おまらさま
シチュエーション


『○○県○○町に伝わる土着信仰「おまらさま」に関する調査報告の概要兼卒業論文中間報告』
報告者 ××大学人文学部人文学科四年 佐藤太郎 印
受領者 報告者所属ゼミ指導教授 柳田巌 印


 先年七月末より本年九月中旬までの一年二ヶ月弱間に実施した研究調査の概要報告を以下に記す。


一、調査対象
 一、「おまらさま」信仰


二、調査対象概要

 一、変形型の男根崇拝。集落内で最も雄大な男性器(判定基準については後述)を持つ男子を
「おまらさま」神の化身として崇め、これに性的特権を付与する風習。
化身を集落内の男子に限定しない点において、マレビト信仰との関連も見られる。


三、調査方法

 一、報告者は日本人男性の平均的ペニスサイズを大きく上回る男性器を有しているため、
これを活用し、報告者自身が○○町に滞在して「おまらさま」として活動した。


四、「おまらさま」の権利・義務・禁忌

 一、「おまらさま」の権利
  一、妊婦及び出産・死産等から一ヶ月以上を経ていない女子及び直系血族の女子を除く、
    初潮を迎えた閉経前の全ての女子との性交。女子の年齢や既婚未婚による制限はなし。
  二、「一」に該当する内の気に入った女子を同時に八人まで「妻」(専属の女性)に指定。

 二、「おまらさま」の義務
  一、一日につき一人以上の女子との性交。
  二、女子の体内(口腔または膣)での射精。

 三、「おまらさま」の禁忌
  一、初潮前の少女または閉経後の婦人並びに妊婦及び出産・死産等から一ヶ月を経ていない女子と直系血族の女子との性交。
  二、女子の体内以外での射精。
  三、女子が反抗した場合を除き、女子への暴力。なお、たとえ反抗があった場合でも、
    出産・育児に支障をきたす怪我を負わせてはならない。
  四、以上の三つの禁忌の内、いずれか一つでも犯した者は、祟り神として調伏する
    (「調伏」とは殺害、暴行、追放等を指す)。

 備考
  本項を概観するに、「おまらさま」信仰は「集落の繁栄」と
  「優れた血筋の保存・拡大」を主眼に置いたものであることが推察される。


五、「おまらさま」信仰における女子の権利・義務・禁忌

 一、女子の権利
  一、暴力からの保護。
  二、出産・育児に関する支援享受。
  三、「おまらさま」以外の男子との自由な性交(ある種の母系部族に見られる女性上位の乱婚に類似)。
    ただしこれは「妻」となった時に消滅し、「妻」をやめた時に復活する。

 二、女子の義務
  一、「おまらさま」との性交。
  二、集落内での定住。
  三、「おまらさま」に指定された場合に「妻」となる。

 三、女子の禁忌
  一、「おまらさま」への反抗。
  二、初潮前、閉経後、妊娠中、出産・死産後一ヶ月以内の性交。
  三、集落外への移住。

 備考
  一、本項を概観するに、○○地域の風習における男女の権利は、一概に男尊女卑とも女尊男卑とも断言し得ない。
    本項を見るに女子は子を産むための存在として財産的に見做されているが、かと言って、
    男子が女子に対して相対的な優遇を受けている印象もない。むしろ、性的な事柄と儀式内容に限って言えば、
    男子は「おまらさま」と女子が作る関係の外に置かれている。ここから推察するに、
    「おまらさま」となれなかった男子は単なる労働力及び「おまらさま」の予備として
    認識されているとするのが妥当であろうか。
  二、「おまらさま」である報告者との性交を拒否する女子が十代から二十代の若年層に比較的多く見られたこと、
    一般社会通念上妥当とされる婚姻・恋愛関係が存在していることなどから、
    この風習は昭和後期の段階で半ば形骸化していたことが窺える。


六、「おまらさま」の選定

 一、「おまらさま」の選定は次の手順で行われる。
  一、所定の公衆浴場の所定の場所で所定の動作を伴って入浴する。
    この際、交代制で常時待機している町の古老が志願者の男性器を検分し、事前審査を行う。
    ここでは包皮の有無、男性器及び睾丸のサイズを審査する。
  二、古老の審査に合格した者は、「おまらさま」専用の住居に案内され、
    「おぼぼ」と呼ばれる女子との性交を行う。「おぼぼ」は当代の「おまらさま」の「妻」に
    指定されかつ子を出産した経験のある女子から選ばれ、当代の「おまらさま」と志願者の比較を行い、
    より優れた方を「おまらさま」として認定する。審査は男性器のサイズもそうだが、
    性交の技倆、射精の量及び回数等、「男性としての性的能力全般」を試験する形で行われる。
    なお、「おぼぼ」の該当者が存在しない場合は、古老の審査のみで仮の認定が行われ、
    その後の成果によって最終的な合否が決定される。

 備考
  一、いずれの段階であっても、審査に不合格となった者は、神を騙った罪人として棒で打たれ、
    町民であればそのまま解放、異邦人であれば町外に追放となる。
  二、報告者の男性器及び性的能力に関する詳細は別に語る。
  三、公衆浴場での審査の際、浴場で観察した男性達は全体的に巨根かつ非包茎の傾向が強かった。
    統計学的な有効数・有効比率に達しているとは言いがたいため、学術的根拠を欠いた推測であるが、
    「おまらさま」信仰に見られる巨根珍重の風習により、
    地域内の短小及び包茎の形質が淘汰されたのではないかと思われる。
  四、本項六・一・二における「おまらさま」の交代は、
    フレイザー『金枝篇』における「王の交代」との類似性を指摘可能である。


七、報告者の「おまらさま」としての活動成果

 一、性交した女子の人数・内訳
  一、人数――十二歳から四十三歳までの七百九十七名(同じ女子と性交を繰り返した例もあるため、
    延べ人数は変動する)。
  二、内訳――十代:二百九十二名。二十代:三百七十三名。三十代:百三名。四十代:二十九名。

 二、性交後妊娠した女子の人数・新生児数・新生児性別内訳
  一、妊娠した女子の人数――七百十二名。
  二、新生児数――八百五十三名(人数が合わないのは双生児、三つ子等の多胎児が含まれるため)。
  三、新生児性別内訳――男:二百六十二名。女:五百九十一名。

 備考
  一、本項二・三は報告者の生殖機能の形質によるものでなく、集落で保存された形質によるものと推測される
    (集落の男女比は明らかに女性に偏っている。報告者が目にした限りでは、
     男性:女性=一:二ほどであり、これは新生児の性別内訳と概ね一致する)。


八、指導教授への意見具申
 一、調査活動内容は社会通念的に見て極めて非倫理的であること。
 二、「おまらさま」としての活動が法に抵触する可能性が高いこと。
 三、公表により当該集落に多大な迷惑が及ぶと予想されること。
 四、以上のことから、内容の一部修正或いは査読者限定公開とするのが妥当ではないかと愚考する。


以上。






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