幽閉
シチュエーション


王城の地下には牢がある。
華やかな王宮から離れ、地下深くに降りた場所にそれはある。鍾乳洞に手を加えて造った洞
穴で、床には石のタイルが敷きつめられているが、壁は手つかずの姿を晒している。
入り口には兵士の詰め所があり、奥には洞穴に鉄格子をはめ込んだものが、五つほど連なっ
ている。
アランはすでに五年ほど、そこに勤めていた。元は騎士について戦場に出る従者だったが、
主人の失策に巻き込まれて、こんな閑職にまわされた。そのことについて、アランはもう諦め
ている。軍から放り出されなかっただけマシだと思っていた。
囚人の数は多くない。罪の軽いものは罰金、重いものは斬首なので、牢に放り込まれるのは
扱いに困る者と相場が決まっていた。牢番はアランの他に二人だけだったが、昼夜の交代を入
れても三人いれば十分足りた。
その日の夜、夜勤のために詰め所に入ったところで、アランは意外な顔と出くわした。騎士
隊長だった。主人について戦場に出ていたころは、たまに顔を見かけることもあった。しかし、
こんな場所に来るような身分の人間ではない。
隣には、フードで顔を隠した女が立っていた。女官なのか、これも牢屋などという場所には
相応しくない、高価なドレスをまとっていた。その両隣には監視の兵が二人立っていて、鎧か
ら親衛隊の人間だと見当がついた。
初老の騎士隊長は、アランの訝しげな表情を気にすることもなく、自分についてくるよう命
じた。言われるままに地上にあがる。
騎士隊長が先導し、衛兵が守る扉を二つほど越え、王城の奥まった場所まで連れて行かれた。
ここまで来ると、アランも一度も足を踏み入れたことがない。いつのまにか、親衛隊の二人は
消えていた。目の前には赤錆の浮いた扉がある。騎士隊長が鍵を差し入れ、鈍い音をさせなが
ら押し開いた。
女は躊躇したようだったが、騎士隊長が軽くうながすと、渋々中に入った。
騎士隊長がようやく口を開いた。

「お前には特別な任務についてもらう」
「は」

アランは短く答えた。相当に厄介な問題に巻きこまれていることは、薄々感じていた。
その中は、政治犯用の特別牢だった。王城の中と同じような石造りでできていたが、牢屋特
有の湿気と異臭は隠しようがない。詰め所として使われる入り口の小部屋と、鉄格子のはまっ
た牢屋が一つだけあった。

「これからお前はここに詰めることになる。向こうには戻らなくて良い。この場所のことを誰
にも喋ってはならない。牢番はお前だけだ」
「は……」

フードを被った女は、牢の入り口に立ちつくしていた。
アランは視線を女に移した。不運な女官が、王宮で知られてはまずい秘密でも知ったのだろ
うか、と思った。

「クラドル……」

女がかすれた声でささやいた。クラドルとは騎士隊長の名前だ。

「私が……ここに……?」
「はい。今日からこちらに移って頂きます」

騎士隊長は慇懃無礼に答える。
女は立ちくらみを起こしたようによろめいた。壁に手を当てて、身体を支える。はずみでフー
ドがずれ、その下の素顔がかいま見えた。
青ざめ、唇を震わせているのは、十六歳ほどの美貌の少女だった。フードの中からこぼれた
銀髪とあいまって、暗い牢屋に月が現れたかのような錯覚を感じさせた。

「イシュカ様……?」

アランは思わずつぶやいた。

「その名を口にしてはならぬ。お前の口の固さを見込んで、この任務を与えるのだ」

騎士隊長が厳しい声で言った。アランは慌てて頭を下げる。
イシュカ。大神殿の巫女であり、第三王女だった少女である。
一年ほど昔のことだ。王が死去したあと、王弟が王位を握り、王の直系である王子、王女を
ことごとく皆殺しにした。しかし、第三王女のイシュカは巫女だったため、斬首をまぬがれ、
王宮の一室に幽閉されていたと聞く。
しかし、最近はイシュカの名前も聞かなくなった。新王である王弟の治世も安定し始めてい
て、街の人間たちも、イシュカの存在を忘れかけている。
姫を丁重に扱う必要もなくなったのだろうと、アランは見当をつけた。

しかし、相手が誰であろうと、任務には変わりない。詰め所の中から埃まみれの鍵束を取り
出し、牢の扉を開ける。イシュカになんと呼びかけようかと迷ったあと、

「姫様、こちらに」

イシュカは動こうとしない。しばらく待ったあと、仕方なくアランは近寄り、肘を掴んでう
ながそうとした。イシュカは弾かれたように身を離し、アランを睨んだあと、いかにも気の進
まない足どりで牢の扉をくぐった。
中を見回し、その汚さに絶句しているようだった。壁際に藁束の敷きつめられているのがベ
ッドの代わりだろうか。窓は一つもなく、蜘蛛の巣があちこちに張っている。同じ幽閉とはい
え、それまでいた王宮の一室とは雲泥の差だった。あまりの不潔さのためか、イシュカは牢の
入り口から一歩も動けないでいた。
牢を閉じる鍵の音に、イシュカは振り向く。騎士隊長は無表情に牢のイシュカを見つめたあ
と、きびすを返そうとした。

「クラドル」

イシュカの呼び声に足を止める。

「わたくしは、どれだけの間ここにいれば……?」

すがりつくような声音だった。
騎士隊長は答えなかった。
アランに視線を向け、

「報告は必要ない。何か必要なものがあれば、私の名前を出して財務官にかけあえ。姫の扱い
については、お前に任せる。この任務が終わったあとには、それなりの恩給を用意する」

この任務が終わったあとには。
その言葉に潜む真意に、イシュカは呆然と立ちつくした。
宗教的な禁忌で斬首にできないイシュカを、飼い殺しにしろということだろう。恐らく生死
は問われない。
騎士隊長はそのまま立ち去った。視線を戻せば、イシュカはまだ自分の立場が信じられない
のか、立ちつくしたまま扉を見つめている。
アランは詰め所に入り、中を見回した。牢屋の方向の壁の上半分は格子になっていて、詰め
所の中にいても牢屋の様子を監視できる。長らく使われていないのか、椅子や机などは埃まみ
れだった。まずは掃除だな、とアランはため息をついた。

イシュカは二日目にようやく食事を取り始めた。係の者が牢の二つ手前の部屋まで食事を運
んでくるので、アランがそれを牢屋まで運ぶのだが、イシュカは手を着けようともしなかった。
膝を抱え、顔をうつむかせ、ずっと鉄格子に寄りかかり座っていた。貧弱なランプの光では、
牢の隅にわだかまる闇を追い払うことができない。少しでも明るい場所にいたいのだろう。ド
レスは汚れ、湿気に黒ずんでいた。
アランは食事を牢に運び込むと、そのまま床をブラシでこすりはじめた。食事を取らないの
は牢の不潔のせいかと考えたのだ。藁束も新しいものに取り替えている。
イシュカは悄然とした様子で、ちぎったパンを口に運んでいた。ようやく状況を受け入れる
気になったのだろう。アランが外に出て牢の鍵を閉めるころには、食事を終えていた。空になっ
たトレーを鉄格子の下から取り出し、詰め所の隅に置くと、もう仕事はなくなった。
アランが従者としての地位を剥奪され、牢番を始めたころは、終始鬱屈とした気分が晴れな
かったものだ。しかし、五年も続けていれば、それなりに折り合いもつく。退屈の紛らわせ方
もそれなりに学んでいる。
しかし、この特別牢の任務はアランにも刺激的なものだった。詰め所の椅子に腰掛け、牢の
様子を横目で見れば、イシュカが排泄を行っているところだった。ドレスで下半身が隠されて
いるため、一見すれば牢の隅にしゃがんでいるようにしか見えない。しかし、かすかに聞こえ
る水音が、何が行われているかを如実に物語っていた。イシュカは顔をうつむかせ、ちらちら
とこちらをうかがいながら羞恥に耐えている。いくら恥ずかしいとはいっても、我慢できるも
のではない。こちらも牢番が任務なのだから、いちいち外に出るわけにもいかない。王女のあ
られな姿を日に何度も見せられ、腰の物は硬く勃起していた。
それから一週間、単調だが刺激的な毎日が続いたあと、イシュカが体を洗いたいと言い出した。

「囚人に身を清めさせることは許されていないのです」
「ですが……」

イシュカは顔を伏せ、うつむいた。賢い第三王女のこと、自分の立場はよく理解している。
それでも身の不潔感は耐え難かったのか。長く美しかった銀髪も、埃に汚れてとうにその輝き
を失っている。
アランは思案し、

「それならば……私が御身を清めるということなら、構わないかもしれません」
「え?」

「法典では、囚人のあらゆる自由は剥奪されることになっているので、御身自身で体を清めさ
せるわけにはまいりません。しかし、私が勝手にあなたを清めるなら、法には触れません」

イシュカはしばらく硬直していた。やがて小さな声で、

「……侍女を」
「この場所は、みだりに知られるわけにはまいりません。御身の世話をするのは私一人です」

イシュカが黙りこんだので、アランも何も言わずに詰め所に戻った。

再びイシュカが声をかけてきたのは、さらに一週間後だった。育ちの良い王女のこと、とう
とう汚れに耐えきれなくなったのだろう。
アランは湯の張った桶と、手拭いを持ち、牢の中に入った。自分を抱きしめるようにして座
りこんでいるイシュカの後ろにまわり、手拭いを湯に浸した。

「姫様、お召し物を」

イシュカは頷いたが、硬直したまま身動きしようとしない。仕方なく、首筋から手をはわせ
て、ドレスを脱がし始めた。背中のボタンを外し、腰まで下ろす。白いうなじから背中までが
露になる。後ろからでは見えないが、胸元を遮るものもなくなっているだろう。上半身を裸に
した状態で、アランは背中を拭き始めた。その背中は硬く緊張していた。

「狼藉は許しません」

イシュカは固い声で言った。

「おかしなことをすれば、舌を噛んで死にます」
「は」

アランは短く答えた。
背中を拭き終わり、手拭いを前にまわす。首の下の鎖骨から、小ぶりな胸元の曲線をなぞり、
丸みをおびた乳房をそっと包む。手の平に収まるサイズの、柔らかな肉の感触を手拭い越しに
感じた。腰の物を硬くさせながら、アランはイシュカの体を清めていった。
上半身が終わると、次は下半身に移った。イシュカの対面に移動し、スカートから伸びる爪
先に手拭いをあてる。靴のようなものは履いていない。繊細な白い爪先は、石畳にこすられて
荒れていた。何度も手拭いを湯に浸しながら、スカートの中に手を忍ばせ、ふくらはぎから太
股まで、丹念にぬぐっていく。
下着の中に手を忍ばせたところでイシュカは身じろぎしたが、抵抗はしなかった。真っ赤な
顔をうつむかせ、されるがままになっている。薄い手拭いで肛門から股間にかけてを清めていっ
た。指先に、巫女の秘部の感触を味わいながら、アランは射精寸前だった。
髪も洗い、アランは何食わぬ顔で仕事を終えると、ドレスを着ようとするイシュカを止めた。

「替えの服がありますので」

イシュカは驚いたように、差し出された服と下着を眺めた。神殿につとめる者が着る、質素
なローブである。清潔な服を与えられるとは思っていなかったのか、

「あ、ありがとう……」

イシュカは服を受け取った。

「ドレスは処分しますので、ここで着替えてください」

イシュカは逡巡したが、大人しく着替え始めた。
スカートから足を抜き、下着も脱ぎ捨てる。アランからはその背中しか見えなかったが、薄
暗い牢の中で、光り輝いて見えるような裸身だった。腰まで伸びる銀髪が、イシュカが身をよ
じるたびに肩や腕に流れる。白い尻には柔らかい肉がつき、イシュカが下着を履こうと身をか
がめた拍子に、股間の淡い茂みが見えた。
清潔な服に着替えて人心地がついたのか、イシュカの緊張は解けていた。アランがおかしな
素振りを見せなかったこともあるだろう。アランが牢を出ると、ほっと息を吐いた。

湯は三日に一度の割合で運ばれた。牢獄は変化の少ない場所であるから、イシュカも身を清
めることが楽しみになり始めた。自分の痩身を洗わせながら、イシュカはなにくれとなくアラ
ンに話しかける。最初はアランと口を利こうともしなかったイシュカだが、人間は孤独に弱い。
一ヶ月もたつころには、四六時中一緒にいるアランに、会話をせがむようになっていた。アラ
ンが戦場に出ていたころの話がいたく気に入ったようで、盗賊退治の話などは何度も繰り返さ
せた。
その日は秋の大祭の話をしていた。すでにイシュカがこの牢獄に移ってから、二ヶ月になっ
ていた。
いつものようにイシュカの身を清めていたアランは、突然突き飛ばされた。
壁にしたたかに肩を打ちつけ、アランがうめきながら仰ぎ見ると、いつのまに奪ったのか、
アランの腰にぶら下がっていた牢の鍵で、裸身のイシュカは外から鍵を閉めてしまった。その
まま牢と外を繋ぐ扉にたどり着くが、こちらも鍵がかかっている。その鍵は詰め所にあるのだ
が、イシュカはそれに気づかず、いたずらに鍵を差し込んでは開けようと苦戦していた。

秋の大祭の話がまずかったのかもしれない。王弟の血族の娘が、イシュカの次の巫女になっ
て大祭を開くのだ。それまではイシュカの仕事だったのだが。世界から取り残されているとい
う思いが、溜まっていた感情を爆発させたのか。
アランは髪の中に隠していた予備の鍵を抜き取り、鉄格子の中から手をまわして、冷静に牢
の鍵を開けた。扉が開くさびた金属音に、イシュカが絶望の表情で振り返る。
アランは油断をした自分の迂闊さに怒っていたし、自分を裏切ったイシュカにも怒っていた。
大股で近寄ると、裸で扉にすがりついていたイシュカの頬を張った。吹き飛ばされ、イシュカ
は床に倒れ込んだ。張られた頬を右手で抑えて、イシュカは驚愕の瞳でアランを見つめた。
さらに近寄ると、イシュカは小動物のように怯え、あとずさった。

「ごめんなさい!ごめんなさい……!」

第三王女で、しかも巫女として育てられたのだ。暴力とは無縁だったろう。一度殴られただ
けで、あらかたの勇気は消し飛んでしまっていた。

「ごめんなさい……ごめんなさい……許してください……」

肘を掴み、強引に牢の中に押し込む間も、イシュカはそれだけを繰り返していた。

それから二日、アランは牢屋に姿を現さなかった。
三日目、アランが食事を持って現れた。二日間食事も与えられず、闇の中にこのまま見捨て
られるのではないかと怯えていたイシュカは、アランの姿に歓喜の声をあげた。

「アラン!来てくださったんですね!」

しかし、アランは答えようとしない。事務的に食事を鉄格子の下から押し入れ、そのまま詰
め所に戻る。目を合わせようともしない。
イシュカは食事も横目に、アランに懸命に呼びかけた。多少の空腹は慣れた。しかし、孤独
には耐えられないものである。
二十四時間、何の変化もない牢の中は、人の精神をおかしくする。これまでまがりなりにも
イシュカが理性を保っていられたのは、アランという他人との会話のおかげである。二日間放
置されて、喉が枯れるまでアランの名前を呼び続け、しまいに闇の中に幻覚を見るようになっ
て、イシュカは自分がかなり危うい状況にいるのだと理解してしまった。

「許して……もうあんなことはしませんから……」

アランは答えない。イシュカは諦めて、食事に手をつけ始めた。答えはなくとも、闇の中に
独りでいたイシュカにとって、他人の存在が近くにあるというのは、それだけで安心できるも
のである。
しかし、そのアランの態度も一週間続くと、イシュカには耐えられなくなってきた。この一
週間、ずっとイシュカの独り語りが続いている。会話を期待してのことだが、アランからの答
えはない。
ふと湯浴みをしていなかったことに気づき、イシュカはアランに呼びかけた。

「アラン、湯浴みをお願いできませんか?」

イシュカにとっては、誰かと触れ合いたい、他人の存在を近くに感じたい、という切実な願
いだった。
しかし、アランは湯桶を持ってくると、そのまま牢の外に出てしまった。イシュカの期待は
裏切られ、桶の前でただ立ちつくした。

「アラン、私一人では洗えません。洗ってはいけないのでしょう?アラン、お願いします……」

聞いているのか、いないのか、アランは湯の冷めるころになると、一度も使われなかった手
拭いと共に、桶を下げてしまった。
自分が完全に無視されている、ということの惨めさに、イシュカは膝を抱えて静かに泣いた。
牢に入れられてから初めてのことだった。

「反省しましたか?」

アランが声をかけると、イシュカは慌てて顔を上げた。
鉄格子の前に、湯桶を抱えてアランが立っている。目をそらすこともなく、イシュカにしっ
かりと視線を合わせていた。それだけのことが、イシュカには例えようもなく嬉しく感じられた。
イシュカはもつれる感情を解きほぐすように、まだ不安げな表情で、

「もう二度としません……。お願いです。許してください……」

アランは頷き、牢の扉をくぐった。
湯桶を置き、湯浴みの準備を始める。

「普通の囚人には、このような湯浴みなど与えられていません。私の仕事に入っているわけで
もありません。すべて、私の好意によるものです」
「はい……」

イシュカはうなだれて答えた。

放置された二日間で、そもそも毎日食事が運ばれてくることすら、アランの好意によるもの
なのだと理解していた。イシュカはもう、生きていても死んでいても、どちらでも良い人間な
のである。

「お召し物を」

言われて、イシュカはローブを脱ぎ、下着も脱ぎ、裸になった。
まだ恥じらいはあったが、汚れきった肌をぬぐっていく温かい手拭いの感触に、イシュカは
大人しく身を任せた。

「姫様」

アランはイシュカの小ぶりな乳房にゆっくりと手拭いを這わせながら、囁きかけた。

「姫様一人のために、私は働いているのです。昼夜の交代をしてくれる人間もおらず、食事や
湯浴みの準備も私がするしかありません。すべて、姫様への好意があればこそです」

イシュカは身を震わせ、

「はい……。ありがたく思っております。本当に……その思いを裏切ってしまって……」
「本当に反省していらっしゃるなら、私の願いも聞いていただけますか?」
「ど、どうすれば……?」
「ここの牢番は長くかかります。宿舎に戻っても、風呂に入る時間もないのです。姫様の湯浴
みと一緒に、私の身を清める手伝いもしていただければ……」

イシュカはさっと頬を火照らせたが、アランに世話をかけているという申し訳なさもあって、
あっさりと頷いた。

「か、構いません。それぐらいなら……」
「では……」

裸身のイシュカを清め終わると、アランも服を脱ぎ始めた。
牢番とはいえ、兵士には定期的な鍛練が義務づけられている。たくましい肉体に、イシュカ
は恥ずかしそうに視線を落とした。アランがズボンと下着を脱ぐと、屹立したペニスが弾かれ
るように飛び出した。

「きゃっ!?」

悲鳴をあげて顔を背けるイシュカに、アランは平然と声をかける。

「では、姫様、よろしくお願いします」
「え、あ、はい……あの、私は服を着たほうが……?」
「いえ、濡れますし、そのままで」
「はい……」

イシュカはまず、あぐらをかいたアランの背中から始めた。
筋肉の上をはい回る柔らかいイシュカの手に、アランのペニスはますます硬くなる。肩や腕
の先にも手拭いが伸び、ふとした拍子にイシュカの乳房がアランの背中をこする。細く肉のつ
いた真っ白い腕が、アランのゴツゴツした腕に絡まる。

「では……前も……」

イシュカが恥ずかしそうにいうと、アランは振り向いてイシュカの目の前にペニスを晒した。

「……」

イシュカは下を見ないようにして、真っ赤に頬を火照らせながら、アランの胸板を手拭いで
こする。首筋にも這わせ、脇や下腹部も清めていく。
イシュカはアランを見上げ、

「あの……」
「そこは特に汚れが溜まりやすいところですから、丁寧にお願いします」

イシュカは息をのみ、

「は、はい……」

手拭いを湯に浸し、そろそろとペニスに近づけていく。硬く充血したものを手拭いで包み込
み、ゆっくりとこすり始めた。アランは顔には出さずに、何も知らない王女の手によるもどか
しい快楽を味わっていた。

「あの……ここは、いつもこんなに硬く……?」

巫女として育てられた王女だ。具体的な性の知識はあまりないのだろう。

「いえ。疲れたり興奮したりすると、男のここは硬く伸びるのです」
「そうなのですか……」

イシュカは手拭いで、カリ首の下を丹念にぬぐっていく。その刺激に、ペニスはますます膨
張していく。

「姫様。しばしお手を拝借してもよろしいでしょうか」
「え……?」

答えに構わず、アランはイシュカの手を取り、自分の男根を握りしめさせた。

「あ、あの……!?」

血管の浮いたペニスを、白魚のようなすべすべとした手が握りしめている。血管が脈打つた
びに、イシュカの手の感触が伝わる。湯に濡れたペニスの上を前後させ、ゆるゆるとしごかせた。

「これは……?」

イシュカは疑問の表情のまま、アランのするに任せた。
アランは王女の手で手淫をさせながら、イシュカの美しい肢体に目を這わせた。乳房は小ぶ
りながら、つんと上を向いた美しい形をしており、女座りをする腰から尻にかけての曲線も、
柔らかさを備えた絶妙なプロポーションをしている。影に見えるのは、銀の淡い茂みと、汚れ
を知らない秘部である。不思議そうにペニスを見つめているその素顔は、幽閉されてもまった
く輝きを失っていない。大神殿の巫女として、また第三王女として、高貴な身分もさながら、
その美しさも格別だった。

「あの、こすれば良いのですか?」
「はい」

アランが答えると、イシュカは恐る恐る、自分で手を動かし始めた。おそらく、自分が何を
しているかはわかっていないのだろう。ただ手を動かすことを求められていると、そう理解し
たにすぎない。
腹につくほど屹立したペニスを、天に向かってしごきあげるように手を前後させる。先走り
がにじみ、イシュカの手を汚す。にちゃにちゃとした粘着音が響きはじめた。
アランが力加減や速度を伝えると、イシュカは大人しく従った。ぎゅっと握りしめたペニス
をリズミカルにしごきながら、イシュカはちらちらとアランの顔を見上げた。
ペニスにまとわりつく王女の手の感触と、それに伴う圧迫感が、アランの快感を急速に高め
ていく。高貴な身分の人間に特有の、生まれてから一度も荒れたことのない滑らかな指が、亀
頭をしごき、カリ首をかすめて、背筋からのぼるような刺激を与える。
かつての巫女、そして第三王女でもある銀髪の美少女が、単なる牢番の自分に、手で懸命に
奉仕している。そう考えると、アランは急に耐えられなくなった。

「ううっ!」
「きゃっ!?」

アランの声が漏れ、白濁液が勢い良く飛び出す。イシュカの顔に一部がかかり、残りはイシュ
カの太股を汚した。
アランは荒い息をつきながら、イシュカを眺めた。イシュカは自分の顔にかかったものをぬ
ぐいながら、萎えはじめたペニスを不思議そうに見つめている。

「……?」
「お顔を汚してしまいました。体の方も拭き取りましょう」

アランが手拭いを絞り、イシュカの顔や太股にかかった精液を綺麗にぬぐい終わるまで、イ
シュカはじっとしていた。

それから、湯浴みには必ず手淫が加えられるようになった。
裸になり、お互いの体を清める。それから、イシュカが手でアランの昂りを静める。
アランも徐々に、イシュカの乳房をまさぐったり、秘部に指を這わせるようになった。イシュ
カはそれらが尋常のものではないと薄々感じていたが、アランに嫌われるのが怖くて言い出
せずにいた。
あぐらをかいたアランの背中に、イシュカは胸をおしつけながら、両手を前に回してアラン
のペニスをしごいている。乳房で背中を洗うように言われたのである。とがった乳首をこすり
つけながら、右手で竿をしごき、左手で亀頭を包む。アランには単なる湯浴みだと言われてい
たが、身に宿る官能が、イシュカにもこの行為の正体を知らせていた。
アランが振り返り、イシュカを抱きしめようとしたとき、巫女としての最後の一線を守らな
ければとイシュカは本能的に思った。

「だめ……だめです。嫌わないでください。でも、だめです……」

アランはしばらく黙っていたが、何もいわずに服を着込みはじめた。
イシュカは自分もローブを着ながら、無言のアランに気が気ではない。だが、鍵が閉じられ
たあとも、アランは牢の前から立ち去らなかった。
鉄格子ごしに、アランは無表情に語りかけた。

「イシュカ様」
「はい……?」
「私が調子に乗りすぎていたようです。あなたが巫女だということを忘れていました。イシュ
カ様はお美しい。湯浴みをしているうちに興奮が抑えられなくなるのです。これからは湯浴み
に同伴するのは止めておきましょう」

美しいと言われて、イシュカは戸惑った。

「あ、あなたの高ぶりは、私の、せいなのですか……?」
「姫様の美しさのせいです」

イシュカは一瞬、ぼうっとなった。アランが男根を腫らすのは単なる生理現象だと思ってい
たのだ。自分が求められていたのだと知って、なんともいえない気持ちになる。

「ですから、同伴しての湯浴みはこれきりに」

アランの言葉を聞いて、イシュカははっとなった。アランとの湯浴み自体は、憎からず思っ
ていたのだ。

「湯浴みは、私一人でしてはいけないのでしょう?」
「しかし、このままでは姫様に邪な思いを抱いてしまいます。私は目をつぶりますので、これ
からはどうぞ一人で」
「で、ですが……」

アランはしばらく黙っていたが、ようやく口を開いた。

「では、湯浴みとは別個に、私の欲望をお静めくださいますか?」
「それは……?」
「湯浴みに同伴して姫様の美しいお体を見れば、否応もなく欲望が湧いてきます。ですが、姫
様は巫女の身。体を汚すことかないません。万が一のことがないよう、姫様と私の間に鉄格子
を隔てた状態で、私の欲望を静めてくだされば……」
「ど、どうすれば……?」

アランは腰布をおろし、いまだ突っ張っているペニスを鉄格子の間から牢に差し入れた。鉄
格子の向こうにひざまずくイシュカの目の前に、突きつけた格好になる。
アランは静かにささやいた。

「口で……」
「く、口で……?」

少しして行為の正体を悟り、イシュカは青ざめた。
しかし、覚悟を決めたのか、やがてこくりと頷いた。

「わ、わかりました……」

イシュカもアランもすでに服を着込んでいたため、背徳感はそれまでの比ではなかった。す
でに湯浴みという言い訳は通用しないのだ。
鉄格子の前に立つ兵士のペニスに、聖職者のローブを身につけた銀髪の美少女がひざまずい
ている。震える手を膝の上に握りしめ、イシュカは恐る恐る、桃色の唇を近づけていく。接触
する寸前でしばらく躊躇していたが、やがて亀頭をくわえ、飲み込んでいく。温かい粘膜に包
まれる感触に、アランは満足げに息を吐いた。
長く幽閉されているとも思えないほど、瑞々しい唇である。それがゆっくりと亀頭を包み、
じわじわと飲み込んでいく。亀頭の下に、熱く柔らかい、イシュカの舌を感じた。それが居心
地悪げにちろちろと動き、裏筋を刺激する。唇の締めつけがカリを通り過ぎ、竿のくびれに到
達する。そこまで来て、イシュカは途方に暮れたようにアランを見上げた。どうすればいいの
かわからないのだろう。熱い口腔と、上目づかいにこちらを見る銀髪の美少女、そしてその唇
に突き刺さる醜悪な器官という光景に、ペニスはますます高ぶっている。秘せられた王女の口
内に、先走りのにじむ、自分のもっとも汚い部分を突っ込んでいるのだ。

「強く唇を締めてください。歯を立てないように注意して」

イシュカの熱い舌が亀頭に押しつけられる。アランはゆっくりと腰を前後させながら、王女
の唇を味わった。
イシュカは巫女である。大神殿にあっては、祭りの祝詞を捧げる大事な役目である。一般信
者からは隠され、祭りの節目にしか姿を現さない。それは神に捧げられるべき唇であり、文言
を紡ぐ、もっとも聖なる器官なのだ。そこに、自分のペニスが突っ込まれ、口内を先走りで汚
している。清らかな声を発するであろうイシュカの舌は、醜悪なペニスに絡み、自身の神聖さ
を汚しながら、ただアランに快楽を与えている。

「ふっ、ふっ」

アランは容赦なく腰を前後させた。
イシュカは喉を突かれ、涙目でこらえている。あまりに強く突かれたペニスを舌が反射的に
追い出そうとするが、それがさらなる刺激に繋がる。亀頭、裏筋、カリ首、様々な場所をはい回る。

「唇を締めて」

イシュカは涙目でうなずく。強くすぼめられたイシュカの口内を蹂躙しながら、アランはだ
んだんと登りつめていった。両手を鉄格子の中に入れ、イシュカの頭を固定する。
鉄格子の向こうでひざまずき、牢番である自分のペニスに口で奉仕している涙目の王女の姿
に、例えようもない背徳感が快楽となってアランを襲う。腰からかけあがった衝動に身を任せ、
神聖な姫君の口内に、醜悪なペニスからほとばしる白濁液を放った。

「んんっ!?」

反射的に身を離そうとするイシュカの頭を、アランは両手で抑えた。ペニスは脈打ち、身に
宿った欲望をイシュカの口内にぶちまけていく。パニックになったイシュカは両手でアランの
体を押しのけようとするが、頭をがっちりと押さえ込まれていてはどうしようもない。その温
かい口内の感触を、射精が完全に終わるまで、アランは存分に味わった。

「んっ、ぐっ、けほっ!」

アランがようやく手を放して、口内からペニスを抜き取ると、イシュカは唇から白濁液を垂
らしながら、咳き込みはじめた。飛び散る精液が、聖職者のローブを汚していく。男の欲望を
懸命に吐き出そうとしている王女の姿を、アランは震えるような満足感とともに見下ろした。
ひとしきり汚液を吐きだし、ようやく落ち着くと、イシュカは恨めしげな顔でアランを見上げた。

「ひど……いです。苦しかったです……」
「申し訳ありません。姫様の唇のあまりの心地よさに、我を忘れてしまいました」
「……」

イシュカはしばらく無言でいたが、図り難い、何とも言えない感情の瞳で、アランを見つめた。

「欲望は、もう静まりましたか?」
「はい。姫様のおかげです」
「そう……」

それきり会話は終わった。






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