教授と助手11(非エロ)
シチュエーション


明かりもつけない部屋の中でソファに横たわって彼の下にいる。
胸のポケットの携帯が振動している。ちかちかと明滅するそれが布越しに存在を主張する。

「教授、携帯が」

携帯を取り出して彼が確認する。そして無造作にポケットに戻す。

「よろしいんですか?」
「……かまわない」

でも振動はしつこく続いている。見上げると彼はため息を一つついてソファに座り、携帯を操作する。

「もしもし。……何の用?」

向こう側からは女性の声が聞こえる。すっと体の熱が下がる気がした。
音をたてないように気をつけてそっと彼の様子を伺うと明らかに不機嫌だ。
かなり長い間、一方的な相手の話を聞いた後に彼は

「もうかけてこないでくれるかな。色々忙しいんだ」

そっけなく言って、会話を終えた。
これは、いわゆる……

「よろしかったんですか?」

彼は携帯をまたポケットに戻して私の手を握る。

「もういいんだ。終わった話だ」

不機嫌さを反映するかのように触れる彼の手は少し乱暴だ。

おそらく付き合いのある女性からだったのだろう。そして彼はその女性を切り捨てたというところか。
その人と彼がどんな間柄だったのかは分からない。でもその人はきっと彼のことが好きなのだろう。
人の上に立つ彼は、恋愛に関しても強者のようだ。
また携帯が振動する。でも彼はもうそれを気にするそぶりはない。

私と彼の間で響くその振動は私の中に波紋を広げる。
今の彼は私を抱いている。でも彼には他に女性は沢山いて、私は手軽がとりえの彼のお相手だ。
彼に触れられて一度下がった私の熱が再び上がってくる。そしてもっと熱い彼が入ってきた。
揺すられ快楽に溺れながら、彼からの連絡が、呼び出しが来なくなる日を想像する。

――いつかは私の番がくる。

その時私はどんな感情でいるのだろう。お役ごめんに安堵するのだろうか、それとも……

携帯は振動を止めていた。






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