宰相であり、側室
シチュエーション


「陛下!」
「聞かぬ」

短く言い捨て国王はその顔に不快な表情をのせる。年はようやく二十代の半ばを越したところだが、王位についてからの
年月と経験はは若者らしからぬ老成した雰囲気をもたらしている。
その国王の前に立つのはいくらか年若の宰相だ。地味に装ってはいるが美しい娘。
それが困惑をあらわに立ちすくんでいる。

「弟が成人し家名を継ぎました。私はもともと弟が成人するまでの暫定の宰相です。もう私の役目は終わったのです。
なのに何故宰相の罷免をしてくださらないのです」
「余の側を辞するのは許さぬ。そなたの弟が一人前になるまで補佐として伺候せよ」

宰相は妥協案を出そうとする。

「承知いたしました。では、私は城下の屋敷に下がり、そこから出仕いたします」
「それもならぬ。今までどおり余の隣の部屋に詰めろ。弟には余とは廊下を挟んだ部屋を用意する」

その夜宰相は、もう心情としては元・宰相は夜着に着替えて寝室の寝台に腰掛けていた。
宰相は国王と急に連絡を取る必要があったりするので特別に国王の隣の部屋を賜る。辞任を許されないとなって足取り重く
隣の国王の私室から自室に戻ったのが先ほどのことだ。
弟が一人前になるまで、それはいったいいつになるのか。それを見越してここ数年宰相見習いとして弟をつけて陛下の
側で教育と指導をしてきた。ようやく成人の儀を迎え、自分の目からも若干頼りないが手を離して本人の成長を促そうと
思えるほどになったのに。まだ陛下からは宰相としてはとても認められないと思われているのか。
自分が父について同じように陛下に仕え、女の身で宰相になったときより弟はよほどしっかりしている、と思われるのに。

国王の機嫌がよくなかったことや、自分や弟の行く末を考えると目がさえて寝台に横になったもののなかなか眠れなかった。
深夜寝室に人の気配がする。ドアの開いた音はしない。そもそもそちらには鍵をかけてある。
誰だ、と声をあげそうになった口を塞いだのは夜目にも間違えようのない、自分の主の姿だった。
国王の私室と宰相の部屋とは廊下に出なくても通じるドアが設けてある。これが使われるのはよほどの時だけだ。

「陛下、こんな時間に何事ですか。なにか大事でも生じたのでしょうか?」

すぐに寝台から抜け出ようとしたその体は気付けば国王に組み敷かれていた。

「陛下?」
「余の側を去るのは許さぬ。どうすれば繋ぎ止めるかと考えて、こうすることにした」

抑揚なく呟いた国王がいきなり手首を抑えて口付けてきた。なにが起こっているかわからない宰相はなすがままにされている。
それをよいことに口の中に入り込んだ国王の舌は、歯列を口蓋を好きに味わい宰相の舌に絡みつく。

「うん……ん」

ようやく唇が離れたときは宰相の力は抜けている。国王はその隙を逃さずに夜着をくつろげ宰相の白い肌に唇を落とし赤い痕を
散らしてゆく。唇が胸に来たとき宰相は我にかえって国王を押しやろうとする。

「陛下、お戯れはお止めくださいっ。私は」
「戯れではない」

ぞっとするような低い声だった。こんなに近くで聞いたこともない、見たこともない国王がそこにいる。

「そなたの薦める王女を后として娶った。王子もなした。有力貴族の娘も側室として抱いた。第二王子も、姫も産ませた。
もう血筋を残すという余の役割は果たした。――だから、好きにさせてもらう」

指先で先端をつままれ宰相は身をよじる。国王は片方を口に含んでなめしゃぶる。

「陛下、いけません」
「好きな女を抱いて、なにが悪い」

国王の言葉に宰相は動きを止める。今、なんと言われたのか?

「好き、な?」

呆然とする宰相から紡がれた言葉に、国王は唇をゆがめる。

「余がそなたを好ましく思って、焦がれていたのに気付かなかったか?好きな女から他の女を娶れだの進言された余の心情が
想像できるか?それでも宰相として側にいてくれればと我慢していたのにそれも辞するだと?――許さぬ」

国王は先端を軽く噛みしこらせる。無理に足を広げその付け根を指で嬲る。

「あ、へい、か。お止めくださ、い」

宰相の懇願も聞かず、執拗に敏感な突起を刺激する。何度妄想のなかで宰相を裸にして抱いたことだろう。
后や側室を抱くときも頭の中では、宰相を抱いていた。寝台のなかで、腕の中で白い肌を上気させて愛撫にもだえる姿を想像した。
やがて突起はふくらみ赤みを帯びてくる。それとともに宰相の腰がゆれてとろとろと蜜のような液がもれ出る。それを指ですくって
突起にぬりつけくりくりと刺激する。

「あぁっ、ん、あぁ……」

想像よりも甘くかすれた声に国王のそれははちきれんばかりに反応する。指で広げたそこに先端をあてがい宰相に告げる。

「そなたは余のものだ」

そして腰をすすめ宰相を貫く。痛みに硬直し、涙を流す宰相を見ながら国王はぎちぎちと自分を食いしめる圧力に耐え腰を動かす。
なすすべなく国王に揺らされる宰相の中に国王は精を放つ。茫然自失な宰相をきつく抱きしめやっと手に入れた存在に満足する。

「子ができれば弟の養子とせよ。余の側室を降嫁させる。子は育てさせぬ。そなたを、わが子といえども取られたくはないからな」

後の歴史書には宰相であり、側室の立場ながら実質には国王の妻として遇された女の名が記されている。






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