護衛×閣下
シチュエーション


おいガルム、とやや掠れた声に名を呼ばれ振り返る。石の床に良く響くこの声の主に仕えてもう五年を越した、聞き間違う筈もない。

「なんでしょう閣下」

努めて平静に応える。八つ下の上司は、珍しく魔術師の方の正装をしていて、予定に閣下が大司祭に謁見する事が入っていたのを思い出した。
水底のような色のゆったりとしたローブ、ビーズやら宝石やら羽やら細々とした装飾品は彼女の肌の白さを際立たせる。
殆ど普段着に成り下がってしまっている、軍服の方が少女の危うげな色気を醸しだすようで、気がかりだったのだが。この衣装もよくないな、彼女の率いる兵たちの顔を思い出して認識を改める。
イヤイヤイヤ、小さくも恐ろしい兵団長さまだ。もし、知れたとすれば次の戦場から帰って来られなさそうだ。

閣下、もといニーズヘッグ・ユアン、女、十八歳。
彼女の肩書きはあまりにも長すぎるので抜粋する。ユアン大佐は成り上がりのマホーツカイでオヒメサマのゴシンユウで戦争の天才である。
今では貴族であるが、元々は孤児だったと聞いた。確かに貴族では中々ない見目をしていた。
貴族といえば金髪か銀髪で目は青や緑が相場であるが、閣下は奴隷階級によくある黒髪だった。 奴隷は様々だが、大抵は黒髪黒目である。
だが閣下は黒髪金目だ。これが閣下が閣下たる所以である。
優秀な魔術師は年を経ると赤目か金目になるらしい。あれだ、ゴーゴンとか、へ・へてろくろみあ?というやつだ。
難しい話が入るべきなんだろうが、つまり閣下は大変な有望株なのだ。

やっと小休止を得ただろうに閣下は走ってここまで参られて、俺の上着を引張った。近づくと春のような匂いがふわりと広がる。ツン、と顎を伸ばして猫のような目が上目遣いに俺を映す。
まるでキスをねだるような仕草だ。いや、そんな訳が。

「なあ話があるのだ。お前の部屋は近くか?遠いのなら私の部屋に行くのだが」

閣下と俺は軽く30センチは高さが違うので、俺の注意を惹くためかよく服をキュッと掴んで、引く。
小動物然としている。ポケットにはいりそうだ。いやまさか。

「執務室ではいけませんか、どちらもあまり近くはないでしょう?」
「ならぬ。私的な話なのだが、むむ?まあよい。じゃあ私の部屋だ、ちょい待ち」

パっと私から手を離すとバっとローブの裾を捲くった。ちらりと脚が見えた。人通りが無いとはいえ一応廊下である。

「閣下!はばかりください」

思わず出た鋭い声に閣下の肩が揺れる。
訥々と言い聞かせたい。年頃なのだからもう少し気にして欲しい、あなたの部下の九割以上男なんです、遠征ばかりしてたから溜まってるんです、と。

「!な、なんだ、札を出しただけだぞ。ほホラこれですぐ部屋に、ゆけるぞ」

語尾が震えていたようにも思う。そりゃそうである。場合によっては閣下を抱えて戦場を走り回る護衛の一人が、無意識とはいえ凄んだのだ。力の差を知っているからこそ怖いものいうのは沢山ある。
あわてて謝罪を口にする前に閣下は壁に手を入れた。
冷たい指が手首に触れ、そのまま引かれた。骨までやわらかそうだ。口に入れて舌を這わせて爪の先から根元までしゃぶる自分を想像して身震いした。

経験しなければ解らないだろうが、壁抜けは気持悪い。対面しても解らないだろうが、閣下の執事は腹黒そうだ。
ガラボネっぽい執事は茶だけ淹れ退出した。射殺すような視線を残して。…絶対カタギじゃない。

あまり居ないという閣下の部屋は広い。日当たりがいい。絨毯の毛足が長い。クッションがいい。金持ちだ!と内心興奮しつつ、クッションに触れた。まじで持って帰りたい。
ぼけーっとしていると、閣下と目が合った。ニヤリと笑う閣下。
その笑みに戦場の閣下を思い出して、ソファから転げそうになりながらも姿勢を正す。
閣下が若くして兵団長の位置についたのは、獰猛な笑みの裏で構築された策と魔方陣の結果だ。

「持って行っても良いんだぞ?」
「いえ、謹んでお断りします。ところでお話とは?」
「…この書類にサインが欲しい。旧字は書けるか?」

左手で空をまさぐるようにすると閣下の手に一枚の上等な紙が現れた、羽ペンも。
軍の識字率は低く、ましてや貴族階級に使われる旧字のどは一部の者しか読み書きが出来ない。素直に首を横に振る。それについて閣下はなんのリアクションもせずに、浮いたインク壷にペンを挿す。いざ、というポーズで閣下の動きが止まる。

「いかがなさいましたか」
「む、いや、なんだ。お前の、ファミリーネームは、知らなくて・・・悪い」

口ごもる閣下の顔が、小さめの鼻を中心にしてサアッと朱に染まる。本心から恥じているようだ。何千何万と自分の下にいるのだから、そんなことを気にすることも無いのに。
いじらしい。いやいやまさか!笑顔で大軍を屠る閣下にそんな可愛げが…あったの?

「申し訳ありません閣下。私はあいにく家名を持ち合わせておりません。私の名前はガルム。後ろにも前にもスペルも何もありません、ガルムと申します」
「うん。そうだな、私も元は何もない。…では、GARUMとGARMどちらがよい?」

やけに清々しい笑顔で閣下は俺のガルムという名を綴った。五文字と四文字のガルム。前者は見覚えがある。
あれ?俺、調味料?…背中が寒くなった。少し迷った振りをして、後者を指差した。
おーけーおーけーがーらーむっと、表情とは逆に硬質な文字で俺の名を綴る。
紅潮した頬は桃のようで摩れば匂いたちそうだ。
柔らかな桃の肉からしたたる果汁は、閣下のふっくらとした唇から零れ落ち、喉を伝って鎖骨まで到達する。閣下は艶然とした笑みを唇に浮かべ、拭ってくれないかガラム…

「おい、ガラム?名を私が書いてしまったから、代わりに血判が欲しいのだが。よいな?」

ペンをあごに軽く当てて小首をかしげる閣下に、二つ返事で親指を切る。ぎゅうぎゅうと力強く押し付けて、閣下を見た。
ものすごく嬉しそうである。
でも閣下の笑顔はどうしても戦場しか思い出せない。年相応の笑顔であるというのに、大抵は作戦が成功したときにみるものだというのだから、勿体無い。

「ところで、閣下」
「ん、許す」
「あのーこの書状の内容は一体?」
「お!やっとツっこんだな?聞いておどろけ、これはな、被扶養者申請だ」

はっはっはと笑う閣下にツっこむつーか突っ込みたい。
意味が解らない。ヒフヨウシャってなんですか?と。あとシンセーってのも下っ端には本当にわからない。手を挙げる。

「閣下」
「なんだ、許す」
「ヒフヨウシャとはなんでしょうか?」

あんまり俺がアホなものだから、閣下も呆れたに違いない。
柔らかそうな唇からため息が漏れるのを見て、流石にクビかなーと思っていると。その淡い花のような唇が目の前に迫った。
半開きのそれから小さい歯が覗く、ガラボネの紅茶の香り、ちょっとだけ濡れている。それは一度ちろりと赤い舌を出して、大きく開いた。閣下の金の眼の奥、瞳の暗い部分も良く見える。
近すぎる。さっきの妄想の続きか?いやまさか、そう思い動こうととすると、ガリっと、いや音はしなかった多分、強く鼻を噛まれた。
何が起きたのか把握できず、もっと短かったかもしれないが、噛まれたのは俺の鼻だ!噛んだのは誰だ!現実だった!と気がついたのは数えで10くらいだった。
死んでた、戦場なら俺死んでた。
膝の上に柔らかい重みを感じて身を引く、すると背もたれにボスンっと一度はねて横滑りするように倒れた。
体重を掛けられ、装飾品がぶつかり合って小さく音を立てた。あごのあたりをついばむように噛まれる。
ハッと正気に戻り、閣下の肩に手を添える。薄い、力を入れなくとも外れそうである

「閣下!お戯れを」

ソファに寝てる俺、その上の閣下。
さっきのガラボネ執事でもいれば、本当にお戯れで済むのだが、ふたりっきり。その上、閣下の顔がえろい。この表情のえろさは俺の言葉では表現できないだろう。悔やまれる。
震える睫毛、桃のような頬、薄く開いた唇は濡れて光っている。んふ、と閣下が息を浅く吐いた。獣に良く似た瞳が俺に向いた。明るい琥珀の瞳に俺の姿がぼんやりと映る。
本当に冗談じゃない。閣下と俺がくっついたらバッシングと批判とブーイングと全部否定しかない。妄想で充分だ、ということにしといて。

「先ほどの答えよ。私はガルムを、お前を囲いたい。なァ、いいだろう?
私はお前を好いているし、お前に不自由はさせんぞ?私がだめなら、他に女を呼んでもいいんだぞ?その女も一緒に面倒みてやるし、子供だってかまわない。
なんだ故郷に恋人でもおるのか?なあ、だめか?
私がどれだけお前を好いていても、お前は嫌やか。こんなわがままは範疇外なんだろう?変わった眼をした気味の悪い、こんなっ、ひゃっ」

自分の言葉にトラウマを刺激されるのか、だんだんと涙が溜まっていった閣下の瞳は、まるで池に映る月のようなそんな儚い色に変わっていた。
久しぶりに泣くのか、それとも泣いたことがないのか、はんはんと浅い呼吸を繰り返して喘ぐ。いつの間にか開いていた襟に涙が降る。

「っう、ふっ、ぁあん、ふっぅ、ぅぅつ」

手を身体の前で組んで震える姿は、どう変換しようとも、快感を受け止めきれずそれでも耐えようとする女の痴態に重なってしまう。
相手は閣下!閣下は八つ下!初めて会ったときは12歳!
魔法の呪文を唱えてどうにか息子よ鎮まれ。さっきまでとは正反対でその先を想像するのを堪えて、どうにか頭だけでも冷静にしようと努めるのだが。

「ガぁルム、ぅ、なあ。ひぅ、私、だめ、っう、なの?」

涙の量が少ないからあんなに苦しそうなのか、それとも逆か。閣下の眉は下って、眼の周りは赤くなっている。ぎゅーって抱きしめてキスしてそのままやりたいけ、ど!俺は首を横に振る。そして声に出して拒絶する。

「・・・ダメです。いけません。絶対になりません」

言い切った。
本当はすごいやりたい。はずかしいかっこさせてアンアン言わせたい。でも俺言えた!
深呼吸をして起き上がろうとするとバチンッ!と俺の頬から音がした。
盛大な音の割に全然痛くない、ということは閣下の手はものすごく痛いということだ。
ああもうこれだから暴力になれていない人は可愛い。そのまま真っ赤なてのひらを俺の両頬に添え、喰らいついてきた。
今度は倒れなかった。

不意に触れた身体は戦場より何倍も熱く、柔らかい。
乱暴な口付けは俺の口の端を破って進んだ。痛みに一瞬竦んだ隙を狙って舌を入れられた。探るような舌の動きも、濡れた目じりも、うっすら入った眉間の皺もみんな愛しい。
でも応えるわけにはいかない。断固!受け付ける訳にはいかない。反応しつつも手が伸びそうになってもぼうっとしてきても…ダメ。だめ、もうやだ。
数秒前にした決意とは裏腹に、つい舌が出てしまった。応戦してここでダウンさせてしまえばいい、そう前向きに考えて閣下の背を抱いた。
あごに手を添える、あごは細くて小さくて、口の中は狭いし短いし、歯も小さい。口を開けさせて指をそっと差し込んだ。本当に口が小さい、第二間接程度で奥歯に触れた、舌と指一本だけで口の中はもう一杯だった。
フェラはできないなと考えてしまった自分がおぞましい。唾液が手首まで伝って、指を抜く際に舌先でつつかれた。恥ずかしい。
閣下はやる気なのに俺だけしらふとか、いや色々ギリギリだけど前からずっとギリギリだけど。
そうこうしている内に閣下の手が下りてきて上着のボタンをぎこちない手つきで外してゆく。あとついでって感じで膝で股間ぐりぐりしないで!ホント俺泣いちゃうって。起ちそうで起たない絶妙なテクニックとかもうどこで覚えてきたの!
はふう、とうめいて閣下の舌がやっと退いた。涙目で真っ赤になって震えちゃって、辛かったのか肩で息をしている。窒息する瀬戸際まで追い詰めるほどに犯したい。
小さい声で閣下が何か言った。言葉も震えていてほとんど聞き取れない。閣下はキスで赤くなった唇をもう一度うごかした。

「…どうして、ガルムには効かないの?」
「…なにがですか」

意味深な言葉に思わず半眼になる。表情とかキスとかですか、それとも普段からですか。既に随分なダメージが蓄積されてますよ。

「クスリ盛ったのに、なんで効かないの?わ、私辛いのにぃ!もう、や、じゅくじゅくするのに、おしりとか気持ちわるいのにっ。ねえなんで!」

ぎゃーーー、と叫べたらどんなに良かっただろうか。その断末魔もなく理性はお亡くなりになられた。
閣下を膝の上に抱きなおして、ローブの上から太腿をなぞる。ひやん!と声があがった。
閣下が媚薬の類いを使ったのならば、逃げられない。
へろんとした閣下を放置する訳にはいかないし、放置したらしたで処刑は免れない。
最悪死んで、ラッキーなら左遷で、生きてるだけでいいよ。妾ってなんなの、自由じゃなくても生きてりゃいいや、ラッキーじゃん閣下とできるよ。
殺されるならせめて、一回。好き勝手しようと決めた。
後ろ指さされても構わない、死にたくないしやりたいし。今度こそ本物の決意だ。

「閣下。本当にいいんですか」
「いいの?ごめんねごめん、ぇっ!」

太腿のあたりををさすると面白いように声が出る。ローブの脱がし方がわからないので、下からたくし上げる。

「ひゃ!あ、脱ぐ脱ぐ!汚すのだめ」
「はあ、ちょっとわからないんで脱いでくれますか」
「へ!あハイハイ!」

閣下が俯いてごそごそと襟元を探る間も脚を撫でると小さく嬌声が上がる。衣擦れの音がして腕に重たい布が落ちた。閣下は見慣れぬ薄いシャツにミニスカート姿で、既にシャツに手をかけていた。
ブラジャーは着けておらず、体格の割に大振りな乳房があらわれた。着やせするのだな、と思いつつ閣下の頭を撫でる。気持よさそうに目を細める仕草が本当に猫のようだ。身じろぎして俺の頭に飛びついた。
揺れる乳房から、香か甘い匂いが漂う。鎖骨をたどって、付け根を舐め上げる。ぴちゃぴちゃと音を大きく立てて舐める、吸う。
吸っても吸っても中々痕がつかないので、歯を立てて痕を残した。大きく反応した表情を下から覗いて、尻を撫でる。胸と違って肉が薄いのでやや心配である。わざとゆっくりとさすりながら中心に向う。
無機質なまでに白い身体が色づいていく様は壮観だった。

「ふやああん!あっあっあっあ」

いいところを触れたのか一際甲高く声を上げて、強く全身を押し付けてくる。
鼻と口を胸に覆われて苦しいやら、嬉しいやら。谷間で息をするたび、脚の付け根に添えた指を動かすたびに頭の上で犬のような猫のような悲鳴が上がる。ショーツに指をかけるとひっ、と息をのみ閣下の胸が弾んだ。一度深く息を吐く。どこもかしこも閣下の匂いがする。

「大丈夫です。閣下、閣下を傷つけるわけないでしょう?さあ楽になさってください」
「へいき?ガルム、も楽になる?、ひゃ!」

ショーツをずらして親指の先を入れ、すぐに抜いた。

「ふぁ!ちょ、やあ」
「勿論気をつけますから、平気です。閣下もどこが良いか仰ってください」

肌に唇を当てたまま告げると、力が抜けたので、すでに機能を果たさないショーツを一息に取り去り、乱暴に指を入れる。耳に馴染んできた悲鳴にあわせて屈伸する。
充分濡れているのだが狭くて、自由に動かすにはきつい。前を軽く摘むようにすると逆効果で締まってしまった。入り口の近くで指を曲げると、あ、あ、あ、あ、と断続的に閣下の口から漏れていた声が止み、力なく折れた。果てたのだろう、ナカが緩くなった。
指を二本三本と徐々に増やしてバラバラに動かす、前も弄ることを忘れない。果てたことでさらに敏感になった身体は芯がないようで、あのクッションよりもずっと気持ちよかった。
血の気の引いた閣下の手が俺の額に触れる。つめたい。肩に胸を押し付けて、腰を揺らした。すっかり硬くなった乳首が引っかくように縦に動いた。また声が大きくなって続く。
なんだか自慰に付き合っているような気分にさえなるが、大きくほとを開いて突き刺した。きつい。丁寧に慣らしたはずだがまだきつい。閣下は放心したようにぼうっと、俺の目を見た。
「・・・痛いですか」
「・・・ううん。へいき、痛いのはね、慣れてる。…乱暴にしてもいい…」
「…そういうことは口にしちゃだめですよ」
「…うん。ねえ…ちゅうして、おっぱい触って?」

まだまだ動くには痛いし、どうにか無理矢理入れたけど千切れそうだ。小首をかしげての可愛らしいおねだりだ、無下にできるかコノヤロー。
軽いついばむようなキスをしながら胸を揉みしだいて応える。おっさんはねちっこいんだぞ、としつこいくらいとがりを捏ねくりまわす。
次第に下も馴染んできて、前後に動かせるくらいにはなった。閣下の腰が左右に揺れているのが確かなしるしだ。

「あ、あ、ふあ、ね、うごいて、ふ、いいんぁ、だ、うんん」
「辛かったら言って、下さい」

ゆっくりと動き出す。下から突く動きの浅いものの繰り返しでは絶頂には至らないのか、物欲しげな顔をしている。
潰すといけないから安易な正常位に持ち込めず、張り出た腰骨の上を掴んで持ち上げて落とした。閣下の重みで一気に奥まで届く。
閣下はひゃあん!とないて、もっとと懐いた。緩んだかと思うとまたぎゅうぎゅうと締め付けてくる。いきそうでいけない心地よさはいけない。
そうがっつく年でもないというのに、俺は閣下の薄い尻肉を掴んで責めたてた。強弱をつけて遅く速く、閣下が楽しむように、俺が楽しいように。
あいだ閣下の嬌声と涙は降り続く。出そうとすれば手が伸び、無理矢理に戻される。閣下が自分で奥まで入れようとする度、ナカのすべりが良くなる。

「はぁん、なまがめまされよ、はっ、うちくるぬきもうす、はっ、いじむくらわっ、ん」
「・閣下!?何を」

なにかの呪文を唱えられた。まずい。
急に締め付けが強くなる。それと同時に、肩を喰われた。そのまま搾り取られるように、痛みと解放を同時に感じて、射精した。
「っ!…はぁ、閣下?」
「ふ、中ででたな。よし、じょう、はっ、できだ。ガルム、ガルム私の犬…契約がなされた。
もう、遠くへは行けない。故郷に、帰ることも叶わない。
おまえは、私の従っ僕だ。はあ、代わりに、私はおまえに、やれるものすべて与える。私が、死ねば破棄、され、る」

哄笑して閣下は切なげな顔をした。

「今、殺すか」

俺は首を横に振る。最中に噛んだのだろう、血が滲んだ閣下の唇を舐め上げる。
「そんなのいままでと変わりませんんよ。
…ところで閣下。辛くありませんかつーか抜いてもいいですか。もう俺殺されるかと思いました。
本当に俺の頭ン中見えたら閣下卒倒モンです、斬首ものです。俺すんごくスケベなんですよ、いろんなことさせてるんですよ。本当にいやらしいんですよ、復活しそうだから抜いてもいいですか」

へらっと笑って、一気に吐露すれば閣下はきゅっと締め付けて、悪戯が成功したように笑った。

「心配ない、私もいやらしいんだ」

ね、だからもう一回。そう強請る閣下の声はヘビのささやきのようだった。






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