ジン×姫君
シチュエーション


「そういうことならば俺の出番だ。主たる姫君の望みとあらば死力を尽くして叶えて差し上げよう。一言申しつければよい。さあ、ジン。私の命に従いなさい、とね」

にやりと不敵に笑むジンを前にしてアイーシャは眉を寄せた。
浅黒い肌に切れ長の紅い瞳。ターバンから僅かに覗くのは月の光に似た白銀の髪。目の前の男の美しさは人間のそれとは異なるものだ。

「……また聞き耳を立てていたのね」

アイーシャは自らの左手に視線を落とした。人差し指に煌めくのは、数週間前に兄からいただいた紅玉の指輪。
アイーシャは溜め息をついて指輪を飾る紅玉を撫でた。
目の前の男は今し方、この指輪から現れた。彼は指輪に宿る精霊なのだ。

「聞き耳とは人聞きの悪い。お前が指輪を肌身離さず身につけているから嫌でも耳に入るんだ」
「抜けないのだもの。仕方ないでしょう」
「まあいい。そんなことよりも早く言え。お前が望めば何でも叶えてやるぞ」

先ほどの慇懃な態度はどこへ行ったものか。アイーシャが思うように動かぬと理解するやいなやジンは不満たっぷりに表情を歪めた。

「けっこうです。あなたの手を煩わせるほどの問題ではありません。それに、問題はもう解決済みです」

ゆらゆらと空中に浮き、ジンはアイーシャの傍らであぐらをかいている。

「つまらん姫君だな。欲はないのか、欲は」

薄手のベールを引き、アイーシャに顔を寄せる。

「お前が望めば世界一の大富豪でも手に入らぬような黄金の宮殿を作り出すこともできるんだぞ」
「そんなものを用意されても困ります」
「金銀財宝に興味がないとすれば何だ。美貌か?ジンニーヤと比べてはまだまだだが、人間にしてはそれなりに美しいほ」
「黙りなさい」

ジンの腕からベールを奪い取り、アイーシャはくるりと背を向けて歩き出す。

「なんだ。怒ったのか?」
「まさか。なぜ私が怒らなければならないのです」
「女というのは訳もなく怒り出すものじゃないか。特に月に一度の」
「ジン、あなたは部屋で待機していなさい」

あぐらをかいたままふわふわと逆さに浮き、ジンはアイーシャと同じ速度で進んでいく。
アイーシャは少しばかり歩む速度を速めながら、頭上を漂うジンをきつく睨みつけた。

「そういう顔をしてるときが一番艶がある。いい女だな、アイーシャ」

アイーシャの話などまるで聞いていないとばかりにジンはにっこりと笑んでみせた。

「……私はこれからサーリム兄様の元へ参ります。それからシェーラと織物の練習をして、読みかけの書物を読んでしまいます。ついでにアニスに手紙も書きたいと思っています」
「ふむ」
「わかりますか。私は忙しいのです。あなたの戯れ言に付き合っ……きゃっ、ジン!」

いつの間にか地面に降り立っていたジンに唐突に引き寄せられ、アイーシャは円かな瞳をさらに丸くする。

「予定をすべて投げ出して俺と悦楽の海に沈むというのはどうだ」

耳元に低い囁きが落ちたかと思うと、顎を持ち上げられて強引に唇が重ねられる。
触れるだけの口づけではない。舌を絡め、唾液を交換しあう深い深い口づけ。
咥内を蛇のように這い回るジンの舌を感じ、全身が総毛立つ。
背中を優しく撫でられ、アイーシャは無様に座り込まぬようジンの胸にしがみついた。

「い、嫌です。離してっ」

唇が離れたのとほとんど同時に担ぎ上げられ、アイーシャは体をばたつかせて抵抗を試みる。
しかし、小柄なアイーシャと優男然としていても魔物であるジンでは力に差がありすぎた。アイーシャの抵抗など風に吹かれるほどもないとジンは涼しい顔で来た道を逆戻りしていく。

「心配するな。死なない程度にしておいてやる」

抱えた手で尻を撫で、ジンは楽しげに笑う。

「この四日ほど退屈だったからな。お前の花婿候補だかいう男のせいで指輪から抜け出られんし」

ぶつぶつと文句をつけながらもジンの足取りは軽く迷いがない。
あっという間に自室へ舞い戻ってしまい、アイーシャは悔しさに瞳に涙を滲ませる。
初めて戯れに体を弄ばれたのも自分の寝台の上だった。以来何度強引に体を奪われたことか。
屈辱の記憶がよみがえり、アイーシャは唇を噛んだ。

「あの男、名前はなんといったかな」

ぽいと荷物を放り投げるように、ジンは寝台の上にアイーシャを放り出した。羽根の詰め込まれた柔らかな布にアイーシャの体が沈む。

「そうそう。あの気の弱そうな男にあの後面白い贈り物をしてやったぞ。今頃は夢見心地で過ごしているだろうよ」
「……何を、したのです」
「うん?なに、あいつは腐っても一国の王子だろう。贅沢したがってる知り合いを紹介してやっただけだ。飽き性で始末の悪い女だが、暫くはあの男も楽しい思いができるだろう」

くらりと眩暈を感じてアイーシャは額に手を当てた。
目の前にいるのは魔物だ。指輪に封じられた魔の生き物。その知り合いとなればやはりそれ相応の女なのだろう。
先日宮殿を訪れたばかりの幼なじみの身を案じ、アイーシャは心を痛めた。

「あんな男にお前をくれてやるのは癪だからな」

ぎしっと寝台が軋み、ジンがアイーシャにのしかかった。

「ザイールの身に何かあったら私はあなたを許しません」
「ほう。どうする気だ?」
「わかりません。何をどうすればあなたをこらしめられるのか、私には皆目見当もつきません。ですが、絶対にあなたを許しません」

アイーシャとジンの視線は絡み合い、ジンの指が頬を撫で続ける。

「つくづく面白い姫君だ」

くつくつと笑い、ジンはアイーシャの体を寝台に押しつけた。

「よその男のことは後で話すとして、今はこちらの方がいい。お前も嫌いじゃないだろう?」
「あ、アルジャジール!私は嫌です、嫌いですっ」
「ふん、まんざらでもないくせに。拒絶するのは口ばかりだ」

まるで魔法を使っているかのようだとアイーシャは思う。ジンの落とす口づけに頭が痺れ、気がつけば身につけているものはすべて床に滑り落ちているのだから。
ジンの男らしい骨ばった手がアイーシャの体をなぞるように触れていく。その指が敏感な部分をかすめる度にアイーシャの唇からは悩ましげな吐息が漏れた。

「さて、姫君」

羽根が触れるように優しく全身を撫で回した後、ジンは意地悪く微笑んだ。

「俺にどうしてほしい?その可愛い声で命じてくれるなら俺はどんなことにだって従ってやるぞ」

わざとらしくゆっくりと上着を脱ぎ捨てるジンを眺め、アイーシャはごくりと唾を飲み下した。

「では、アルジャジール。今すぐ私から離れて指輪へ戻りなさい」

潤んだ瞳でジンを見上げ、アイーシャは精一杯毅然と言い放つ。

「いやだね。こんなうまそうなもんほっぽりだして指輪へ帰るなんてとんでもない」

きっぱりと言い切るとジンは身を屈めてアイーシャに口づける。
豊かな乳房を包み込むようにもみしだきながら、アイーシャの小さな舌に吸いつく。

「んっ…約束が、違います」
「いいか、アイーシャ。こういう時のお願いというのはな、私のことを壊して、くらいはいうもんだ。そうすれば俺がその願いを思う存分叶えてやるものを」

淡く色づいた乳房の先端を舌で舐る。びくりと体が跳ねたのを感じながら、ジンはそれを口に含み唾液を絡めて舌で転がしていく。

「あ…いや、やっ」

おざなりな抵抗は男を燃え立たせるだけだといい加減に気づいてもいいものを、アイーシャはか細い腕で抵抗し続ける。
ジンを喜ばせるだけだと知らないアイーシャはジンの頭を押し返そうと強くその頭を掴んだ。ターバンがするりと落ち、アイーシャは露わになった銀髪に指を絡めた。
豊かな黒髪を広げ、白い肌を桜色に染めるアイーシャは扇状的で美しい。
ジンはアイーシャの体に舌を這わせ、吸い付き、赤い痕を散らしていく。

「欲しくなったらいつでもいえよ」

くるりとアイーシャの体を反転させ、ジンは意地悪く呟く。
アイーシャの体と寝台の間に手を差し入れ乳房を愛撫しつつ、項に顔を埋める。耳朶を噛み、ねっとりと舐る。
アイーシャの甘い喘ぎを聞きながら、ジンは少しずつ確実にアイーシャを追いつめていく。
背骨に沿って舌を這わし、背中にも赤い花を咲かせていく。

「お前はいつまでも処女のようだな。姫君としての矜恃が魔物に体を許すのを拒んでるといったところか」

「あっ、ジン…アルジャジール!いやっ、ああっ」

腰を掴み、高々と突き出させる。顔を寝台に埋め、ジンの前にすべてをさらけ出すような態勢になり、アイーシャは羞恥で身を震わせる。

「体は快楽を覚え込んでるというのに、矜恃が高いのも考え物だ」

目の前に差し出された極上の蜜にジンは躊躇うことなく唇を寄せた。
溢れる愛液を啜りとるように舐めていく。
柔らかな舌の感触とわざとらしくたてられる蜜を啜り舐めとる淫靡な音がアイーシャに羞恥と快感を与えていく。
すでにアイーシャの体の隅々までを堪能しつくしたジンの動きは的確に弱点をついてくる。
するりと伸びた手が淡い茂みに覆われた一番弱い部分に触れた。

「あああっ!」

たまらずにアイーシャは強く寝台を掴む。
全身の血が沸騰しそうに熱い。頭がおかしくなりそうだった。
ジンの指はアイーシャの陰核を巧みに剥き、隠された敏感な部位を撫でた。驚くほどの快感がアイーシャを襲い、彼女は快感に咽び泣く。

「あっ、ああん…アル…アルジャジール!も、いやっ、やああああっ!!」

びくびくと体を震わせ、アイーシャは全身から力を抜いた。ジンが体を離すとアイーシャの体はどさりと寝台に倒れ込む。

「まだ挿れてもないのに達したのか。まったく淫乱な姫君だ」

濡れた鼻先を腕で拭うと、ジンはアイーシャの体を引き寄せて唇を塞ぐ。
達したばかりで敏感になっているはずのアイーシャの体をまたしても優しく撫で回していく。

「ふふ、お前は本当に可愛いな。いつまで可愛がっても飽きないくらい」

ちゅっと額に口づけ、ジンは再び自己主張する赤い突起を唇に含んだ。舌でころころと転がし、思いついたように優しく甘噛みする。唇に含めない方も指で転がしたり摘んだりと絶えず刺激を与え続ける。

「ふっ、ああん!ひゃっ、アルジャジール」

アイーシャにもはや抵抗の色はなく、声は熱く甘く、体はジンを求めてやまない。
アイーシャははしたなくも腰をジンの体に擦り寄せて啼いた。
ジンの唇や指が与えてくれる快感だけではどうしても足りない。体の中の少し前までは知りもしなかった部分が刺激を求めて蠢くのだ。

「アルジャジール……ああ、お願いっ」

愛撫だけで何度も絶頂の極みに押し出され、アイーシャからは理性も矜恃も消えていた。

「お願い?」
「ふぁっ、だって…わたくし、やっ……もう、あっ、アルジャジール!」
「ふん。名前を呼べば何とかしてくれると思ってるわけか」

ジンは意地悪く笑い、アイーシャの胸の頂を強く摘んだ。途端にアイーシャは鋭い悲鳴を上げてのけぞる。今ならば何をされても快感へと変じてしまいそうだった。

「まあいい。お前が欲しいのはこれだろう。可愛い主の望みだ。欲しいのならくれてやる」

アイーシャの熟れきった果実のようにとろけた部分にジンの熱く堅いものが沈み込んでいく。
刺激を求めてやまなかった部分が歓喜に震えた。

「やっ、あ、あああああっ!!」

すべて収まりきる前にアイーシャは体を強く震わせて涙を流した。
ジンは一旦動きを止め、さも楽しげにアイーシャの瞳をのぞきこむ。

「なんだ、もう満足か」

ぼんやりと焦点のあっていないアイーシャの頬に手を添え、ジンは無理矢理に視線を合わせた。

「おい、アイーシャ」

快感で朦朧としているアイーシャが不満とばかりに、ジンはアイーシャの腰を掴むと一気にすべてを叩きつけた。

「ひ、あああっ!!」
「アイーシャ」
「あっ、アル…ジャジール」
「ようし、目が覚めたな」

滲む涙に唇を寄せ、ジンは満足げに笑む。

「どうだ、気持ちいいか?」

ぴたりと体を繋げたまま、微動だにせずジンは問う。

「気持ちよくて仕方ないんだろう。どんなにお上品な姫様ぶったって魔物に抱かれて悦ぶ淫乱な女だからな」
「いや、違います!」
「嘘をつくなよ。俺が欲しくてたまらないくせに」

ジンの言うとおりだった。アイーシャの体は更なる刺激を求めて緩やかに腰を揺らしていたのだから。けれども、それはアイーシャが望んでいるわけではなく体が勝手に動いてしまうのだ。

「違います!わ、私は……」

首を左右に振って否定するアイーシャを追いつめようとジンはアイーシャの腰を掴んで止める。

「いやらしく腰を揺らすくせに、俺には屈したくないか」
「い、いやっ」

腰を掴まれ、アイーシャの体は次に訪れるであろう快感に期待する。
しかし、ジンの体は激しく動き出したりはしなかった。

「本当に嫌ならやめてやろうか。このままこれを抜いてしまって」

言葉通りにジンはぎりぎりまで腰を引いた。今は先端が僅かに埋まっているだけだ。

「認めてしまえ。堕ちてしまえば楽になれるぞ」

アイーシャのたわわな乳房を揉み、太股を撫であげる。

「さあ、アイーシャ。思い出せ、お前に快感をくれてやれるのは俺だけだ。死ぬほどよがらせてやるぞ」

本当に止めてしまう気などないとわかっていた。一度深くまで味わったジンのものは堅く張りつめていたし、アイーシャがどれだけ拒んでもジンがこの行為を止めてくれた試しなどない。

「アイーシャ、俺が欲しいといえ」

今のジンはアイーシャを屈服させることを新しい楽しみと決めてしまったようだった。おそらくアイーシャが認めてしまうまでありとあらゆる手を尽くすのだろう。
アイーシャは悔しさに唇を噛んだ。

ジンの性格がアイーシャの知るどの人よりも悪いことは初めからわかっていたし、アイーシャの体を弄ぶのが好きなのもわかっていた。だから、ジンの意地悪い責め苦も予想できていたといえばできていた。
しかし、それでも悔しいと思ってしまうのはこれだけの屈辱を味わわされて尚ジンを嫌えない自分自身だ。快楽にのまれてしまった自制心の弱い自分自身。一国の王女としての矜恃一つ保てない自分自身。それが悔しくてたまらなかった。

「……アルジャジール」

絶えず緩やかな刺激を与えていたジンの腕を掴み、アイーシャは大粒の涙をこぼした。もう限界だった。

「私、あなたが欲しいの」

小さな、耳をすまさなければ聞こえぬほどに小さな声でアイーシャは呟いた。

「それだけか?」

ジンの低い声に、アイーシャは困惑に瞳を揺らす。

「あ、あの……わ、私を…壊れるくらいに、抱いて」

先ほどジンが言っていたことを思い出して口にする。
にやりとジンの口元が歪んだのと同時にアイーシャの奥深くにジンのものがめり込んだ。
アイーシャは思わぬ刺激に息をのむ。
慣らすような優しさなど微塵もなく、ジンは初めから強く激しく欲望の限りに腰を叩きつけた。
ジンの大きく逞しい肉棒がアイーシャの中を抉るようにして動き回る。
さんざん焦らされた挙げ句の強い快楽にアイーシャはあっという間にのぼりつめた。
体を震わせ、ジンの肉棒から精を搾取しようと襞が強く収縮する。

「そうだ、アイーシャ。いいぞ。もっと啼け」

しかし、そう簡単にジンが達するわけもなく、彼はアイーシャの体を貫き続ける。
ぎりぎりまで腰を引いたかと思えば、子宮に侵入しようとするかのように強く腰ごと叩きつけてみたり。アイーシャの敏感な膣壁を引っかけ、縦横無尽に責め立てる。

ジンの手によってアイーシャの腰はめちゃくちゃに動かされながら、アイーシャも本能から強く腰を振る。ジンの荒々しい動きと相まってそれは更なる快感をアイーシャに与えた。

「ひっ、あ、ああ、やん、あ、あっ、あっ」

ジンの律動に合わせてアイーシャの口からは意味をなさない言葉や呻きが溢れ出る。
あまりの快感にアイーシャはものを考えることができない。

「ふっ、あっ、壊れ…やぁん、ひあっ」
「壊れてしまえ。俺が直してやる」
「あっ、ああ、そんな、んんっ」

アイーシャの足をかつぎあげ、腰を抱きすくめるようにしながらジンはがんがんと腰を叩きつける。
しかし、ただ叩きつけるだけだった先ほどまでと違い、深く浅くと強弱をつけてみたり、アイーシャの弱い部分を集中的に小刻みに責めてみたりと技巧も使いはじめた。

「あっ、アルジャジール!いや、また、あっ、あっ、ああああああっ!!」

何度目かわからぬ絶頂に身を震わせるアイーシャをジンは愛しげに見つめる。

「アイーシャ。忘れるなよ、お前は俺のものだ」

額に滲む汗が頬を伝い、アイーシャの腹に落ちた。
ジンはアイーシャの腰を抱き直すと猛然と腰を動かし始めた。

「あん、あっ、いや、いや、もうだめっ!いやあっ!!ああああああっ!!」

達し続けているようでアイーシャの膣は動き続けるジンを引きとめようと最大限に動いていた。

「ああ、アイーシャ。アイーシャ」

譫言のように名を囁いて、ジンはアイーシャの腰を叩きつけるように引き寄せた。一拍おいて熱い滾りをアイーシャの中へ迸らせる。
熱いものを内部に感じ、アイーシャもまた体をのけぞらせた。
暫く余韻に浸っていたジンが深く息を吐く。そして、アイーシャの体を覆い被さるようにして抱きしめた。

「暫くしたらもう一度だな。いや、一度といわずに朝まで楽しもう」

アイーシャの髪を撫でながら、ジンは優しげな声音で無情な一言を囁いた。

「なあ、アイーシャ。気持ちよかったろう?」

髪に甘く唇を寄せ、ジンは優しく問う。
アイーシャはぼんやりとしたまま、小さく頷く。

「そうか。お前ももっと楽しみたいだろう?」

またしてもアイーシャは頷く。
ジンはおかしくてたまらないとばかりにくつくつと笑う。

「そうかそうか。やはりお前は淫らな姫君だ。俺との情事をもっと楽しみたいとはね」
「……え?」
「なに、お前が淫らになるのは俺の前でだけなんだから恥ずかしがらなくてもいいぞ。普段は毅然と姫君らしくしていればいい」

徐々に意識が覚醒してきたようでアイーシャの頬が朱に染まりいく。

「それから、アイーシャ。俺のことが好きか?」

耳まで赤く染めてアイーシャはジンを見上げる。
期待に満ち溢れたジンの表情に絶句し、アイーシャは目を白黒させる。

「なっ、ジン、あなたという人は」
「お。なんだ、もう正気に返ったのかつまらんな」
「つまらないとはなんですか。人が茫然自失に陥っているのをいいことにくだらない戯れを」
「そういう時こそ本音が出るものじゃないか」

アイーシャはジンの胸から逃れようと身を捩るが、反対に強く抱きすくめられる。

「アイーシャ、俺のことが好きか?」
「し、知りません」
「素直じゃないな。じゃあ、素直な体に尋ねるとするか」

未だ繋がったままだったジンの体が緩やかに動き始め、アイーシャは熱い吐息を漏らした。

「もっと楽しみたいとの主の仰せだ。存分に働かせていただこう」

冷めかけた熱はあっという間に盛り返し、アイーシャは再びジンの与える快楽に身を沈めていくのだった。






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