シチュエーション
![]() 衣擦れの音とともに白磁の肌が露わになった。 月明かりと相まって昼間とは違う妖艶な色香を女の肌は醸す。 朱をさした紅唇、濃い睫毛に縁取られた瞳。 きつく拳を握りしめて女を見れば、黒が茶を射抜いた。 金縛りにあったように女の瞳から目を離すことができない。 こんなことはいけない。男の中で警鐘が鳴り響く。万が一にも旦那様に知られれば男の命はなくなってしまうだろう。 「埋めて、下さらないの?」 しかし、命の危機を前にして尚抗いきれぬ魅力が女にはあった。 「奥様」 女が男に向かって一歩足を踏み出した。 「私は──」 男がそれ以上何かを口にする前に女は男の胸に飛び込んだ。 そして、男の首に腕を絡めて唇を吸う。 観念したように男の舌が女の舌を絡めとり、女は心の中で密かに安堵した。 これでようやく足りない何かが埋まるような気がしていたからだ。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |