そして日常な非日常へ(エロスパート)
シチュエーション


「美輝さん、ちょっとゴメン」

部屋の前まで来てドアを開けたところで、「和貴」は姿勢を変えて、右腕を「美輝」の両脇に通し、チャコールグレーのストッキングに包まれた脚に左腕をかけると、それを払うようにして、抱き上げる。いわゆる「お姫様抱っこ」の姿勢だ。
思った以上に「美輝」の体重は軽く、長時間はムリだが、多少の見栄を張ることはできそうだった。

「あ!か、和貴くん……」

さすがに驚いたのか「美輝」の酔いも少し醒めたようだが、それでも「彼女」は抵抗しなかった。むしろ、嬉しそうに「彼」の首に腕をまわしている。
「和貴」は「美輝」を抱いたまま、部屋の入口を通る。ドアは自動ロックなので、施錠を気にする必要はない。
「和貴」は、リビングに来ても「美輝」を降ろさず、そのままベッドルームまで運ぶ。そして、「美輝」を、ベッドの上にそっと降ろした。

「う……かずき、くん」

頭に血が回ったせいか、それまで以上に赤い顔で「美輝」はベッドの上で身じろぎする。

「あつい……の」

酔った勢いも手伝って、「彼女」が自ら誘うようにワンピースのボタンを外すと、胸元からチラリとブラジャーのラインが覗き見える。

「美輝!」

しどけなく乱れた「美輝」の格好に興奮を抑えきれなくなった「和貴」は、そのまま「彼女」に覆いかぶさった。気持ちを確かめるようにゆっくりと唇を奪う。「美輝」の唇も、それに応えていた。
お互いの唇が重なり求め合う中、「和貴」の舌が口の中に入ってきたときも、「美輝」にはもう、なんのためらいも尻込みもなかった。
「和貴」は、右手を「美輝」のドレスのすそへと這わせ、ストッキングに包まれた脚を愛撫し始める。
その一方で、左手で「美輝」の髪を撫でつつ、唇を頬の上に走らせ、耳たぶを軽く噛み、さらにうなじをチロチロと舐める。
「美輝」はもう、それだけで耐えられず、体をのけぞらせて声をあげていた。自らの耳に届くその声は、まごうことなく、発情した「雌」の声だった。
「和貴」の唇は、さらに位置を変え、鎖骨の辺りに舌を這わせる。同時に、右手は「美輝」のまろやかな尻や太腿などを優しく揉みしだき、左手は露わになったブラジャー越しに乳首をつまみ、刺激する。
すでに「美輝」の口からは、意味を為さない喘ぎしか漏れ出てこない。かろうじて時折「和貴」の名前を切なげに呼んでいるのが聞こえる程度だ。

執拗に「女の弱い場所」を攻めたてた後、さらには「和貴」は肌蹴た「美輝」の胸元からブラジャーをズラし、可憐なその桃色の蕾を露出させる。
そして、左手で片方の乳首をいらいつつ、舌先で逆の乳首を念入りに愛撫する。

「やっ……かず…く、ん……やめっ…て……あっ、あっ……あぅっ!」

それだけで、どうやら「美輝」は軽くイッてしまったようだ。
無論、それで終わりではない。
「和貴」は「美輝」のスカートをめくりあげ、履いているレースのショーツに指をかけ、ずり下ろす。
こうなることを予想、いや期待していたのか、今日の「美輝」はパンストではなくガーター&ストッキングなので下着を脱がせるのも楽だった。
ショーツの下には、「美輝」の秘部が隠されていた。
股間には、「彼女」の本来の性別を表す突起と球体がついているのだが、不思議なことに、これだけ感じているにも関わらず、そちらはほとんど堅くなっていない。
しかし……性器とアナルのあいだ、嚢部分の付け根のすぐ下あたりが、ヌルヌルとした液体で濡れているのだ。無論、カウパー腺液──いわゆる「先走り」ではない。

「ふふふ、やっぱり。ビショビショだ」
「あぁ……み、見ないで……」
「だーめ。美輝さんのこんな可愛いトコロ見れるのは、僕だけなんだから」

悪戯っ子のように笑うと、「和貴」は何もないのに液体が湧きだしていると思しき場所をペロリと舐め上げた。

「くひィンッ!!!」

それだけで、「美輝」の快楽のボルテージがMAX付近まで跳ねあがる。

「感度も良好っと」

「美輝」が何とか息を整えようとしている隙に「和貴」はスラックスとボクサーパンツを脱ぐ。
一見したところ、その股間の黒々とした茂みには、何もないように見える。だが……。

(あぁ……ナニか、ある!)

本能的に、「美輝」は目に見えないソレの存在に気づいたようだった。

「やっぱり、「美輝」さんにもわかるんだね。うん、コレが僕のモノだよ」

「和貴」が右手でソレをサッと扱くと、透明な液が「何もないはずの」場所から滲みだしているのが、「美輝」にはわかった。

(あれって……ペニス?)

信じ難いその事実を、快楽に蕩けた「美輝」の脳が理解しきる前に、「和貴」が「美輝」の下肢を大きく広げて、ソレを「彼女」の「穴」にあてがい、押し付ける。
ソレの先端から出た液と「美輝」中から湧き出る液とがヌチャリと混ざり合い、「目に見えないのに確かにある」熱い肉の先が、「美輝」の「存在しない膣口」を探り当て、押し込まれる。
ゆっくりと、「和貴」はその体重を「美輝」の中に向かってかけてくる。

「ああぁぁぁーーーっっ!う、ウソ!?」

何かが自分の体内(なか)に入ってくる感触に戸惑い、ほんの一瞬我に返った和貴だったが……。

「すごい……美輝さんの膣内(なか)、すごく熱いよ」

耳元でささやきながら、ゆっくりと「和貴」がペニスを押し進めていくと、コツンと「美輝」の奥にたどり着いた。
その瞬間、「和貴」の「男性自身」全部が「美輝」の「女性自身」にちょうどぴったり収まったのだ。

「はひィ!」
「ほら、美輝さん、全部入っちゃったよ?わかる?」
「うん……うんッ!」

例えようもない「充足感」、恋人との「一体感」に、たちまち「美輝」としての意識が強く喚起される。

「来て、和貴くん!」

下腹部から全身へと広がる快感に「美輝」は、知らず知らずそう叫んでいた。

「ははっ……うん、もちろん、もっと気持ちよくさせてあげるよ、美輝さん」

「和貴」の体がリズミカルな抽送を開始する。その動きによって「美輝」は自分が満たされるのを感じていた。
激しく、けれど決して荒々しくはない、体内を断続的に突き上げるその感覚に、「美輝」はいつの間にか涙を流していた。
けっして嫌だったからではない。むしろ逆だ。

(あぁ……わたしは愛されてる!)

愛する「男」に、「美輝」は犯され、貫かれていた。「美輝」のすべてが「彼」のもので、同時に「和貴」のすべてが「彼女」のものだった

「美輝さん……いいよ……すごくいい……もう、イきそう………中に出しちゃってもいい?」
「んあっ……あ、いい……いいわ!ああっ……そのまま出して……ああっ!」

もはや自分が何を言ってるのかすら、「美輝」にはわかっていない。
「和貴」の腰の動きが最高潮に達し、「美輝」もまた、「和貴」のペニスがもたらす刺激にすっかり染まり、絶頂に達しようとしていた。

「いくっ……美輝さんの中でイクっ」
「ああっ……あっ!あっ!ああ、ああぁぁぁぁーーーーーーッ!」

──どぴゅっ!びゅっ!びゅくっ!

「美輝」の「体内」に、「和貴」は「目に見えないペニス」を通じて大量の精液を放つ。
ほぼ同時に、ないはずの「美輝」の「膣」が、ぎゅっと収縮し、自らを埋めたペニスから最後の一滴まで絞りださんとばかりに締め上げる。

「あっ、ああんっ……ひぁぁぁぁーーーっ!」

噴き出した熱い液体が「胎内」を満たすのを感じるとともに、体全体をわしづかみするようなオルガスムが「美輝」の全身を貫き、その感覚は「彼女」の意識を真っ白に染め上げた。
その夜、「美輝」は幾度となく「和貴」の腕の中で、絶頂を極めることとなったのだった。






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