シチュエーション
「魔王:全てに於いて、魔を携え、魔の頂点に君臨する王の総称。 ……簡単に書いてくれる。」 ぱたん。と、本を閉じる音がやけに、耳に残る。 その音は、一つの物語を読み終え、感服した際に聞く音に、良く似ていた。 しかし、どこか諦め、苛立ち、不快な音が混じっているように聞こえるのは、読み手の意思が表れている他ならない。 「どうせ、歴史書に残すんだったら、魔王本人に書かせろよ…。 俺なら、こう書くね。 腐ってしまうほどの、寿命があり、特になにをするわけでもないのに、 ありとあらゆる力がデカイ。本性の図体もデカイ。ついでに、ち○こもデカイ。 その割に、あっさり封印されたりするしな。頂点に君臨するとか、どんな大言壮語だよ… おまけに、ぐーたらが多い。代表格は俺だ。 あー、そうだ!寝るのが好きだな。数百年とか、普通に眠ってる馬鹿も一人や二人じゃない。」 本を指先でくるくると回しながら、一人言をぶつぶつと喋り始める。 「やること…ねぇな。」 で、一人言を、締めくくる最後の台詞はコレ。誰もが、一度は思ったり呟いたりしたことがあるだろう。 一人言を喋り始める状態というのは、どういうときなのだろうか? 動悸?息切れ?湿疹? どれも違う。そう、要するに暇な時なのだ。 言葉、物腰、息遣いで分かるように、まさにこの人物に当てはまる。 暇でも少しはやることがあるだろう?そう思って読み始めた、歴史書も、途中は面白かったが 自分の種族の項目に差し掛かった所で、気分を害し、閉じてしまう。 そう。この人物は魔王。幾百幾千を生き、膨大な魔力と力を持ち、そして暇なのである。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |