〜淫具屋 文七〜
シチュエーション


そこは、古今東西のあらゆる淫具が集まる場所であった。
その中の一つ、ずいぶんと古びた張り型が私の目に留まる。

「妖根“マラマサ”?」

檜を心材にして、何かの皮革で覆われた人工の男根。
柄に魔羅政と銘打たれている。
なんともアホくさいと思いながらも、私は何故かその張り型が気になってしまった。

「ほぅ、魅入られてしまいましたか。妖根に……」

いきなり掛けられた声に飛び上がりそうになるのを堪え、ゆっくりと振り向く。
そこには、小柄な老人……嘗て、天才調教師として名を馳せた男、淫具屋 文七の店主、相模 文七が立っていた。

「ほっほっほ、驚かせましたか。いやいや、すいませんねぇ」

人の良さそうに見える微笑を浮かべた相模氏だが、細められた目から覗く眼光や、歩き方は確かにこの男が天才調教師と呼ばれた過去を伺わせている。
でなければ、この私が背後を取られる事など、荒事……とりわけ暗殺のプロでもなければ、そうあることではない。

「いえ、自らの未熟を恥じるばかりです。お気遣いなく……しかし相模さん、魅入られた、とは?」
「ええ、ええ。気になるでしょうな……この張り型は、生きておるのですよ。そして、自らの意思で使い手を選ぶ……あなたがそれに興味を持っているのは、その為です」
「そんな馬鹿な話が」
「あるのですよ……それは差し上げましょう。稀代の調教師『エロマスター』と謂われる貴方に相応しい道具と保障しますよ」

一瞬、皮肉かどうか悩んだところだったが、どうやら本気で言っているらしい。

「ふん『エロマスター』、ね」

正直、自分に付けられた異名は好きではない。
淫具屋 文七を後にし、仕事場に向かいながら私はボンヤリと呟く。
買い上げた淫具と共に紙袋に入っている張り型が、脈打ったような気がした。


「あ゛〜っ、あ゛ぁっ!?そ、こは、違っ!?ひぁっ!?」

膣穴と肛門はディルドーで塞がれ、プラスチック製の棒で尿道を穿られながら、雌は失禁しながら達した。
棒が刺さっている為に、勢い良く黄金が迸る。
私は一度だけ達しただけでは許さず、左手で膣穴と肛門を埋める擬似男根を蠢かせ、右手では尿道を繊細に刺激していく。
クライアントからは『ありとあらゆる穴で達する事のできる身体』を依頼されていた。

「んはぁっ、イッたぁ!?わ、私、イ゛ッでるのぉっ!!?」
「そうか、ならもっとイこう?」
「んおぉぉぉっ!?あ゛ーっ!あ゛ーっ!!」

ミチュミチュとねちっこい音をたてて、色々な汁を噴出している女の下半身に集中する。
……む、このディルドー、もう少しカリが高ければ良い感じなのだが。
そこまで考えて、例の妖根を思い出した。
あれなら、丁度いい形だろうか?調教に関する思いつきは即座に行動に移すのが私のポリシーである。
勢い良く膣穴のディルドーを抜き放つ。

「んあぅっ!?」
「少し待っていてくれ」

寂しげにヒクつく膣穴と淫核に口付けをして、紙袋から張り型を取り出す。
……一応、消毒はしておくべきだろう。
布にアルコールを染み込ませた物で、張り型の表面を丹念に拭く。
奇妙な妖しさを持つのが、妖根たる所以だろうか?そんな事を考えながら、張り型を片手に、怯えた表情を浮かべる雌に向かう。

変化は、唐突だった。

濡らす必要も無いほどに溶け解れた肉穴だったが、愛液を掬い取って古臭い擬似男根に塗り付ける。
ドクン、と張り型が脈打ったような気がしたが、気のせいだとその時は思ったのだ。
しかし、膣穴に突き刺した途端に張り型……いや、妖根はその正体を顕した。

「ンあひぃぃいぃいいぃッ!?あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛ぁぁぁぁぁぁッ!?」
「なっ!!何だ、コレ!?」

手の甲に僅かな痛み。
そして、手の先から調教している雌の肉穴の感触。
自由自在にのた打ち回る肉の塊。

妖根マラマサを携え、後に『調教侍』として名を馳せる男の誕生だった。






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