エステルとゲイル(エステルの策略)
シチュエーション


個人差はあれど効果が現れるのは十分から三十分の間だとイリスは言っていた。

──依存性はありません。
副作用が現れることも稀にあるようですが翌日体が重くなるといった程度。
ひどい筋肉痛が全身におこると思えばいいでしょう。
まあ、ないとは思いますが念の為。

小瓶を手渡しながら兄の副官は淡々と語っていた。

──主に男性に著しい効果が出ます。
詳しくはこちらを。
使用前に必ずお読みください。
用法用量を正しく守ってこその薬ですから。

今、エステルはイリスから受け取った説明書を隅々まで読んでいるところだ。
兄御用達の薬師に調合させたのは媚薬。
飲むと普段どんなに淡白な者でも逆らうことのできない強い情欲に支配されるというエステルの注文通りの品だ。

(これさえあればいくら教官だって)

あらぬ妄想に心弾ませ、エステルはこみあげる笑いをおさえもせずに小瓶を懐にしまいこんだ。
入院中のゲイルと想いを確かめあって早数ヶ月。
続きは退院してからと約束したというのに未だに一線を越えていないのはどういうわけか。
エステルは積極的にゲイルに迫っているというのにのらりくらりとかわされてしまう。
力ずくという強硬手段にでても経験の浅いエステルは返り討ちにあってしまい、自分だけ高みに追いやられたあげくに逃げられるという始末。
しかし、今日という今日こそはゲイルと深い仲になるのだとエステルは決めていた。
布一枚纏っただけといっても過言ではない露出の高いドレス。
素顔に限りなく近いというのにどこか艶めいた印象を受ける化粧。
やる気に満ち溢れている。
そうこうしている内に戸を叩く音がしてエステルは居住まいを正して訪問者を出迎えた。

「すまない。遅くなってしまった」

メイドに案内されて現れたのは愛しの君。
いつもの軍服姿とは違い、今日はタキシードを着込んで正装している。
その凛々しい姿にエステルはうっとりと見惚れた。

「エステル!」

立ち上がってゲイルに近づくと彼は仰け反って悲鳴を上げた。
エステルは不満たっぷりに彼を見上げた。
愛しの恋人に会って早々上げる声ではない。

「は、伯爵夫人主催のパーティーへ行くのではないのか」
「そうです。ですからそのような格好をしていらしたのでしょう?」
「あ、ああ。しかし……パーティーではダンスを踊ることもあるんだろう」

ゲイルはエステルの姿を上から下までゆっくりと眺めた。

「その格好で踊るのか」

もちろんエステルにはパーティーに行く気などない。
ゲイルとともに隣の寝室になだれ込むつもりなのだから。
しかし、エステルはそんなことなどおくびにも出さず優雅に微笑む。

「ええ。いけませんか?」

ゲイルは一瞬返答につまり、しかしすぐに首を振って呻いた。

「できればもう少し大人しい格好に着替えてほしい」
「似合いませんか?」
「似合っていないわけではない。むしろ似合っている。しかし、だ」

ゲイルの手がエステルの剥き出しの肩に触れる。

「君の肌を他の男の目に触れさせるのはできうる限り避けたい」
「教官!」
「情けない男だと思わないでくれよ。自覚はあるんだ」

かあっとエステルの頬が朱に染まる。
ゲイルは時々こうして独占欲を露わにする。
普段滅多に感情を吐露しない分、たまに恥ずかしいことを口にする。
その度にエステルは嬉しいような恥ずかしいような幸せな気持ちになるのだった。

「わ、わかりました」

エステルはゲイルの手をぎゅっと握り、そのまま手を引いて長椅子に掛けさせる。

「それまでお茶でも飲んで待っていてください」

エステルがそう言うとまるで外で待ちかまえていたかのようにメイドがティーセットを運んできた。
メイドを下がらせたエステルはワゴンに乗せられたティーポットからカップへ紅茶を注ぎながらそっと懐から小瓶を取り出した。
ゲイルに背を向けているエステルは彼に気づかれぬように片方のカップに媚薬を落とす。

(一、二滴と書いてあったけれど教官は自制心が強いのだから少し多めの方が)

イリスの忠告は遙か彼方へ消え去っていたようだ。
ゲイルの方へ媚薬入りの紅茶を置き、エステルは彼の隣に腰掛けた。

「着替えないのか?」
「せっかくですから私も紅茶をいただきます」

ゲイルが紅茶を飲むところを見届けるまで安心はできない。

「……エステル」

警戒されないように先に紅茶を飲もうとカップへ手を伸ばしたエステルの手をゲイルが掴み、優しく抱き寄せて唇を寄せてきた。
思いがけないゲイルの行動にエステルは動揺しながらも喜びを隠しきれない。
薬などに頼らなくてもよかったのかもしれないと思いつつ、エステルは積極的に舌を差し込んで口づけを深めていく。
しばらく口づけを楽しむと彼はあっさりと唇を離した。

「早く着替えてくるといい。パーティーに遅れてはいけないだろう?」

キスより先に進む気など毛頭ないといった態度にエステルの眉が残念そうに垂れ下がる。

カップを手に取り、エステルはその中身を一気に呷った。

「それならこのまま行きましょう」
「エステル」
「教官は私とおしゃべりするよりもパーティーの方がよいのでしょう」
「パーティーへ行くから一緒に来てほしいと頼んだのは君じゃないか」

拗ねたエステルの言動に呆れの溜め息をついて、それ以上口論は重ねたくないとゲイルもカップに口をつけた。

(飲んだ……)

ゲイルのカップが傾くのをエステルはドキドキしながら見ていた。

「遅れてもいいのか? パーティーなどは苦手だから君がかまわないのなら私はそれでもいいが」

ことりとカップを置き、ゲイルはそう言った。

「では、少しお話しましょう」

ゲイルの傍らに寄り添い、エステルは会えない間どれだけ寂しかったかを懇々と語り始めるのであった。


ちらりとエステルは壁に掛けられた時計に目をやった。
ゲイルのカップは既に空。
世間話を始めて十分以上経っている。

(おかしいわ)

傍らのゲイルは涼しい顔で訓練中の部下の失敗を語っている。
息が荒くなったり、瞳が潤むようなことはない。
それどころかむしろ──

(私の方がなんだか変だわ)

ゲイルの肩が触れただけで体が異様に熱くなる。
びくりと体を強ばらせたエステルをゲイルが訝しげに見下ろした。

(どうして?)

すっかり困惑したエステルは動揺を隠すことができない。

「ふむ」

ゲイルの手が不意に腿に触れ、なぞるように往復した。

「あっ、ああ……教官、だめッ」

普段ならば有り得ないほどに敏感な反応を示すエステルをゲイルは興味深く眺める。

「エステル」

耳朶に息を吹きかけるようにして名を呼ばれ、エステルは甘い吐息を漏らした。

「私の紅茶に何を入れたんだ」

ゲイルの手が腿を撫で回す。
肝心な場所にはまったく触れない弱い刺激にエステルは焦れたように腰を揺らす。

「大体の予想はついているが……正直に答えたなら君の触れてほしい場所に触れてあげよう」

強い刺激を求めてやまないエステルはあっさりとゲイルの質問に答える。

「あ、び…媚薬を……ひあっ、ああん! なんだか、わたし…あッ」
「やはり。どおりで敏感なはずだ」
「そこ、だめッ! あっ、すご……いいっ、あッ、あッ、ああっ」

ご褒美とばかりにゲイルの手が腿の付け根へ滑り込み、濡れそぼった泉をかき回す。

「んっ! なん、で…あっ、や、いっちゃ……ひっ」

耳朶を噛まれただけで信じられないほどの衝撃がエステルを襲う。

「君が私に隠れてこそこそしていたから念の為にカップをすりかえてみた」
「え……ああっ、いつ…まに、ひあっ、あッ、や…ああああああっ!」

がくがくと体を震わせ、エステルは全身の力を抜いた。
くちゅりと指を引き抜き、ゲイルは悪びれなく答えた。

「キスしたときだ」

唐突なキスはカップを入れ替えるためだったのかとエステルは力なくうなだれる。
やはり彼は自分よりも一枚も二枚も上手だ。

「楽になったか?」

優しく頭を撫で、ゲイルは問いかける。
エステルは首を振ってゲイルの首に腕を回してしがみついた。

「教官、体が熱くて、変なんです。つらいの」

まぎれもない事実であった。
一度達したおかげで治まるどころか欲望はより強くエステルを苛みはじめていた。
体の奥が熱を孕み、強い刺激を求めて疼くのだ。

「我慢できないのッ」

ゲイルが何か言う前にエステルはその口を塞いで情熱的にキスを交わす。
観念したように背を撫ではじめたゲイルの手のひらが心地よくて思わず呻いて体を震わせる。

「教官……好きっ! 好きなんです…愛してます」

勢いよくゲイルに抱きつき、自分よりも一回りも大きな体を押し倒す。
窮屈そうなシャツの首元のボタンをいくつか外し、ズボンの前をくつろげる。

「エステル、ちょっと待て」

エステルの痴態に反応し、僅かながら立ち上がり始めていた陰茎を探り出されてゲイルは慌てて体を起こそうとする。
だが、エステルはそれを許さずにのしかかって再び口づける。

「いや! 待ちません。待てないの! 今日は最後までするんです。教官が好きなの! もう我慢するの嫌なんです」

キスをしながらエステルはゲイルの陰茎を扱きはじめた。
エステルの指が動く度に柔らかさを失い、熱を増し、膨張していく。

「教官、ゲイル教官」

夢中で口づけてくるエステルを受け入れ、ゲイルはその髪を優しく撫でつける。抵抗すれば傷つけるだけだと悟ったからだ。

「愛してます、教官」

エステルの唇が離れ、ゲイルがよくするように耳朶を噛み、項を辿っていく。
快感が走るというよりはくすぐったくてゲイルはつい身を捩ってしまう。

「あん、逃げないでください」

すっかり立ち上がった陰茎から手を離し、エステルはゲイルの衣服を脱がしにかかる。

「……すまん」

シャツのボタンをすべて外し、逞しい胸を露わにする。

「教官、素敵です」

陰茎よりも少し下に座り込んでいるエステルは身を屈めてゲイルの肌に舌を這わせた。
男も感じるのかはわからないが、自分がされて気持ちのよかったことをゲイルにもしてみたかった。
小さな突起を口に含み、舌を絡めて吸い上げる。

「教官、気持ちいいですか?」

ころころと指で転がしながら問うとゲイルは難しい顔をして首を傾げた。

「気持ちよくないこともないような気もしなくもないがくすぐったい」

芳しくない返答に不満を覚え、エステルは体の向きを変えた。
ゲイルの腹に胸を押しつけるようにして陰茎と向かい合う。
当然、ゲイルの目の前に腰を突き出す形になる。

「こっちは気持ちいいですよね」

ぱくっと先端を咥え、舌を這わせて上下に顔を動かす。

「え、エステル」

ゲイルに奉仕するのはこれが二度目だ。
歯を立てないように気をつけながら、エステルは前回教わったことを必死に思い出す。

(たしか、こうして)

咥えきれない部分を手で扱き、陰嚢をやわやわと揉みはじめる。
背後でゲイルが低く呻いたのがわかった。
熱心に奉仕していると頭の芯が溶けてしまいそうになる。
思考に靄のかかったような状態でエステルはゲイルを気持ちよくさせるためだけに動くのだった。



(まいったな)

鼻にかかった吐息が漏れ聞こえ、エステルが熱心に陰茎を愛撫しているのがゲイルにも伝わる。
気持ちいいのだが今にも射精してしまいそうな快感ではない。
これだけで達してしまうのは少し難しいかもしれないとゲイルは思う。
それよりも目の前に突き出された尻の方が気になる。
ドレスがぴたりと張り付いたそれに触りたくてゲイルは先ほどからうずうずしていた。

(さて、どうしたものか。勝手に触ると怒るかもしれんからなあ)

今のエステルは普通の状態ではない。
満足いくまで好きなようにさせようと覚悟は決めたものの、やられっぱなしというのも性に合わない。

(出すまでやめそうにないよな、あれは)

エステルが小さな口で自身の陰茎を一生懸命頬張っているところを想像してみると僅かに感度が増した。
どうせなら見えるようにしてくれればいいのにとゲイルは手前勝手にそう思う。
一つ大きく吐息をついて、ゲイルはエステルの尻を撫でた。

「ひゃっ…あ、んあっ」

途端にエステルが陰茎から唇を離して可愛らしく喘ぐ。
エステルの反応をうかがうようにやわやわと撫で回してみる。

どうやら怒りはしないようだと判断し、ゲイルは僅かに体を起こして邪魔なドレスを捲りあげた。
そこは既にじっとりと潤い、溢れた蜜が下着を濡らして腿を伝い落ちていた。
ゲイルは躊躇うことなく濡れた下着を引きずりおろした。

「……私のものを咥えて感じたのか」

ふつふつと悪戯心が湧きだして、ゲイルはぴしゃりと軽く尻を叩いた。

「ああっ!!」
「悪い子だ。エステル、君はとても悪い子だ」

怒り出すかと思ったが存外大人しいものだ。

(なるほど。こういうのが好きなのか。意外だ)

ゲイルが体を起こしたせいで咥えにくくなったのかエステルは唇を離して手で扱きだす。
ふにふにとした乳房が腹にあたって気持ちいい。
エステルが急に大人しくなったことと人の気も知らないでという若干の苛立ちが嗜虐心を煽り、ゲイルは普段ならば絶対に口にしないような言葉でエステルを責め立てた。

「ご、ごめんなさい。でも、わたし」
「口答えはいい。私の言いつけに背いた罰を受けなければならない。違うか?」

初めはからかうだけのつもりだったが興が乗ってきたゲイルは教官時代のように冷たくエステルに言い放った。

「はい! 教官」

反射的に体をびくりと強ばらせたエステルを見て、ゲイルの口元に笑みが浮かぶ。

「まずは私の体から降りなさい」

素直に体から降りてエステルは正座をしてゲイルに向き合う。

(可愛いものだ)

しゅんとしたエステルの姿を見ていると優しくしてやりたくてたまらなくなる。
しかし、ゲイルは冷たい態度を和らげなかった。
なんとなくそうした方がいいような気がしたのだ。

「あの、教官……ば、罰とは」

このまま体を重ねてもよかったが長椅子ではふとした拍子に転がり落ちてしまいそうな気がしてゲイルはエステルを抱えて立ち上がった。

「ここではだめだ」

エステルを抱えたまま扉を蹴り開けて隣の寝室へ運ぶ。
寝台にエステルを放り出し、邪魔なドレスを引きはがした。

「ああっ、教官」

ゲイルの荒々しさにはまったく動じず、エステルは期待に目を輝かせる。

(処女のくせにどうしてこう)

自らも衣装を脱ぎ捨てながらゲイルは小さく溜め息をついた。
時期尚早だと思っていた。
欲しいか欲しくないかと問われればもちろん欲しい。
それでも我慢していたのは確信が欲しかったからだ。
エステルが自分を慕う気持ちが親兄弟への愛情の延長のような気がしてならなかった。
だから、ゲイルは体を重ねることを躊躇っていた。

いつかエステルが自分よりも若く魅力的な男と恋に落ちて自分から去っていくとしたら、その時は清い関係の方がダメージが少ない気がしたからだ。
体を重ねれば歯止めがきかない。
のめりこんでしまいそうで怖かった。
けれど、もうそんなことはどうでもよくなっていた。

(どうなっても知らんからな)

ゲイルはエステルにのしかかると荒々しく口づけていった。

「これが、ふっ…んん、ばつ…ですか?」

エステルの体がたちまちの内に蕩けていく。

「そうだ。お仕置きだ」

媚薬のおかげかとゲイルは勝手に判断したが、そればかりではなかったろう。
ずっと焦がれていたゲイルとの逢瀬にエステルの心は震えていた。

「好き、あっ、すきです…んん、あっ、はぁっ」

ゲイルの愛撫は性急だった。
既にどろどろに蕩けきった場所にゲイルは熱く高ぶった欲望を押し当てる。

「我慢できないくらい痛かったらいいなさい」

こくんとエステルが頷いたのを合図にゲイルは腰を進めた。

「あ、ああああっ」

さしたる抵抗もなくゲイルはエステルの中へ潜り込むことができた。
媚薬というのは便利なものなのだなとゲイルはひそかに感心した。
きゅっときつく締め付けてきながらも、内部は蜜が溢れてぬめっている。

「エステル。大丈夫か?」
「はい、なんだか…気持ちいい」

試しにゲイルは腰を押しつけてみる。
エステルが震えたが痛がっているようには見えない。
腰を引き、再度押し込む。
やはり痛がっているようには見えない。

「あっ、ん……くっ、ひあっ…んぅ、やっ」

安心して腰を揺らし始めたゲイルにエステルは甘い喘ぎで応えた。
きつく目を閉じ、シーツを掴んで堪えているのは快感だろうか。

「エステル、私のエステル」

休むことなく腰を叩きつけながら、ゲイルはエステルの両頬を挟んで上向ける。

「目を、あけなさい」

のろのろとエステルが目を開く。

「エステル、君は誰のものだ」
「あっ、きょうかん…あんっ、んっ」
「さあ、いってくれ。誰のものなんだ」
「あ、ひあっ…ゲイル、ゲイルきょうかんの……はっ、きょうかんの、もの…です。教官ッ!」

言い終わるなりエステルはゲイルにしがみついて甲高い悲鳴を上げた。
きつく収縮して締め上げてくる感触にエステルが達したことに気づく、しかし止めてやるにはゲイルの気持ちは高ぶりすぎていた。

「そうだ。エステル、私の…私のものだ!」

敏感な内部を擦りあげる刺激から逃げ出そうと無意識に体をばたつかせはじめたエステルをきつく抱きしめて押さえ込み、ゲイルは自らの快感を追い求めて動き続けた。

「愛してる。誰にも、渡さんぞ……くっ、エステル!」

一際強く腰を打ちつけ、エステルの最奥へとゲイルは白濁を迸らせた。



「もっと、んっ……あっ、きょうかんっ」

ゲイルの体に馬乗りになったエステルが淫らに腰を揺らしている。
唐突にゲイルが下から腰を突き上げた。

「あっ、ああっ! ん、ふぅ……」

ゲイルが深々と息をつき、エステルは自身の体内に迸る滾りの余韻を味わうように腰をすりつけた。

「エステル、そろそろ……」
「やっ、だめです! まだするの」

駄々っ子のようにいやいやをするエステルを眺めてゲイルは少しばかり焦りを覚える。

(まずい。このままでは死んでしまう)

未だ媚薬の効果が残っているようでエステルは体の疼きを訴えてくる。
初めは楽になるまで付き合ってやろうと思っていたゲイルだが、数え切れないほど出してもまだ欲しがるエステルに生命の危機を覚えた。

「これ以上は無理だ。もう勃たん」

仕方がないとゲイルはエステルの体を引き倒して胸に押しつける。

「体を重ねるかわりに、お前がどれだけ私を愛してるか聞かせてくれ」
「教官……」
「体だけでなくお前の口から聞きたい」
「はい! わかりました」

きらきらと目を輝かせて胸に頬をすりよせてくるエステルにゲイルはほっと息をついた。

(エステル……)

ずっとこのまま腕の中にいてくれたならとゲイルは願わずにはいられなかった。

(いつまでも私のものでいてくれ)

淡い桃色の髪に口づけ、ゲイルは嬉々として語られるエステルの言葉に耳を傾けるのであった。






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