シチュエーション
![]() ―秘密の時間―― ―どこかの街の―――とあるお屋敷で――― ―少女は彼のために――その華を開かせる―― 「お休みなさいませ…麗葉様」 麗葉と呼ばれた見目麗しい少女は夜着を纏い鷹揚に頷く。 丁寧なお辞儀をして侍女達が部屋を次々と退室してゆく。 侍女達を見届け残された彼女はそっと寝台を抜ける。 ガウンを羽織ると足音も立てずテラスまで歩いていきガラスのはめられた扉を開け放つ。 「いつまでそこに居られるつもりですか?貴方も早く私の部屋から退室なさったらいかがです」 麗葉は冷えた瞳を外側の壁に背をつけた青年に向ける。 屋敷の令嬢に睨まれた青年は腕を組んだまま不敵に口元を歪める。 「ここは部屋の外ですよ?」 「それでもここは私の寝室のテラスではありませんか!ならば私の部屋と同じでしょう!?」 そこで初めて彼女の顔に赤みが走り怒りを露わにする。 白い頬に血の気の昇った彼女の顔は美貌が損なわれることなくそれどころか華が開いたように美しい。 青年は彼女の顎を掴みその顔をじっくりと見つめる。 怒りの気配をいっこうに隠そうとしない彼女の引き結んだ唇を半ば強引に奪う。 「…っぅん、…んっ…」 一時の間、貪られた唇が離されると即座に平手が青年の顔に飛んでくる。 「き、如月……この不埒者!」 打たれた彼・如月は特に気を悪くしたでもなく、熱の灯った頬を手の甲でさする。 「俺にそんなに邪険にしてもいいんですか?」 興を得たように彼は目を細めて麗葉をのぞき込む。 はっと息を呑んで麗葉は憎々しげに唇を噛んで顔を背けた。 闇の中で蠢く肢体。それは折り重なり絶えず湿った熱を外気に晒している。 白くきめの細かい少女の身体を男が貪っている。 「…あっ…ん…、はぁっ…」 「まったく、お身体の方だけはお利口になったようじゃないですか…」 潤みの帯びた勝ち気な瞳で麗葉は自分にのしかかる男を睨む。 彼女の両足の間には如月の身体があり閉じられないようにしてある。 「は、はやく済ませてしまって…!」 彼女を己の下に組み敷いた如月は柔らかな胸の膨らみに唇を落とす。 「…ひっ」 「……お断りいたします。外で貴女がお一人になるまでずいぶん待たされたのですから、 その分は貴女のお身体で償って頂きます」 そう言って彼は麗葉の乳房の尖端を舌の先で転がした。口をすぼめて吸い上げれば 悲鳴に近いような息の音が麗葉の唇から漏れる。 それを見て如月は薄い唇に笑みを刻み込む。 「じっくりと堪能させて頂きますよ」 「いやっ…、ぁあっ……」 如月は熱く熔けるような彼女のそこに己の欲望を宛ったままそこを蜜を絡ませるようにして擦りあげている。 いつそれは入ってくるのかわからぬ状況はかえって彼女の恐怖と其処に潜んだ興奮を煽らせる。 「実にお可愛らしいですよ…麗葉様」 麗葉はその声音に彼の暗い情念を感じてぞわりと肌を粟立たせた。 如月の冷えた手が麗葉の内側の腿をなで上げる。繊細な指使いで湿っている場所を暴いていく。 彼の指先が麗葉の敏感な部分を擽る。 執拗なその刺激に彼女自身認めたくはないことだが耐え難い疼きが麗葉の身体の内を駆けめぐる。 「ふぁ……あ…、きさ…らぎ…」 「どうしました?」 麗葉の呼びかけに如月は悪魔の誘惑のように優しげに応える。 「お願い…」 麗葉の可憐な唇が泣き出しそうの震えている。 「いつもお教えしているようにちゃんとお願いできますでしょう?」 気遣うような声音と裏腹な残酷な言葉に泣き出してしまいそうな麗葉は屈辱を必死で顕わすまいと目をきつく瞑る。 「…い、いれて…中に挿入して下さい…」 瞑ったままの瞳から一筋の屈辱の涙が零れる。それを如月が舌先で追う。 やがて彼の舌は麗葉の涙の根源である目蓋、雫の絡まる睫毛も舐めていく。 「如月ぃ!」 堪えきれず麗葉は彼の髪の毛をいささか乱暴に引っ張る。 「…っ、痛いですよ麗葉様。まったく堪え性のない方だ」 そう言いながらもようやく如月は麗葉の願いに応えて彼女の腰を掴む。 麗葉は屈辱にすすり泣きをしながら如月に身体を任せる。 「入りますよ…麗葉…様」 「ひぅ…っ」 ず…ずぶ… 彼の腰が沈みはじめると麗葉のつま先がぴくっと震えた。 かまわずそのまま如月は彼女の花芯に己を深くすすませる。 「…ぁ…あ…きさら…ぎ…ぃ……っ」 麗葉の鈴を鳴らしたようなか細い声が如月の耳朶を震わす。 出迎えた時とは比べ物にならないほど甘い麗葉の吐息が彼の胸を擽っている。 「…はぁ…少し…締めつけすぎですよ…いい子ですから、緩めて貰えませんか?」 「…やぁっ」 幼子をなだめるような男の口調と駄々っ子のような少女の声。 実際にはそれと裏腹な淫靡な光景が部屋では繰り広げられていた。 「無茶をして、この前の朝のように起きあがれなくなっても知りませんよ?」 耳を舐められていた麗葉はその言葉に目を見開く。 「やっ、…そんなの…ォ、困るわ!…明日は海外からお父様が帰ってくるのよ!」 「そうですよ…お出迎えの準備がありますから寝てることはできませんね」 如月が麗葉の様子を見計らって抽送を開始する。 麗葉は彼からもたらされる感覚に震えが止まらないでいる。 異物が麗葉の内部をまるで我が物のように傍若無人に荒らしていく。 「…くぅ…ん、あぁっ…、はぁぅ、…あん…」 「お辛くはないですか…?」 如月が突き上げながら聞いてくる。 それは一種の義務のようなものだと麗葉は思っている。 「つ、辛いって…いったら…あっ…止めて、くれる…ンっ…とでも?…」 「いいえ」 即答して答える彼にやはりと思った。 「…んっ…ぁあんっ…はぁんっ…いつか…お父様に…言いつけて…やるわ…」 ふっと息がかかる。如月が笑ったのだ。赤く色づいた耳元に囁くように唇が寄せられる。 「できないでしょう?」 「んっ…んっ…そんなこと……ひゃぁん」 体の重みをかけてぐりぐりと如月の怒張が奥にねじ込まれる。 「お忘れですか?そうなれば…私も貴女の秘密も、貴女のお父様にばらすことになるのですが…」 彼女は喘ぎながら弱々しく首をふる。 「…はぁん…そんな卑怯よ…ぁ…あ」 「そうですよ…私は狡いんです…いい加減わかったでしょう」 汗が二人の身体から混じり合って滑り落ちる。 熱い息が何度となく絡み合う。 「あっ…あんっ…はぁっ…如月…もう…私……あぅぅっ」 と、そこで麗葉の身体が痙攣し彼女は達してしまったようだ。 だが如月はいまだ急速も与えず更なる高みへと彼女を追い上げる。 「…ふ…ぁあんっ…ひゃぁっ…だめ…休ませて…あぁん」 悦楽に狂わされた泣き顔はどこかあどけなさを彼に感じさせていた。 華奢な少女の身体はいまや男の情欲をひたすらに受け止めて可哀想なくらい震えている。 ぶつけられた強い衝撃に肉の薄い細い脚が跳ねる。 柔らかそうなお椀型の乳房が上を向いて惜しげもなく晒されている。 そのすべてが如月の情欲をどうしようもなく駆り立てた。 狭い内部がより窮屈になった気がする。 「はぁあんっ…如月…もうこれ以上…は……あぁ……だ…だめぇっっ!」 きつく締め上げられて射精感が限界に近くなる。 如月の額から汗が零れて麗葉の肌に玉をつくる。 「…は…っ……共に…昇りつめましょう…」 熱情に浮かされた声を吐く。 そして如月は荒々しいまでに麗葉の身体を突き上げた。 「…はぁぁンっっ…あっあっあっ…あああぁあ…あんっあんっっ…」 その瞬間、快楽に溺れきった麗葉は雷が落ちたかのように裸身を痙攣させ… 「…っく」 「……あ…あぁああーーーー―――」 彼女の内部が怪しく蠢き如月は堪えきれずその中に熱い情を叩き付けたのだった。 たおやかな白い腹の底で男根を銜え精を絞る少女の様を如月は淡々とみつめていた。 「お父様、お帰りなさい」 翌日、麗葉はにこやかな笑みを称えて父を出迎えた。 穏やかな性質と厳格な雰囲気を併せもつ初老に近い風貌の紳士が麗葉の父だ。 「おお、麗葉…ただいま。如月、何か家で変わったことはなかったか?」 父が如月に目を向ける。麗葉もはっと食い入るように彼を見つめる。 そんな彼女を瞬きにも満たない間一瞥すると「変わりありません」と簡潔に答えた。 瞬間麗葉の肩から力が抜ける。 「お父様…お茶を煎れて差し上げますわ。あちらでお待ちになってて」 彼女はできるだけ平静を装いその場から離れた。 麗葉が父のためにお茶の準備をしていると誰かが入ってくる。 「お手伝いいたします」 「北都…」 麗葉の表情が自然と柔らかいものになる。 彼女の幼なじみであり乳兄弟でもある北都。 麗葉の乳母の息子で幼い頃から屋敷に出入りし幼い頃は麗葉の良き遊び相手であった。 成長した今は屋敷の使用人として働いている。 今でも仲の良いことに変わりはなく暇を見つけてはこうして麗葉の元へ顔をだす。 麗葉にとって彼は幼なじみ、乳兄弟というだけでなく…この世で最も大切な人でもある。 「麗葉様?」 彼女が難しい顔をしていたからだろう…北都は顔を傾け心配そうに覗きこむ。 麗葉は何でもないと口の端を持ち上げて首を振る。 「…様は要らないと言ったでしょう?」 そんな自身の言葉に気恥ずかしさを感じながら傾げた彼の顔に唇を寄せる。 「…ん…」 口付けを交わしながら背中に彼の腕が廻されてすっぽりと抱き込まれる。 優しいぬくもりがたまらなく嬉しい。 愛しい人…愛しい時間… ――彼のためなら…彼と一緒にいるためならたとえどんなことでも堪えてみせる。 父に茶を煎れて少し会話をしてから部屋を退室する。 廊下の角を通り過ぎるところで何者かに腕を掴まれる。 「…如月!」 驚き見上げれば憎い男の顔があって麗葉は厳しく顔を歪めた。 「おや…先ほどの北都の時とはずいぶんと対応が違いますね?」 「いやらしい男!見ていたのね?!」 その様子に如月は鼻先で笑った。 「図星ですか」 かぁぁ…と麗葉の顔が羞恥に染まっていく。 腕が上がるが受け止められる。 か細い腕ではとても男の力に対抗はできない。 壁に押しつけられて悔しげに拳を握る。 首筋を如月の舌が這い唾液の道筋を残す。 「…やぁっ…」 「約束しましたよね…貴女と北都の関係をばらされたくなければ私に従うと」 麗葉はこれまで如月のこうした行動を許せず何度父に屈辱をうち明けようかと 迷ったことか…だがそうなれば如月もまた北都との関係を父に話すだろう。 如月は若いながら器量が際立って良く父の信頼にも厚い。 その彼に関係を父へばらされればその時点で北都は屋敷を追い出されるかもしれない。 そんなことになるくらいなら…! 「例のお時間にお会いしましょう…」 そう囁き彼が手を離すと麗葉はその場に力無く崩れた。 ――だからこれは愛する人との関係を続けるためには受け入れるしかないのだ。 それがその愛する人への裏切りだとわかっていても。 麗葉の頬に透明な雫が滑って零れた。 「入って…」 「遠慮なく」 夜の帳がおりて静かな寝室に湿った熱がこもる。 二つの息遣いが艶めかしく空気を震わす。 いつか…すべての秘密が明るみにでることになったらどうなるだろう。 北都も如月もこの屋敷をでてゆくのだろうか… 北都はこの裏切り行為を知ったら私を軽蔑するのだろうか… 如月はやはり笑って立ち去るのだろうか… その時は私はどうなってしまうのか… 「…ぁあ…」 やり場のない吐息が麗葉の唇から虚しく吐き出されたのだった――。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |