王都騎士団【一緒にお風呂・後編】
シチュエーション


耳を味わうように舐め尽し、デュラハムの唇が首筋に触れる。
微かに舌に感じる石鹸の味と、洗い立ての肌の香りに更に情欲を刺激され、デュラハムの行為は勢いを増す。

左手は絶えず胸を弄り、右手で腰を引き寄せると、弾みでファムレイユの片足が、腰掛けから落ちる。
その隙を縫って、デュラハムの右手が滑り込む。
肉芽を探り当てると同時に強く押し潰され、痛みと快感にファムレイユの口から悲鳴にも似た声が漏れた。

「やあ、あぁっ!」

デュラハムの指先は、反応を始めたばかりの肉芽を剥き出しにし、指の腹でゆるゆるとそれを撫でて行く。
肉芽は緩急を付けて刺激され、胸は痛みを感じるギリギリの強さで揉まれ、ファムレイユの体から力が抜ける。
元より体勢のせいで、力のなかったファムレイユの体は、デュラハムの胸に預けられる。
背後に反応を始めたデュラハムの物が感じられるが、身を捻る事も出来ない。

ぴったりと閉じた割れ目を指が沿い、熱く粘ついた蜜が絡められる。
その指で更に肉芽を擦られて、ファムレイユの腰がビクと浮いた。

「あ、あっ、あっ!」
「お、ドロドロ。また洗わなきゃな」
「やぅっ! や、駄目…っ!」

胸を揉んでいた左手が下に降り、大きく足を開かれる。
蜜の溢れる入り口に指が差し込まれ、焦らすようにくちくちと掻き回される。
その指の付け根は肉芽を押し潰して、耐えずファムレイユに刺激を与える。

すがる物もなく床に手を突き、刺激を受ける度に指先に力が篭る。
肩を。首を。優しく噛まれ、強く吸われ。下腹部に感じる甘い刺激に、ファムレイユの思考は白く濁る。
湯気に覆われたこの浴室のようだと、霞が掛る頭の片隅でぼんやりと思った。

デュラハムの指が中程まで埋め込まれ、ファムレイユの喉が震える。
いっそう音を増した水音は卑猥で、浴室に反響しファムレイユの耳を打つ。

「や、ああっ!」

デュラハムの肩に頭を擦り付けるように首を捻るが、デュラハムの指は数を増して更に胎内へと潜り込んだ。

「ひあぁっ! や、デュ…あんっ! あああっ」
「良い声……欲情しちまうな」

目を細めてファムレイユを見つめるデュラハムは、掠れる声で呟きながら、胎内に埋めた指で激しく抜き差しを始める。
熱い胎内を擦る度、昂まる快感にファムレイユの体が震えた。
完全に力を無くしたファムレイユは、されるがまま。普段よりも響く浴室内いっぱいに甘い声を響かせ、流れ込む湯の音も卑猥な水音も、その声に掻き消される。

「ファム」

ずるりと指を引き抜いたデュラハムが、蜜に塗れた手でファムレイユの体を抱える。

熱に浮かされ、焦点の定まらぬ眼差しのファムレイユは、それでも何とか体を捻ってデュラハムの方を振り返った。

「上に乗るのと後ろからと、どっちが良い?」
「……え?」

直ぐには言われた意味が分からず、眉を寄せたファムレイユに、デュラハムは小さく笑いながら言葉を続けた。

「普通にヤったら痛いだろ? 好きな方、選ばせてやるよ」

散々になった思考回路を必死になって寄せ集め、脳裏で告げられた言葉を反芻する事暫し。
ようやく意味を理解したファムレイユは、今までにないほどに狼狽した。

「ど、どっちって……」
「ちなみに、今からベッドってのは無しな。そこまでもたねぇ」

意地悪く目を細めたデュラハムが、答えを促すようにファムレイユの体に手を伸ばす。
腹部から腰、胸へと手が這わされる。
一度昂ぶりを見せた体は、そう簡単に冷めはしない。デュラハムもそれを分かっているのか、焦らすようにファムレイユの肌を撫でながら、じっと答えを待つ。

「そ、れは…」
「んー?」
「あ、……あの…」

人が悪いとは思ってはいたが、まさかこの場でそれを実感する事になろうとは。

「た、隊長の好きな方って言うのは……駄目ですか?」

恥ずかしさの余り、もごもごと口の中で呟くと、デュラハムは暫し考える素振りを見せた。
ただし手は未だ、ファムレイユの体に這わせたままである。

「じゃあ、上に乗るか? 支えててやるから」
「ひゃっ」

きゅっと脇腹を摘まれ、小さな悲鳴を上げたファムレイユだったが、答えを得られた事に内心安堵しながらコクコクと頷く。
腰掛けに乗せたままだった足を下ろし、デュラハムの手を借りて腰を上げる。
向かい合わせに向き直ると、既に固く勃ち上がったデュラハムの物が視界に入り、思わず視線を外してしまう。
二年も付き合っているのだから、一通りの行為は済ませている。とは言え、やはり恥ずかしい物は恥ずかしい。

「手、添えて。なるべく力抜いて、お前さんのやりやすいように入れてみ」
「……ん」

床に片肘を突き、反対の手で腰を持ち上げられれば、流石に視線を外してばかりもいられない。
デュラハムを跨ぐ形で膝立ちになり、筋張った肉棒に手を添えて握ると、ピクンとそれが反応した。

ぬちゃり、と先端を秘所に当てがう。
固い感触を受けただけで、下半身はずくりと疼く。
見られている羞恥心もあったが、それよりもこの疼きを何とかしたくて、ファムレイユは目を閉じるとゆっくりと腰を沈めた。

強い圧迫感は、それに比例して強い快感をもたらす。
眉根を寄せ熱い吐息を漏らしながら、デュラハムで体の中をいっぱいにする。
肉壁を擦られ、膝も腰も震えが来るほどに力が入らないが、デュラハムの手を借り、ゆっくりと根元までを咥える。

「あ〜、溶けちまいそう……」

繋がった箇所に無遠慮な視線を投げながら、デュラハムも吐息を漏らす。
久方振りの情交に加え、少なくともこの場では、誰にも何の気兼もいらない。
ファムレイユの動きは緩慢でじれったいが、自ら進んで事に及ぶ事のない彼女が──半強制的にとは言え──体を開いたのだ。
それだけで、もうデュラハムは強い射精感を覚えたが、奥歯を噛んで遣り過ごす。

デュラハムの胸に手を突いて、ファムレイユの腰がゆっくりと動く。
円を描くように動かせば、胎内の至る所を擦られて、半開きになった唇から熱い吐息が漏れる。
腰を揺らす度に、胸はふると震え、繋がった部分からはぐちゅぐちゅと粘ついた水音が聞こえる。
淫靡な動きに、繋がった部分を見つめるデュラハムは、揺れる胸へと手を伸ばした。

「ひぅっ! あ、ぅんんっ!」
「あぁ…良い声だ……」
「やぁ…う、あああっ!」

決して大きくはない胸が、デュラハムの手にすっぽりと収まり、やわやわと揉みしだかれる。
もどかしいぐらいに優しい動きは、それでも背筋から腰へと疼くような刺激を伝え、ファムレイユは肉棒を咥えた腰をぐぃとデュラハムに押し付けた。
デュラハムの恥骨が肉芽に当たり、より強い刺激が全身に走る。
しかし、それだけでは物足りない。
膝はガクガクと震え、体を揺さぶるので精一杯で、思うように動けない。

「や、ああ……デュー…っ!」
「どうした?」

涙が滲み始めたファムレイユを見つめ、デュラハムの手が腰へと回る。
それと同時に、ファムレイユは体を屈めてデュラハムの胸に倒れ込むと、荒い呼吸を繰り返しながら、首筋にすがり付いた。

「やぁ、…あ、やだぁ」
「ン?」
「……っ、デューも…して…」

啜り泣くような声で哀願され、デュラハムの首筋がぞわりと粟立つ。
滅茶苦茶にしてやりたい。好きだからこそ、いじめて、焦らして、泣かせたい。
加虐心に火が点いて、デュラハムはファムレイユのお尻を両手で掴むと、躊躇う事なくズンと腰を打ち付けた。

「ひぁあっ!」

一度。胎内に埋められた熱が、更に先を求めるように、体の奥にぶつけられる。
喉を逸らしたファムレイユの口から、甲高い悲鳴が上がった。

「ああ…あぁぁっ」
「もっとか?」

態と意地悪く尋ねられ、ファムレイユは声を無くして小さく頷く。
その表情に羞恥の色はなく、ただ貪欲なまでに、快楽を渇望する眼差しがあった。
その様子にデュラハムは益々笑みを深めると、体を起こしてファムレイユを抱き締めた。
深く繋がったまま、突き上げるように腰を揺らす。

「ひっ! あ、あぁっ!」

体の芯を揺さぶられ、奥深くをえぐられるような錯覚に、ファムレイユはデュラハムにしがみつく。
濡れた髪が頬に纏わり付くが、もはやそれを払う余裕も無い。
胎内を突き上げられる度、閉じた瞼の裏で白い閃光が瞬いて、頭の中がぐらぐらする。
急速に高みへと追い遣られ、声を殺す事も出来ないファムレイユだったが。

不意に、デュラハムが動きを止めた。

「はぅ…あ……デュー…?」

重い瞼を無理矢理開けて、デュラハムを見上げる。
デュラハムは舌を差し出すと、誘うようにファムレイユの唇をなぞる。
甘く擽られ、ファムレイユも舌を差し出し、デュラハムの舌を追うように絡めていく。

一度はギリギリまで持ち上げられた熱は、徐々にではあるが引いていく。
それが酷く歯痒くて、強請るようにファムレイユは腰を揺らす。
だが、デュラハムの手はしっかりと腰を支えて、思うように動けない。
じりじりと焦がされるような想いに、ファムレイユは舌を絡める事で訴えた。

途端。

「ふうぁっ!!」

一際強く体を突かれ、絡んだ舌が離れる。
かと思うと、またデュラハムは動きを止めて、ついばむような口付けをファムレイユに与えた。

「ん、んん…や、だぁ…っ」
「んー?」
「も……やあ…」

腰を抱き、胸へと手を伸ばしたデュラハムに、ファムレイユは力無い動きで首を振る。
湯か涙か。長い睫は露に濡れ、真っ赤に色付く唇を噛み締める。

この期に及んで言葉に出来ないのは矜持のせいばかりではない。
ぐらつく思考。掠れる喉。焦がされる本能。
それら全てが原因で、ファムレイユはデュラハムの腕を掴む。

「欲しいか」

尋ねるデュラハムの声にも余裕はない。
しかしファムレイユはそれには気付かず、喉をヒクつかせながら頷いた。

デュラハムが足を持ち上げて、繋がったまま向きを反転させられる。
その動きで、胎内に埋め込まれた肉棒が肉壁をグズリと擦るが、体を震わせて声を耐える。
背を向け座り込む体勢は、先ほどとは違い体の中の敏感な部分に、最も太い部分が当たり、それだけできゅうと秘部が縮込まる。

「よっ…と」
「ひあぁっ!」

急に腰を持ち上げられ、ファムレイユは腰掛けにしがみ付く。
膝立ちの姿勢を取らされると、デュラハムがゆっくりと腰を引く。
かと思えば、深くえぐるように貫かれて、ファムレイユの体が跳ねた。

「ひっ! うぅ、あああ!」

容赦ない深いストロークに、体の熱は一気に昂ぶりを取り戻す。
鳴き声に混じり結合部からは、ぐぢゅぐぢゅと淫猥な水音が響き、ファムレイユの太股を蜜が伝う。

突き動かされるまま、まるでリズムを刻んでいるかのように唇からは声が漏れ、腰掛けにしがみ付いた指先は、力が篭り白くなる。

「こんな、姿……彼奴らに、見せ、らんねぇな」
「ひゃうぅっ! やあ……やだあ…ぁっ!」

貪るようにファムレイユの熱を味わうデュラハムの言葉に、ファムレイユの思考が一瞬我に返る。
しかし、言われた意味を理解した瞬間、襲う羞恥は快感へと擦り変わる。

「デュ…も、駄目…い、いっちゃ…」
「ん。俺も、もう、限界っ」

張り詰めた肉棒が肉壁を擦り、最奥の壁をズンと突く。
全身が痺れるような振動に、目の前が真っ白に染まる。
それでもデュラハムの動きは止まらない。

膨れ上がった快感が一気に弾けた瞬間、ファムレイユは意識を手放し、真っ白な世界に落ちた。

真っ更なシーツの上。
気怠い体を起こそうとしたファムレイユを、デュラハムが抱き締めた。

「何処行くんだ」
「……部屋に」
「もう良いだろ。今日は泊まってけよ」

背後から抱き絞めるデュラハムの手が、もぞもぞと胸を這う。
その感触に、再び熱を取り戻しそうになる体に気付いて、ファムレイユは慌ててデュラハムの手を掴んだ。

「ちょ、四回もやって、まだ足りないつもりですか!?」
「そう怒りなさんな。良いじゃねぇか、減るモンじゃなし」
「睡眠時間と体力は、間違いなく削られますっ!」

悪びれないデュラハムの手をきつく握ると、耳元で大きな溜め息が聞こえた。
それでも、ギリギリと骨が軋む程に力を込めていると、ようやく諦めたかデュラハムの手から力が抜ける。

「まったく……なんて体力してんですか、あなたは」
「惚れた女相手に、出し惜しみなんざ出来ねぇからな」

胸をまさぐるのは諦めたが、体を離そうとはしない。
今度はしっかりと腰を引き寄せられて、ファムレイユが深々と溜め息を吐くと、デュラハムは笑い含みに言い切った。

「何せエロ親父だからな」
「……っ!?」
「期待に応えなきゃ悪ぃだろ?」
「こ、応えなくて良いですっ!!」

しっかりと己の呟きを聞かれていた事に、ファムレイユはまたも狼狽する。

これから先もきっと、こうやってからかわれるのかと思うと、酷くもの悲しくなって、ファムレイユは溜め息を吐きながら目を閉じた。




翌日。

見習い騎士達の間で、既に二人の関係が知れ渡っていたのは、また別の話である。






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