいくないよぅほふふふぅ」

写真を撮るのをやめ、キモい人はゆっくりと近づいてきて、じっとりと脂ぎった手で私の頬を撫でる。

「うほぅすべすべだぁ」

一歩も動けない。気がつくとみかちゃんもあっちゃんも既にいない。

「せっかくだから、スカートの中も見せてもらいましょうねぇ」

デヘヘと笑いながら、ヘンタイの手が私のスカートにかかった瞬間

「そこまでだ!」

気がつくとおまわりさんが目の前にいたヘンタイを手をひねりあげ、取り押さえる。

「ごめんね、大悟ちゃん」

逃げ出しておまわりさんを呼びに行ってたのを負い目に感じたのだろうか、
みかちゃんとあっちゃんが泣きながら謝ってきた。
私は、ただ「怖かったよぅ」と泣きながら彼女たちに抱きつくしかできなかった。

後で聞いたら、あの変質者はこの辺でも有名なロリコンで、
自宅から押収されたパソコンや本棚にはその手の写真でいっぱいだったとか。
でも警察の人が1つだけ不思議がっていたことがあった。
自宅から押収した写真集の1冊から検出されたDNAが、何度検査しても荒木由佳

――私を襲おうとした変質者の名前――と一致しないそうなのだ。

それでも、私を襲おうとしたことには変わりなく、このまま裁判になるのは間違いないとか。
やっぱり公立はダメね。とパパとママは、来年私立中学の受験を薦めてきた。
どうせ受験するなら名門のほうがいいだろうと、白薔薇女学院の資料を取り寄せるママ。
その両親の期待に答えるため、私は一段と勉強に励むことにした。

でも……

「どうしたの、大ちゃん?」

体育の前、ボーっとみか様の着替えを見つめていた私に、あっちゃんが声をかけてくる。

「なんか、ちょっと目が怖かったよ?」

なんでみかちゃんの着替えにあんなに惹かれたのだろうか。
なんか「大事なこと」を忘れているんじゃないか、そんな思いが心の中でぐるぐると渦を巻く。
でも、その嫌な気持ちを振り払い、2人に最高の笑顔を見せるのだった。

「ほふぅ、大丈夫だよぅ。あっちゃん、みか様ぁ」






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