シチュエーション
![]() 最近の姫様はご機嫌斜めだ。 大好きな姉上を訳の分からん筋肉馬鹿に取られてしまい、姉妹の時間が大幅に減ってしまったのだ。 今日だって秋向けの新しいドレスを姉上と一緒に仕立てるはずだったのに、その馬鹿にかっ攫われて姉上はどこかに消えてしまった。 もちろん、姉上が本気で嫌がっていたのなら、姫様だって自らのお付き騎士を繰り出し姉上の救出を謀るだろう。 しかし残念ながら姉上はあの阿呆を憎く思ってはいないようだ。 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんちゃらである。 ワガママ一杯の姫様にしては珍しく、ガマンの子と化して二人を遠目に見守っているのだ。 「…お姉様…なんであんなのに……。つまんない…」 姫様はソファーにつっぷして寝転がった。 「お察しします…」 「うるさい。あんたごときに察されたくない」 寝返りをうちながら傍らに立つ騎士に素早く蹴りを入れる。 スカートの中からお行儀悪く真っ白な素足が伸び、ポフッと騎士の腹に当たった。 (うはぁ!) 騎士はその蹴りを避けるでも守るでもなく、目をギンと見開いてその足に見入る。 すべすべで、騎士の大きな手の平で容易く握れてしまうほっそりしたふくらはぎ。 キュウと細い足首や小さな踵は汚れを知らないほどに清らかなのに、実はその御身を2回も汚してしまったのは他でもない、この自分だ。 しかも、姫様の純潔を奪ったのは今姫様が横になられているこのソファーの上……。 そのとんでもない事実を思うと騎士の胸は甘く締め付けられる。 性格も口も悪いこの小さな姫君が、自分の腕の中では目一杯甘える様にしがみ付いてくること。か弱い吐息が愛らしいこと。胸がちっちゃ くてくすぐったがりやでその他もろもろがたまらなく可愛らしいこと。 全てが騎士だけのナイショの姫様の姿だった。 (ああ…国王様お妃様お許しください。自分はやってはならぬことをいたしてしまいました…。でも自分が責任を持って姫様を幸せに…!) 「ちょっと、何ニヤニヤしてんの」 姫様は両足をバタつかせ騎士の腹をぽこぽこ蹴り続けるが、騎士は幸せな妄想の世界に浸っているらしく一向に帰ってこない。 屈強な体を持つ騎士が姫様のような女の子に蹴られても、痛みなどはたかが知れているのだろうが、おもしろくない。 「馬鹿騎士!」 姫様はムッと膨れると騎士の股座を蹴り上げた。 ぽこ! 倒れこんだ騎士の背を足で踏み踏みして、ようやく機嫌を直した姫様でした。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |