シチュエーション
!!百合警報!! キンコン、と玄関のベルが鳴る。あたしは反射的にセキュリティ・パネルを 見たが、目の焦点があわずに苦戦する。いや、誰かは分かっているんだけど。 あたしが反応する前に、司書ちゃんがさっとパネルの前に立った。 「はい、どちらさまでしょうか?私はこちらにお住まいの先輩を、お見舞い に来た者です。先輩は酷い風邪をひいておられますので、お見舞い以外でした ら今日は遠慮いただいたほうがいいかもしれません」 なによあの子、ボソボソとしか喋れないのかと思ったら、ぜんぜん普通にお 話できる子なんじゃない。 「これはどうも、はじめまして。僕もお見舞いに来たんだが、部屋の鍵を開け てもらっていいかな?彼女、歩くのも辛いと言ってたから」 水泳部はおどおどしているが、司書ちゃんは一瞬の躊躇もなく「開錠」のボ タンを押した。ああ。あああああ。こんな展開って。 司書ちゃんがにこにこしながらベッドに戻ってきて、あたしの上に毛布をか ける。毛布で隠したところで、両手が縛り上げられているのは一目瞭然だし、 目ざとい彼であれば床に落ちているあたしのパジャマにも気づくだろう。 「……よかったですね先輩、ちゃんと男の人のアレでイケますよ」 「そそそそれより、今の男の人、あの、金髪だったようなッ」 一生懸命呼吸を整えようとしていたあたしは、ゆっくりと首を横に振った。 ええい、もうどうとでもなれ。 玄関の扉が閉まり、「邪魔するよ」という声にあわせて、靴を脱ぐ音がする。 ガサガサいっているのは花束か何かだろう。一見してフランクだが、その実、 彼はとてもマメな男だ。悪く言えば神経質。もとをただせば慎重ということだ ろうけど。 廊下をぺたぺたと歩く音が聞こえ、そして寝室のドアがノックされた。 「入っていいかな?」 司書ちゃんが小走りでドアに駆け寄っていって、そっとノブを回す。 「どうぞ、先輩がお待ちです」 彼は、部屋に入るなり、だいたいの状況を理解したようだ。私を魅了してや まぬ知的な瞳にはサディスティックな光が宿り、整った茶色の口ひげの下には 愉快そうな笑みが浮かんでいる。 「日本では、風邪をひいたら汗をたくさんかくといい、と言います。私の読ん だ本でも、アイルランドの女性が同じことを主張していました。私たちには、 先輩の能力がどうしても必要です。早く快復していただくためにも、たくさん 汗をかいてもらうことにしました」 「ああ、まったく君の言うとおりだね、小さなレディ。僕の国でも、祖母が同 じことを言っていた。祖母はアイルランド移民だからね。もっとも、祖母は大 のバーボン党だったが」 短く刈り上げた彼の金髪には、若干白いものが混じっている。それでも、鍛 え上げられた身体はまるで年齢を感じさせない。司書ちゃんに花束を渡すと、 彼はつかつかとベッドサイドに歩み寄って、あたしの顔を覗き込んだ。 「具合はどうかな?安心しなさい、僕はちゃんとワクチンの注射を受けてい る。それに、普通の風邪にはかからない自信がある」 「馬鹿は風邪をひかないって言うわ」 頑張って憎まれ口を叩いてみるが、こんな状況で何を言っても実に虚しい。 「その説で言うと、君は年中風邪をひいていることになる。どれ、汗がひどそ うだな。様子を見せてもらうよ?」 彼はひざまずいて、もっともらしくあたしの額に手を当てた後、毛布の中に その手を突っ込んだ。あたしの秘所をすぐに探りあて、裂け目の中に指をねじ 込む。荒々しい愛撫に、あたしは息を詰まらせる。すぐに彼は手を引き抜くと、 ベッドランプに指をかざした。 「ほう、これはまた、たっぷりと汗をかいたようだね」 あたしは下唇を噛みしめて、顔を背ける。 「ふむ。ともあれ、まずは食事にしませんか、お嬢さん方。君も、少し食べな いことには薬が飲めないだろう。汗をかくのはそれからでもいい」 「喜んでお言葉に甘えさせていただきます」 「えええええと、ええと、ゴチになりますッ!」 「決定だ。中華でいいかな?」 あたしとしては、彼らに一刻も早く帰ってほしい。でも、もうあたしの意思 なんてこれっぽちの意味も持たなかった。 彼はコンプレックスに入っている高級中華からメニューを取り寄せ、適当に 注文を出した。生憎ソフトドリンクはお茶しかなく、和洋中問わずお茶が苦手 な水泳部は、冷蔵庫に入っていたスポドリを飲むことにするらしい。台所に行 った彼女はめざとくおかゆを見つけて、ベッドルームに持ってきた。 彼らはベッドルームで簡単な宴会をし、司書ちゃんはときおりおかゆを口に 含んでは、あたしに口移しで食べさせた。一応、抵抗してはみたが……。彼は そんなあたしの様子を楽しんでいるようだ。このオヤジは。もう。 とはいえ、おなかにある程度ものが入ると、眠気のほうが強くなってきた。 彼らの世間話が、頭の中でだんだん脈絡を失っていく。 「先輩ッ!まだ寝ちゃダメですッ!食後のお薬を飲まないとッ!」 あたしは朦朧としたまま、力なく頷いた。水泳部がベッドサイドの薬袋を見 つけ、中から抗生剤そのほかを取り分ける。が、そこで彼がちょいとその薬を つまみ上げた。 「薬は僕が飲ませよう。そこのまだ使ってない取り皿と、蓮華をひとつ取って くれるかな?」 そう言うと、彼は取り皿に錠剤を落とし、蓮華をつかって丁寧にすりつぶし ていく。彼のバカ力があってこその技だ。 「あれッ、先輩、錠剤が飲めないんでしたっけ?」 あたしは憮然として首を横に振る。彼が考えているのは、そんな優しげなこ とではない。絶対にない。案の定、薬をすりつぶし終わった彼は、箪笥の引き 出しをあけると、そこに隠してあった様々な道具から注射器を1本取り出した。 思わずため息がでる。 「あの、あたし、薬くらい普通に飲みたいんだけど」 「吸収はこっちのほうが早い」 「本当に?」 「と、思う」 あたしは目を閉じて覚悟を決める。後輩二人は、微妙にピンクがかってきた 雰囲気を敏感に察し、興味津々な観客を決め込んでいる。彼は取り皿にスポー ツドリンクを注いで薬を溶かすと、注射器で吸い上げた。 「ねえ、やっぱり絶対それ効率悪いってば」 「やってみなきゃわからん」 彼はあたしの上にかかっていた毛布を引き剥がすと、あたしの両足の間に割 って入ってきた。今更ながら恥ずかしさがこみ上げてくる。二人だけの場所で さえ、恥ずかしいのだ。それなのに、後輩の前でだなんて。 彼は注射器をあたしの秘所に差し込む。長時間放置されたそこは潤いを失っ ていて、細い注射器といえども若干の痛みがある。彼は注射器を奥まで押し込 むと、中の溶液をあたしの奥深くに注ぎ込んだ。 「なるほど、膣壁は吸収が良いといいますから、良い方法かも」 「……いいわけないでしょ」 あたしは唸るように言い返してみる。 「薬も飲んで、準備運動もできたところで、一汗かいてみようか。お嬢さん方、 まずはあなた方が何をしていたのか教えてもらいたいのだけれど、いいかな?」 「喜んで」 言うが早いか、司書ちゃんは彼の横をすり抜け、あたしの秘裂にむしゃぶり ついた。細やかな愛撫が、じんわりとあたしの神経を暖めていく。水泳部はま たしてもつま先を口に含むと、ねっとりと舐めまわし始めた。 さっきは彼女たちに見られているのが恥ずかしかったが、今度は彼にこんな ところを見られているのが堪らなく恥ずかしい。必死で声を殺そうとするが、 司書ちゃんはそんなあたしの我慢を敏感に読み取った。ふと立ち上がると、彼 が注文した老酒のボトルから直接一口含み、若干の時間をかけて飲み下す。 「だめ、だめよそんな、お願い、それダメだからっ」 あたしの哀願を心地よさそうな顔で聞き流しつつ、司書ちゃんはアルコール で潤った舌を、あたしの中に突き立てた。ややあってから、身体の中で別の熱 さが高まってくる。司書ちゃんはときおり老酒を口に含みながら、あたしの身 体の奥を舌で愛し続けた。快感と睡魔とアルコールが、高熱とハーモニーを奏 でながらあたしの理性を引き裂いていく。あたしは必死で踏みとどまろうとし たが――二人の執拗な責めに、我慢の限界が訪れた。 「あ、ああっ、い、いい、すご、いい、いいいっ!」 一度堰が切れてしまえば、どうにもならない。弱りきった体と心は、怒涛の ような快楽に流されていった。 ……でも、電子レンジで調理した卵みたいになった脳が思考を停止する直前、 下半身から悦楽がすっと遠のく。絶え間なく足先から送り込まれ続けた蠱惑的 な刺激も途絶えた。あたしはかすむ視界の中で、笑みを浮かべた彼女たちがベ ッドサイドに並んで座っているのを見る。途絶えてしまった快楽を求めて体が 動こうとするが、もうそれすらままならない。 「先輩、やっぱりイクのは彼氏が相手ってのがいいですよねッ!」 誰だそんなこと言ったの。 気がつくと、両手が自由になっていた。司書ちゃんはあんなに固く結んでい たネクタイを、綺麗にほどいている。普段から縛られ慣れている子は一味違う。 どうでもいいことを考えていると、背後から彼に抱き上げられた。お姫様抱 っこというやつだ。彼の胸板の強さと温かさを感じ、反射的に唇を求めて目が さ迷う。ゼイゼイと、ふいごを鳴らすような自分の呼吸音をどこか遠くに聞き つつ、あたしは彼の体温に浸っていた。 でも彼は、あたしを抱えなおすと、両膝の後ろに手を回した。ぐっと力が込 められると、あたしの両足が開き、局部が露出する。曖昧な視界の向こうに後 輩二人が見え、あたしは絶望的な羞恥に打ちのめされた――が、それと同時に、 これまでになく秘所が潤い始めたのも感じる。 「想像通りだ、やっぱり君は他人に見られていたほうが燃えるんだよ」 耳元で彼の囁きが聞こえる。あたしは荒い息をつく以外に何もできなかった。 やがて、彼がベッドに腰を下ろす。そそりたつ怒張が、あたしの秘所に押し 当てられた。規格外のサイズだが、今は痛みよりも興奮と期待感のほうが高ま っている。 ゆっくりと、彼があたしの内部に入ってきた。身体が内側から押し広げられ ていく。あたしは時折咳き込みながら、ガタガタと震えていた。高熱による悪 寒ではなく、純粋な快楽があたしの脊髄を突き動かす。 そそり立った槍があたしの敏感な襞を擦り上げ、圧倒的な肉の塊が内臓を圧 迫する。最後に子宮の入り口をズドンと突き上げられると、目の前が真っ白に なりかけた。口の端から涎が垂れているのがわかるが、もうどうしようもない。 あたしは、一匹の、白痴のメスだった。 でもそんなあたしに、彼は絶望的な一言を囁く。 「さあ、イキたかったら、自分で腰を振ってごらん」 無理だ。そんなの無理だ。あたしはなんとか身体を動かそうとするが、全身 の関節が悲鳴を上げ、脳は平衡感覚を失っている。2・3回、なんとか動いて みたところで、完全に息があがる。 「――無理、お願い、無理、よ――お願い、意地悪、しないで……突いて、お 願い。強く、して、無茶苦茶に、して、いつもみたいに、ボロボロになるまで、 お願い、突いて、中に頂戴、お願い……」 「ダメだ。ちゃんと運動して、汗をかくのが今日の趣旨だからね」 「……ひ、どい……」 あたしは頑張って身体を持ち上げようとする。両手に力を入れると、肘と肩 が焼けるように痛い。足は痙攣を続けていて、まるで使い物にならない。ほと んど動けないまま、また全身から力が抜けた。彼が両手で乳房を握り、荒々し く締め上げる。あたしは悲鳴をあげたが、どうしても身体は動かなかった。 「仕方ないな。なら、いつものようにしてあげよう」 あたしは安堵のあまり、気を失いそうになる。だが彼は非情だった。 「お嬢さん、そこの引き出しに縄が入っているはずだ。彼女は、縛られないと イケないんでね。協力してもらえるかい?」 司書ちゃんが荒縄を見つけ出して、彼に手渡した。彼は手早くあたしの上半 身に縄を打つ。乳房が上下から締め上げられ、両手首が背中できつくくくられ た。首にまわした縄と手首の戒めが短いロープで結ばれて、あたしは自然に弓 なりの姿勢になる。 「さあ、できた。第二ラウンドといってみよう」 言うまでもなく、あたしはもうぴくりとも動けない。衰弱しきった身体に、 縄がもたらす酩酊感が、致命的な威力を発揮していた。あたしは細かく身体を 痙攣させる――というか勝手に痙攣する――のが限界で、ダラダラと涎を流し ながら低く呻き続けるだけだった。 「うーん、ダメみたいだな、君たちの先輩は」 あたしは遠くで彼の声を聞く。ずずっと身体がもちあげられ、その勢いであ たしはガクガクと快楽に震えたが、怒張が引き抜かれたとたん、ぐちゃぐちゃ になった身体はそれでも快感を求めて蠢こうとした。 「お願い――イカせて――イカせてよぅ――」 ベッドの上で、うわごとのように繰り返す。 「さて、どうするかね。場合によっては、僕は朝まで付き合うつもりだけど」 「……あの、よろしければ、私も」 「ええええッ。が、外泊許可まではッ。でででもッ」 「泊まっちゃおうよ。先輩の看病なんだから、寮母さんも許してくれるよ」 「それだッ!やっぱり賢いッ!」 「やれやれ。で、どうするんだい?」 司書ちゃんは、うっとりとした表情で、彼の巨大なペニスに手を伸ばした。 あたしの体液に塗れ、怪しく黒光りしているそれを、自分の頬に当てる。あた しは抗議の声を出そうとしたが、しわがれた囁きにしかならなかった。 「お嬢さんにはちょっと厳しくないかね?それに、さっきボーイフレンドが いると聞いたが?」 「大丈夫です。彼、新入生のマネージャーに手をだしてるの、知ってるんです から。あたしだけ我慢するなんて、不公平です」 「なんとも!身体は少女だけど、心は怖いくらいに女だね。君は?」 「ああああたしはッ。そのッ。かかか会長とはうまくやっていますのでッ」 「わかった。じゃあ君は指だけにしよう。それでどうかな?」 「経験、経験よ。なんだってそうでしょう?きっと、会長をもっと気持ちよ くさせてあげられるようになるから」 「うううううッ……わ、わかりましたッ。よろしくお願いしますッ!」 「いい返事だ。じゃあ、始めよう。まずはちっちゃな司書さんからだ」 彼は司書ちゃんを、完全にあたしと同じ形に縛り上げた。それだけであたし の嫉妬心が猛然と燃え上がる。司書ちゃんは完全に出来上がっていて、ショー ツを脱がされ、抱えあげられて、明らかに身体にフィットしていない巨大な肉 塊で貫かれると、日ごろの彼女からは想像すらできない大声で快楽を訴えた。 「先輩、ああ、見てますか、ああ、彼の、すごいっ。先輩が、うらやましいっ。 ああ、いいっ。ああ、もっと……もっと強くっ……!もっと早くっ……!」 「実に、君は欲が深いね。それなら、自分で動いてごらん」 けしかけられた司書ちゃんは、小さな身体をいっぱいに使って彼の分身をし ごきあげる。彼女の口からはとめどもなく甘い声が漏れ続けた。そして―― 「ああ、あああっ、いい、いい、イク、いっちゃう、あああっ、ああああああ ああああっ!は、ああ、また、またイク、イキます、あ、だめ、イクううう、 すご、すごいっ、あ、あ、あ、ナカ、ナカでいって、ナカでいってっ」 司書ちゃんは完全に切羽詰っているが、彼の表情や声からもだんだん余裕が 薄れてきている。 「いいの?僕はパイプカットしてないんだよ?それとも、ピル?」 「あ、あ、わた、しはっ、まだ、あ、せいり、きて、なく、てっ。あ、ああっ、 だめ、あ、あああっ、早く、あ、くださいっ、ダメ、壊れちゃうっ、壊れちゃ うっ、あ、すご、あ、そんなに、そんなにっ、あ、あうっ、ああああうっ!」 彼が下から猛然と突き上げ始めると、彼女は何度も何度も果て、そして胎内 で彼の精を一杯に受け止めた。だくだくと粘液を吐き出す男根を身体のなかに 納めたまま、司書ちゃんは荒い息をつく。 精魂尽きた司書ちゃんから分身を引き抜いた彼は、彼女をうつぶせに床に這 わせると、水泳部にも同じ姿勢をとるように言った。 四つんばいになった彼女の背後から、彼の太い指が入り込む。親友が犯され ているところを見て興奮していたのか、痛みを訴える様子はない。彼は容赦な く指の本数を増やし、激しく彼女の身体の内部をかき回した。 「ひ、ひいっ、そ、そんなにッ、あ、ああああッ、ちょ、ちょっと、ま、あ、 あ、ああッ、すご、あ、もうイクッ、もうイッちゃうッ、そん、はやすぎッ、 あ、ひ、ひぐッ、たすけ、や、やめ、やめ、あ、イク、イク、イクぅッ!」 がくりと彼女の肩が床に崩れる。だがそれで手を止める彼ではない。 「ひあッ、ひあッ、ゆるして、あ、ああッ、イク、イキますッ!イキますッ ッッ!あ、あ、んぁ、ん、は、はぅっ、はぅっ、はううううっッ」 水泳部が我を忘れて嬌声をあげているのを虚ろな目で見ていた司書ちゃんは、 やがて股間から白濁液を垂らしながら身体を起こすと、親友を指で激しく責め 続ける彼の前に跪いた。やや勢いを失っていた彼の息子を口に含むと、じゅぶ り、じゅぶりと淫猥な音を立ててしゃぶりっていく。 司書ちゃんの奉仕を受けたイチモツはみるみる太さと長さを取り戻し、すぐ に彼女はその一部を舌の手で愛撫することしかできなくなった。慣れた様子で 怒張を愛撫する彼女の姿は、あまりにも淫らだ。そうするうちに、我慢できな くなったのか、司書ちゃんは自分から水泳部の隣に並んでうつぶせ、悩ましげ に腰を振った。彼は苦笑いすると、片手で水泳部をいたぶりつつ、司書ちゃん の中に侵入する。激しいピストンが始まり、彼女の顔が喜悦に歪んだ。 二人の後輩が快楽の限界を極め、何度も絶頂を極め続けている傍らで、あた しは恥辱と嫉妬と高熱に苛まれながら、硬い戒めに自慰すら許されず、芋虫の ように身体をねじり続けていた――。 ――結局、彼はグダグダになったあたしたちをベッドに寝かしつけてから、 深夜のうちにタクシーで帰っていったようだ。あたしと司書ちゃんを縛ってい た縄は解かれ、元の場所にきちんと戻っていた。 あたしたちは朝6時にセットされた目覚ましの音に起こされ、水泳部は朝錬 に遅刻すると悟って大急ぎで飛び出していった。司書ちゃんは人が変わったよ うに(戻ったように、か)無口になって、玄関口でもじもじとしながら 「ごめんなさい」 と呟いて去っていった。ああ、もう。それだけで何もかもを許せて しまうくらい、可愛い。 たっぷりと汗をかいて、泥のように眠ったのが功を奏したのか、あたしはだ いぶ調子が良くなっていた。昼過ぎにはハウスキーパーのおばちゃんが顔を出 してくれて、あたしは彼女に手伝ってもらって全身を濡れタオルで拭いたり、 こまめに着替えを出してもらったりしながら、何もかも忘れて眠った。 水泳部と司書ちゃんは見事にあたしの風邪がうつって、それから3日ほど学 校を休むことになったが、五月祭の準備はなんとか瀬戸際で踏みとどまった。 前夜祭が始まろうという時間になって、残った仕事はごく僅か。あたしは生徒 会室の床にダンボールを敷いて爆睡している生徒会長以下数人を文字通り叩き 起こし、前夜祭に向かわせる。 がらんとなった生徒会室で、あたしはひとりPCの前に座って、コーヒーを飲 んでいた。毎年、あたしにとっての前夜祭の定位置だ。あたしの前の代の会計 長もずっとそうだったし、その後を継いだあたしも結局なんだかんだでここに 座って、校庭から聞こえてくるざわめきに耳を傾けている。 生徒会室のドアが開いて、中等部の制服を着た生徒が一人、入ってきた。司 書ちゃんだ。 司書ちゃんは気まずそうな表情になったが、目礼するとあたしの隣の席に座 って、PCを起動した。もちろん、何をするというわけじゃない。あたしも、先 代の会計長の隣で、同じようにしたものだ。 「……あの……本当に、申し訳ございません……でした」 顔を真っ赤に染めながら、司書ちゃんがボソボソと呟く。 「いいのよ。ストレスばっかりの仕事だもんね。それより、コーヒー飲む? お茶のほうがいい?老酒以外ならおごっちゃうわよ」 司書ちゃんの顔が一層真っ赤になる。あたしは意地悪な笑みを抑えることが できない。 と、そこに元気のいい足音が近づいてくるのが聞こえた。 「先輩ッ!てかあなたもッ!もう前夜祭始まってますよッ!さあ、早く 行きましょう!ここからじゃあ、点火式が見えませんよッ!折角のお祭り なんだから楽しまなきゃ、何やってきたんだかわかりませんッ!」 あたしたちは顔を見合わせ、苦笑する。彼女はあたしたちが席を立って校庭 に向かうことに同意しない限り、ここでがなり続けるだろう。 ――まあ、いいか。よくわからない伝統を守るなんて、感傷以外の何もので もない。むしろ、今回ばかりは彼女の方が正論だ。楽しまなくちゃ。楽しむた めに、あたしたちは全力を投じてきたんだから。 あたしたちはPCをシャットダウンして立ち上がると、校庭に向かった。少し ずつ、五月祭の歓声が近づいてくる。 (後編・完) SS一覧に戻る メインページに戻る |