シチュエーション
☆あくと・ふぁいぶ『ゆううえっと・ゆあべっど』 大きな大きなプール。 浮き輪に乗ってたゆたう。 明るく差し込む日差しに波打つ水音だけの世界。 「やっほ〜、結愛ちゃん」 黄色い何かが横を走り抜けて行った。 「(ああ、ブッキーか)」 みなもはわずかに揺れる。 「悠二おじちゃん、かわいい」 良く知る女の子。 「(結愛ちゃんだ)」 微かに波打つ。 「悠二、結愛にあまり変な遊びさせないで」 裸の女性。 「(姉さん?何で裸?)」 ざわめく波音。 『お前のその恰好は絶対変態だきゅん』 たれ耳ウサギのぬいぐるみ。 「(うるせえ、俺の恰好がなんだって…)」 白とサックスのパステルカラーの女児用水着。 リボンとフリルで飾られたスカート付きのワンピースタイプのもの。 「(うわ、なんだこの格好!?)」 波は激しさを増し嵐となる。 「わーい、変態だ」 「悠二おじちゃんは変態だ〜」 「変態!結愛に近付かないで」 『変態だきゅん』 渦巻く水面が全てを飲み込む。 「(く、苦しい…)」 強い流れに暗い水底へ奔流されていく。 「(俺こんな恰好で死ぬのか?) もがく動作も無力に、光は遠ざかる。 そして深淵へと落ちて行く・・・。 ・・・ 「うあぁぁっ!!」 悠二は飛び起きる。 ここは結愛の部屋の結愛のベッドだ。 別に忍び込んだ訳ではなく、寝ぼけて間違えた訳でもない。 今は悠二のベッドである。 なぜなら悠二は存在を入れ替えられ、結愛と言う少女の立場になっているからだ。 「はぁはぁ、変な夢見た」 鼓動が激しく胸を打ち、身体に冷や汗伝う。 最悪の寝起きだ。 「まったく、全身汗だくだぜ」 本当にぐっしょりだ。ぐっしょり。 「…ん?にしてもなんか……」 下半身の不快感を感じ布団をめくって見て、悠二の血の気が引いた。 「こ、これって…」 独特の臭い、下半身からベッドシーツに広がる染み。 それは間違いなくおねしょであった。 そしてタイミングが悪い事に部屋のドアが開かれる。 「結愛?大きい声出してどうしたの」 結愛の母親の真依だ。 「あ、あの(見られた。姉さんにおねしょを見られた)」 動揺と焦燥感で呂律が回っていない。 目尻からは涙がにじみ、こぼれだしている。 真依は娘の行動の原因に直ぐに気が付いた。 「あら、結愛、失敗しちゃったのね」 娘がおねしょをするなどもうずっと無かったのだが、まだ小さいのだからそう言う事もあるかも知れない。 一年生になってから一人で寝れる様になったりとずいぶん成長したと思っていたが、まだまだ幼いのは事実。 娘も動揺している様なので、ここは怒らず注意を促すに止めるのが定石だ。 「大丈夫よ結愛。さあ、早く着替えましょ」 真依は優しく語りかけた。 その言葉に悠二は救われた様な気分となる。 やはり、姉は優しい。 「ママ、ごめんなさい」 ベッドから出て、目を伏せもじもじと謝る姿は子供そのものだ。 「さあ、お風呂場にいってきれいにしなきゃね」 真依は悠二の頭にそって手を置き撫でると行動を促す。 「うん」 悠二は素直に従い、真依と一緒にお風呂場へと移動した。 歩くたびに濡れたショーツとパジャマが気持ち悪い。 脱衣所で濡れた衣類を脱ぐと悠二は頭にシャワーキャップを被せてもらい、 浴室で真依に身体を丁寧に洗ってもらった。 「ママ、ありがとう」 「今度は気を付けるのよ」 身体を冷やすからと言われ、シャワーを浴び続けている間に着替えも用意してくれていた。 「少しお姉さんな感じのコーデにしてみたの」 用意されていたのは、ピンクの花柄シフォンワンピースにアイボリーのロングスリーブボレロ、 黒い無地のオーバーニーソックスだった。 ショーツもコットンではあるが股上の深いものではなく、一般的なデザインに近いものだ。 少し手伝ってもらいつつそれらを身につけると、 ブラシで髪を整えてもらい小さなリボンのシンプルなカチューシャを付けてもらった。 「はい、出来上がり。これでお姉さんだからもう大丈夫よね」 「うん、ママ」 真依は娘が何時までもおねしょを気に病まない様にと、わざとお姉さんぽい服を用意した様だ。 そう言う意図があるとも考えずに悠二は洗面台の鏡に姿を映し、嬉しそうな様子だった。 その女装の青年の姿は異様なはずだが、 立ち振る舞いがまるで幼い女の子のそれで何故かだんだんと違和感が無くなって来ている。 真依と一緒にダイニングへ行くと結愛の父親がテーブルに付いていた。 悠二にとって義理の兄、真依の幼馴染でもあり姉が居た頃は良く家にも来ていた。 真依と同い年で、職場ではプロジェクトチームのチーフを任せられており、 叩き上げでキャリアにのるだろうと噂されている有望株らしい。 姉が家に結愛を連れて遊びに来た際に、悠二が散々聞かされた話だ。 「おはよう、結愛」 「パパ、おはよう」 知らないふりを装っているが、おねしょの事はきっと解かっているだろう。 問いただしたりしないのは結愛を一人の人間として捉えデリカシーに配慮してか。 ただ、朝食を食べ終えた後に食器を下げにキッチンに行った際、 父親は真依におねしょについて何やら聞いていた様だったが、断片的に聞えたのは 「今回は怒らなくていいのか?」 「動揺して反省してるみたいだから」 「前はお尻を叩くまでしたからじゃないか?」 「あれは結愛が嘘をついて隠そうとしたから、私も小さい時は叩かれたことある」 などと言った内容だった。 少し間違えば自分も尻叩きをされていたかと思うと、 悠二は身震いし尿意を感じて慌ててトイレに入ったのだった。 ☆あくと・しっくす『ぷらいまりー・すくーる』 「結愛、恋奈(れんな)ちゃん迎えに来てるわよ」 「は〜い、今行くね」 真依に呼ばれて玄関を出ると、そこには高学年の女の子と他にも数人の女子児童がいた。 「おはよ〜、結愛ちゃん」 「おはよ〜」 朝は近所の女の子同士で一緒に登校していると悠二は聞いた事がある。 なんでも、女の子が一人で登校していると男子児童がちょっかいを掛けて来て意地悪をされるのだと言う。 先生に注意をされても繰り返すので子供なりに考え集団登校の様になったようだ。 悠二はこの春から2年生になった結愛が自分より下の子が出来たのを喜んで話していたのを思い出す。 「今日の結愛ちゃんの服いつもと感じ違うね」 「お出掛け用って言うかお姉さんな感じ?」 「結愛ちゃん似合ってる」 さっそく服装をほめられ、嬉しくなる。 「これね、ママがコーデしてくれたの」 「結愛ちゃんのお母さんセンス良いし綺麗だし、いいなぁ」 真依の事もほめられ、ますます嬉しくなりすっかりご機嫌状態だ。 女児に囲まれて登校なんてロリコンの悠二にして見れば、それだけでテンションが上がるはずなのだが、 今の悠二はそんな事とは別にすっかり結愛として浮かれている状態だ。 少女の集団の中で身体の大きさが目立つ悠二だが、その事を除けばすっかり女子児童として馴染んでいる。 学校に着いて皆それぞれの教室に別れた後もその気分は変わらず、 知らないはずの結愛の靴箱や教室を迷わなかったのを不思議に思う事は無かった。 教室ではクラスメイトの話の輪に直ぐ加わる。 「みんな、おはよう」 「おはよ〜、結愛ちゃん」 「あ〜、今日の服違くない?」 「ほんとだ〜、なんかカッコイイ」 「えへへ、ママがコーデしてくれたお姉さん服なんだよ」 また服の事をほめられて嬉しがる悠二。 朝の話題は服装の話しで持ちきりとなった。 そうこうしているうちに先生がやってきて朝の会が行われた後、いよいよ授業が始まる。 悠二もこの学校の出身なので懐かしい感じもするが、またこうして授業を受ける事になるとは不思議な気もする。 朝の会での今月の歌でも昔は歌うのは好きではなかったはずだが、やって見ると楽しいものだった。 そのままの気分で意気揚々と授業を受ける。 一時間目は算数だ。 掛け算の九々を覚えて発表すると言った内容だが、悠二にはあまりにも簡単すぎる内容に得意になっていたが、 何故か3の段の途中で度忘れしてしまい何度もやり直しをしてしまった。 2時間目の国語では作文だったのだが、 作文は後に残るものだから結愛ちゃんに合せて書かないと後で変に思われると考え、 わざと拙い文と平仮名を多くして書こうとした所、わざとでは無く手がなかなか進まず、 時間内に書けず残った分は宿題となったりもした。 30分休みに入った時点で何だか一気に疲れが来た感じだ。 「ねえ結愛ちゃん、おトイレ行ってこよ」 悠二が少しくさっていると一人の女子が声を掛けてきた、 今朝一緒に登校したグループにもいた冬坂耶智香(とうさか やちか)と言う名の娘だ。 確か「やっちん」とみんなに呼ばれていた。 「うん」 返事と共に席を立つ。 結愛と耶智香は仲が良い友達の様で、授業が終わると直ぐに悠二の所に来て話し掛けて来ていた。 大人し目に見え、切りそろえられた黒髪のロングストレートヘアが人形の様だ。 悠二はそんな耶智香をちょっとゴスっぽい服が似合いそうだなと考え、 その姿を想像して密かに萌えを堪能していたのはロリコンの性と言うものである。 女子は連れ立ってトイレに行く事が多いが、やはりトイレはそれなりに混んでいた。 「(こ、ここが女子トイレ。禁断の聖域)」 女子トイレで悠二は少々興奮気味になっていた。 大学生にもなって女子トイレで興奮すると言うのも何なのだが、悠二の場合ここは禁断の領域である。 エロい事を考えている訳ではないが、なにせ女子児童用のトイレに入る機会などまず無い。 ロリコン的には気になるが、それを押し知るすべなど普通の大学生にある訳が無いからだ。 部外者に対して事のほか警戒が厳しい昨今、 女子トイレに男が入ろうものなら間違いなく連行される事は確実、 しかも実際に児童が使用している所に入って行くなんて事があれば前科ものである。 同じ女子児童としてだが、そこに堂々と居るのだ。 ちょっとした好奇心の充足と背徳感と言うやつだ。 「結愛ちゃん?もしかして我慢してる?」 そんな様子をみて耶智香は変に思ったようだ。 「あ、いや、何でも無いよ。大丈夫だよ、やっちん」 「へんなの」 「あはは」 笑ってごまかしておいた。 順番が回って来て個室に入ったのだが、 悠二の記憶と違ってトイレは新しいものに変えられていて少々驚いた。 悠二の頃は和式の水洗だったはずだが、洋式になっておりウォッシュレットまでついている。 たった7年で変わるものだと思いつつワンピースをめくり上げ、ショーツを下すとトイレに腰かけた。 パネルを見ると音姫の機能までついている様でやけに至れり尽くせりだと更に感慨に思う。 そんな事を考えていた時だった。 空間の一部に靄がかかり、球体に収縮したかと思うと「ボンッ!」と言う音が聞こえた。 前に見た事のある現象。 「んな?ペルペル??」 そこに現れたのは悠二の言う所のたれ耳ウサギのぬいぐるみ、ペルペルだった。 『変態ロリコン、元気でやってるかきゅん?』 相変わらずの憎まれ口。 「変態は余計だ」 『女の子と一緒にトイレに入って下半身出してる奴は変態に決まってるきゅん。 女の子が隣で座っているのを音だけで想像して興奮しているのだきゅん?間違いなく変態だきゅん』 ここで反論したいが、あまり声を出すと回りに変に思われる。 なので小さな声で最大限の反論をする事にした。 「ロリコンは一つの愛情の形だ。それを歪めた表現で貶める事は許さない」 『アホだきゅん』 あっさり流された。 『そんな事より、少し困った事態にったんだきゅん』 「ちっ、何がだよ」 『結愛ちゃんが消えてしまうかもしれないんだきゅん』 「なに〜っ!?」 告げられる言葉に驚愕し、今度こそ悠二は大声を出した。 〜とぅびーこんてにゅーど〜 SS一覧に戻る メインページに戻る |