シチュエーション
「あははは、お馬さん、お馬さん、パッカパッカ。」 パシッパシッと、尻や腰に平手が飛ぶ。子供の力だ。痛くもなんともないが 長時間同じ姿勢をやらされてる上、固いフローリングに押し付けられて肘や膝が ガクガクしてくる。最初はなんとも思っていなかった背中の少女の重みも次第に ズシリと堪えてくるこんなこと、いつまでやってなきゃならないんだ!? 「ほらぁ、もっと早く走ってよ!」 パシッとまた尻を一叩きされる。 「フゥーン、フゥーン!」 俺は馬の鳴き声を真似して叫び、床を這いずるスピードを さらに 上げる。くつくつ、と笑い声が上がった。「見てよ、あのかっこ!!」嘲笑の 主が誰かよくわかってる。振り向いて 暖炉の脇に立っているはずのそいつをにらみ つけようとした矢先、口にくわえている 手綱代わりの紐をぐいっと引っ張られた。 「んくっ!?」 「はぁい、どうどう!」 そして、俺の背中に乗っている奴はとんでもない事を言い出した。 「ねえ、そこの火かき棒をとってよ。あんまりひっぱたいてると手のひらが痛くなって きちゃう。」 「ええ、いいわよぉ。」 視界の隅で太い鋼の火かき棒が手渡されている。 おい、冗談だろ!? 「さあ、いくわよ。走りなさい!」 ビュッと棒が振り下ろされる。 尻に硬い棒がめりこみ、骨にまで響く。 「いってえっ!!」 俺は馬が躍り上がるかの ように反り返って尻を右手で抑えた。ドサッと背中に乗っていた奴が床に落ちる音 を聞きながら。 「いったぁーい!!」 金切り声が背後から上がる。俺は怒りに震え つつくるっと体を180度回して今まで騎手気取りだった奴の顔をにらみつける。 「ジェシー!!」 床に落ちた痛みで目に溜めていた涙が、俺に怒られてみるみる あふれ出し頬を伝い落ちる。やがてダムの決壊を思わせる勢いでジェシーは 大きく口を開けて泣き始めた。 「うわぁあぁあぁん!!」 俺はイライラしながら叫んだ。 「泣きたいのは俺の方だよ!!」 もうどうにでもなれという気分だ。いったん泣き出したらジェシーはなかなか泣きやまない。 きらめき輝くような美しい金髪を振り乱してひたすら泣き叫ぶのを困惑しながら見守って いるその時…。 ゴギッという鈍い音とともに身体の一番下から衝撃が走る。衝撃は言いようの 無い痛みと気持ち悪さに変わっていく。息が詰まり、目がくらみ、油汗があふれて 額から滴り落ちる。後ろから股間を蹴られた! 「うああああっ!?」 俺は股間を押さえ て床の上をゴロゴロと転がりまわった。 「ジェシーを泣かしたわねえ、この薄らトンカチ。」 エリが怒りに燃える目で俺を見下ろしながら吐き捨てた。 「あんた何様だと思ってんのよ。この間抜け!」 そう罵りながらエリはのたうちまわる俺を息継ぐ間もなく何度も蹴り飛ばす。 おれは股間と腹を守るために身体を九の字に曲げて弱い部分を上から両腕で 押さえガードした。。 その間にも何度もエリの固い靴先が俺の背中にめりこんでいく。 「あーら。エリったらまたヒースと遊んでいるの?」 軽やかだが氷のように冷たく蔑むような声 が耳に流れてくる。エリがその声に応じた。 「デイジー。ヒースの奴がジェシーを泣かしたのよ。地面に叩きつけてね。」 「しょうがないわねえ。」 俺には見えないがそう言って肩をすくめているのだろう。 「殺さない程度にほどほどにしときなさい。」 デイジーは足音を残して部屋から出て 行った。 「エリ…。」 今度はルビーの声だ。 「このぐらいにしておきなさいよ。」 エリは荒く息をつきながらルビーに答えた。 「ええ?まだ蹴り足りないわよ。あんたも一緒に蹴らない?」 ルビーは言った。 「ヒースにはまだいろいろやらせなくちゃいけない用事があるのよ。 もし骨とか折れたら面倒じゃない。」 エリの蹴りがようやく止まった。 「それもそうね…。」 エリはつぶやいた。 「さあ。もうお仕置きはこれで勘弁しておいてやるわ。」 やっと終わった…背中がズキズキする…かなり青アザをつけられたに違いない…。 「さっさと起きなさいよ!」 最後の一発とばかりに思い切りエリは俺の背中を蹴り上げた。 息が止まりそうになるのに耐えながら俺はヨロヨロと立ち上がった。 やっと黒髪でクリッとした丸い青い目、高くて形の良い鼻が特徴のエリとブラウンの髪で同じ 色の大きな 瞳、可愛い赤い唇の持ち主のルビーの二人の顔をはっきりと見ることができた。 ルビーはきっぱりとした口調で言った。 「ヒースクリフ。あんたが悪いのよ。可哀想な ジェシーの ためにフォルックさんのお店でキャンデーの詰め合わせを買ってきてやりなさい。」 「はい…。」 俺はフラつきながら玄関に向かった。ふと振り向くと泣き腫らしたジェシーの目と 視線が 合ってしまった。ジェシーはベーッと俺に向かって舌を突き出した。 俺の名前はヒースクリフ。この屋敷に来る前には別の名前があったが 旦那様がつけてくださった今の名前以外に俺の名前はないと思っている。 俺は両親の顔を知らない。俺が赤ん坊の頃から知っているという年老いた 片目の爺さんが俺は辺境の遊牧民の子供で両親は生活に困って、まだ 赤ん坊の俺を将来の奴隷として売ったらしい。ガキの頃から俺は 売られた先の家で揉め事を起こして、また二束三文で奴隷として 売りに出された。いくつの家屋敷を転々としたことだろう。 三年前、俺はモードント様、すなわち旦那様のお眼鏡にかなって 小貴族のエルバンジュ家に迎えられた。エルバンジュ家は戦士の家柄 だった。俺は戦場ではモードント旦那様の側近く仕え、共に剣を取って 戦う奴隷戦士、マムルークとして働くことになった。 旦那様は俺にヒースクリフという名前を与えてくださった。そして、 戦い方はもちろんのこと読み書きや計算まで、厳しさの中に優しさと気遣い を秘めて俺に教えてくださった。奥様のジョアンナ奥様もとても優しい方だった。 時々、俺は旦那様の機嫌を損じてひどく叱られたがそんな時、奥様は俺を 許してくれるよう、旦那様にとりなしくてくださった。旦那様と奥様には 四人の娘、上からデイジー、エリザベス(エリ)、ルビー、ジェシーの四人の 娘がいたが俺をまるで実の息子のように扱ってくださった。俺も旦那様と奥様 を実の親のように慕っていた。だが…そんな暖かい日々は半年前に終わった。 俺と旦那様は北方の遊牧民との戦いに参加した時だった。旦那様はかすり傷から 菌が入ってそれが元で重い病気にかかり、俺に看取られながら亡くなられた…。 奥様は可哀想にハウゼンの都のお屋敷でその悲劇を知り、最愛の夫と最期まで 一緒にいてやれなかった事を悔やみ、やがて病にかかり…旦那様の亡くなった 三ヶ月後に後を追うように亡くなられた。 エルバンジュ家の当主は長女のデイジーが継いだ。その日からだった。 俺が家族から再び奴隷、いやそれ以下の存在になったのは。 風呂場をもうもうと湯気が覆いつくしている。俺はそんな中、シャツと パンツ姿で二つの美しい背中を前に立ち尽くしていた。彼女達と風呂に 入る…奥様が息を引き取る三ヶ月前までは考えられなかった。 自分達の裸を見られても平気ということは俺を同等の人間、異性と考えて いないのだろう。そう良くて下位の人間、あるいは動物、果てには物、に 見えるのだろう。だが…俺は物じゃない。平静でいられるわけがないんだ。 エリザベスことエリとルビーは15歳になる双子だった。ただ、双子という わりには二人とも似ていない。髪と目の色が違うし性格もまるで違う。 目の前の背中もまた違っていた。エリはやや色黒で女の子としては肩幅も 広い。だが俺を迷わすのは優雅な背から腰に至る曲線と豊かな肉のついた 見事なまでに丸い尻だった。俺の好みにぴったりの形だった。 それに対してルビーは身体の色は抜けるように白いものの、背から腰に 至る線は平坦で尻の肉も薄かった。エリとルビーの体型が逆だったら 良かったのに、俺は残念でならなかった。エリはいつも気にいらない ことがあるとさっきのように俺を蹴ったり鞭や棒で殴るからだ。 それとうってかわってルビーは優しかった。俺がエルバンジュ家の 息子から奴隷以下に落ちたあの日と変わらず優しく接してくれている。 ただし、デイジー、エリ、ジェシーの目に隠れてだが…。 「早く流しなさいよ。」 エリの声に俺は物思いから覚めた。 「はい。」 俺は洗面器にお湯で満たし、ざーっとルビーにかける。 その後、同じように湯をエリにかけた。 「熱いわね。」 エリがきつい口調を俺に投げかけた。 「すみません…。」 俺は謝った。ちょうど良い湯加減だったはずだ。現にルビーは何も言わな かったのに。俺は石鹸をつけたタオルで気を使いながらエリの背中を 洗い始めた。湯を弾く艶やかな肌。タオルから伝わるゴムのような固さと 柔らかさ。腰の曲線。脇の下からのぞく優雅な球体…俺は唾を飲みこんで 音を立てないように注意しながら…そして股間に血が入りこんでくるのを 感じながらできるだけ優しく少女の背中をこすっていく。 SS一覧に戻る メインページに戻る |