ラグーン色
シチュエーション


今日の恋愛運は『目上の人から告白されるかも』であり、ラッキーカラーは『ラグーン』。

……え!? 何色!?
ラグーン色なんてgoogleにも出てこないよ!?

──「ということでなんとなくブルー色なのです」

と私はご主人様に報告した。
ご主人様はちょっと憂いを秘めて、秋風のように微笑んだ。
大きな窓から斜めに射し込んだ朝日が、食堂全体に満ちていた。
遠くから届く、今年最後の蝉の声。

──私はご主人様に見とれてしまう。

私はご主人様が死ぬほど好きだ。
同性だとかそういうのは関係ない。好きになってしまったのだからしょうがない。

「……それ、当たってるわ」

ご主人様がスプーンを置いて、言う。
私はトレーを胸元に引き寄せて、小さく首を傾げる。

「ブルーが、ですか?」
「それは知らないけど、その目上の人に、の方」
「それは……、ありえないのです。だって私の目上の人はご主人様だけなのですよ?」

すっ、とご主人様が立ち上がる。
すぐにルレクチェのようなたわわな胸に目がいってしまう私はもうだめかもわかりません。

「ありえるかもよ? というか、ありえるのよ」

ご主人様の手が私の肩に触れる。
メイド服のフリルをぴんっと指で弾いて、私の唇をその指でなぞる。

な、なんでしょうか…?

「好き。ずっとずっと好きだった」

──もう一方の手はスカートの中に入ってきていて、私の太股を這い上がってくる。
あぅ、と思わず声を上げて後ずさる。
けれど私の後ろは壁だった。

「ふふ。奉仕、してあげる」

少し乱暴に壁に押しつけられる。
トレーを放り投げられる。ぐいっとご主人様の脚が私の太股の間に入ってくる。
あごをぷいっと掴まれ、あっという間に唇を奪われてしまう。

──ああ、幸せ。
しかし、これが私の中の悪魔を呼び覚ましたのだった。

「……ご主人様。奉仕するんだったら、メイド服、ですよ?」
「え? 何か言った?」
「私のことが好きで私とこういうことしたいなら、メイド服着れよです!」

我ながら暴走しすぎだと思う。
でも、私の中の悪魔が止まらない。
ご主人様は目を丸くして思考停止している。
私は自分のメイド服を脱いで、ご主人様に投げつける。

「着れよです。そして私のことをご主人様って呼べよです!
そしたらえっちなことしてもいいよです!」

ご主人様が目に涙を浮かべた。
そして、うん、と小さく頷いてドレスを脱いで、私のメイド服を拾った。
私の頭の中は沸騰状態だった。

──憧れのご主人様が私のメイド服を着る。
私はご主人様のドレスを着る。
それだけでもう半分イッてしまう。脚が震えてしまう。

深層心理ではそうなのだった。
私はメイドに徹してご主人様に奉仕しながら、ご主人様に奉仕されることを妄想していた。
私はご主人様に自分自身を投影していた。
そして、メイドをするご主人様を演じてもいた。
でもそんな後付けの理屈はどうでもいい。

──ご主人様のメイド服姿は犯罪そのものだった。
豊かな胸がメイド服をぱつんぱつんにしていた。
ゆえに床にへたりと座っているご主人様をぐぐっと抱き寄せて、その膨らみをわし掴みした。

「ご主人様っ! メイドってのは怖いのです。大変なのです。

そこらへんわかれよです」

「う、うん。わかってるつもり、だけど……」

近くにあった蝋燭をご主人様の胸に押しつける。
それはメイド服ごとご主人様の胸の谷間に沈んでいく。
ご主人様は不安そうに蝋燭と私を交互に見る。
蝋燭をゆっくりと前後に動かしていく。

「ご主人様。お客様が来ると、メイドはこうされてしまうのです。
服の上からパイズリされてしまうのです。
そして顔に掛けられてしまうのです。
ご主人様に知られない処でメイドはひどい仕事をしているのです」
「ん……んっ、知らなかった……。ごめんね……」

捏造だった。
私はご主人様の胸を揉みしごきながら、
いつもこんなひどいことをされている、とウソを並べた。
ご主人様は本当に申し訳なさそうに悲しそうな顔をしていた。
だから、そのあと私がご主人様の乳首を口に含んでも怒らなかった。

──「では、私はご主人様のご主人様として、ご主人様の初めてをもらうのです」

ご主人様の可愛らしい割れ目を開く。
ご主人様はもうぐったりとして抵抗もしない。
私は舌を伸ばしてピンク色のびらびらを分け入って、膣口にねとりと入っていく。
やさしく拡張していきながら、私の愛液で湿らせた中指をゆっくりと挿入していく。
つぷりと空気が逃げる音がする。痛くないようにと舌を這わせる。
ふと顔を上げる。
ご主人様がメイド服の上から自身の胸に手を這わせている。

──いい淫乱メイドになれそうですね、ご主人様。

ご主人様が、痛いよ……、と小さく言い、
私の欲望は達成された。

──

「…… あれ? これってご主人様のメイド服ですか?」
「うん。そう」

あの日から、私たちは2人ともメイドになった。
ご主人様はご主人様だけど、メイド服を着たご主人様だった。
それは傍から見たら、不条理で奇妙な光景なのかもしれなかった。
でも私たちの中の真実はこれで合っているのだった。
……とかいう強引な締めはどうでもいい。

「ご主人様。とってもメイド服が似合うのです。今度、お客様に奉仕すれよです」
「う、うん。メイドがすれっていうならしてみるよ……」
「じゃ、練習するのです。私のここを、舐めれです」

ご主人様の黒目がちな瞳に憂いが灯る。
私はご主人様の頭を掴み、強引にクンニさせる。
不器用に恐る恐る、私の割れ目に舌を這わせていく。

──ふと、私は遠景に目が行く。
私たちのいる孤島。
ラグーン。
それは何色なんだろうか。
夏は終わりを迎えていた。
ゆっくりと秋が近づいてきているのを、
頬に当たる風から感じてしまう。

……ラグーン色、かあ。

ご主人様の髪の色はまるで空と同じような青だった。
だったらラグーン色は青でいいや、と思う。

だって、メイドはご主人様がいなければ存在しない相対的な物だし、
ラグーンだってご主人様がいなければ存在しないものね。

……違う。全然訳わかんない。
そんなやって話を無理矢理回収する必要もない。
ご主人様の奉仕を受けながら私はそう思う。
メイド服のご主人様に奉仕されて頭がおかしくなったメイドが私なのか。
でも、ラグーン色ってどんな色なのかなあ。
本当に。
本当に。






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