シチュエーション
「しのぶ。忍」 名を呼ばれたことに気づくと、彼は自分の主に近づいた。小さな小さな、お姫さま。彼にとって少女こそが唯一の存在。 「お嬢さま、どうしました?」 闇のベールが世界を覆っている。外はしとしとと涙していた。月は隠されている。仄かな青と淡いオレンジの光だけが、ふたりを照らしていた。 「しのぶ。眠れないの」 「またですか?」 少女は唇を尖らせて、仕方がないじゃない…とこぼす。そんな幼さの残る行為が愛しくて、彼は知らぬうちに微笑んだ。 少女の額をなでてやる。柔らかな髪が気持ちよい。 「眠れるまでここにいてあげますから」 「手ぇつないでくれる?」 「ええ」 差し出された小さな手を握る。柔らかな手。ほのかな暖かさ。雨の音。愛おしさが募る。 少女は安心したように目をつむった。 「おやすみ忍」 「おやすみなさい、お嬢さま」 そんなふたりによって保守。 SS一覧に戻る メインページに戻る |