シチュエーション
男は一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。 耳元にかかる規則的な吐息。自分がうつ伏せで下敷きにしている柔らかい何か。 そして、自分のものを包む、温かい肌。 「……っ!」 彼は慌てて身を起こした。しまった、なんて事を。行為の最中に寝こけるなんて、いくらなんでも失礼だ。 しかし寝起きに咄嗟のことで、謝辞を言おうにもうまく頭が回らない。もごもごと見っとも無く口を動かす 男の体の下で、少女はふんわりと笑いかけた。 「お目覚めになりましたか、ご主人様。」 その笑顔と見つめ合うこと数十秒。縺れた口が、独りでに動きだす。 「……私はどのくらい寝ていた?」 まず他に言うことがあるだろう。言ってからそう思うが、既に口から出た言葉は取り消せない。しかし少女は、 優しい笑顔のまま、静かに主の問いに答えた。 「ほんの十五分ほどですよ。」 「そうか。…いや、そうではなく……その、済まなかった。」 「とんでもありません。ご主人様に安らいで頂けて、私も光栄です。」 そうはっきりといい切る少女の笑顔に、翳りは全く見られなかった。 男は片手で少女の髪を梳いてやる。すると、彼女はうっとりと目を閉じた。重かったろう、と言うと、 その小さな頭は、彼の手の中で横に振れた。 「そんなことありません。今だって、もっと体を預けて下さっていいんですよ。」 そう言うと、彼女はすっと両手を回して、男の胸で自らの体を押し潰した。 潰れた膨らみ越しに、少女の息遣いが伝わってくる。しかし、男が体をずらそうとすると、彼女は 再び首を振った。 少女が言った。「お疲れなのでしょう。」 「そうだな。いや、こんな事は言い訳にもなら無いが、スレでちょっとした諍いがあって。」 「差し出がましく思われるかもしれませんが、ご主人様はきっと気を遣われ過ぎるのです。」 背中に回された小さな手に、ほんの少しだけ力が篭る。 「もう新スレが立ったと聞きました。」 「ああ、無事即死も免れて、投下も始まったよ。」 「なら、ご主人様もそちらに移られていいのでは。」 いっとき、間が空いた。少女の息が、緊張からか、はっと詰まる。しかし男はゆっくり身を起こすと、 そんな彼女に一つ接吻して、安心させるように囁いた。 「そうだね、君の言うとおりだ。」 「申し訳ありません。出過ぎたことを。」 「いいんだって。正しいのは君なんだから。」 そう言って、男は娘の背に腕をまわすと、彼女ごと起き上がってベッドに座った。入ったままの男のものが、 体奥を突いて少女に小さな嬌声を上げさせる。脱ぎかけの服から零れた乳房が、重力に引かれて たわわに実った。 「沢山の名作が生まれた初代スレだから、どうしても期待してしまうんだ。最後にまた、ってね。」 言いながら、顔にかかった少女の黒髪を払う。瞑られた目尻には、うっすらと涙が染み出していた。 「だが、確かに潮時だ。そうだな、もう私が埋めにかかるよ。」 少女が目を開ける。男は頬に手を当て、目尻の涙と唇を吸ってやった。 「おかげで踏ん切りがついた。すぐにかかる。」 「では、今日はもうお休みに?」 腕の中から、上目遣いに少女が見上げる。その視線を受け止め、男は笑って娘の胸に手を伸ばした。 「いや。今日のもやもやをすっきりさせたいんだ。手伝ってくれるかい?」 「っ…はい、喜んで。」 やっと戻った少女の笑顔に、男は引っ掛かっていた心のしこりが、すっと抜けるのを感じる。そして、 折角のこの笑顔を崩すのは勿体無いと思いつつ、手の中の柔らかな膨らみに、そっと指を沈め始めた SS一覧に戻る メインページに戻る |