シチュエーション
エリカは不安げに部屋の中を見回した。 高価な調度品で飾られた部屋は掃除も行き届いて清潔だが、人の出入りが少ないためか空気が冷たく停滞していた。 (:○_ゝ-) 「お嬢様、こちらの部屋はお気に召しませんか?」 エリカの浮かない顔色に目ざとく気付き、片眼鏡の男が声を掛けた。 エリカは慌てて首を左右に振る。 ルイ・д・リ 「ううん。エリカこのお部屋好き…」 子供ながらに謙虚な嘘をつき、エリカはベビードールのドレスの裾を小さく握った。 両親と離れて暮らすのは心細く寂しいが、我が侭を言っても両親の元へ行ける訳ではない。 ここで良い子にしていれば、きっとまた両親が迎えに来てくれるはずだとエリカは信じた。 ルイ・_・リ 「あの…執事さん」 (:○_ゝ-) 「はい」 ルイ・◇・リ 「パパやママといつぐらいに会えるかな」 (:○_ゝ-) 「…」 (:○_ゝ-) 「旦那様も奥様もお仕事でお忙しいですから…まだ先になられるかと」 ルイ゜д゜リ ルイ´д`リ 「…そう…」 部屋に一人残ると、がらんとした空間に広がるよそよそしさが身に染み、エリカの孤独感を強く煽った。 ルイ∩д∩リ 「う…う…ママ…さみしいよう…会いたいよ」 (:○_ゝ-) (…困りましたね) 朝靄が森を白く包んだ。 日の出前の藍色の空の下、石碑は黒い影となって林立する。 墓地の隣にそびえるこの城は未だ寝静まり、凍り付いた湖のような静寂と冷気に満ちていた。 :ルイ´д`リ: 「寒いよう…」 城の廊下。小さな人影がぽつりとある。 バルーンキャミソールの寝間着姿のエリカは、おぼつかない足取りで薄暗い廊下を歩いていた。 早朝用を足しに目覚め、寝ぼけ眼で近場のトイレに辿り着いたはいいが、その後部屋に戻れず迷子になったのだ。 :ルイ´д`リ: 「エリカのお部屋…どこ?」 頭に付けたバブーシュカすら湿気で重みを増した気がする。 一刻も早く自室の温かなベッドに潜りたい。 見覚えのあるドアはないかと、エリカは辺りを見回した。 ルイ・A・リζ 「!」 ルイ・_・リ 「…?何かな…あれ」 エリカは突き当たりの廊下の角に目を止めた。 その片隅に落ちる影だけが周囲より一段と暗い。 真っ黒な影がうずたかく固まり、厚みを持っていた。 エリカはその影に歩み寄る。 ○ 大 テコテコ… あと一歩踏み出せば、伸ばした手が影に触れるかと思われた瞬間、突如影は揺らいだ。 (ΦwΦ) 影の中、真っ赤な二つの目玉が爛と見開かれた。 ルイ;゜х゜リ 深紅に射竦められエリカは息を飲む。 瞳は猫のように縦に細く、闇を割く光源となって影に浮かんでいる。 しかし、エリカと瞳が見つめ合ったのはほんの一瞬だった。 赤い瞳の影は一個の生物のように収縮すると、風の速さでエリカの脇をすり抜けた。 ε⌒γ⌒γ⌒● ビョンビョン 反射的に姿を追って振り向くエリカの目に、尖った三角の耳の残像が刻まれる。 あっという間に影は廊下の向こうへと消え、エリカ一人だけが廊下に残された。 ルイ゜д゜リ 「…」 ルイ・д・リ (…今の、何だったのかな…) 静寂の戻った長い廊下に光が広がる。 窓から温かな朝日が差し込み、冷えきった体を優しく照らした。 呆然と影を見送っていたエリカだが、廊下の正面にあるドアに気付いて声を上げた。 ルイ・∀・リ 「エリカのお部屋!」 エリカは笑顔で自室へと駆け出した。 この城には、何かが潜んでいる。 ――つづく SS一覧に戻る メインページに戻る |