教授と助手5
シチュエーション


欲しいものを手に入れるためには手段は選ばない自覚はある。
退屈は嫌いで面白そうなものには首をつっこむ癖がある。

必死に声を殺す彼女はすごく扇情的だ。眼鏡を外しその綺麗な顔を快楽に歪めている。
慌しい情交はいつもこの部屋の中で、というか中だけで行われる。
白衣に眼鏡で美人、と誰かの妄想のような姿の彼女は俺の今一番のお気に入りだ。
彼女のことは入局する時に医局長から熱心で優秀だ、とは聞かされていた。
挨拶に来たときも別段意識はしなかった。女性なのに物好きとは思った。体力が大事な科だからだ。
どうしてここにしたのか。まあ頑張って。
綺麗な女性は目の保養になるから嫌いじゃない、というか好きだ。

研修医を終えて彼女は戻ってきた。医局で、病棟で、手術室で時折彼女の仕事ぶりを見る機会があった。
ずっと昔に俺も通った道。一緒に入局した他の医師と比較してもまあ頑張っているようだった。
最近では更に細やかな動きが要求されるようになったこの科で、手先は器用そうで育てばいい戦力になりそうだ。
意外だったのは普段はクールな印象の彼女が、患者さんの前では笑っていることだった。
病棟での回診の後で患者さんに話しかけられた彼女が、柔らかな笑みを浮かべていた。
へえ、と思った。あんな顔で笑えるんだ。患者さんから慕われているようなら、良い医師になるかもしれない。
医局長達との会議の時に、若手医師についての話になった。

「かなり良い人材が入りました。学内からが結構多いので、その後輩の勧誘もしやすいです」

各々の名が上がる中で彼女も話題に上った。評価は概ね良い。でも、と誰かが言った。

「いつまで続けてくれることやら。結婚して辞めちゃいそうですよね」

まあそうかもしれない。


ある日手術で下っ端助手に付いた彼女と一緒になった。視野を確保するために彼女の手が近くにくる。
彼女はその目に焼き付けておくかのように、一心に執刀する俺の手元を見ている。
その視線の強さにマスクをしているだけではない息苦しさを覚えた。
術後、手術部内の控え室でソファに座り込んで一息つく。さすがに立ちっぱなしは堪えた。
そこに彼女も入ってきた。使い捨ての術衣を脱いで緑の術衣を着ている。半袖、ズボンの一般的なタイプだ。
コーヒーを紙コップに注いで彼女は向かいのソファの端に座った。

「お疲れ様でした」

俺を見て礼をする。汗で術衣の色が濃くなっていて、半袖から二の腕が見える。
帽子は今は外していてまとめた髪のほつれ毛がすんなりしたうなじに張り付いている。
彼女が眼鏡を外して机に置いた。鼻根部を押している。
眼鏡をしていた時にもだったが、改めてこの子美人だ、と思った。
濃い緑の術衣が色の白さとのコントラストをなしている。
コーヒーを飲んで退出しようとする彼女の体つきをチェックしているのに気付く。
胸は結構ある。腰は細い。俺好みだ。
でも好みの女性なら沢山いるし不自由しているわけでもない。
個人的に接触する機会も別になく、それきり彼女のことは俺の意識にのぼることもなかった。

だから、手を出したのも偶発的だ。

いけない、とどこかで警告が発せられる。でも彼女の耳の感触は心地いい。
教室の一員で俺の部下で年若いひよっこ。
勉強させて技術を身につけさせて一人前にしないといけない、そんな相手。それ以外の目で見るべきではない。
そんな思いも本能の前にはあっさりと崩れた。
後ろから抱きこんで手を重ね、赤面する様子に興味がわいた。目の前の美味しそうなご馳走を食べたくなるのは当然だろう。
彼女を目の前にしてとんでもない理屈で迫ったように思うが、どうにかして抱きたくて押し倒した。

嫌がりながらも彼女は反応してくれたように思えた。
初めて個人的に関わる彼女が肌を上気させてゆく様が俺を興奮させてゆく。
胸を愛撫したときに背をしならせたのが、彼女からはっきりとした反応を引き出したのが嬉しくてその様子が可愛くて
思わず『可愛い』と言ってしまっていた。
しかし彼女は何故か醒めてしまった。諦めたように俺を受け入れはしたが、意地のように声を殺し最後まで通した。

「鎮まりました?」

問われて、俺が彼女に迫った言葉を思い出した。ああ、そっちは大満足。でもまずいことをやってしまったと思う。
謝罪を口にすべきだろう、そして今後は何事もなかったように教授と医局員としての関係に立ち戻るべき、だ。
それが一番面倒なことにならずに収まるはず。

だが俺の口は勝手なことを紡いでいた。そして口にすればそれが偽りない本心と気付く。
彼女を気に入った。面白そうだからこれからも関わりたい。
拒否して立ち去ろうとする彼女をだから言葉で縫いとめる。

「俺は続ける。分かったね」


あの時口走ったように彼女に全身全霊で教え込んでみようかと思った。
彼女を指導して一人前にする――まるで育成ゲームのようで、始めたら数年単位のことになる。
その間は退屈しなくて済むだろうか。
面倒くさがりだからか系統だって伝えていなかった知識や技術を彼女に集約するのは面白そうだ。
大学院に進学すると言うから最低でも四年は続けられる。彼女なら育て甲斐がありそうだ。
俺の連絡を無視し続ける彼女も、この提案には逆らえないだろう。逆らわせる気はもちろんない。

そして交渉の末、言い換えれば脅迫の末、彼女は俺に抱かれている。
完全に服を脱がす前に挿れてしまう性急さに我ながら笑ってしまう。時間が限られているから、といえばそれまでだが。
だけど必死に声を殺し、そして蕩けて締め上げてくる彼女の内部は実にいい。
食虫花のように蜜のような粘液をたたえて襞はうごめいて、奥に誘ってくる。
彼女のここがこんなに淫らでいやらしく反応するなんて、嬉しい誤算だ。
声を聞きたくて彼女の弱い部分を攻めたてる。中の特に弱いところを擦りあげると蠕動してきゅうきゅう締まって
こっちの腰が抜けてしまいそうになる。背中に回された手指に力が入り、上がる声に予想以上の満足感を覚える。

彼女には他所の女性と関係するのが面倒くさいからと言ってはいるが、本当に色々と手間をかけるのが嫌になって
彼女とするようになってから自然そっちとは疎遠になっている。
彼女なら緊急手術になっても、色々と忙しくしても理解してくれるし文句も出ない。
会う約束をしないので手配もいらないし、遅くなっただのすっぽかしただののトラブルにもならない。
同業だから話は通じるし何より同じ医局だから、動向の把握が容易で時間的なストレスは格段に軽減されている。
今の俺には彼女だけといってもいいくらいだ。
灯台下暗しか。こんなに近くに理想的な女性がみつかるとは思っていなかった。

だけど最近は単に気に入りで便利で退屈しのぎ存在から、それだけではなくなっている気がする。
彼女は俺があくまでもお手軽に欲望を解消するための一時しのぎで抱いている、と思っている。
そのはずだったのに傍にいてくれるのが心地よく、周囲にばれたらものすごく面倒なことになると分かっているのに、
分かっていながら手放したくなくなっている。
独占欲。それに彼女を可愛いと思う気持ち。
ゲームのつもりで始めたのに、予想外に生じたこの感情は厄介かもしれない。
彼女の奥に欲望を吐き出しながら面倒くさがりのはずの俺が、彼女ともっと近づきたい欲求に囚われる。






SS一覧に戻る
メインページに戻る

各作品の著作権は執筆者に属します。
エロパロ&文章創作板まとめモバイル
花よりエロパロ