シチュエーション
さらりとした長い髪が白い背中へ落ちた。艶めいた淡く白い輝きがヴォルテールは気に入っているのだと語っていた。 「それで、貴様はのこのこと逃げ帰ってきたわけだ」 クロウに語りかけながらヴォルテールは椅子に腰掛けた。 一糸纏わぬヴォルテールの姿は月の女神のように麗しい。男なら情欲を刺激されずにはいられない裸身を前にしても、クロウは跪いたまま微動だにしない。 「情けない。貴様、それでも男か」 主人の叱咤に従者は低く謝罪する。 「敗者には罰を与えねばな。そうだろう?」 ヴォルテールの爪先が跪いたクロウの顎を押し上げる。 「なあ、クロウ」 嫣然と笑むヴォルテールと真正面から見つめ合い、クロウはごくりと唾を飲み込んだ―― 「――という夢を見た」 目の前の主人はあっけらかんとそう言った。 「実は続きもあるんだが聞きたいかい?」 ヴォルテールは一生懸命に頭を振って否定する。 「あ、あの、わた、私はそんなっ、旦那様にそんなっ!」 半分泣きながら必死に否定するヴォルテールが愛らしくてクロウは笑う。 「女王様な君もよかったよ。意外とマゾっ気あるのかな、僕」 「旦那様っ!」 「冗談だよ。冗談」 ふっと耳朶に吐息がかかり、ヴォルテールはびくりと震えた。 「君は苛められる方が好きなんだもんね」 腕を引かれ、胸に抱き止められる。 とくんとくんと血液の流れが速まる。 「僕も君の困った顔を見ている方が楽しい」 唇が触れ、腰に腕が回される。 「ここで抱いてしまうと君は困るかな」 「こ、困ります。人が、来ますから」 慌ててクロウの胸を押すが、彼はより強くヴォルテールを抱きしめる。おまけに唇が項に触れてきた。 官能がじわりじわりとヴォルテールを支配していく。 「だめだよ。僕の話をちゃんときかなきゃ」 壁に押しつけられ、スカートの中へ手が差し入れられる。それは緩やかにヴォルテールの太股を撫ではじめた。 「君の困った顔を見るのが好きだって言ったばかりなのに」 くつくつと笑う主人の顔を見上げ、ヴォルテールは観念したように目を閉じて愛撫を受け入れ始めるのであった。 SS一覧に戻る メインページに戻る |