シチュエーション
ドガッ!! 効果音をつけるならばまさにそれ。志乃の右足が見事に私の頭を直撃した。 「ってぇ……」 志乃は私が怯んだ隙に毛布を引き上げて露わな肌を隠した。 私は後頭部をさすりながら、その動作を恨めしげに眺めた。 「何するんですか、お嬢さま」 至極当然な疑問を口にしただけだというのに顔面めがけて枕が飛んできた。私はそれを片手で受け止め、溜め息をつく。 「それはこちらの台詞です。柏木こそ何てことをするんです!」 「何って……抱いてとおっしゃったのはお嬢さまでしょう」 「い、いつもはああああんなことしないじゃないの!」 真っ赤な顔で責め立てられ、私は自らの行動を省みる。志乃と愛を交わすのは今日で三度目。前二回と違うことと言えば、彼女の体のあらゆる場所に口づけようとしたことか。 「嫌ですか?」 憤懣やるかたないといった様子に苦笑が浮かぶ。ウブな人だ。 「き、汚いもの……」 「三十分もかけてシャワー浴びてきたじゃないですか」 「でも、そこは、だって」 「お嬢さまの体に汚いところなんてありません」 きっぱりと断言し、私は毛布を力任せに引っ張った。あっという間に志乃の体を隠していた毛布が取り払われ、桜色に染まった麗しい肢体が露わになる。 「か、柏木!」 「お嬢さま。車と男は急には止まらないものなんです。覚えておくといいでしょう」 我ながらくだらない理屈をこねて志乃の足首を掴んで引き寄せる。少々強引かとは思うが、抱いてとねだられてからやれシャワーだなんだと散々待たされたのだから仕方ない。 「ちょっと待って。きゃあ!」 がっちりと腰を掴み、私は志乃の股間に顔を埋めた。先ほどまでの愛撫で既に蜜を滴らせている。そっと舌を這わせると志乃の体がびくりと震えた。 可愛い。 まだほんの子供だった頃から志乃は私の想い人だった。小さな手が私の手を掴む度、鈴のような声が私の名を呼ぶ度、守ってあげなければと思ったものだ。 そうして十数年、守り続けた志乃の体を今は思う存分貪ることができる。愛情に愛情を返してもらうことができる。こんなに幸福なことがあるだろうか。 私は至福に浸りながら、志乃の蜜を啜り舐めていく。まるで極上の酒のようだ。後から後から湧き出る蜜はどんどん私を酔わせていく。 「あっ、はぁ……かしわぎぃ」 初めはくねくねと体を捩らせて抵抗していた志乃も、大人しく私の愛撫を受け入れはじめた。甘い声で啼き、太ももで私の頭を押さえる。 舌を尖らせ、中へ差し込み、より強い刺激を与えると志乃の口からは嬌声が漏れる。感じているのだとわかると奉仕にも熱が入る。 隠された肉芽を摘んでみたり、指を挿入してかき回してみたり。志乃が絶頂に達するまで私は執拗に愛撫を続けた。 「ほら、気持ちよかったでしょう?」 ぐったりと力なく横たわる志乃が素直に頷く。素直なところがまた可愛い。 「柏木、きて……」 両手を私に差し伸べ、志乃が切なげに囁く。 ねだられるまでもなくそのつもりだった私は嬉々として志乃の上にのしかかる。 「大好きよ、柏木」 志乃の足を広げ、先端を潜り込ませる。志乃がぎゅっと目を閉じたのを見ながら私は一気に奥まで突き上げた。志乃の中はきつく狭い。そこに押し入る感覚は何度味わってもいい。 「動きますよ」 言いながら既に腰を揺らしているのだからあまり意味はないかもしれない。しかし、こうしていちいち声をかけてしまうのは職業病の一種だと思う。 「あん、あ、あ、あっ」 突き上げる度に志乃が可愛らしく啼く。 きつい締め付けももちろんいいのだが、とろけきった志乃の表情と甘い声が私を悦ばせてくれる。主人の悦びが従僕の悦びとまでは言わないが似たようなものだ。 志乃の襞が肉棒に絡みつき、溢れる蜜が淫猥な音を奏でる。 あまり長くは持たないかもしれないと思いつつ、私は行為に没頭していく。速く遅く強く弱く深く浅く。単調にならないように変化をつけながら、的確に志乃の弱点を責めていく。 「あっ!いっ…ぁ、かし…ぎ……あああん!!いいの!あっ!!ああっ!!」 「志乃、すまない。そろそろ」 背中に爪を立てる志乃に深い口づけを落とす。志乃はキスが好きらしく、唇を離すと今度は自分から吸いついてくる。 「あっ、だめっ、もうっ!!あ、いっちゃう!!」 志乃も限界が近いのだと悟り、私は志乃の腰を掴み猛然と腰を叩きつけはじめる。ラストスパートだ。 快感が一番高まった時を見極め、私は一際強く腰を叩きつける。動きを止めた瞬間に熱い滾りが弾けた。何もかもすべて体から抜け出てしまうような、それでいてひどく心地よい脱力感。 ふと見下ろせば志乃も達したようで小さな体を震わせていた。それを確認したとたんに愛おしさがこみあげる。 「愛してる」 唇を重ね、貪るように何度も何度も口づけを交わす。 気のすむまで志乃の唇を堪能し、私はそっと体を離した。志乃の体から私の放った精と志乃から溢れた蜜が混ざり合って零れた。 またシャワーに時間をかけるのだろうなと思いながら、私は志乃の隣にごろりと横になる。 「お嬢さま」 のろのろと顔を上げる志乃に手を差し出すと迷わず私の腕の中に潜り込んでくる。猫がするようにすりすりと私の胸に顔をすりつける志乃を見つめ、私は満ち足りた気持ちでいっぱいだった。 SS一覧に戻る メインページに戻る |